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96 アフターファイブ その5

 


「ちょっと!キミ、キミ!もしかして特殊部隊の人かい!?」



 2014年10月4日20時10分。ソウイチが歓楽街に北の路地から入ろうとすると、夜の店のボーイ風のオジサンが声をかけてきた。


「ええ、いかにも特殊部隊の者ですが……良かった、ここには生存者が居るんですね。」


(まぁ、オレは脱走中だけどな。)


「ダメだよ、ここでそんな物騒なモノを持ち歩いてちゃあ……」


「んん?」


 てっきりこの事件についてのアレコレやらを聞かれると思っていたソウイチは、なんのこっちゃと怪訝そうにオジサンを見つめる。


「あー、やっぱり知らないんだな。兄ちゃんは若いし仕方ないか。」


「どういう事なんだ?」


「ここはな、昔から危険なブツの持ち込みは禁止なんだ。ここを守っているコウコウって神様がそういうルールを作ってな?それを破ると、恐ろしいタタリに見舞われるのさ。だから悪い事は言わねえから、その銃を置いていきな、な?」


「こんな状況だし、オレにもやる事があるから装備を捨てるわけにはいかないぜ?」


 タタリなどとあまりに奇妙な話で武器を寄越せと言ってくる男。恐喝や詐欺ならもっと別のやり方をすると思うが、普通に考えてそれで武装を解除する者は居ないだろう。


「あーあー解るぞ、その顔・その気持ち!オレもな、意地悪で言ってる訳じゃないんだ。何も知らない兄ちゃんがヒデエ目に遭うのを防いでやろうって言ってんのさ。タタリは本物で、反社会組織やチンピラ達が昔っから大勢犠牲になってるんだ。いいか?よく聞くんだ兄ちゃん。」


 ここでズイっと身を乗り出しておじさんは言う。



「ここはな、己の身ひとつで勝負する街なのさ!」



「……わかった。銃火器は置いていくよ。これで良いんだな?」


 ソウイチはおじさんの説得に応じてアサルトライフルや弾薬、その他戦闘用の装備を渡していく。腰の鉄球は別に良いらしく、そのままだ。


 判定基準が謎だが全ての危険物がダメという訳ではないらしい。普通に考えて住人が料理に使う包丁等まで奪う訳にも行かないので、当然と言えば当然かもしれない。


「ふう、賢い兄ちゃんで助かるよ。普段中々信じちゃ貰えねぇから、結構大変なんだよ。タタリを受けたヤツの処理もタダじゃねえしな。」


 ソウイチはおじさんの物言いから本気の安堵を感じて冷や汗をかく。

 実はタタリなんて信じてはいないが、最後の殺し文句が男心をくすぐられて渡しても良いかなーなどと思ってしまっただけなのだ。


 だがおじさんの様子を見るに、それで正解だったようだ。


(だがどんどん状況が悪くなっている気がするぜ。今日まで色々と準備して脱走したのになぁ。)


