2話「もう今まで通りではいられないようです」
「失礼します」
ドアのノックし、ゆっくりと開ける。
やはりそこにはオフィティと女性の姿。
いきなりの私の登場に二人は若干焦ったような顔をしていた。
「な……お、お前、何しに来たんだ」
「忘れ物をしてしまいまして、取りに来ました」
「今すべきことか!? ったく……鬱陶しい!!」
「お取込み中すみません。どうぞご自由にいちゃついていてください。先ほどまでのように」
オフィティはご機嫌斜めだ。
多分、怒ることでごまかそうという作戦なのだろう。
「ええと、確かこの辺に……」
「おい! ラスティナ! 何なんだその態度は!」
「え?」
「俺たちは今楽しんでいるところだ、それを勝手に入ってきて邪魔するとは! 迷惑極まりない! もう少しわきまえろ!」
わきまえろ、って……。
「そう言われるべきはそちらではないですか?」
「なっ……」
「オフィティさんこそ、婚約者がいる身でそのように他の女性と過剰なかかわりを持つなんてどうかと思いますよ」
はっきりと言ってやった。
せめてもの反撃だ。
これまで散々馬鹿にされてきたのだ、少しくらい言ってやっても神様は怒りはしないだろう。
「お、お前ぇ……!」
オフィティは歯茎を剥き出して激怒の色を面に滲ませる。
「馬鹿にしてるのか! この俺を! 下級女の分際で!」
血の気の多さが愚かさを露わにしている。
「舐めた真似をしやがって……絶対に許さん! 許さん! 許さん許さん許さんぞ! この俺を馬鹿にして、真実の愛をも馬鹿にして、何と卑怯かつ穢れた女! 許さあああああああん!」
オフィティは立ち上がりこちらへ駆けてきて殴ろうとしてくる――が、直前で彼はぴたりと動きを止めた。
「ああそうだ、いいことを思いついた」
彼はにやりと片側の口角を持ち上げる。
「ラスティナ。お前との婚約、本日をもって破棄とする」