表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/2

茅野先輩の噂






 

莉子(りこ)ってさ、茅野(かやの)先輩と仲良いよね?」

 

 1カメ、2カメ、3カメ。

 

「……へ?」

 

 私の間抜けな顔をぜひ別角度で写して欲しい。

 

 私立、春風(はるかぜ)高等学校。白亜(はくあ)の校舎とローズガーデン。美味しい料理のカフェテリアと、メルヘンな制服。自慢の学校である。

 

 そんな我が校で大変有名な先輩の名前が、今、親友である篠原(しのはら)(うみ)の口から出た。

 

「中庭でいっつも(たわむ)れてるじゃん?」

 

 にやにやと揶揄うように私を笑う海。

 

 吊り目がいたずらな猫のように細められている。

 

「茅野先輩と?私が?仲良し……?」

 

 スペースキャット、スペースキャット。

 

「……いや、よくしてもらってるけど、他の人と同じでしょ」

 

 へら、と笑うと、海は台パンして力強く言い放った。

 

「違うね!!茅野先輩にはあんたにしか見せない顔があるっっっっ!!」

 

 いや、そんなこと……ないと思いますけど……。

 

 

 

 

 

 (くだん)の茅野先輩は、この学校の三年生である。

 

 眉目秀麗、文武両道、才色兼備、深窓令嬢。

 

 ……いや、最後のやつはちょっと違うけれども。

 

 とにかく、ありとあらゆるすごい四字熟語が当てはまってしまう人なのだ。

 

 成績表の上位十名の中にいなかったところを見たことがない。

 

 そんな先輩は、人によれば。

 

 曰く、クールだとか。

 

 曰く、氷の姫だとか。

 

 曰く、……近づくなオーラがあるだとか。

 

 私にとって先輩はラブリーで桜の精でじゃれつくねこちゃんなのだが。

 

 みんなは先輩を誤解している!!

 

 あんなに柔らかく笑う人を私は知らないのに。

 

 中庭に向かって、先輩の姿が見えた時、

 

 桜色の髪が風に舞う様子に。

 

 淡いラベンダーの瞳が長いまつ毛に伏せられる様子に。

 

 白い手が文庫本のページがめくる様子に。

 

 私は、すこし、心惹かれる。

 

「こんにちは、久留米ちゃん」

 

 なんて、少し優しい声が私に向けられるのが、私はすこし、気に入っている。

 

「……こんにちは、茅野先輩!」

 

 私は今日も、茅野先輩のお弁当係で、

 

 茅野先輩の、お世話係。

 

「今日のおべんと、なぁに?」

 

 

 ……あれ、もしかして。

 

 

 ふわりと首を傾げる先輩を見ながら思う。

 

『茅野先輩にはあんたにしか見せない顔があるっっっっ!!』

 

『茅野先輩?クールだよね〜』

 

『ぜんっぜん笑わないらしいよ!「氷の姫」だって』

 

『近づかないでオーラっていうの?壁あるよね』

 

 

 ……先輩って、私にだけとくべつ?

 

 

「久留米ちゃん?どうしたの?」

 


 うぅ〜……ん?

 

 

「?」

 

 私を覗き込む先輩。

 

「……そんなわけないですよね〜!」

 

 笑って先輩の隣に腰掛けた私に、先輩は言う。

 

「なに急に」

 

 茅野先輩の笑う顔は、いつも通り、

 

 

「超可愛い〜〜‼︎」

 

 

「今日いいことあったんだね〜久留米ちゃん」

 

 

 

 

 今日も可愛い茅野先輩と、噂に疑う日々。


 私、久留米莉子は果たして先輩を知っていけるのでしょうか…?






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