表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/94

16 ワイドショー


 忍チューバーが遭難して一週間が過ぎた頃、日本では、連日ワイドショーで心配する放送がなされている。


 その日のお昼のワイドショーでも、忍チューバーの安否を報じていた。


「忍チューバーさん……心配ですね。では、次のニュースです。韓国では門大統領の支持率が低下して……」


 女優からワイドショーに抜擢された女性、川嶋海香が、次のニュースを読み上げている途中で、「ピピピピ」とニュース速報が入った。


「えっ……あ! 忍チューバーさんの生存が確認されま…した……はい?」


 そのニュース速報は驚くような内容だったため、海香は画面を二度見して固まり、ディレクターから原稿を渡されて我に返る。


「あ……えっと……忍チューバーこと服部半荘(はんちゃん)さんは、Vチューブを更新しました。その場所とは、島根県沖の竹島のようです……あ、映像があるそうです。そちらをお送りします」


 海香の歯切れの悪い振りで、画面が切り替わる。



 忍チューバーの、いつもの始まり方……

 誰も写っていない場所に突如煙が上がり、その煙が晴れると、ポーズを決めた半荘のどなりが聞こえる。


「忍チューバー服部半荘。ただいま参上! ニンニン」


 いつもなら、これから行う忍術の発表なのだが、今日はいつもと違う。

 固定していたカメラを掴みに移動し、顔のアップで語り始めた。


「皆の者~? 元気だったか~? ……元気そうだな」


 返事は聞こえないので、演技をしているようだ。


「まずは、謝罪をさせてくれ。毎日動画を更新すると言ったのに、更新できなかった事をお詫びする。これには深~い理由があるのだ」


 半荘は歩きながら説明する。


「実はクルーザーが沈没して漂流していたんだ。ほら、その証拠に、まだ海の近くにいるだろ?」


 映像は海の絵に切り替わり、しばらくして半荘の顔に変わる。


「さて、拙者が何処にいるかの話なんだが、皆もビックリする場所だ。当てられた人には……って、前振りはいっか。では、拙者がいる場所は、ジャジャジャ~ン!」


 半荘のテンション高く写された映像には、韓国と掘られた岩肌が写されていた。


「これ見てどこかわからないかな~? 竹島だぜ? 正真正銘、竹島! どう? 海に浮かぶ島に、あの建物……見覚えないかな~?」


 カメラは岩肌に続いて海を写し、岩山の上に建つ建物が写し出された。


「信じてもらえたかな? それでお願いなんですが……」


 そう言いながらカメラはスタンドに固定され、そのあとには正座をする半荘が写る。


「不可抗力で、韓国人を追い出してしまいました! どうか日本政府の皆さん……迎えに来てくださ~~~い!!」


 土下座をして叫ぶ半荘を見て、日本に住む者はこう思ったらしい。


「「「「「「何してんの~~~!!」」」」」



 映像の戻ったスタジオは沈黙が続き、あわや放送事故になり掛けた頃、「ハッ」とした海香が口を開く。


「し、CMです……」


 お茶の間のテレビが、ワイドショーからCMに切り替わると、スタジオでは音が弾ける。


「何してるんですか何してるんですか何してるんですか!!」


 海香がヒステリックに叫び、その他も悲鳴のような声をあげる中、冷静になった頃に映像がスタジオに切り替わるが、海香は気付かずに呟く。


「これって凄くヤバくないですか……」

「CM終わってる~!」


 掟破りのディレクターの大声で我に返った海香は、カメラにお辞儀をする。


「失礼しました。えっと……忍チューバーさんの生存は喜ばしい事なのですが……あ、次のニュースですね。続いては……」


 この後のニュースは、忍チューバーの生存が報じられたが、竹島の件にはあまり触れないと、各社暗黙の了解がなされるのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