霧と満月のロンドン
霧と満月のロンドン
作:ラインハルト
※台本使用時は、台本タイトル、作者名の表記お願いします。
※過度なアレンジ・アドリブはしないでください。
※1部叫びあり
役表6人ver.
ジャック・ザ・リッパー ♂
警官 不問
娼婦1 ♀
娼婦2 ♀
店主 不問
ナレーション(N) 不問
5人ver.
ジャック・ザ・リッパー ♂
警官 不問
娼婦1+2 ♀
店主 不問
ナレーション(N) 不問
4人ver.
ジャック・ザ・リッパー ♂
警官+店主 不問
娼婦1+2 ♀
ナレーション(N) 不問
3人ver.
ジャック・ザ・リッパー+店主 ♂
警官+ナレーション(N) 不問
娼婦1+2 ♀
--------キリトリ線--------
N:(1888年、舞台はイギリス、ロンドン。
猟奇的殺人事件が発生していた。
それは、切り裂きジャックまたの名をジャック・ザ・リッパーと呼ばれた殺人鬼の話だった。
物語は霧の濃い夜から始まる。)
ジャック:「霧が濃く出ているいい夜だ…こんな夜には血が騒ぎ、うずうずしてしまう。」
N:(獲物を探しロンドンの街を闊歩しているジャック・ザ・リッパーは、ある店に足を踏み入れた。)
店主:「いらっしゃい。
初めてのお客様だね、ここがどんな店かわかってるかな?」
ジャック:「もちろんわかっているとも。
ここでは何人くらいの娼婦を雇っているんだ?」
店主:「そうだねぇ、私の店はまだ新しく小さいから10人程だね。」
ジャック:「雇っている娼婦を見せて貰えないか?
」
店主:「もちろんいいとも、好きなだけ見ていって貰って構わないよ。
気に入った子がいれば買っていってくれ。」
N:(ジャックが足を踏み入れた店は、娼婦を売買している店だった。
そこでジャックは1人の娼婦を買っていった。)
店主:「さぁ、この中から好きな子を選んで
金さえ払ってくれれば、後はお客さんの好きな様にしてもらって構わないよ。」
ジャック:「では、右端から3番目の子を買わせてもらおうか。
店主よ、釣りはいらない。」
店主:「釣りがいらないとはありがたいねぇ。
それでは、またのご利用お待ちしてますよ。」
N:(ジャックが選んで娼婦は20前半位の容姿をしている、ロンドンでは珍しい黒髪ストレートのアーモンドアイの女だった。)
娼婦1:「私を選んでくれてありがとうございます。
ねぇお兄さん、私少しお腹が減っているんだけど、何か食べていかない?」
ジャック:「食事なら俺の家で食べればいいさ、それに2人の空間でゆっくり話しながら楽しもうじゃないか。」
娼婦1:「それもそうね。
遅い時間だし、空いてるお店もあんまりなさそうだもんね。
お兄さんの家ってここからは近いの?」
ジャック:「ここから20分程歩いた所に俺の家がある、近所にあまり人が住んでいない静かないい所さ。
多少大きな声を出しても苦情も来ないから、たっぷり楽しませてもらうよお嬢さん。」
娼婦1:「へぇ、そうなんだ。
大きな声を出してもって、お兄さんってそんなに激しいの?私あんまり経験ないから、出来れば優しくして欲しいと思ってるんだけど。」
ジャック:「心配しなくても大丈夫さ…今まで体験した事がないほど楽しませてやろう。」
N:(娼婦を連れながら家に向かっているジャック。
これから自分が殺されるとは知らずについて行く娼婦。
)
ジャック:「着いたぞ。
ここが俺の家だ。」
娼婦1:「立派な家に住んでるんだねお兄さん。
1人で暮らしてるの?」
ジャック:「あぁ、1人で暮らしている。
さぁ、中に入ろうか。」
娼婦1:「そうだね、お腹も減ってるし先に何か食べさせてね?その後は、少しお話したらベッドに行こ?」
ジャック:「そうだな、そうしようか。」
娼婦1:「お兄さんあまり喋らないけど、優しそうだから今日は良いお客さんに当たって私安心したなぁ。」
N:(ジャックの事を優しい人だと信じ込んでしまった娼婦は疑う事をやめたみたいだ。
その頃、1人の警官がジャックの事を同僚から聞かされていた。)
警官:「ジャック・ザ・リッパー?初めて聞く名だ。
娼婦ばかりを狙う殺人鬼…ジャック・ザ・リッパーか、警察の威信にかけても必ず逮捕してみせる。」
N:(1人の警官がジャック逮捕に向けて動き出す。
