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4話「ある穏やかな日の出来事です」

 見上げる空は青く澄んで、快晴、日射しは強めでどこか眩しさを感じるけれどこんな穏やかな日にはそれすらも愛おしく感じられる。


 吹き抜ける風がまとっているシーグリーンのワンピースの裾を揺らした。


 そうして街の外れにたどり着いた時。


「え……?」


 私は路上で倒れている人を発見する。


 すぐには近づかず様子を窺う。

 そんな風に観察していると知らない人だと分かってきた、どうやら近所の人が倒れているのではなさそうだ。


 でも、どうしよう。


 声をかけてみる? 心配だ。もし生命に関わるような状態であったら……一刻も早く救助しなくては死んでしまうかもしれない。なら近づいてみるべきだろうか?


 けれどももし何かの罠だったら。

 悪い人が倒れたふりをして引っかかる善良な人間を待っているのだとしたら。

 心配して声をかけたりなんかすれば、それは、羽虫が蜘蛛の巣に飛び込むようなもの――愚かなだけだ。


 声をかけてみようか?

 いやこのまま見なかったことにしようか?


 何度も考えて、その果てに。


「もしもし……あの、どうかなさったのですか……?」


 少し離れたところから声をかけてみることにした。


 私にはこれが限界だった。


 しかしすぐには返事はない。

 どうやら彼は本当に気を失っているようだ、目も閉じている。


 不安が込み上げてさらに近づく。


「大丈夫ですか……?」


 さらりとした金髪、ずっと放置しているような髪質ではない。それに、身にまとっているワインレッドの服も厚みのある軍服のようでいかにも高級そうで、どう考えても平民とは思えないような身形である。


「あの……」


 顔を覗き込んで、驚いた。


 とても整った目鼻立ちの青年だったからだ。


 神か何か? なんて思ってしまったくらい。


「すみません、あの、寝ていらっしゃるのですか?」


 それからしばらく私は声をかけ続けた。一向に返事はない、が、そのことが警戒心を減らしていってくれて。きっと気を失っているか深く寝てしまっているかなのだろう、段々そう思えてきた。


 そこで私はその場所から比較的近くにある病院に助けを求めに行くことにした。

 私一人では何もできないが医師がいれば何かできるかもしれない、そう思ったから。


 ――そして、その結果。


「気がついたのですね!」


 一時間ほどで彼は目を覚ました。


「ええと、貴女は……」

「倒れていらっしゃったのでお医者さんを呼びに行った者です」


 軽く自己紹介。

 名前まではまだ要らないだろう。


「そうだったのですか」

「はい」

「それは……ありがとうございました、感謝します」

「体調不良ですか?」

「実は家の呪いで――って、このようなことを言われても理解できませんよね、すみません」


 意外な言葉が出てきた。


「呪い?」


 思わずきょとんとしてそのままの言葉を返してしまう。


「はい、実は我が王家には呪いが。それは王子にのみ発現するもので。良き妻を迎え入れることで解除されるものなのですが……それが上手くいかない限り、定期的に気を失うことになるのです。ある種の発作のようなものですね」


 ――って、それより……王子ッ!?

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