4.出会いの過ち
アクアオーラとアイオルドが出会ったのはアクアオーラがまだ自分の身体に無知だった頃。
アクアオーラが7歳、アイオルドが10歳の時だった。
大臣に付いて王宮の見学に来たのか、姉たちの伴侶候補として顔合わせに来たのか、どちらだったかは覚えていない。
その頃アクアオーラは外に出てはいけないことは聞かされていたけれど、度重なる体調不良の理由が陽光や暑さにあることは知らなかった。
その前日、エリレアとシオネが噴水で水浴びをしたことを楽しそうに話していたのがとてもうらやましくて。
キラキラした水が飛び散って涼しくて楽しい場所だと聞かされてどうしても行ってみたくなった。
けれど大人たちが外に連れて行ってくれないのはわかっていたし、場所もわからない。
エリレアとシオネにお願いしてもダメだと聞いてくれなかった。
諦められなくて噴水のありそうな場所を探して廊下をさ迷っていたときに遭遇したのがアイオルドだった。
一人で王宮内を探検していたらしい少し年上の男の子がアクアオーラの姿を見てにこっと笑う。
そんな反応は初めてだったのでアクアオーラは大いに戸惑った。
エリレアとシオネ以外の子供を見たのも初めてだった。
『君だあれ?』
きらきらとした金の髪はまだ肩に付かないくらいで歩みを進める度に光を受けて輝いていた。
『あ、ごめんね。
俺はアイオルド』
大きな琥珀色の瞳が好奇心を映して煌めき、アクアオーラの答えを待っていた。
アクアオーラが自分の名前を答えると男の子からは何をしているのかと聞かれたので噴水を探していると伝えた。
言ってから外に行っちゃいけないから秘密だったのを思い出して口を押える。
ダメって言われると身構えていたアクアオーラに男の子が知ってるよと笑う。
場所だけ教えてもらうつもりだったのだけれど、噴水まで案内してくれると言ってくれた。
『行こうよ、君に見せてあげる!』
男の子が琥珀色の瞳をきらきらさせながら満面の笑みを浮かべる。
外はダメだとか。
後で怒られるとかは、何も浮かばずに。
まっすぐに伸ばされた手を何も考えずに取っていた。
男の子が時々自分を振り返りついてきているか見てくれる。手を引いてくれるのが嬉しくて、息を上げながらも頑張ってついて行った。
水音が聞こえ、大きくなってくる。期待と熱を持ち始めた身体に鼓動が早くなる。
『ここだよ、キレイでしょう?』
足を止め、男の子が指差す方向を見上げ、目を刺す光の強さに視界が暗くなった。
かくんと力の入らなくなった足が崩れる。
無邪気に見てと誘った男の子の声が驚きに染まった。
『どうしたの? 大丈夫!?』
――大丈夫。
そう答えたいのに声が出なくて。
大人たちのざわめきが聞こえる中、繋いだ手が離れないようぎゅっと力を込めたのを覚えている。
けれど意識を保っていられなくなり、アクアオーラはその場で気を失った。
そのまま高熱を発したアクアオーラが自分を連れ出した男の子が捕らえられたのを聞いたのは3日経ってからのことだった。