第一章・第一話 地獄(アビス)から帰ってきた少年
こんなにたくさんの人間を見るのは久しぶりだ。
ガリア王国の港町に降り立ち気おくれを覚える自分に、俺はジーク・トリニティという人間が、ずいぶんと長い間文明というものに無縁だったことを自覚した。
あの大襲来の夜。
俺はミスティの魔法でここガリアに飛ばされた。
でも、俺はすぐに白魔法で傷を治し、船を盗んでミッドガルドへとトンボ返りしたのだ。
そしてオーレリア王都を目指し≪アビス≫に立ち入った。
もちろん、みんなのところへ戻るためだ。
しかし、
(俺は、すぐに前に進めなくなった)
≪アビス≫に徘徊する≪悪魔≫も厄介だったが、それ以上に脅威だったのが≪アビス≫そのものだ。
≪アビス化≫した世界は、従来の生態系を損ない異界化している。
動植物も変質し、毒を有するものも多く、食べ物を探すことにすら苦労した。
特に≪レギオン≫が≪アビス化≫の深刻度合いを六段階に定義した区分けのうち『第四深度』と呼ばれる領域からは、飲める水すらないに等しく、結局、俺の侵攻は『第三深度』でどん詰まったのだ。
俺は『第三深度』に橋頭堡となる基地を作り、何年も『第四深度』に挑み続けたが、補給無しであの領域に跋扈する強力な≪悪魔≫達と戦い続けるのはあまりに無謀だった。
どうするべきか。
何か手段はないか。
そう悩んでいたときだった。
補給のために戻った『第一深度』で、≪レギオン≫の調査団員が今回の大遠征について語っているのを盗み聞いたのは。
これまでも≪レギオン≫はたびたび調査団を≪アビス≫に派遣していたが、今回はその比ではないらしい。
かつてない規模での≪アビス≫再侵攻。
この機を逃す手はないと思った。
俺に決定的に足りないのは『人手』なのだから。
マンパワーさえあれば、『第四深度』に補給線を築くことも出来るだろう。
それは『第六深度』――つまり≪アビス≫最深部に定義されているオーレリア王都への足掛かりになる。
だから俺は戻ってきた。
≪レギオン≫の大遠征に参加し、≪アビス≫を攻略するために。
ソル達の下へ、戻るために。
「ジーク・トリニティさん。それでは徴兵検査を行いますので、こちらへ」
章の作り方がよくわからない・・・!
しかたないのでタイトルに明記しておきます。
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