 予定のルートを通れず、車を失い仲間とハグレて装備もほとんど失った。これではジリ貧どころの話ではない。そして――。


「ううっ……疲れか?それともクスリの効きすぎか?」


 急にめまいがして倒れそうになるのを堪えるソウイチ。すぐに落ち着いたのでこれからの行動を考えながらまわりを見ると、相も変わらず薄緑色の光が街を照らしている。


「とりあえず普通に歩いて抜けて行くか。だが神様ってのも気になるところだな。」


 その時ソウイチの後ろから誰かが走ってくる音が聞こえ、自分の横あたりで止まるとゼエゼエと息を荒げていた。


「はぁはぁ。なんとか、ここまで……ゼェゼェ。ここなら、コウコウ神様なら無事だと思ってたんだ……」


「すみません、そのコウコウ神について教えてもらえませんか?」


 息を切らすスーツ姿のサラリーマン。何か知っているご様子なので少し聞いてみることにした。


「コウコウ神っていうのはこの土地の神様でね。古くからこの界隈を守って下さる神様だよ。実際街は酷い有様だけどここは無事だろう?」


「うーん、それが不思議なんですよね。」


「君ぐらいのトシじゃあ解らないだろうな。この歓楽街が平和なのは神様のお陰なんだよ。武器の持ち込み禁止令もその一環さ。」


「そんなに凄いのか。いまいちピンと来ないなぁ。」


「なんならお参りしておくと良いよ。この先に神社があるからさ!」


「ありがとう、さっそく行ってみるよ。」


 ソウイチはサラリーマンと別れて夜の歓楽街を歩く。このまま公園を目指しても良いが、武器がないのは心もとない。本当に凄い神様がいるのなら、神社に顔をだしても良いかという気分になっていた。


 普段は――特にこの2年余りは訓練と出動に明け暮れていたのでこの界隈がとても眩しく見える。


 メンバーと話す以外では出動帰りか、たまにある取材帰りでのお土産くらいしか娯楽は無かった。

 ユウヤの様に確たる恋人がいる訳でもなく、ミサキとは信頼関係はあると思うがソウイチ目線で一定以上の進展があるような関係でもない。


 アイカとエイカの真っ直ぐな好意には驚かされたが、言わば妹枠だ。


 そんな中で訪れた歓楽街を、純粋に新鮮な気分で歩いていった。


(でも30分で7000○の飲み屋?とか解らない世界だな。一体中ではどんなコトが……)


 店内BGMが外まで大音量で漏れている「緑だけど桃色サロン・グリーンデイズ」なる謎に賑わう店。その料金表に戦慄するソウイチ。

 すると満員御礼のプラカードを持ったバニーさんが声を掛けてきた。


「ごめんなさい、お兄さん。もう満席なのよ。ほら、街があんなになってるじゃない?だからお客さんが皆延長して居座っててね。」


「あ、いえ。オレはただの通りがかりなんで!」


(凄え衣装だな。バニーか……ゴクリ。いやそれより先を急ごう。)


 胸の谷間に生唾を飲むが、頭を振って煩悩を振り払う。話を聞くに、逃げ延びた人達が不安を忘れようと必死なのだろう。


 そんな事を考えながら南に進むソウイチ。


 誰かと待ち合わせ中なのかソワソワしている男や、いかにもなお店の前で吟味している者とそれを呼び込む者達。そしてそういう用途に使われるホテル等、普段見たコトの無い世界が広がっていた。


 無機質なビジネスホテルを装った「ビジネス火照る」にはちょっとクスっときたソウイチだったが、特に意味はない。


「この店は比較的すいてるけど、会社でも駅でも怖い思いをしてきたんだよなぁ。」


 などと「妄想クラブ」事務所編・電車編12000○~の看板の前で悩む男。そこまでのトラウマがあるなら他を当たれば良いだけである。


(駅も落ちてるのか!?これはいよいよ大事だな……)


 ソウイチはむしろそっちに驚いていた。そのまま進むと呼び込みのおじさんに声を掛けられる。


「学生コスどうですかー?水着・体操着も旧型新型、紺・赤、色々ありますッ。様々な時代の流行!今も昔も時代は学生コスでーっす!」


(オレは普通の学校ってのが良くわからないからなぁ。さすがにウチのコスは……無いよな。うん。いや期待なんてしてねえし!)


 這い寄る煩悩を振り払いながら先へ進もうとするとすぐに別の男に声を掛けられた。


「お兄さん、学生なんかじゃなくてメイドどうですかメイド!使用人こそ至高!これからヒトトキ、ご主人様となりませんか!?」


(お世話して貰う、か。夢が膨らむなぁ。普段ボロクソに言われてるしなぁ。いや待てよ?結構ミサキは膝枕とか……そうだ、こんな店に寄ってる場合じゃない!)


