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93 忍チューバー再始動の巻き


 睡眠学習で韓国のその後を聞いていた半荘は、ようやく目を覚ますと膝の上に乗る藤子に質問する。


「つつつ……それで国際司法裁判所はどうなったんだ?」


「まだ韓国からは、話が来てないみたいよ」


 半荘は竹島を売る対価として日本政府に、韓国から提訴された場合は必ず受ける事を提示していた。


 これも藤子の策略。


 民間人とはいえ、武力で奪い取ったのだから後々揉めるのは必至。

 ならば、国際司法裁判所で決着をつけさせる道筋を作ったのだ。


 ただし、現在は韓国大統領不在と、日本の用意した証拠より強い証拠を集める事に時間が掛かるので、提訴するまでには、一、二年は要すると藤子は見ている。


「なるほど。まぁここからは俺の仕事じゃないし、あとは知らね~」


「そうでもないわよ。半ちゃんが言い出したんだから提訴を断らないように、政府に圧力を掛けなきゃ。あと、クジラ裁判みたいな情けない結果にさせないために、新しい証拠も探すように言わなきゃね」


「え~! 不死子さんの計画じゃん。お得意のハニートラップで解決してくれよ」


 藤子は、責任を押し付けようとする半荘の頬を撫でて、にっこり微笑む。


「そう言うと思って、私も表に出る手筈(てはず)は整えていたわよ」


「へ??」


「半ちゃんの専属マネージャーとなりました!」


「な、な、な……」


 藤子の唐突な決定事項に、半荘は口をパクパクするだけで声が出ない。


「あ! あと、半ちゃんの資産は全て没収。製作会社『ねっこ』として、社長も兼ねるからねん」


「ふ、ふ、ふ……」


 まだ声の出ない半荘は、腹にありったけの力を込めて叫ぶ。


「ふざけるな!」


「ふざけてなんかいないわよ~」


「なんで俺の金を勝手に……俺はこの金を元に、『根』を引退しようと思っていたのに~」


「あらん。そんな事を考えてたの? 悪い子ね~……残念だけど、我が『根』には、引退制度は無いのよ。生まれた時点で『根』の構成員。死ぬまで『根』の構成員よ~」


「しょ、職業選択のじにゅ~~~」


 半荘は「職業選択の自由」と最後まで言えずに、藤子に頬を伸ばされてしまった。


いはひいはひ(いたいいたい)


「ちなみに、脱退者は即ち死。これも前に教えたのに、忘れているのかしらん? どうしても抜けたいなら、死ぬまで楽しませてもらうわ~。それでもいいなら、抜けてみる??」


 ゆりかごから墓場まで……

 職業選択の自由は、「根」には一切ないと脅されて、半荘は諦めるしかない。


「やめるのやめます……」


「いい子ね~。よしよし。ちゅちゅちゅ~」


 「根」に残る事になった半荘は、頬にキスされても押し返す気力も無いようだ。


「でも、俺の金……」


「半ちゃんのお金じゃないでしょ? 『根』のお金よ。人気Vチューバーになったのも、私が根回ししてあげたからなんだからね」


 忍チューバーの火付け役は、藤子で間違いない。

 噛みそうな名前の女性歌手のアカウントを乗っ取って呟き、一気に拡散させた。

 動画の内容事態が面白かったので、女性歌手はそれを黙認。

 いや、忍チューバーの第一発見者という称号を得て、皆からの称賛の声をもらった事もあり、言い出せないでいる。


 ジャスティスのスマホも次の日にハックし、忍チューバーの動画をVチューブのトップにしたので、ジャスティスも簡単に籠絡(ろうらく)

 もしもジャスティスの反応が無かったら、サブリミナル効果のある動画を使う予定だったらしいが、今回は出番が無かったようだ。


「お金の管理はしてあげるし、半ちゃんの給料も高くするんだから、そう悪い話じゃないでしょ? どうせ使い方もわからないんだからね」


「つ、使い方ぐらいわかる!」


「そ~う? 高い買い物なんて、クルーザーぐらいだったじゃない。あとは倹約倹約……もっと派手に使ってよかったのよ?」


「うっ……」


 半荘の倹約振りは病的。

 何を買うにしても一番安い物を買うし、クーポンを使いまくりポイントは貯めまくり。

 ホテル暮らしも、かなり割り引かれた所にしか泊まっていなかった。

 クルーザーを買う時も、藤子からの命令だったので、血を吐く思いで指定のクルーザーを買っていた。


「無駄に税金も取られてるんだから、もったいないじゃな~い。まぁ決定事項だから、(くつがえ)らないんだけどね~」


「俺の平穏が……」


 忍チューバ―として、初めての自由を満喫していた半荘は、心底落胆する。

 その項垂(うなだ)れる半荘の膝からようやく降りた藤子は、半荘の(あご)をクイッと上げて見つめる。


「ちゃんと管理してあげるから任せなさ~い」


「う、うぅぅ……」


 ブチュ~~~!


 泣き崩れそうな半荘に、キスをする藤子。


「う~~~!!」


 藤子の怪力で口を塞がれた半荘は叫ぶ事も許されない。


 キュインキュインキュイン ゴーーー スポンッ!!


 そうして、キスとは思えない音を出しながら半荘とのキスを堪能した藤子。

 舌舐めずりをしながら半荘から離れて振り返る。


「さあ、半ちゃんのマネジメントに就く報告も終わったし、これからバリバリ働いてもらうわよ~!」


「ゲホッゲホッ。……働く??」


「陛下を見守るのもお金が掛かるのよ。テレビ局や講演のオファーも多いし、キュリーちゃんにもお礼を言いに行かないとね!」


「はい??」


「そういえば、最近、再生回数も落ちてるし、今度はどこかの紛争地で暴れてもらおうかしら? あ、北方領土の組合の人からもオファーがあるから、サクッと、取り返しちゃいましょう! きっと陛下もお喜びになるわよ~」


「はあ!!??」


 こうして、マネージャー三根藤子に仕事を詰められた半荘は、粛々と「忍チューバー」と「根」の仕事をこなし、日本中……いや、世界中を飛び回って騒動を起こしては広告収入を荒稼ぎするのであった。





                おしまい


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