表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元中二病患者の俺がちょっとした心理学を駆使した結果、何故か学園一の美女と協定を結ぶハメになったんだが……  作者: 識原 佳乃
第2章『朝チュンなう』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/72

 チケットカウンターで目的の映画のチケットを買う。

 まぁ、簡単なことだよな? かかっても精々1、2分といったところだろうが、これが水瀬にかかるとそうはいかなくなるのである。


「城戸くん! 座席の数がとても多いのだけれど!?」


 座席案内を見ながら興奮気味にごく当たり前なことを言う天然御嬢様。

 それは俺に言わずに受付のお姉さんに言ってくれ……。


「城戸くん! 今なら平日午前割と学割を併用することで通常料金? のままプラチナクラス? のソファーシート? で映画を観れるそうよ!」


 受付のお姉さんが言ったことを得意気にリピートして伝えてくるアホの子。うんうん、と意味も分からずにやたらと頷いているようだが、その仕種がアホ差加減を助長させているということを、どうやら本人は気付いていないらしい。

 俺もお姉さんの説明聞いてるから水瀬に言われなくてもわかる……っておい! お姉さんが喜んで解説始めちまったじゃねぇか!


「城戸くん! プラチナクラスのソファーシートは座席独立式のリクライニングシートで、なんと“サイドテーブルと手元ライト完備! そしてあって嬉しい収納付きオットマン! 足まで快適! 極楽鑑賞スタイルで……あなたを極上の眠りの世界へご招待”……ん? だそうよ!」


 お姉さんに出されたプラチナクラスの案内の説明文を、爛々とした眼差しでそのまま読むアホの子。

 途中から全く違う部分の説明文を読んでしまい、疑問を感じながらも言い切るあたり、アホ差加減に拍車が掛かりつつあるようだ。

 なんでそこで癒し音楽特集の説明文を読むんだよ!?


「城戸くん! その上“プラチナクラスならワンドリンク無料! 専用ラウンジ? で上映時間まで快適に過ごせます”……至れり尽くせりとはこのことね。映画館……恐るべし……」


 うん。首捻ってる時点で専用ラウンジがなんなのか分かってないってことは取り敢えず理解したわ。んで、なんとなくは気付いてたけど、まさか水瀬って……いや、そんなことないよな?


「ではそのプラチナクラスのソファーシートでお願いします」

「っておい! 勝手に決めるなよ!」

「オススメの座席はどちらでしょうか? ……えぇ、はい……ならばそのP9と10でお願いします」

「おーい! 水瀬さーん? 聞いてますかー?」

「……ん。どうかしら城戸くん? 私に任せれば最高の席で映画を観ることなんて朝飯前の、へなちょこさいさいよ」

「いや、お茶の子さいさいだろ?」

「……そうだったかしら? それよりも、早く行きましょう」


 興奮醒めやらぬ様子でハイテンションにチケットを見せびらかしてくる水瀬。

 ええぇぇぇっ!? ボケじゃなくて、素で間違えてんのか!? ど、どうした水瀬!? 気をしっかり持つんだ!


「まだ上映まで30分あるぞ? そんなに急がなくても大丈夫だろ」

「何を言っているのかしら城戸くん? 私達にはプラチナクラスの専用ラウンジで、上映時間まで快適に過ごさなくてはならないという、レギュレーションがあるじゃない。こんなところで時間を潰すのはもったいないわ」


 今にもスキップを始めそうな軽い足取りで歩き始めた水瀬の後に続いて歩く。

 散々時間かけまくったやつが何を言うか、という言葉を目の前のアホの子に言ったらどうなるんだろうか? そんなことを考えながら俺と水瀬は専用ラウンジへと続くエレベーターに乗り込むのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 平日の午前中だからか、俺達以外制服姿のカップルが一組しかいない専用ラウンジ。そんなほぼ貸切状態の専用ラウンジで終始そわそわと落ち着きのない水瀬を押し鎮め、暇潰しがてらプラチナクラスの説明が書かれた案内板を流し読みしていると、


「城戸くん、ここ読んで」

「はいはい、ここでいいのか?」


 いつの間にか俺の横に立っていた水瀬が※から始まる注意書きの一文を指差した。

 えっーと、なんだ?