 再度忍び寄る煩悩を断ち切って先へ進む。ミサキが予想した通り、ソウイチには少々刺激が強いエリアのようだ。


「君も大変だったようだね。」

「もしかしてあんたもか?」


 呼び込みと煩悩を振り払って逃げると、ソウイチよりはやや年上の若い男に声を掛けられる。


「まあね。でもさっきの2つの店は前から激しい競争をしていてね。必然的に互いのレベルが高くなる。良きライバルってやつかな。」


「なるほど競争か。そいつは良いな。」


「ほう。キミも解るクチかい?やっぱり良いものだよな。」


「オレにも負けたくないライバルってのが居るからな!」


「あー、仕事かなんかか?オレが言いたいのはな、互いのライバル心を刺激すれば良いサービスが受けられるって話しさ。」


「なるほどな。そういう面もあるわけだな。」


「ま、その気が無い奴がここを通ると面倒に思うかもしれんから気をつけたほうが良いね。」


「そうだな、ありがとう。」


 ソウイチは男と別れて突き当りまで進んだが、神社は見えない。どうやら1本横の通りからぐるっと迂回して進めば良いようだ。


 というワケで迂回して行くと、交番が見えてきた。



「アンタ警官だろう!?オレのダチを助けてくれよ!」

「そうは言っても我々では――」

「コイツも重症だし、まだ外にも逃げ遅れが――」

「それにもう、ここの外は人が踏み入れるには――」



 交番前では警官と一般人が口論している。その一般人の傍らには怪我をした同僚らしき男がうずくまっている。


「悪いけど、オレには手伝えそうに無いよなぁ……」


 例えばこれがモリトなら、間違いなく首を突っ込む案件だろう。だが特殊部隊とはいえ武器もなく、脱走中に目立つ行為はよろしくない。


 そしてその交番を通り過ぎれば公園へ向かう道なのだが、やはり神社へ向かってからにしようと歩く向きを変える。この状況を食い留めるチカラがあるのは確かだろうし、少し興味が湧いていた。



「それっぽい所まで来たが、思っていたより小さいトコなんだな。」



 簡素な鳥居をくぐって大して長くもない境内の先には、本殿と思われる社と、その脇に併設されている占い屋や飲食店が確認できる。


 占い屋は歓楽街の案内所とこの神社の社務所も兼任しているようで、混沌とした雰囲気を醸し出す建物となっていた。


 飲食店については食堂やカフェが並んでいて、その傍らには膝に手をついていかにも疲れ切った女性が息を整えようとしてる。


「なあ、あんた大丈夫か?」


「ハァハァ、観光中に変な人達に追い回されて……やっと安全な所に出たと思ったら歓楽街で……」


 女性はコチラに顔を向けもせずに答えてくる。よほど疲れているのだろう。


「あー、そりゃぁご苦労だったな。でもこの辺に見る所あるか?」


「ハァハァ、だって特殊部隊の本拠地が……わざわざ香川から見に来たのにこんな……でもおうどんを出すお店が見つかったのは、不幸中の幸いかしら。」


 女性が屈んだままチラリと食堂を見る。ソウイチも釣られて目を向けると、幾つかのうどんメニューが目にとまる。その横にポップには駅前の「平和うどん」から麺を仕入れていると書いてある。神社絡みの店だからか、信頼できる所から仕入れているアピールなのだろう。


「そいつは災難だったな。ぜひゆっくり味わって行ってくれ。やたら混んでるみたいだけどな……」


「こんな日ですからねぇ……しばらく待ちます。ふふふ、関東うどんの実力を見極めてあげるわ……」


 香川から来たと言う女性は、入り口にモタれながらぐってりする。ソウイチは大丈夫か?と思いながらも自分にできる事は無いなと、その場を後にする。


(やっぱりうどんなんだな。ネット独特のジョークだと思ってたが、この分だと群馬や福岡もソウなのか?)


