表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
∽連環∽ - catenation -  作者: 之 貫紀
第1章 ハティ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/36

援軍

(カウン:多数の冒険者が森に侵入)


 ご飯を食べておえて、進もうか泊まろうか考えていたとき、カウンから連絡が来た。


(へ?)

(カウン:推定120)

(120?! 近いの?)

(カウン:発見は後方のチーム。そちらまで2時間)

(わかった。見つからないように気をつけて)

(カウン:了解)


「どうした?」


 突然様子の変わったアルダに、心配するようにクレアが問いかけた。


「いえ、なんか、冒険者の人が、大勢近づいて来ているらしいです」

「なに? 討伐依頼は取り下げられたはずだろう?」

「そうなんですけど……この人数だと、ソーナスのDランク以上の冒険者はほとんど来てるみたいですよ」

「依頼もなしでか?」


 クレアは戦力を売る職業のうち、軍と関わり合いの深い傭兵のことは知っていても、冒険者のことはよく知らなかったので、同じようなものだと思っていた。

しかし、これが傭兵なら、どんな理由があろうとも、決して報酬なしで行動したりはしない。自分達の命がかかっているのだから当然だ。

冒険者も命がかかっているところは同じはずだが、と首をひねった。


「冒険者って、みんなちょっとひねくれたところがあるんですよ。あと恥ずかしいから誰も言わないけれど、多かれ少なかれ『正義の味方』に憧れてる人も多いんです。もしかしたらクレア様が一人で出たと聞いて、みんながふざけるなと奮起したのかも」

「それはまた、暑苦しい連中だな」


 クレアはそう言って笑ったが、まんざらでもなさそうだった。


「しかし、共闘するわけにはいかんだろう」


 アルダ達のプランに、派手な戦闘エフェクトはあっても実際の戦闘はない。近くで見ている者がいるのはまずかった。


「もちろんです。距離は2時間ほど後方だそうですから、これから17番の方へ出て、丁度、彼らがこの辺りに来る頃を見計らって、派手に仕掛けましょう」


 クレアはアルダの言葉に頷くと、すぐに準備を整えた。

 

 アルダは周辺の制圧と、弱い魔物の追い立てをレッドキャップに依頼して、全チームのフォレストウルフを、野営地の少し奧に集めておいた。

他の森チームは、こちらに合わせてうまくやってくれるだろう。


 そうして、2時間後、アルダとクレアは、野営地から1カミルと少し離れた場所にいた。


「この向こう側って、人はいませんよね?」


 目の前には果てしなく広がる、暗く深い森があった。


「ああ、遺跡山から先は本格的に暗黒の森だ。まさに、モル・タウレと呼ぶにふさわしい場所だから、人は誰もいない。もしいたとしても、すでに魔物の腹の中だろう」

「それを聞いて安心しました」


 そう言って、アルダは、パンデモニウムルプスを実体化した。

一瞬だけ、強大な存在感が膨れ上がる。


「おおっ!?」


 クレアはちょこんと座った大柄で毛並みの良い『破壊と混沌の使者』を見ると、思わず声を上げた。

怖がられたかな、と思ったアルダは、大丈夫だと言おうとしたが、クレアは目をきらきらさせて、思わぬ事を言い出した。


「これ、なでても大丈夫かな?」

「は?」

「やはりだめか?」

「い、いえ、大丈夫ですけど……」


 そう聞いたクレアは抱きつきかねない勢いで近寄ると、現状を忘れたように、頭をなでたり、顎の下を掻いたりした。クレアは犬派だったのだ。

パンデモニウムルプスは、まるで殉教者のような顔をして、クレアにその身を委ねていた。


「おおー」

「クレア様、犬がお好きなんですか?」

「うん。子供の頃は大型犬が欲しくてな。いろいろ事情があって、あきらめたのだが……やはり可愛いな! こいつはとても頭が良さそうだし。寡聞にして知らないのだが、これはなんという魔物だ?」


 第4位階の魔物の名前など言っていいものかどうか迷ったが、今更かと思い直した。


「パンデモニウムルプスといいます」

「聞いたことがないな。どこか遠くの魔物なのか?」

「まあ、遠いと言えば遠いですね」


 悪魔の集う館は、たぶん近くにはないよな、とアルダは思った。


「おー、パルプスは可愛いなあ」


クレアは頬をこすりつけて喜んでいる。


「パルプス?」

「おお、すまん。名前はなんというのだ?」

「い、いえ、まだ名前はありませんが……」

「そうか! じゃあ、お前はこれからパルプスだ!」


 クレアのネーミングセンスも少し……いや、かなり残念だったが、当の本人(ルプス)は、名前が付けられたことが嬉しかったのか、アルダの方に『いい? それでいい?』と訴えかけるような目を向けていた。


「まあ、いいですけど」

「わふっ!」


 パルプスは名付け親のクレアの顔を嬉しそうに舐めた。


(カウン:冒険者 野営地に到着)


 とうとう冒険者集団は、野営地付近までやってきたようだ。

アルダは、クレアと戯れているパルプスに向かって、詳しい段取りを説明した。


「まずは、中くらいの雷を落として。それからいくつか単体の雷を落とした後、合図をしたら広範囲殲滅魔法。いける?」

「がうっ」


「じゃ、始めよう」


 アルダがそういうと、赤く色づき始めた雲が切れ切れと浮かぶ快晴の空に、突然黒い雲が沸き起こった。

続いて、一条の雷が大きな音を立てて空間を引き裂き、ドラマの幕開けを告げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