20 マスコミ対応
門大統領の会見を、リアルタイムで見た安保総理大臣含む閣僚は静まり返るが、黙っている場合ではない。
和やかだった会議室は張り詰めた空気に変わり、安保総理の指示が飛ぶ。
「外務大臣! 早急に韓国にいる日本人の安否確認! その後、速やかに帰国させるのだ! 大使館員も随時引き上げさせろ!」
捲し立てる安保総理の言葉に、外務大臣含む官僚は走って会議室から出て行く。
「問題は、忍チューバーが本当に韓国人を殺したかどうかだが……防衛大臣。衛星から確認できないか?」
「いちおうは、竹島周辺の衛星写真は撮っていますが、そこまで鮮明な写真となると……」
「事実確認を急がせろ!」
「はい!」
防衛大臣達も立ち上がったが、まだ話があったので、官僚の一人を走らせて残らせる。
「忍チューバーが殺戮した事が事実であれば、韓国の行動は目を瞑れるが、そうでない場合……」
「あの国は平気で捏造して来る国ですからね……」
「可能性は高い。黙って殺される事を待つのも、政権に痛手を与える」
「と言う事は、救出部隊の派遣となりますか……」
これより、各大臣から案を出させるが、自己責任だと主張する者、冤罪であった場合の対処は必要だと述べる者、韓国の対応を見てから動くべきだと言う者と現れたが、解決策を聞くと押し黙る。
結局は、助けに行く体を取りつつ、傍観して、事が収まったあとに身柄の要求なり、検証なり、反論なりをする方向で落ち着く。
そうしていちおうは話し合いがまとまると、官僚に原稿を用意させて、閣議は解散。
安保総理は官房長官に任せようとしたが、総理が出ない事には収拾がつかないだろうと説得されて、マスコミの前に立った。
「総理! 忍チューバーさんが大量虐殺をしたと言う事は本当でしょうか!?」
「現在、韓国側の発表しか情報がないので、事実確認を急いでおります」
「事実だった場合、どういった対応をとるのでしょうか!?」
「事実でしたら遺憾に思いますが、まだ情報が揃っていないので対応は検討中です」
「では、救出に向かうと言う事ですか!?」
「現在、各所、忍チューバーさんの命を救う最善の策を行動中です」
マスコミ各社は忍チューバーの所業や安否確認を求めるが、話が進まないと感じた一部のマスコミは、違う角度から質問をぶつける。
「門大統領は、竹島を我が国と発言していましたが、総理のお考えは!?」
「竹島は、日本固有の領土です。発言には、大変遺憾に思っています。撤回を求めたい所存です」
「しかし忍チューバーさんが、あの場所で裁かれると言うのなら、主権を認めてしまう事となってしまいますが、どのようなお考えをお持ちでしょうか!?」
「もちろん日本国民が日本の領土で殺害をされた場合、韓国にはそれなりの処置を行います」
「それなりの処置とは!?」
「事が終わるまでは、伏せさせていただきます。では、私はこれで」
「総理! 忍チューバーさんは大丈夫なのですか~!?」
進展なしの安保総理の説明を受けて、マスコミは落胆し、各社これから起こるであろう予想の範囲内を放送するしかできないのであった。