 ネットスラングによる、あらぬ偏見?を持ちながら先へと進む。しかし例の謎の占い屋の前を通りがかった時に声を掛けられた。



「そこのアナタ、面白い運命を持ってるわねぇ。」


「うん?どういう事だい?」



 声を掛けてきたのは占い屋の店主……なのだろうか。ビジュアル的にはスナックのママといった出で立ちの”男”がタバコを吸いながら

 こっちを見ていた。ソウイチはスナックに行ったことはないので、あくまでイメージである。


「ふぅー、詳しくはコウコウ様に聞くと良いけど。その前にここに名前を書いておいて。アナタの魂をキロクしてあげるわ。うふふ。」


「な、何がどうなってんだ?」


「なに焦ってんのよ、ただの避難民のリ・ス・ト。アナタ、ガタイは良いのに可愛い反応しちゃってぇ。」


「あ、ああ。そういう事か……これでいいか?」


「うんうん。タカヤマ・ソウイチ、いい名前ね。それじゃあ神社でコウコウ様に会ってきなさい。何かあったら何でも相談してねぇ?」


 脱走中だというのに馬鹿正直に名前を書いたソウイチ。初めて見るタイプの性別に、圧倒されてしまったようだ。



「ソウイチ様ですね?コウコウ神様がお待ちです。どうぞこちらへ。」



 社の正面にまわると1人の巫女さんが声を掛けてきた。どうやら案内してくれるようだ。


「何でオレの名前を知ってるんだ?それに神様が待ってるだって?」


「コウコウ神様は今日、貴方が来る事を予言されてました。チカラを持った青年が訪ねてくると!」


 大げさな身振りで裾をはためかせながら巫女さんが告げる。


「まぁ、それは半分嘘でして。」


「嘘かよ!」


「ソウイチ様が来るのは神パワーで探知していたようですが、名前はテレビで拝見していただけです。」


「はぁ……意外と有名だったんだな、オレ。」


 クスクス笑う巫女さんにちょっと疲れながらも付いていく。


「ソウイチ様をお連れしました。」

「うむ、通してくれ。」


 案内された社の内部には、座布団に座った10歳程度の女の子が座っていた。



 …………



「よく来たの、ソウイチよ。待っておったぞ。」


「こんばんは、あんたがコウコウ神って事でいいのか?」



 20時40分。コウコウ神社に辿り着いたソウイチは、ちんまい神様と対面していた。見た目は少女であるが何処と無く侮りがたい雰囲気があり、”逆らってはいけない気分”になる。


 なのでソウイチはすぐに目の前の少女がヒトならざるモノだと実感・納得していた。


「それで、カミサマがオレに何の用なんだい?」


「お前さんにはこの辺りに張ってある結界の補強を頼みたい。」


「武器がどうとか、ゾンビを防いでるモノの事か?」


「その通り、お前さんも見たじゃろう。街の水源にウイルスと高濃度の薬液が混ぜられて街は壊滅。私には薬液の拡散は抑えられぬ。もうここの維持も難しい。そこで知り合いから分けて貰ったチカラを使い、結界の触媒を作った。それをお前さんに設置してもらいたい。」


 そう言って光の杭を何本か差し出してくる神様。


(えらく話の早い神様だ。それだけマズイ状況ってことか?)


