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22 基地の探索の巻き


「あ! 待て! もう一本動画をアップしたいんだ~!!」


 半荘(はんちゃん)の叫びは届かず、SOSの動画をアップした直後、Wi-Fiはぷつりと切れてしまった。



 時は少し戻り、韓国人を乗せた船を見送った半荘は、いそいそと動き回っていた。


 まずは通信の確保。

 Wi-Fiが飛んでいる事はわかったが、パスワードが無いと使えない。

 幸い、昨夜基地の中をこっそり調査して当たりを付けていたので、兵士の机の中からメモを拝借してWi-Fiを繋ぐ。


 次は撮影場所。

 選んだ場所は、岩肌に「韓国」と掘られた場所。

 そこでなら、見る人が見たらすぐに竹島に居ると確証を持ってくれるはずだと選んだ。

 予想通り、日本政府には伝わってくれたのだが……



「はぁ~~」


 半荘は深いため息を吐く。


「あ~あ。俺の無実の証拠がアップできなかった……」


 軍服の男達と最後の撮影時に、半荘は動画を撮影していた。

 そこで半荘が「竹島、ばんざ~い!」と叫んだものだから、軍服の男達に撃たれてしまったのだが、撮影は続いていた。

 半荘が確認したところ、アングルは悪いが、一人の男が先に発砲した証拠は写っていた。

 さらに大勢の男達から撃たれるシーンも、横からのアングルでバッチリ写っていたので、正当防衛の証拠にはなると考えていたのだ。


 SOS動画と共に証拠の動画もアップしていれば、韓国側も思い切った行動が取れず、難無く海上自衛隊が助けに来てくれたのかもしれないが……

 そんな事をすれば、韓国は領土を取り戻すべく、すぐに海軍を差し向けていたかもしれないし、日本も自国民を見殺しにできず、すぐに海自の艦隊を出して戦争に突入していたかもしれない……


 だが、韓国の迅速な行動で、最悪の事態は乗り切れたのだろう。

 もちろん両国内は荒れに荒れているが、そんな事を知る術も断たれた半荘であった。


「終わった事は仕方がない……助けが来るのを待つか~」


 半荘は帰還の期待を持ち、基地に向かって歩くのであった。



 そうして基地に着くと、内部の確認。

 生きて行く上には、食料と水が必要になる。

 調べていなかった部屋の扉を適当に開けて、倉庫を見付けると、大量の備蓄があったから早くも解決。

 大所帯の軍隊とは違い、半荘は一人なので、何ヵ月も食料は困らないだろう。


 基地内の電気もライフラインのひとつなので、確認しておく必要がある。

 そこは当たりが付いていたので、発電機の使い方を図で見て覚え、使ってみると何も問題無かったので、こちらも解決と言っていい。

 ただ、無駄な電力消費の削減のために、大事そうでない場所の電気は切っていく。


 あとは暇潰しになる物を片っ端から掻き集め、機械類が多数配置してある通信室にて食事をとる。


「うん! 軍食って初めて食べたけど、意外といけるな。でも、韓国料理とかにしてくれたら、旅行気分が味わえたのに」


 レトルト食品に少し文句を言う半荘であったが、美味しく食べながら雑誌に手を伸ばす。


「まったく読めない……あっちの単行本は、日本の漫画だけど、ハングルに訳されていたしな~……お! これは!!」


 突如、半荘は「フゴフゴ」言いながら雑誌を読み始める。

 その雑誌には、韓国美人のあられもない姿が載っていたからだ。

 こんな隔離された島の上ならば、男の性を満たす物は必要なのかもしれない……



 そうして食事も終わり、「フゴフゴ」雑誌を読み(ふけ)っていると、半荘はバッと振り返る。


「何か音がした……」


 半荘の耳は特別製。

 訓練の賜物で、どんなに小さな呟きでも聞き取れる。

 半荘の父親が、隣の部屋で訓練メニューを呟いて「誰でもなれる忍者入門」がバレかけたほどだ。


「……こっちか?」


 微かに衣擦れの音が聞こえる方向に半荘は歩き、扉の前で立ち止まる。


「う~ん……開けづらい」


 その扉は、女子トイレに繋がる扉。

 半荘は基地の扉は全て開けたのだが、女子トイレだけは入る気が起きなかったのだ。


「だ、誰もいないから、ちょっとぐらい見てもいいよな?」


 女に免疫の無い半荘は、恐る恐る扉を開けて隙間から中を確認するのだが……


『きゃ~~~!!』


「ごめんなさ~~~い!!」


 突然、女の悲鳴が聞こえ、半荘は女子トイレの扉を慌てて閉めるのであった。


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