しかし、数日後にあんな事が起こるとはこの警官も思ってはいなかった。
時間は少し戻り、娼婦を家に招き入れたジャックが動き出す。)
娼婦1:「外から見ても立派だったけど、中に入ってみるとほんとうに立派な家に住んでるんだね、これから私もここで住まわせてもらおうかな。
ねぇ、お兄さん家の中案内してよ?」
N:(娼婦は家の中を見回しながらジャックに話しかける。
しかし、ジャックは何も応えず、娼婦を背後から羽交い締めにし、床に叩きつけた。)
娼婦1:「えっ!?なっ、何!?きゃっ!痛い、いきなり何すんのよ!離して!」
ジャック:「ふふふっ…馬鹿な女だ、勝手に俺の事を優しい人だと信じ込み、なんの疑いも無くついてくるとは。
さて、これからたっぷり楽しませてもらうぞ、お前のその体で。」
娼婦1:「ちょっと、お兄さんいきなりどうしたの?そんなに早くしたかったなら、言ってくれればすぐに服なんて脱いだのに。」
N:(今の状況を理解出来ていない娼婦は、ジャックはそういうプレイが好きなのかと勘違いをしていた。)
ジャック:「あぁ、そうさ、俺は早くこうしたかった。
もう我慢の限界だったさ、今すぐお前を、刺し、切り裂いてズタズタにしてやりたい。
やっと今の状況を理解したか…そうさ、お前は今から俺に殺される。」
娼婦1:「えっ?嘘…だよね?冗談…だよね?演技してるんでしょ?そんな事しないよね?ねぇ!
嫌だ!離して!離してよ!誰か助けて!!」
ジャック:「どれだけ叫んでも誰も来ないさ、可哀想に、疑いもせずついてきたからこんな不幸な目に遭うんだ。
恨むなら俺より、自分の運命と、こんな運命にした神を恨むんだな。」
N:(ついに本性を表したジャック。
娼婦は逃げ出そうと暴れているが、ジャックに馬乗りになられ逃げ出す事ができない。
ジャックの手にはいつの間にかナイフが握られていた…霧が晴れ、満月の月光を反射したナイフが怪しく光る。
ジャックはついにそのナイフを振り下ろした。)
娼婦1:「い…嫌だ!助けて!なんでもするからお願い!助け…ああああああああぁぁぁ!痛い!痛いよ!助けて!いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ジャック:「ははっ…この感触…この反応…やはり堪らない、俺は何よりもこの瞬間が1番興奮する、絶頂すら覚えるほどに興奮する。
すぐに死んでくれるなよ、もっともっと俺を楽しませてくれ。」
N:(ジャックの耳には娼婦の言葉など聞こえていない、ただただ自分の快楽の為に何度も何度も娼婦にナイフを刺し、切り裂いていく。)
ジャック:「こんなにも快感を得られることを辞められるわけが無い。
これからも俺は楽しませてもらうぞ。」
娼婦1:「あ…あぁ、もう…ころ…して…はやく」
ジャック:「チッ!もうほとんど動かなくなってしまったか、呆気ないものだな。
終わらせるか。」
N:(動かなくなってしまった娼婦に気付いたジャックは、娼婦の心臓を突き刺し息の根を止めた。
ナイフを突き立てたままジャックは、動かなくなった娼婦を放置し、その場から立ち去った。)
ジャック:「さて、また数日間大人しくしておくか。
連続で犯行を犯してしまうとさすがにバレてしまうしな。」
N:(ロンドンの闇の中にジャック・ザ・リッパーは消えていく。
惨劇の一夜が明け、ロンドンがまた太陽に照らされていき、犯行現場になった家に1人の人物が現れた。)
店主:「確かこの家だったはず…ふぅ…入ってみるか…これは予想以上に酷いな。
まさかここまでの事をするとは…しかし私には関係の無い事だ。
切り裂きジャックか…君がどこまでやれるのか楽しませてもらう事にしようか。
とりあえず、警察にでも通報しておくか。」
N:(犯行現場に現れたのは、娼婦を売った店主だった。
この人物は一体何者なのか、何を企み、切り裂きジャックを観察しているのか。
店主が立ち去った後に、警察が到着した。)
警官:「通報された場所は…ここか…うっ!なんだこれは…こんなに酷い死体は初めて見る。
片目を潰され、全身至る所を切り裂かれているじゃないか、これが切り裂きジャックの犯行か…切り裂きジャック、こいつはかなりイカレてる。早く捕まえないと、犠牲者がもっともっと増えてしまう。」
N:(警察により犯行現場の事後処理が終わったのは、数日後の事だった。