 挨拶もそこそこにぐいぐいとお使いを頼まれるソウイチは、展開の早さに頭を追いつかせるので必死だ。

 コウコウ神は結界の対処を急ぎたくて、余計な話をごっそり削ぎ落としてしまっているのだ。


「気になったんだが……その薬液、クスリの事か?なんであんたはその存在を知ってるんだ?」


 一度理解する時間を挟むために、ソウイチの方から質問する。だが帰ってきた答えはさらに驚くものだった。


「簡単なこと、私はある意味お前さんのセンパイに当たる立場じゃ。その昔、10歳でナイトと戦ったナカジョウ・キサキとは私の事よ!」


「ナカジョウ!?ミサキのご先祖様ってことか!?」


「うむ、妹の子孫が世話になっておるそうじゃの。私の家は強力な呪術を扱うゆえに自らも呪われた運命。これからも支えてやってくれると助かる。」


 キサキはこの場を動けぬ身ではあるが時折訪れる関係者、昔の戦友やケーイチ等から妹の子孫が特殊部隊に配属された事は聞いていた。


「あ、ああ。言われるまでもないぜ。しかし驚いたなぁ……」


 ソウイチは全てに驚かされていて頭の整理がつかない。キサキも彼の様子を見て急ぎすぎたと反省したようだ。


「会ってそうそう、不躾じゃったな。すまぬ。しかしそうせざるを得ないほど逼迫した状況なのじゃ。お前さんが先を急ぐ気持ちも解っておる。しかし敢えて頼む。この杭をこの界隈の外周に設置して回ってくれないか。チカラを通さねば使えぬ物なのじゃ。」


「わかった、良いぜ!センパイの頼みなら断る理由はないさ!」


「うむ、それでは頼んだぞ。設置場所と使用方法は――」


 キサキはそれらを説明し、簡素な地図に書き込んでいく。


「お前さんに任せるのは半分で、危険が伴う側じゃ。もう半分は信頼できる元巫女に任せておる。いいか?私にその杭を再度作るチカラはもう無い。この邪気相手では一晩程度しか保たぬやもしれぬが、頼んだぞ。」


「OK、任された!漢・ソウイチ、きっちりやり遂げるぜ!」


 ソウイチは杭をバックパックにしまい、地図を片手に退室する。危険が伴うというのは水道の配管や人の流れ的に、ソウイチのエリアの方がゾンビが現れ易いという意味だった。



(あのソウイチとやら、やはりナカジョウの呪いを受けておった。子孫の婿殿を勝手に使うのは少々心苦しいが、仕方あるまい……)


 キサキが最初からぐいぐいとお願いをしたのは、急いでいるのは勿論なのだが、ソウイチに掛けられた術を見抜いていたからだ。


 彼の血液は、ナカジョウ家の女には逆らい難いのである。



 …………



「きゃあああああッ!来ないでッ!」


「アー……ウガー……」



 20時50分。ソウイチが社を出て境内を進むと悲鳴が聞こえた。そちらを確認すると、若い巫女さんが男に迫られていた。カジュアルな服装の彼は近所の若者だろうか。彼は両手を前に突き出して唸り声をあげながらゆっくりと近付いていく。


「さ、下がりなさい!私を食べても青じそドレッシングの味しかしませんよ!?」


 迫られている巫女さんは足がすくんで走れない。さらにはよくわからないコトを叫びながら箒を構えている。


「青じそ……?ってそんな場合じゃないな!やらせはしない!」


 ソウイチは走りながらチカラを発動させていく。踏込む位置の重力を反転させて一気にトップスピードに乗りつつ、重力の”スーツ”を装着していく。その瞬間若干速度が落ちてしまうが、昔程では無い。


 巫女さんとゾンビの間に自分の身体をねじ込み、噛みつき攻撃をスーツで受け止めた。


「ガアアアア、ア!?ガガ!?」


「へ、あんたのパワーじゃオレの重力に抗えないようだな!」


 ソウイチのスーツに発生した反重力で、ゾンビは大口を開けたまま身動きが取れない。顎が外れてあたふたしている。


「そんなに食いたきゃ喰らいな!グレイトブロウッ!」


 ズドォン!と派手な音がしてゾンビは吹き飛ばされて壁に激突、そのまま動かなくなった。


 今使った重力スーツは昔の重力鎧とは違って、とてもフクザツな作りをしていた。チカラで薄く弾力を持たせた重力の布で、ミサキが戦闘用にデザインした形に生成して使っている。


 ミサキが自分の糸を使って形を作りソウイチにイメージを伝え、各パーツの重力の向きも彼女が指定した。それはとても動きやすく防御効果に優れ、攻撃に回れば武器の取り回しも楽という逸品だ。


