21 ネットの民
忍チューバーが救出を求める動画を見たネットの民は、沸き上がる。
「すげ~~~!」
「忍チューバーがたった一人で、竹島を取り返してくれたぞ!」
「日本の英雄だ~~~!」
「英雄と言うより、ランボーじゃね?」
「確かに……。映画化きぼんぬ」
「全日本が泣いた(笑)」
浮かれる日本のネットの民。
しかし、浮かれている者とは別に、心配する声も多数ある。
「これってヤバくない?」
「そうそう。国際問題でしょ」
「その前に、忍チューバーは帰って来れるの?」
「海自の船なら帰って来れるだろうけど……」
「韓国艦隊が多数押し寄せるから、近付けないかも?」
「それどころか、戦争に突入するかも……」
最悪な予想は、ネットの中で議論となるが、その声すら掻き消す声が割り込んで来る。
「忍チューバー、泥棒!」
「死ね、忍チューバー!」
「殺す!」
韓国のネットの民だ。
流暢な書き込みもあるが、大多数は片言の日本語とハングル文字なので、日本のネットの民は苛立つ。
「何書いてるかわからないんですけど~(笑)」
「邪魔なんで出てってくださ~い」
「いまの殺害予告は、警察に通報しました」
「て言うか、重いんだよ!」
日本のネットの民が文句を言っても聞く耳持たず。
忍チューバーと名の付くサイトは次々と炎上し、忍チューバーと書き込まれたサイトも標的となって、日本のネットの民は行き場を失う。
だが、ネットの民は、日本人にしかわからない方法で集合し始めた。
「『やいばのこころ』開店で~す」
「『偲び茶屋』寄ってらっしゃ~い」
「『九一』もやってるよ~」
「『5203チューバー応援サイト』。これならどうだ!」
暗号にも似たタイトルは、すぐに日本人に伝わり、そこで熱く語り合う。
だが、それでも韓国のネットの民は見付けては集まり、日本のネットの民は新しいサイトを作っては熱く語る。
そうして夜になり、韓国の門大統領の発表が執り行われると、事態が急転する。
「あの人が虐殺……?」
「テロリストって、嘘でしょ?」
困惑するネットの民。
「ちょ……そんなわけないだろ!」
「何かの間違いだろ?」
信じられないネットの民。
「あの身体能力なら、考えられる」
「そうそう。あの人なら軍人すら敵にならないな」
持論を述べるネットの民。
「いつかやると思ってたんだよね~」
「いいぞ、あの人! やれやれ~」
煽るネットの民。
「冷静になれ!」
「あの人が、そんな事するわけないだろ!」
擁護するネットの民。
「仮に殺したとしても、日本の領土に不法占拠しているわけだし、問題なくね?」
「だよね? てか、あの人が自動小銃なんて使う?」
冷静に分析するネットの民。
「そんな虐殺するなんて、どうやるの?」
「出港の前から計画してないとできないし、自動小銃なんて日本で手に入らない」
「奪って撃った可能性はあるけど、どっちみち銃を向けるなら、韓国兵が先じゃね?」
「正当防衛の可能性が高いな」
しだいに門大統領の発言に疑惑を向けるネットの民。
「韓国でしょ? 捏造に決まってる」
「ファンタジーが好きな国だもんね」
「逆に受け取ると、誰も殺してないって事だね」
「誰一人殺さずに占拠するなんて、それはそれで凄いな」
「あの人ならできる!!」
「ああ。あの人なら……」
そうして、ネットの民の声はひとつにまとまって行き、重なり合うのであった。
「「「「「がんばれ~~~!!」」」」」