その数日間、切り裂きジャックが現れることは無く、警察は切り裂きジャック事件に関しての事は、何も進展させることが出来ないまま時間だけが過ぎていく。)
警官:「この数日間、全く現れなかったな切り裂きジャックは、もうこのまま現れないんじゃないのか?必ずまた現れるって?現れればその時は捕まえるだけさ。」
N:(警官は切り裂きジャックが現れない事を不思議に思っていた。
しかし、切り裂きジャックは警察の動きを闇に紛れながら観察していたのだった…ロンドンの街にあの恐怖が再び始まる。)
ジャック:「久しぶりに街に出て狩りをするか。
今夜はいい夜だ…満月が綺麗に見える実にいい夜だ…今夜は俺にとっていい夜になりそだな。
さて、少し街を散歩でもしてみるか。」
N:(また獲物を探し動き始めたジャックは街を散歩しながら、今夜の犠牲者となる娼婦を探している。
数十分、街を散策した頃にジャックはある人物を見つけた…娼婦を買った店の店主を見つけた。)
店主:「おや?これはこれはお久しぶりですね。
今日は何を?よければまた私の店の子を買っていってもらえますか?」
ジャック:「久しぶりだな、新しくいい子が入ったのなら紹介してもらいたいものだ。」
店主:「もちろん、新しくいい子が入ったよ。
ほら、あそこの壁に寄りかかってる子がそうだよ。
綺麗な子だろう。」
ジャック:「あれか…ほぅ…確かに美しい、今まで見てきたどんな女より美しいな。」
N:(店主に言われ、娼婦を見たジャックは感嘆の声を漏らしていた。
その娼婦は、どこか儚げで神々しさすら感じさせるほど美しかった。)
ジャック:「店主よ、あの女を買わせて貰おう。
前回同様、今回も釣りはいらない。」
店主:「お買い上げありがとうございます。
ゆっくり楽しんできてください。」
N:(店主に金を払い、ジャックは娼婦に近づいて行く。
娼婦もジャックに気付いたようだ、ジャックの背後に店主が見えた為、自分が買われた事にも気付いた娼婦はジャックを見つめている。
ジャックは娼婦に近付きながら、どの様な感じで接しようか考えていた。)
ジャック:「こんばんは、お嬢さん。
もう分かっているとは思うが、君の事を買わせて頂いた者です。」
娼婦2:「えぇ、分かっていますよ。
私を選んで頂きありがとうございます。
それで、どうしますか?モーテルに行きますか?それとも、貴方の自宅に行きますか?
私はどちらでも大丈夫ですよ。」
ジャック:「そうですね、私の自宅に行きましょうか。
どこかで少し、軽く食事でもして行きませんか?」
娼婦2:「もちろんいいですよ。
夜はまだまだ長いので、何か食べておかないとゆっくり楽しめませんものね。」
ジャック:「そうですよ。
今夜は私と君の2人きりで、この満月の下で楽しみましょう。」
N:(ジャックは娼婦に対し、紳士的に接し安心感を植え付けようとしているみたいだ。
娼婦もそんなジャックに対し、少し安心感を覚え始めていた。
2人はカフェで軽く食事をし、ジャックの家に向かって歩き始めた…その2人の後を尾行している人物が居ることも気付かずに。)
店主:「さて、2人に気付かれないよに尾行しないとな、私はあくまでも観察者あり傍観者だ。
切り裂きジャック…君の行く末を見届けさせて貰うよ。」
N:(店主の目的は一体なんなのか、切り裂きジャックをなぜ観察しているのか、娼婦が犠牲者となるのがわかっているのになぜ警察に通報しないのか、今はまだ分からない。
そして、尾行されている事に気付かないままジャック達は目的地に到着する。)
ジャック:「さぁ、着きましたよ、ここが私の家です。
少し段差がある玄関なので足元に気を付けてくださいね。」
娼婦2:「ありがとうございます。
いい所に住んでいるのですね、お邪魔しますね。」
ジャック:「どうぞ、1人で暮らしているので必要最低限の物しかない殺風景な所で申し訳ない。
先にシャワーでも行きますか?」
娼婦2:「そうですね、それではシャワーに行きましょうか。」
N:(まだ本性を見せないジャック…しかし、その衝動を抑えるのもそろそろ限界に来ているようだ。
ジャックが襲ってしまおうか、考えている間に娼婦が服を脱ぎはじめた、それに気付いたジャックは、娼婦に見とれていた。)