 人体構造に精通しているミサキならではの仕事ぶりだろう。


 ただしフクザツになった分、生成には時間が掛かる。いかに素早く身に纏えるかが重要なため、今日まで相当の訓練を重ねてきた。



「おい、ケガはしてないか!?」


「助かりました!ありがとうございます!!」


「ふう、無事で良かったがここにもゾンビが発生するなんてな。」


「大きな声では言えませんが、コウコウ神様の神通力が弱まっておられるのかと……」


「こりゃぁ、急いで杭を打ち込むしか無いな。」


「お兄さん、お強いですね!ここでは武器が使えないのに。」


「ソウイチと呼んでくれ。訓練の成果ってやつだな。」


「か、格好いい!ソウイチさんは正にヒーローです!勇者です!」


「……そんな大層なもんじゃ……まぁ。ありがとう。」


 盛大に目を輝かせてソウイチの手を握る巫女さんと、盛大にテレて落ち着かないソウイチ。若い巫女さんはこの出会いを神に感謝した。



 …………



「お前らなんで助けてくれないんだ!ゼイキン貰ってるんだろう!?」


「少しは落ち着きなさい、これ以上は公務執行妨害に――」



 21時。再び交番前に来るとまだ警官と一般人が口論していた。


 実力的に外へ出るのは無理な警官と、ゼイキンを納めているのに助けてもらえない納税者さん達。どっちの言い分も良く解るのだが、直ぐ側に迫る驚異に対してこれはみっともないなとソウイチの目には映っていた。


 無視したい気分で一杯だったが、交番前にある人工池の対岸が最初の杭を打ち込むポイントなので近寄らずを得ない。


 仕方ないので警官に食って掛かる男の同僚と見られる、気分の悪そうな男に声を掛けてみるソウイチ。


「おいあんた、大丈夫か?」


「ハァハァハァハァ……ウグッ、グ!ウガアアアアア!!」


 男はソウイチを見ると立ち上がり、襲いかかってきた。その目は緑色で肌も変異しはじめて、焼けただれたように見える。


「くそっ、この人もダメかっ!!」


「うわあ!どうしたんだ!?」


 適当に受け流して相手がよろめいている間にスーツを編んでいく。ゾンビとなった男がよろめいた先には口論している者達がいた。


 同僚の変わり果てた姿に驚き、そのまま腕を噛みつかれてしまう。


「G・ハンマー!」


 腰のホルダーから鉄球を2つとも取り出して、ゾンビを横殴りに弾いて転がす。倒れたゾンビをG・ハンマーで上から滅多打ちにして、頭と関節部を砕いたら大人しくなった。


「外から逃げてきた人達の化物化が進んでいる?」


「お前、オレのダチに何してくれやがる!特殊部隊ってのは市民を殺すのが仕事なのか!?」


「待ってくれ、残念だが襲われたのはこっちの方なんだぞ!?」


「言い訳するなああああッ!」


 大ぶりで襲いかかってくる納税者さんのパンチをヒョイと左に避けて腹に一撃カウンターを入れる。


「ぐも!?ぐぐぐ、くそっ……うわあああガボガボ……」


 痛みと息苦しさで倒れ込むが、そこには地面がなく人工池に素潜りするコトとなった。


「まったく、ひでえ事になってるのは分かるが冷静になってくれよ。身体より先に心が化け物になってどうするんだ?」


 ソウイチは人工池に落ちた納税者さんを引き上げようと手を伸ばす。


「キシャアアアアアア!」


「うへぇ!もう変異してやがるのか!」


 スーツ姿の納税者さんは右腕から頭に掛けて肉がボコボコに膨らみ、奇声をあげてソウイチを引きずり込もうとしてきた。


「重力波ッ!」


 ズゥゥゥゥン!!


