第13話 女神様流、読解力とコミュ力
勉強も身嗜みも全てこの春休み期間中に基礎からやり直すことになった。
それはこの一年間。否、これまでの人生で適当に過ごして来たツケを払ったからに他ならない。
今の僕はマイナスのゼロに近づけただけ、檜山さんを振り向かせたくて身の丈に合わない勉強をして、身の丈合わない高校に受かっただけだ。
だけど僕のリア充のイメージに対して現状最も足りないものがある。
「やっぱり話術も必要だと思うんだけど」
「そろそろ始めるのにはいい時期ね。勇気くんは私の話に興味を持ってくれているのが判るから早く仲良くできるのよ。予め会話のパターンを用意しておくといいわね」
「会話のパターンって……Vtuberとかの『トークデッキ』みたいな?」
『トークデッキ』と言うのは、Vtuber等の配信者が配信に参加してくれる人を募り、会話を途切れさせ放送事故を起こさないようにすると共に、視聴者に分かり易くし一体感を産むために、会話のテーマ・レパートリーをリスト化したもののことをいう。
「……勇気くんが好きな配信者さんのやり方は正しいと思うわ。だけど私は『4S』程度でいいと思うの」
「『4S』?」
「『4S』って言うのは、『趣味』、『仕事』、『出身』、『住処』のことで、天気や自分の得意な会話に誘い込むよりも相手を中心にしたほうが空いては喜んでくるって話術よ。『XX出身だと○○が有名ですよね』みたいに、深堀して会話を膨らませることもできるわ」
「なるほど、相手に話させれば話術は殆ど要らないというわけか……」
「相手に話させる『4S』会話法は水商売の人が良く使う手法で相手が気持ちよくなるし、キャストは相手の弱点を知ることが出来るうえに脳のリソースを分析に割くことが出来るからしいわよ」
「うげ……えげつねぇ」
「女の子の相談は、自分の意見を訊いて肯定してほしいだけだから結論を述べてはいけないし、もし結論を言わないといけなくても話の流れから察する必要があるわ……と言うことで追加で国語のドリルや新聞を読むことで読解力が上がるわ。この方法は、軍神と呼ばれるホストが行っている売れるホストになるための方法よ!」
「国語のドリル?」
「この方法で売り上げ下位の掃除組と呼ばれる最下層のホストの売り上げを四倍以上にした手法なの」
「四倍!? す、凄いな……」
「でしょ? コミュニケーション能力は勉強でも実生活でも役に立つ万能の技術よ? カースト一軍や運動部が強いのは、コミュニケーション能力や自信、努力の仕方が判ってるからなの」
「やっぱりコミュ力かぁ……」
「そう悲観する必要はないわよ。コミュニケーションは読解、思考、伝達の三段階に分かれていて最初の読解をミスしてしまうと全てがおじゃんよ」
「読解力って言っても本を読んだからって身に付くものでもないし……」
「鋭いわね。 カン? いえ、実体験かしら……『読解力とはつまり、相手の言いたいことを何なのか理解し要約する能力』のことよ。読解力は幼少期にどれだけ本に慣れ親しんだか? で基礎能力が高さが変るのよ」
「じゃあ今から努力しても無理ってことか?」
「だけど恋愛できる期間は二年以上もあるの! 今から初めて遅いなんてことはないわ! 国語とは体型立てた学問つまり科学の一部よ。『同等関係』『対比関係』『因果』の主に三つから言葉は出来ているの、この構造を理解し反復するればだれでも読解力が身に付くわ」
「そんなこと言っても難しいな……」
「数学の公式のように暗記して使いこなせば簡単なものよ?
【『同等関係』】はA=Bの関係を示していて、文章同士を『つまり、例えば、要するに、いわば、即ち、言い換えれば』などの言葉で結び『具体的』か『抽象的』に言い換えた関係よ。
【『対比関係』】は文章同士を『しかし、対して、だが、が、ところが、けれども、一方』などの言葉でAとBを『対比・比較』した文章よ。
【『因果関係』】はAとBの位置が入れ替わる文章で、『結果→原因』か『原因→結果』を示すもので、『結果→原因』の文章は『なぜなら、というのも、理由は、きっかけは』で結ばれ、
『原因→結果』は文章同士を「だから、そのため、結果、それで、したがって、よって』と言った言葉からなるの!
これが理解できれば、全ての勉強でも文章問題で落とすことはないわ! そしてこの能力は努力する方法論のように全てに使える人生の公式の一つなのよ!」