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「うちの息子が君の店で買った魔剣だがね、これは巨匠オーディンが打った魔剣を復元したモノと聞いていたが?」

 蛇族は狼狽うろたえている。

「そ……それを私のお店で買ったと言う証拠があるのかしら? 会長まで連れてきて、とんだ言いがかりですわ」

「でしたらこれはどうですか?」

 そこに映るのは蛇女が偽の魔剣を成型するところだが、それはどう見ても青銅ブロンズ製の剣だった。

「重さを誤魔化す為に込めた魔法から読み取った映像ヴィジョンです。これでもまだ言い訳しますか?」

「そ……そんなの捏像したに決まっていますわ」

「いい加減にしたまえ!」

 会長の怒声で一気に静まり返る

「ハロー効果のボロが出たな」

「ハロー効果?? なんだよそりゃ?」

「一部の特徴に引きずられて全体の評価をしてしまう効果のことさ。お客はその紋章が付いてるのなら、まず間違いなく巨匠オーディンが打ったと思い込む」

「そんなの詐欺じゃねぇか」

「ああ、こいつらのやり口はこうだ。まず最初の段階でひ弱そうな坊ちゃんを選定したら、会員証を渡しVIPルームに案内する。紋章付きの魔剣を選ばせ、倍化魔法をかけておだてりゃ、勝手に人間界に殺されに行くってことだな」

「1が倍になったところで変わりませんからね、その後で残った紋章を回収して、同じ手筈で偽の魔剣を作る。これが"無料研ぎ"のカラクリです」

「魔都の中心で商売をしなかったのも、本部セントラルの魔界警察に目を付けられたくなかったからだろう? 支部の魔界警察はあまり勤勉じゃないからな」

 サイレンが遠巻きに聞こえる。

「魔界警察には通報済みだ。大人しくお縄につきな」

 魔界警察が現れ一気に包囲する。

「オーホッホッホ。私がここを選んだ本当の理由をわかってないようですわね」

「おいこれって……」

 しかし、魔銃を向けられ包囲されているのは俺達の方だった。

「この辺の魔界警察は本部セントラルのエリート集団に出来損ないのレッテルを貼られて|ここに飛ばされて来たのです。私はそんな方々に私を守るという目的を与えてあげましたのよ」

「えっと、何でしたっけ?」

「ゴーレム効果だ。誰にも期待されないとモチベーションが下がるっていうあれだな。魔界警察だって魔族さ……呪文ことば一つで泥人形デクにも有能にもなれるってことだな」

「じゃ、やっちゃいましょうか」

「待て」

 構えるレヴィを静止させる

「てめぇらは何のために魔界警察になった!? 蛇女を守るためか? 違うだろ!? 魔界の治安を守るためだろうが! だったらてめーらの正義見せやがれ!!」

 魔弾が俺たちに向かって放たれる。

「ちっ! 結局こうなるのかよ」

「やはり魔力チカラこそパワーですから」

「わかったよ。炎魔法ゾネシュヴァルツェ!」

「ウソ……でしょ 魔弾を一瞬で焼き尽くすなんて、こんな業火見たことない……」

「ぷぷぷ。あれが業火ですって……」

「フ……闇夜を照らす灯火の間違いだろう?」

 驚きのあまりその場の全員が口をあんぐりさせたまま身体を硬直させている。

「最初にアスナトと聞いた時にわかりませんでしたか? 単純な"asnat⇔satanアナグラム"なんですけどね」

 漆黒の翼を生やしたレヴィのその言葉を聞いた蛇女は、みるみる青ざめていく。

「ま……魔王様! そ……それに魔王軍統括指令レヴィアタン様! とんだご無礼をっっ!!」

「反省は冥府タルタロスでされよ。さてお主らにもう一度聞く。このままこの女を守るのか? それとも魔界の治安を守るのか?」

「「「「とんだご無礼を致しました!!」」」」

 俺は魔力チカラを解き元の姿に戻る。

「魔力チカラ比べで負けたからって凹へこんでんじゃねーよ。魔力にはそれを活かせる魔法個性があんだろうが。しゃきっとしやがれ」

 蛇女達を連行していく魔界警察。

「じゃあ、改めて今大会の優勝者を言ってもらおうか」

「と言っても共犯だった運営はいませんけどね」 

「それなら私がその代わりを務めよう。第8回MM-1グランプリ優勝者は……リザードマン!」

 会長が壇上にあがり俺達の優勝を高らかに宣言する。

「よっしゃあぁぁ!!」

「因みにゴブリンに褒美をやって悪戯を[[rb:唆 > そそのか]]した元凶もあの蛇女だぜ」

「だろうな……でも、変じゃねぇか? 報酬を与えたらアンダーなんちゃらでやる気は喪失するんだろ?」

「いや、蛇女は"義務"を感じさせなかったんだよ。ゴブリン達が悪戯をもっと楽しめるようにと、褒美に封印魔法を覚えさせた。これが"エンハンシング効果"だ」

「やっぱあんたには適わなぇな。よし……決めたぜ! 今回の分け前はあんたが最初に言った通り半々にしようじゃねぇか」

 俺が魔王だと知っても態度を変えない。そんな裏表のない店主が初のお客で俺は誇らしく思う。

「どういう心境の変化なのかは知らないが、お前のその感情は俺が魔族心理を利用しているのかもしれないぜ?」

「得意のなんとか効果か? それならそれでいいぜ! あんた……いや、俺は魔王を気にいったんだよ」

「それなら、俺もお前みたいな権力に迎合しない奴大バカ野郎のことを気にいったから俺達の取り分は変わらず20%だ。それに、元々報酬目当てでこんなことやってるんじゃねぇんだ。魔王として、魔界の治安守るのが目的だったからな。それに俺は俺の流儀を買ってくれたお前に感謝してるんだぜ」

 こいつは俺が何かの魔族心理を利用してんじゃないかという猜疑心がありながらも、自分にとって利のない提案をしてきた。そういう魔族同士の信頼や想いやりが商売屋……いや、今の魔族にとって一番大事なのかもしれないな。

本作を読んでいただきまして、誠にありがとうございます。

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