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1話 よし、ダンジョンへ行こう



 学校へ入学して一か月が経てば大体のことはわかる。

 誰がカーストの一番かとか、誰々の性格はどんなだとかイメージが徐々に作られていく。


「ぼっちのほうがましなのか」


 友達の輪に入っていけなかった民が徐々に姿を見せる。いわゆるぼっち。俗にいうぼっち。そんなに言わなくてもわかると思うが、現実は意外にわからない。というより、認めたくない。

 この学校は特殊なので、一応ぼっちは生み出さないことになっている。

 そうこの学校は特殊なのである。


「よし、ダンジョンだ!」


 そうそう隣で言う熱血な男のように。


「何が、よしダンジョンだ、だよ」

「よし、ダンジョンだ」

「おぉう」


 熱血少年こと杉白友則( すぎしろとものり)。身長背が高い。筋肉もほどよく良い。黒紙は短めでツンツンである。よくいる熱血少年である。


「さぁ、いくぞ! ダンジョンへ」

「どんだけダンジョン好きなの」


 あぁ、自己紹介を忘れていた。僕の名前は黒杉朝樹(くろすぎあさき)。杉白のいちおう友達である。

 ダ・ジョン学園一年生で先月入学したばかりのほかほかの新入生である。見た目は普通である。これは強調しておく見た目は普通である。よくラノベで出来る主人公像でいいだろう。


「ダンジョンへ行くぞ!」

「えっと」

「とりあえず、ダンジョン」

「あの」

「ダンジョン」


 いちおう友達はダンジョンしか言わないらしい。


「ダンジョン以外言葉を失ったのか」

「ダンジョンだダンジョン」

「語尾までダンジョンになってるぞ」


 それで場面変わってダンジョン。

 決して語尾が伝染したわけではないけど、ここはダンジョン。


「ダンジョンの中は、横は五人ぐらい通れる広さで、外壁はレンガ造りでできている。普通のダンジョンである」

「いったい誰に説明してるんだ。もうダンジョンだぞダンジョン」

「いや、説明なくダンジョンに連れてかれた人たち向けに」

「ほどよく明るいのはやっぱり良いダンジョンだな」

「みんな初ダンジョンだろうが、いったいなにダンジョン経験者みたいなことを言ってるんだ」


 ダンジョンの中は薄暗く、わずかな光源がある。変な火であったり、光るキノコであったり、ある程度の明るさは確保されている。


「天気は快晴、気持ちの良い温度」


 息を大きく吸い込んでみてもカビ臭さもない無味無臭だ。


「このダンジョンは空がないのに何言ってるんだ」

「いやもっとじめじめしてると思ったんだよ」

「たしかに防具を着ていても熱くないしほどよい感じだな」

「さすが、初心者ダンジョンだけなことはある。うーん、歩きやすいし行動しやすい文句は何もないな」

「どうした気が緩んでるぞ」


 杉白の格好は俗にいう鎧というのをまとっている。ちょっとのことでは切られることはない。もちろん、殴られたら衝撃で痛いのだが。


「いや、こんなところでモンスターが出てくるんだと思うと不思議で」

「ダンジョンにモンスターは普通だろう」


 杉白は慎重に進む。モンスターガいつ出てくるかわからない。といっても一本道であり、ずっと前に進んでいくためわかりやすい。


「それよりも、朝樹は余裕だな」


 杉白は前を見ながら話しかけてくる。ダンジョンに侵入してから十分もたっていない。

 黄土色をした壁から声が反響してくる。周りは静かだ。


「余裕なわけあるか、びくびくしてるぞ」

「そうなのか、わかりにくいな」

「そういうお前も、ずいぶん気楽に構えてるじゃないか」

「そんなことはないぞ。モンスターのことを警戒しながら歩いてるからな。朝樹はすごい気楽についてきてるじゃないか」

「失礼な。これでもいちおうは注意してる注意」

「おやつは三百円までか?」


 ポケットからクッキーを取り出してるところを指さされる。


「いや、これは、というか前向きながら見えてるのか。いつ後ろに目玉ができるスキルでも覚えたんだ」

「もぞもぞしていたらわかるだろ」

「せっかく音を立てずに食べてたのに。努力が水の泡に」


 そういいながらポケットからクッキーをひとつ、口の中に入れる。軽快な音を立てながら塩味がいい感じに国の中に広がる。


「努力する場所が違うだろう」


 杉白の顔は前を向いてるためわからないが、あきれてため息をついている。


「「ぎゃーーーぎゃっぎゃやーーー」」


「うぉ、杉白。ついに頭おかしくなったか」


「「かっかかかかかーーーーー」」


「わかったわかった。クッキーやるから、我慢しろ」


「「うふぉふぉふぉふぉーーーーーー」」


「そ、そんなに喜ばなくても」


 杉白が立ち止まる。


「いや、どうみても俺じゃないだろ」

「え、違うのか」


 杉白が初めてこちらに振り向くと同時に、自分の愛用の大剣を鞘からゆっくりと出していく。


「こ、ころさないでくれー」


「問答無用」


 杉白が剣を振り上げて、一気に走り抜ける。


「「ぎゃーーーーーーーーー」」


 悲鳴が聞こえた。


 目の前では真っ二つに切られてしまった物体がある。


「そう、ここはダンジョンである。モンスターが常に出てくるダンジョン。常に危険と隣り合わせのダンジョンである」


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