未来、過去、現在。それぞれの思い。
一人目
未来から来た子とのラブストーリー
彼女は言った。
「私ね、未来から来たんだー。未来人だけど、日本人だからね」
そんな唐突な言葉に、俺は全く反応できなかった。
そんな目も丸くしていないし、口もあんぐり開けていない、俺の普通の反応に不満があるのか、彼女は今度は動いた。
「でさでさ、私、君のことが好きなの。未来から見て、君が大好きになったの」
俺の体にすりより、そんな妖艶な告白をする彼女。
だが、俺の頭は先程の衝撃から抜けきっていない。
次に起こした彼女の動きにさえ、俺はノーリアクションだった。
「だからさ、私をお嫁さんにして?」
更なる告白。
本当にビックリだ。心の中だけど。
でも、ようやく俺の表情筋が反応したのは、人生初めての経験をしたときだった。
「…んっ…っぅ…」
触れ合う唇。
その感触でようやく、俺の表情は動いた。
まあ、瞼だけだが。
彼女の熱い唇が、俺を貪る。舌を絡ませ、唾液を絡ませる。
その柔らかくて熱くて気持ちいい感覚に、俺の頭は麻痺していた。
「…んぅ…美味しかった…」
離れた唇から、銀色の糸が伸びる。
それすらも愛おしそうに、それを指で絡ませて舐めた。
妖艶な微笑みで俺を誘い、更なる境地へ俺を導こうとする彼女。
名前も知らない、先ほど出会ったばかりの彼女に、俺は一言も発せなかった。
「…むぅ…もう少し慌ててほしいなー。手慣れてる感じだしさー」
そんなことはない。
俺のファーストキスだ。さっきのディープがな。
「ま、いいや。もっともーっと、君を好きになって、君をメロメロにしてあげる。それまで、誰にも奪われちゃダメだからね?」
「何をだ何を」
お、初めて声が出た。
上擦ってないし、かなり普通の声だ。
だけど、その切り返しは今は必要なかった。
そう、あとで酷く後悔している。
「…貞操///」
顔を真っ赤にしてそういう彼女は、とても可愛かった。
二人目
過去の記憶の子とのラブストーリー
突然現れた彼女。
枯れ葉の舞う季節に、その舞い上がった枯れ葉と共に現れた、着物姿の彼女。
「…お前が、我が伴侶か」
ストレートに、豪速球をど真ん中に投げてきた。
雅と言うものん俺は知らないが、恐らくこれがそうなのだろう。
凛とした佇まいに、意志のこもった瞳。
現代にはあり得ない人柄に、俺は少し惹かれた。
まあ、言葉があれだが。
「…さぁ?」
とりあえず、返してみた。
「…そうか。…ならばそうするまでだな」
「はぁ?っ!おまっ!…んぐ…!」
「…ん…」
強引に俺の肩を掴み、かなりあり得ない力で俺を引っ張る。
そしてぶつかったのは唇。
柔らかい桜色の唇が、俺の唇に触れていた。
「っ!な、なにしやがんだ!」
「…ふむ。いいものだな」
「なに言って…」
「これで私はお前のもの。お前は私のものだ」
ジャイアニズム全開。
そんな強引なセリフで、俺の気をどこかに飛ばしてしまう彼女。
そんな呆けた俺の手を取り、しっかりと握ったまま俺の隣を陣取る。
なにげに力強すぎねぇか?
ギチギチと悲鳴をあげる俺の骨に構わず、頬を軽く染めながら嬉しそうに笑う彼女。
「…私はお前を見ていた。遥か昔から。…ようやく、触れ合えた…」
どこか安心したように、俺の肩に体を預けてくる少女。
ったく、そんな顔されたらなんにも言えねぇよ…。
「ああそうだ。私は浴衣の下になにもつけておらんでな。…今から、するか?///」
「はい?」
三人目
今という現在のリアルでのラブストーリー
「…あ…あのあのあのあの…あの!」
いきなり話しかけられた。
顔を真っ赤にさせた少女に。
すさまじくどもりながら、指を胸の前でぐるぐると回しながら。
必死になにかを伝えようと、彼女は頑張っていた。
「…深呼吸しよう。うん。おもいっきり」
「ははははい!…すーっ、はーっー」
「はい。で、なにか用?」
そうやって問いかけると、少し落ち着いていた彼女は、またも顔を真っ赤にさせてしまう。
…逆効果だったかな?
「…す…す…すすすすす…!」
す?
酢?
「…好きです!付き合ってください!」
「…………はい?」
抱きつきながら言われた。
凄くあったかい。ってか、熱い。
目に涙を溜めながら、俺を上目使いで見つめてくる。
そして、唇をぶつけてきた。
「…っ!」
「………ん」
突然の感触に驚き、体が固まってしまう。
だが、そんな俺に対し、彼女はとても嬉しそうに言った。
「…責任、取ってくださいね♪」
「はぁ!?」
雌豹のような、獲物を仕留めたような、そんな目付きで俺を見つめる彼女。
そんな目付きに、俺は捉えられた。
…ってか、キスだけで責任とんの?
感想等々待ってます。
誤字脱字誤変換等の指摘も歓迎。