木化病
いつ流行ったのか、どうやって感染したのか、感染源はなんなのか……謎の病が世界中に流行ってしまっていた。その名も木化病。体が木と変化していってしまう恐ろしい病気だ。進行速度も人それぞれで、早い人は一週間から一ヶ月程度で木となってしまう。遅い人は一生かかってなってしまう人などもいる。そして変化する木の種類も様々でその地域では絶対に生き延びることのできないような木となってしまい、その後枯れてしまうというケースも稀にある。
そして、小さな村の小さな家に住む一人の少年エリルもその一人であった。ふと右頬をさすったとき異様なできものがあり、それは日に日に大きくなっていった。不安に思ったエリルは親に相談をしたら親はすぐに木化病だと判断をし、エリルを連れ村長に報告をした。「木化病患者が出た」と、この村は木化病は禍を呼ぶものと恐れられていた。村長は誰にも伝えるなと釘をさしてエリル達を家に帰した。親はエリルに農作業を手伝わせずに家に閉じ込め、誰にもバレないようにした。だがエリルを全く見ないことを不思議に思った村人たちはもしかしたら木化病なのではないかと噂し始めた。その噂がだいぶ村に広まったところで誰かが「俺はこの目で見た!エリルは木化病を発病している!」と見てもないのに断言をした。
そして噂は村人たちの中で真実となりエリル一家は非難を浴び、エリルは妬み嫌われ蔑まられた。
そしてある夜村長が家にやってきた。
「エリルを村から追放する」
親は否定をするが既に決められた事のため親は子を守ることができず引きはがされることとなった。村長はせめてもの報いと皆が寝ている深夜に追放をするとのとこだった。
そしてその追放させる深夜が訪れた。
「ごめん……お母さん、お父さんこんな病気にかかってしまって……」
「謝ることはないのよ、こっちこそごめんねあんたを守ってやれなくて」
「ううん、いいんだ母さん。木化病になった時からこうなることは分かっていたから」
俺は泣く母を慰める
「元気でな」
「ああ、お父さんもな」
父とも別れの言葉を交わしたあと村長が近づいてきた。
「……ところでなエリルよ」
「なんでしょうか村長?」
「この紙をお前さんに渡しておく」
そして何やら地図が描かれた一枚の紙を渡された。
「なんですかこれ?」
「これは木化病患者の集まる施設じゃ」
「施設?」
「ああ、お前さんと同じく木化病発病者の集まるところでな、進行を遅らせる薬が用意されており、誰もお前さんを変な目で見ることはない」
「ありがとうございます村長。俺はここに向かえばいいんですね」
「うむ……ただ施設に連絡をして馬車を手配したからのもうじき来ると思うからそれに乗るとええ、施設まで送り届けてくれるよ」
「わざわざそんなところまでありがとうございます」
「いいんじゃよ。ほれ、馬車が来たぞい」
村長の言葉につられ後ろを振り向いてみると確かに一台の馬車がこちらに向かってきていた。
「行ってらっしゃいエリル」
「行ってきます。お母さん、お父さん、村長」
そして俺は馬車に乗り込んだ。
…………あれ?馬車に乗って行くなら地図いらないよな?
その疑問と共に馬車は俺を施設まで運び出していった。