ジャック:「ほぅ…これは美しい…ここまで美しい女性は見た事がない。
すまないが、そのままこちらに振り返っては貰えないだろうか?」
娼婦2:「もちろんいいですよ。
どうですか?そんなにじっくり見られたことがないので、少し恥ずかしいですね。」
N:(ジャックは確実に娼婦の美しさに見とれていた、今まで見たことの無い美しさに…だからといって、ジャックのやる事は変わらない、美しければ美しい程、切り裂いてみたいと思うのがジャックなのだ。
その頃、ジャックの家の隣家では、あの警官が1人コメディ映画を見ていた。)
警官:「おや?隣の住人が帰ってきたのかな?こんな遅い時間に帰ってくるとは、今まで1度も顔を合わせないわけだ。
さて、映画の続きでも見ようかな…はははっ!面白いなこの映画!」
N:(隣に住んでいる警官は、すぐに映画に見戻ってしまった為に、隣の事に関しての意識が途切れてしまった。
これから、隣で惨劇が始まろうとしているというのに、警官はなにも気付かない。)
娼婦2:「そんなに見つめないでください照れますよ。
シャワールームはどこにありますか?」
N:(そう言いながら娼婦はジャックの視線から逃げるように振り返った。
そしてついに、ジャックが隠していた本性を剥き出しにし、娼婦に襲いかかる。
背後から掴みかかり、床に娼婦を叩きつけた。)
娼婦2:「きゃっ!痛い…なんですかいきなり、どうしたのですか?」
ジャック:「ふふふっ…もうダメだ、やはり抑えきれないな、この衝動は。」
娼婦2:「どういう事ですか?よく分からないのですが…シャワーに行かないのですか?」
ジャック:「まだ今の状況を理解出来ていないようだな…俺は…お前達が噂をしている切り裂きジャックだ。」
N:(切り裂きジャックと分かった途端に、大人しくなった娼婦…そんな娼婦に気付いたジャックは、酷くつまらなそうにしている。)
ジャック:「なんだ?俺が切り裂きジャックと分かった途端に大人しくなったな、もっと暴れたり、泣き叫んだりしてもいいんだぞ?
俺を楽しませてくれ。
チッ!何も抵抗しないか…まぁいい、抵抗しようがしまいが俺には関係ない。
逃げられない様に、まずは両手足の指から切り落とすか。」
N:(娼婦はもう生きて帰れない事に気付き、諦めている…だが、ジャックにはもはやそんな事は関係ない。
抵抗しない娼婦の、両手足の指を切り落としていく…しかし娼婦は泣き叫びもせず、苦悶の表情を浮かべながらのたうち回っている。)
娼婦2:「あぁぁ…はぁはぁはぁ…」
ジャック:「この感触…そしてその苦悶の表情、やはり堪らない。
ははっ…やはりこの瞬間が最高に興奮する、絶頂してしまいそうだ。
すぐに死んでくれるなよ、もっともっと俺を楽しませ、興奮させてくれ。」
N:(ジャックは次々に娼婦を、刺し、切り裂いていく…しかし娼婦は悲鳴の1つもあげない。
そして数分が経った頃、娼婦は動かなくなってしまった。)
ジャック:「なんだ、もう終わりか。
呆気ないなやはり。
しかし、隣の警官は何も気付かずか…それもそうか。」
N:(ジャックは娼婦の胸部の真ん中にナイフを突き刺し息の根を止めた…その後、ジャックは娼婦の全身の皮を剥ぎ取った挙句、子宮を取り出し持ち帰ったのだった。)
ジャック:「ふふふっ…満月が綺麗に見える夜はダメだな、いつもより興奮してしまう。
さて、捕まる前に姿をくらませるとしようか、次に俺が現れるまで少しだけ待っていろよ、ロンドン。」
N:(また惨劇の一夜が明ける…夜が明ける頃、また1人の人物が犯行現場に現れた、それは…やはりあの店主だった。)
店主:「さて、確認をする為に犯行現場に行くとしますか。
ここだったな確か…はぁ…ここまでする必要があるのかねぇ、私には関係の無い事だが、切り裂きジャック…君はだんだん狂っていっているようだね。
このまま捕まらずに、生涯を終えるのか、それとも、あの結末を迎えてしまうのか…やはり観察対象として最高の素材だな。
とりあえず警察に通報だけして、私も姿をくらませよう。」
N:(切り裂きジャックの事を観察対象といい、最高の素材と言って消えていった店主。
店主が立ち去った後に警察が到着した。
隣に住んでいる警官が何事かと思い、外に出てきた。)
警官:「何かあったのか?朝から騒々しいなぁ。
ん?もしかして…隣なのか?
