表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/94

03 忍チューバーの苦悩の巻き


 ザ~……ザ~……


「はぁ……」


 ああ。そうだ。

 忍チューバーの件はわかってくれたな。


 じゃあ次は、俺が日本海沖でボロ船に乗って、波に揺られてため息を吐いている件だ。


 動画をアップして、トップランカーになったと言っただろ?

 つまり、広告収入で金もいっぱい手に入ったんだが、人気もいっぱい手に入ったんだ。


 そうなるとどうなるか……


 俺も馬鹿じゃない。

 忍び装束に身を包んで顔を隠して撮影はしていたんだ。

 まぁ結果論だけどな。

 別に意図して忍び装束を着ていたわけではないんだが、そのおかげで顔を指されずに静かに暮らしていたんだ。


 だけどネットって怖いね。

 撮影場所を特定し、俺に辿り着いた奴がチラホラ現れて、住んでるボロアパートにまで現れたんだ。


 そうなったら顔も(さら)され、過去まで晒されるんだぜ。


 俺の事を無視していた学校の奴等も、新聞配達の社長も、俺より先にテレビに出ていたよ。


 学校では、ある事がきっかけでボッチだったのに、俺にはこんなに友達がいたんだ~って、笑ったよ。

 社長なんて、忍チューバーは俺が育てたんだとか、俺が一度見せた新聞手裏剣をマネして失敗してやがった。


 だから俺は、次の更新で、真実を語ってあげたよ。


「名前も知らない奴等が俺の友達なんだ~。社長はケチで給料上げてくれなかった~」


 なんてな。

 詳しく説明はしなかったけど、そいつら全員釣るし上げられて、かわいそうな事をしたかもな。

 まぁ俺の人生で、この先出会う事のない奴等の事を心配してもしょうがない。



 俺も目の前の事で忙しかったからな。



 壁走りの術が危険だとか、火遁(かとん)の術が危険だとか……


 子供を守る保護者の団体と戦っていたからな。


 俺の動画には、全てテロップに「プロの忍者がやっているのでマネをすると死の危険があります」と書いていたのだが、マネするガキが続出していたんだ。

 それなのに、連日ボロアパートの前で「やめろやめろ」と言われたら、寝るのもままならない。


 さらに俺の動画が、トリック映像だと騒ぐ者まで現れてな。

 だからわざわざ人を雇って、トリックっぽい映像を作ったら、大炎上だ。


 今まで信じて見ていた者まで、ボロアパートまで押し掛けて来て、俺は大屋さんに追い出されたってわけだ。


 それから家探しで手間取っていたら、更新がなかなかできなくてな。

 その間に、事態は転回していったよ。


 トリック映像通りやっても、俺と同じ動きにならないからと、肯定派と否定派の大激論。

 俺の動画を楽しみにしている外国人による日本バッシング。

 お前達がつまらない事で騒ぐから、忍チューバーは消えたんだとかな。


 俺の知らないところで、俺の知らない人が、俺のために戦ってくれていたんだ。

 あとで聞いて、グッと来るところがあったな。



 その間、俺は何をしていたか?


 もちろん俺も戦っていたんだ。


 不動産屋と……



 都会は人が多すぎるからパスして地方のホテルに泊まり、家探しをしていたのだが、俺が忍チューバーと知ると、賃貸は全滅だ。

 マンションも購入できないし、一軒家も便利な場所は全滅。

 最終的には、子供の頃に住んでいたようなポツンと一軒家を買う事となったよ。


 でもな、電波が入らないんだ。


 このご時世に、ライフラインがひとつも繋がってないんだ。

 動画の広告収入で暮らしている俺にとって、死活問題だ。


 だから現住所をここに置いて、旅をしながら点々と活動しようとしたら、行く先々で囲まれてしまって活動もままならない。

 また現住所も晒されてしまって人が集まって来る。


 聖地巡業ってなんだ?

 俺は最近ここに住み始めたんだぞ?


 そんなうるさい生活が嫌になって、静かな場所に行きたいと思い、海を眺めていたんだ。


 無人島を買えれば……


 まぁいくら金があっても、無人島は現実的ではない。


 船の上で生活すればいいんだと考えたんだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