プロローグ最終話 かくて幕は上がる
オーレリア王国民達を≪悪魔≫の追撃から守るため、たった三人で≪アビス≫に残った≪三本柱≫は、誰一人帰ってこなかった。
彼らに救われたオーレリアの人々は、ウラル大陸の友国ガリアに事の次第を説明。
その庇護をうけることになる。
しかし……その場に≪三本柱≫の寵児ジークの姿はなかった。
オーレリアの報告により、≪アビス化≫の事実はミッドガルドを中心に東西南北に位置する四大陸にも知られることとなる。
各国はすぐに軍隊を編成。
ミッドガルドから海を渡り攻め入ってくる≪悪魔≫への備えを行った。
しかし、≪悪魔≫は訪れなかった。
いや、小規模の襲来はあったが、ミッドガルドで行われたような侵略規模の大襲来は起こらなかったのだ。
また≪アビス≫による世界汚染の速度も、当初に比べて非常に緩やかになっていることが、のちの観測で判明する。
これが≪三本柱≫の成果なのか、あるいは別の理由か、それは判然としなかったが、これは人類にとって好機だった。
この猶予を用い、人類はかつてない脅威に対抗するべく、国を超えた大連合――≪レギオン≫を結成。各国の英雄英傑を一堂に集め、ミッドガルドを奪還する大遠征を計画する。
そして聖グロリア歴671年。≪アビス≫出現から5年の歳月が過ぎた頃、ついにこの大遠征は≪レギオン≫加盟国すべての承認を受け、実行に移されることとなった。
兵力規模、実に100万人。
人類史にかつてない大遠征である。
当然正規軍や傭兵では数が足りず、一般人にも幅広く募集がかけられた。
力自慢、報酬目的、男を上げようとする者、≪レギオン≫の士官学校に進学できる≪特待枠≫を狙う者――
今日も色々な人間が徴兵所に集まっている。
そんな中に、――彼は居た。
五年。
五年の間にその少年は変わり果てていた。
年月相応に大きくなった体を包む装具は血と泥のシミで汚れ、乞食のようにみすぼらしく、黒髪の合間から覗く琥珀の瞳は昏く淀んでいる。
≪三本柱≫の皆に愛された前向きで愛らしい笑顔の面影は、微塵もない。
顔や腕に刻まれた数多の古傷が、この五年で彼が過酷を自身に課してきたことを物語っている。
しかし、それほどに変わり果てても、彼は帰ってきたのだ。
あの日の果たせなかった夢を、果たすために。
そして、≪悪魔≫を一匹残らず――ブチ殺すために。
「≪レギオン≫入隊希望者ですか?」
「――ああ」
「ではお名前をどうぞ」
「……ジーク・トリニティ」
これは≪悪魔≫達に大切な者達を奪われた少年の往く、百鬼羅刹の屍を踏み越えて進む復讐の修羅道を追いかける物語である。
これでプロローグ、ジーク少年の幼少時代の前日譚はおしまいです。
ここからは15歳になったジークが、≪レギオン≫の悪魔狩りとして成りあがっていくストーリーになります。
まあまずは、試験に合格できるのか、ですけどね。
いえまあ、出来なければ話は進まんのですが!w
あともちろんヒロインも登場します!めっちゃクセモノですけど!
でも可愛い子なので楽しみにしていてください。
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