あっ!おい!何かあったのか!?」
N:(同僚の姿を見つけ声を掛けた警官は何があったのかを聞かされ、衝撃を受けていた。)
警官:「なん…だと…!?隣の家に住んでいたのは、切り裂きジャックだった!?
しかも、昨日の夜にここで犯行に及んでいただと…叫び声も、物音すら1つしなかったのに!
とりあえず、現場を確認させて欲しい…なんだ…これは…こんな事が隣で起こっていたのに、何も気づかなかったのか私は!何かがおかしい…昨日は、確かにコメディ映画を見ながら笑っていたさ、しかし叫び声や争うような物音がすれば気付かないわけが無い。
それが無かったということは、この犠牲者は全く抵抗しなかったのか…何故…
しかし、酷いやられようだ…指を切り落とされ、全身の皮を剥ぎ取られ、挙句に子宮を取り出されているとは。」
N:(あまりにも酷い惨状に警官は、切り裂きジャックに対して怒りや寒気など色んな感情が溢れて来て、吐き気すら覚えるほどだった。
事件現場から少し離れた人混みの中、切り裂きジャックは警察の動きを見つめていた。)
ジャック:「ふふふっ…馬鹿な無能警察共が、俺は痕跡をほとんど残す事をしない、あえて残す痕跡はナイフだけだ。
そこから俺に辿り着いてみろ。」
N:(ジャックはその場から立ち去った。
それから数日後、ある新聞社にジャックから警察に対しての挑戦状が届いたのだった。)
ジャック:「Dear BOSS(親愛なるボスへ)俺は切り裂きジャックと呼ばれている、ジャック・ザ・リッパーだ。
俺は警察には捕まらない。
これからも狩りは続けていく…俺を捕まえてみろ。
犯行はまだまだ続く。」
N:(このような内容の手紙が届いた。
これにより、ロンドンだけではなく、全英が知る事件となった。
切り裂きジャック、またの名を、殺人鬼 ジャック・ザ・リッパー、その名に恐怖する者もいれば、憧れる者も現れだしたのだった。
時を同じくして、警官と店主、そしてジャックが再び動き始めた。)
警官:「娼婦ばかりを狙う切り裂きジャック…とりあえず娼婦を売っている店を総当りで調べて行くか。
もしかすると、切り裂きジャックに辿り着けるヒントが得られるかもしれない。」
N:(警官がある店に足を踏み入れた。
その店は、ジャックが娼婦を買った店だった。)
店主:「はいはい?これは珍しいお客様ですね。
どんなご用件で?まさか警官のあなたが娼婦でも買いに来たのですか?」
警官:「急にすまないね、ある事件について聞き込みをしている所でね。
切り裂きジャック…この名はさすがに知っていると思うのだが?」
店主:「えぇ、もちろん知っていますよ。
街の至る所で噂になっていて、その名を聞かない日は無いですからね。
それで、何を聞きたいのですか?」
警官:「ここ数ヶ月の間に怪しい人物が店に来た事は?」
店主:「怪しい人物ですか…そうですねぇ、毎日毎日、色んなお客様が買いに来るので、分からないですねぇ。」
警官:「そうですか、もし何か思い出したり、怪しい人物が来た時には通報してください。」
店主:「わかりました…あぁ、そういえば、少し思い出したのですが、1人だけ帽子を目深に被り顔を隠していた、紳士的な話し方をするお客様が来た事はありましたね。」
警官:「帽子を目深に、顔を隠しながら紳士的な話し方を…ご協力ありがとう。
それでは、また何かあれば教えてください。」
店主:「えぇ、もちろんですとも。」
N:(店主は警官に切り裂きジャックの情報を渡した…しかしその情報は、嘘の混ざっているものだった。
帽子を目深に被り顔を隠しているのはあっているが、ジャックの普段の話し方は紳士的な話し方では無かったのだ。
警官が去ったその店に、ジャックが再び現れた。)