「プラチナクラスのソファーシートは……カップルのお客様専用席となっております……おいこれまずくないか? シングルシートに替えてもらうか?」


 なにこれ? こんな、ぼっちお断りな席なんてあるのか!? 酷い迫害だ! リア充爆発しろ!

 真剣にリア充ばくは……シングルシートに替えてもらうか悩みながら、水瀬の出方を窺う。

 受付のお姉さんなんも言ってなかったぞ!? まぁ、そもそも水瀬がうるさ過ぎて殆ど聞いてなかったんだけどな。


「……ん。マジメかっ!」

「……は? ……は?」


 大事なことなので2回言いました……じゃなくて、なんなの? 映画館着いたあたりから水瀬の様子がおかしいのは分かってたけどさ、今の普段やらないツッコミで確信したわ。


「城戸くんのどうしようもなく、なんの捻りもなければしょうもない、加えてコクもなければ、味もないビーフシチューのようなボケにツッコミをしてあげたというのに……全くこれだから素人は困るのよ」

「いや、ボケてねぇし!? そんで結局ボケてんの水瀬じゃねぇか!? ……それよりも水瀬ってもしかして映画館来たの初めてなのか?」

「……ん」


 俺の言葉を聞いた水瀬は、目を伏せ長い黒髪の毛先を指で弄りながら猫のようにゆっくりと頷いた。

 恥じているのか頑なに目を上げないので、聞くんじゃなかった、この空気をどうにかせねばと口を開く。


「そっかそっか。なら今日は存分にサボりを満喫出来てるってことだな?」

「……ん」

「そりゃあ良かった。俺がサボりに巻き込んじまったからな~水瀬が楽しんでくれてるなら一安心だ。んじゃそろそろ開場だから、俺が映画を観るための作法を教えてやろう! まず片手に飲み物!」

「……ん。これ美味しい」


 高級チョコレートメーカーのロゴが記されたダークチョコレートのショコリキサーを掲げ、こくりと頷く水瀬。


「次にポップコーン!」

「どうして?」

「今水瀬が飲んでるのって甘いだろ? ポップコーンは塩味だから丁度いいんだよ。後、映画館行ったらポップコーンってのはお決まりなんだよ」


 原価が安いため売店の利益率が80%以上になるからだとか、映画館でポップコーンが売れるのは『文脈効果』による知覚の変化が原因とか、そんなことはこの際どうだっていい。


「知らなかったわ。そんな作法があるのね」

「あぁ。それじゃあポップコーン買って、スクリーン行くぞ」

「……ん」


 売店で「プレミアムキャラメルがいい」と呟くように主張する水瀬を宥め賺して、オーソドックスな塩味のポップコーンを購入して、スクリーンへと向かった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 いやぁ快適だった! 正直プラチナクラスとか今流行りの『プレミアム性の演出』に乗っただけの、小手先程度のものだろうと侮っていた。水瀬曰く「あのソファー、ヨーロッパの高級家具メーカーの物だったわ」とのことだったので、スマホで調べてみたら二人掛けでお値段なんと55万円~だった。

 うん。そりゃあ快適だわな。


「城戸くんは初めて二人が映画館デートをしたあのシーンどう思った?」


 さて、そろそろ現実逃避はやめるか。

 映画を観終わり、朝行ったカフェとは別のカフェで休憩中の現在。映画鑑賞後のお決まりと言ったら感想を互いに言うことなのだが……水瀬はやっぱりズレていた。「想定以上に画質が良かった」から始まり「映像が滑らかだった」「音響に広がりがあった」「臨場感と透明度のバランスが良かった」「うちのホームシアターでは到底太刀打ちできない」などなど。

 やはり水瀬は映画館フェチなのか? と思いながら「ホームシアターのある家なんてそうそうねぇから!?」と、取り敢えずツッコミを入れておいた。

 そんな映画館についての感想を一頻り言い終えた後、話題はやっと映画についてになった。

 これなら俺もついていけるぞと思っていたが、50分程水瀬の感想を聞いたところで俺は現実逃避に入ったという訳である。


「良かったぞ? まぁ、男がイケメン過ぎるのが許せないくらいだな」


 身も蓋もない感想を言いながら、ぼけーっとコーヒーを啜る。

 あれ? 俺今俳優に対しての批判してなかったか? しかも演技じゃなくて顔っていうね……。

 キィィィィ! イケメンが憎い!


