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1. 天才魔術師を弟に持つと人生はこうなる

[作者]


江崎乙鳥 様


[あらすじ]※元作要約


 十二歳までに〈神の恩恵〉と呼ばれる特殊能力が人々に与えられる世界で、国に役立つ〈恩恵〉を得たものは、奨学金をもらい王都で学ぶことになる。


 ポルカ村のルカは、たいしたことがない能力と誤解され、村で狩人としての日々を過ごす。

 それから約三年、今度は弟が検査の日を迎え、稀少な〈恩恵・魔術使い〉であることが判明するが、弟リヒトは魔術学校から与えられた「従者枠」を使ってルカを巻き込み、一緒に王都に連れていってしまう。


 弓の名手であり、ある特殊能力を持った兄と、天才魔術師の弟が繰りなす冒険譚。


[ネタバレありな感想&考察]※55話時点


 ストーリー (※1)や表現 (※2)など、どれもストレスを感じる事はなく、高水準なクオリティであると感じる。

 (※1)主に話の大まかな流れ(起承転結)のこと

 (※2)主に一人称、三人称、セリフのバランス


特に良いと感じたのは、12話での主人公の成長シーンだ。


 要約すると、大物のシカを仕留めた主人公は、親切心から獲物を村へと卸す。

すると、一部村人に疎まれている主人公は、卸したシカの角を横暴にも略奪されてしまう。

けれども、親の采配により、肉を高値で売りつつも多数村人を味方につけれた為、穏便に事をすませる。

という展開だった。


そして、この後のつなげ方が非常によい。以下に一部引用するが、


――

 この出来事はその後のルカに大きな影響を与えることになった。

 つまり、もう二度と対価をもらえない仕事はしたくない、という意識が芽生えたのだ。

 初めての大物を一番嫌な人間に取り上げられるところだった。

 途中から面倒くさくなったけれど、理不尽な言いがかりに怒りが湧いたのも事実だ。


(本当はああいうときに自分で交渉できないといけないんだ)


 ヴォルフが怒っていた割になにも言わなかったのも、ルカに自分で戦わせようとしたのかもしれない。

 でも結局父と村長がいなかったらルカは奪われるだけだった。そしてふと気づいた。


(父さんはあれ、怒ってたんだよな)


 当時のことを思い出してルカは空を見上げた。

 満天の星に向かい、焚火の煙が溶けていくのを目で追っていった。

――


と続く。

よくある作品では、主人公の怒りが主に綴られて終わりであろうが、本作品では「〇〇という意識の芽生え」と明確に表記する事で、主人公の価値観の形成過程がすんなりと理解できる。

また、父親が怒りつつも主人公には何も言わないという展開から、主人公の成長を促す親心を表現するなど、非常に巧みだと感じた。


「主張する事の大切さ」という普遍的な価値観をとりあげている点もまたよい。


作品URL:https://ncode.syosetu.com/n8703hn/

感想かいてクレメンス?(╯°□°)╯

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