ジャック:「久しぶりだな店主よ。」
店主:「おぉ、これはこれは、今回で3度目になりますね、私の店をご贔屓にして頂きありがとうございます。
今日は娼婦の子達は皆休暇を取っていてね、残念ながら店には私しか居ない。
少し話しませんか?」
ジャック:「店主だけしか居ないのか、やはり切り裂きジャックの影響か…いつ現れるか分からない切り裂きジャックに怯え、身を隠しているということか。」
店主:「えぇ、そうですね。
私の店の子達も切り裂きジャックに怯え身を隠していますよ。
ですので私も暇で仕方ないのでね、話し相手が欲しかったのですよ。
先程も警官が切り裂きジャックについて聞き込みをしに来ていてね。」
ジャック:「ほぅ…警察も必死に切り裂きジャックを捕まえようと動いているわけだ。
それもそうか、あんな挑戦状が届けば警察も、警察の威信にかけて必ず逮捕しようと動くだろうな。
あの時の警察の反応は実に笑えたものだ。」
店主:「あの挑戦状はなかなか良かったと思いますけどね、警察に対しての挑発効果は抜群だったし、何より全英が切り裂きジャックに恐怖したかと思えば、憧れ者まで現れた。
実は私も切り裂きジャックの事には、凄く興味がありましてね。」
ジャック:「店主も切り裂きジャックに興味があるのか、それは何故だ?」
店主:「何故と言われてもねぇ、単純に興味があるのですよ、切り裂きジャックがこのまま捕まるのか、捕まらずに逃げ切るのか、実に興味がある。お客さんは切り裂きジャックに興味があるのかい?」
ジャック:「俺は特に切り裂きジャックに興味は無いさ。
それに、最近では切り裂きジャックと呼ばれているらしいが、奴は自分の事を、殺人鬼 ジャック・ザ・リッパーと呼んでるらしいな。」
店主:「殺人鬼 ジャック・ザ・リッパー…お客さん、興味が無いと言う割には詳しいですね。
今その事を知っているのは、ジャック・ザ・リッパーが現れ出した頃から知っている者だけのはずですよ。」
ジャック:「ん?…あぁ、俺の住んでいる近くでも切り裂きジャックが現れた事があってたな、その時に痕跡をほとんど残さないはずの、切り裂きジャックが警察に書き置きを残してたという話を聞いてな。」
店主:「なるほど…そうですか。
切り裂きジャックとは一体どの様な人物でしょうねぇ。
お客さんの予想を聞かせてくれないかい?」
ジャック:「そうだな、俺が思うに初めの頃は娼婦に対しての恨みからの犯行だっただろうが、いつの頃からか、自分の欲を、快楽を満たす為だけに犠牲者を増やしている、猟奇的殺人鬼だろう。」
店主:「ほぅ…お客さんはやはり切り裂きジャックについて常日頃、色んなことを考えているようだね。
私はそこまで考えが思い至らなかったよ。」
ジャック:「そうか…さて、もう話はいいだろう。用事を思い出したので、俺はこれで失礼させてもらう。」
店主:「そうですか、それではお気を付けてお帰りください。
あぁ、それと私から1つだけ…これからも私は観察者であり傍観者を貫いて行くのでお気になさらずに。」
N:(店主とジャックの話が終わった。
ジャックは店主が最後に言った言葉の意味が分からないままだったが、ある事に気が付いた…それは、店主には自分が殺人鬼 ジャック・ザ・リッパーである事がバレているということだった。
そして、ジャックは自分の中で1つの事を決めた。)
ジャック:「あの店主、俺の正体に気付いているな。
このままでは身動きを取りにくくなってしまうな、少しの間、身を潜めておくか。
いつの日か、またこの街に戻ってこよう…そしてこのロンドンをまた恐怖の渦に陥れてやる。
それまで少しさらばだ。
俺の名は、切り裂きジャック…いいや…
殺人鬼 ジャック・ザ・リッパーだ。」