「……そうね。あのシーンはもう一度観たいからブルーレイが出たら買うわ」


 映画館で買ったパンフレットに視線を縫い付けたまま水瀬が呟いた。

 おい! なんかツッコんでくれないと俺が本気でイケメンに嫉妬してるみたいじゃんか!? まぁ、冗談だけどな。


「あんなイケメンは現実世界には存在しない」

「あらそうかしら? なら私たちは幻でも観ていたのかしら? 城戸くん、嫉妬ほど醜いものはないと思うのだけれど?」


 冗談だよ冗談…………な訳ねぇだろぉぉぉぉ!? イケメンこそ爆発しろ! ガム踏んで「うわぁ」ってなった時のキモイ顔で一生固定されろ! 


 ふぅー。いやぁホント冗談なんだけどね。けど、醜いとか言ってくれたのは許さないからな。


「そういや水瀬が映画館初めてなのは意外だったな。てっきり友達…………あぁ、すまんなんでもない忘れてくれ」


 些細な反撃で己の欲を満たし、内心で勝ち誇っていると、


「一生涯今の発言は忘れないわ。……ん。けれど今日は映画館にこれて本当に良かった。城戸くんにエスコートしてもらえなかったら、それこそ一生涯行けなかったかもしれない……だから、その、今日は私のワガママに付き合ってくれて……ありがとう」


 うわぁぁぁぁ! なんだよ俺嫌なやつみたいじゃん! 急にそうやってマジメになるのやめてくれよ! マジで恥ずかしい。

 はにかみながらちいさく微笑んでいる水瀬に盛大な罪悪感を抱き、焦りからつい口を開いてしまった。


「き、気にすんな! またなんか観たい映画でもあったら言ってくれ。その時はまた付き合ってやるからよ」

「……ん。約束だからね?」


 口を滑らせて次回の映画鑑賞の約束をとりつけてしまったが、これはこれでアリなのだろうと思う。

 今日水瀬を見てて思ったのだが、コイツは本当はよく笑うやつなのだ。感情表現も豊かで、喜んだり楽しんでいる時はとにかくよく笑っていた。

 ……そんなよく笑って、かなり天然な水瀬を知っているのは学園でどれだけいるのだろうか?

 いつも凛とした表情で自ら壁の中に閉じこもっている水瀬の本心を……本性を知っているやつはどれだけ……。まぁ、そんなことはどうだっていいか。きっと全校生徒は知らないだろうけど、俺は知っている。

 そんな奇妙な気持ちを抑え込もうとして時刻を確認するためにスマホの電源を入れて吹き出した。


「そういや水瀬、この待ち受けいい加減替えててくれないか? この待ち受けのせいで他のやつらとアドレス交換ができないんだよ」

「……ん。そうね、そろそろいいかしら」

「なにがだよ? ほい、頼むわ」

「別に。……はい、替えたわ」


 水瀬のグランドキャ……画像からデフォルトの待ち受け画面に戻ったスマホを見て、なんだか惜しいことをしたのか? と思ってしまったのは男の悲しい性なのだろう。


「それじゃ、そろそろ行くか。今からゆっくり行けば丁度昼休みの始まりには着くだろうから」

「……ん」

「あ、あれ忘れんなよ?」

「伊達マスクでしょう? “伊達伊達”装備の城戸くん」

「んあ? あぁ」


 コーヒーを飲み干して、水瀬がぽつりとつぶやいた言葉を特に気にすることなく俺はカフェを後にした。

 PCがいきなり壊れるわ、風邪を引くわ、花粉症に掛かるわ、で投稿遅くなりました。

 花粉症の同士のみなさんはまだ大丈夫でしょうか? 私はくしゅんくしゅんしてます。おまけに目も痒くて大変です。


 えーっと以前用語解説のコーナーの執筆を中断してると言いましたが、ぼちぼち再開します。もう少々お待ちください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