9話「定期的に会っています」
食事会以降、ローゼットとは定期的に会うようになった。
私が城へ行く時もあれば彼がこちらへ来てくれることもある、その辺りはお互い譲り合ってという感じ。
けれども彼は嫌な顔なんてしない。
王子なのだから本来自分が動く必要はないのだ、が、それでも彼は移動の負担も考慮してこちらへ来てくれるという回もしっかりと作ってくれていた。
一緒にいる時、やはり、彼は時々気を失った。
けれども少し様子を見ていれば大抵はやがて目を覚ます。だから彼が気絶している間はそっと見守るようにしていた。倒れる瞬間に怪我をしないようにだけ気をつけて見ていればそれ以外の点はそれほど心配する必要はないのだと分かったので段々落ち着いて対応できるようになっていった。
――そんなある日のこと。
「久しぶりだな!」
ローゼットの到着を待っていたところ二度と拝みたくなかった顔が目の前に現れた。
「ラスティナ、お前、王子と仲良くしているそうじゃないか。低階級女のくせに、なかなかやるな」
かつて私を切り捨てた身勝手な彼。
こんな形で再会することになるとは思わなかった。
……何だか嫌な予感。
「オフィティ……」
「何だその顔、嫌そうだな」
「嫌ですよ、当然でしょう。二度と見たくないと思っていましたから」
「ああそうかそうか、捨てられて逆恨みしてたんだなぁ~」
彼はわざとらしくふざけたような言い方をした。
そんな風に挑発して楽しいか? ……それも、今さら。
「ど~せ遊ばれてんだよ」
「何も知らないのにそんなことを言うのはやめていただきたいものですね」
「ぷーぷぷぷ! 怒ってやんの! だっせ! だっせだっせ!」
ここまでくるとさすがにもう腹も立たない。
彼の挑発は子どものそれと似たようなレベルだ。
「それで、用は何でしょうか」
「用? 王子の話だよ」
「王子の……?」
刹那、彼の表情が背筋が凍りつくほど冷たいものになった。
「王子と仲良くとかふざけんなって」
声までも冷たい。
「え……」
「くっだらねぇ下級女が勘違いしてんじゃねえよ」
何を言われているのか分からない。
「貴方には関係のないことです」
「低級な女が王子に選ばれると本気で思ってんだろ? お前馬鹿だからな。今日はそれを教えに来てやったんだ」
「……迷惑です」
「身の程をわきまえろよ!」
「私たちのことです、貴方には関係ありません」
すると彼は急に目じりをつり上げる。
「お前だけ幸せになれると思うなよ!!」
オフィティはガーディアとどうなったのかを自ら話し始める。
しかしそれは幸せな物語ではなくて。
むしろ彼がガーディアに嫌われ捨てられるという切なさをはらんだものであった。
「もうこれ以上ややこしいことに巻き込まれたくない、そう言ってガーディアは俺を捨てたんだ」
「そうでしたか」
「お前のせいだぞ!!」
「……無関係です」
「お前が余計なことを言ったからだ。そのせいでガーディアに嫌われた。俺の印象を悪くしたのはお前だ、つまりすべての責任はお前にある」
妄想だ、そんなの。
そう思うけれどさすがにこの状況では言うことはできない。
母が近くにいる日であれば良かったのだが……悲しいことに今日に限って母は出掛けている、この場には私の味方はいない。