「ガボガボガボガボ……」


「悪いがこっちも必死なんだ。あの世で労災申請でもしてくれよ。」


 水中でぐちゃぐちゃに潰された男は人工池に要らぬ彩りを添えた。


「特殊部隊のソウイチさん、ですよね?オツトメご苦労さまです。正直助かりました。」


「先輩を助けてくれてありがとうございました!」


 コトが終わって池を眺めてると、2人の警官がソウイチに礼を言いに来ていた。


「いえ、見た所ケガも無さそうで良かったです。彼は恐慌状態を無理に怒りで誤魔化してて……その、仕方なかったのだと思います。」


「本当はこういう事にならないように治安を守るのが我々の仕事なんですけどね。」


「この界隈じゃ自分達も銃が持てないし実戦経験なんてないですし。」


(ああ、そういう弊害もあるのか。ま、世の中そんなもんだよな。)


「気にしないでくれ、オレはやることが有るから失礼します。」


 ソウイチは人工池を迂回して指定されたポイントに着くと、背負ったバックパックから杭を1本取り出した。20cmほどの大きさだが、チカラを通すと1m程まで巨大化する。


「これを突き刺してっ!っと。おお?なんか身体が軽くなったような?」


 地面に突き刺してプレーンな精神力を注ぐ。すると濁った空気が清潔になったような、晴れ晴れとした気分になった。

 この方法はマスターのソレに酷似していて、師弟らしさがかいまみえる。



「これでよし、効果は抜群じゃねーか!」



 ソウイチだけでなく、近くの住人達も落ち着きを取り戻したようだ。どうやら杭を中心に全方位にある程度効果があるタイプらしい。


 壁で繋ぐだけの――唯の境界制作にとどまらないこの威力は、

 さすがは神のチカラと言った所だろうか。

 効果を確認したソウイチは意気揚々と北に向かうのであった。



 …………



「た、助けてくれえええ、ぎゃあああぁぁぁ……」



 21時10分。交番から北へ向かうと素っ裸のオジサン達がこちらへ助けを求めて走ってくる。その後ろには同じく素っ裸の女性が追いかけて来ていた。全員大層な大きさでブルンブルンと主張しているが、見た目がゾンゾンしていて嬉しくない。それでも観察した所、高級なお風呂屋さんの店員と客のようだ。


 オジサン達は既に噛み跡や引っかきキズが確認でき、裸足なので速度も出せずに美味しく頂かれてしまっていた。



「まったく、なんて光景だ!G・クラッシャー!」



 ソウイチは足元を砕いてハダカの女性の群れを足止めする。続いて2つの鉄球を操作して頭を打ち砕いていった。


「ふぅー。おっちゃん達は……ダメだったか。悪いけどあんたらの頭も砕かせて貰うぜ。安全第一なんでな。」


 再度鉄球を操作して死体蹴りともとれる行為を行っていく。


「オレがここに来たのってキサキさん的には本当にギリギリだったんだなぁ。それにしても……はぁ、参ったぜ。」


 ソウイチが杭を受け取るのが後少し遅ければ、完全にこの界隈もフィクションホラーの世界に飲まれていただろう。微妙に間に合わず騒ぎは起きてしまっているが、杭さえ設置すれば立て直せる。



(まさか初めて見るオトナのソレがこんな形とは……)



 ソウイチの眼下にはプロの方々の成れ果てが転がる。別にそのモノの形に幻滅したワケでなく、シチュエーションの話である。


 猟奇殺人現場の死体にしか見えない状況のモノなど、できればご遠慮したかった。


 下手をしたら性癖にトラウマが出来そうな場所は早々に通り抜け、目的の場所へ向かうソウイチ。



「あの店の入口の奥だったな。ってマズそうな予感がするぜ……」



 どんと構えるお店の脇に細い路地が見える。その奥が杭のポイントなのだが、その路地は店の入り口に続く道でもある。

 すでに路地の入り口では誰かの腕だけが見えて、ビクンビクンと跳ねている。


「これはダメそうだが、見ないわけにもいかねえしな。」


 急いで向かうも壁の角からこっそり路地を覗いてみるソウイチ。


「「「ぐちゃっぐちゃっ、グワアアアア!」」」


「うへぇ……目的地はこの先だってのにギュウギュウ詰めかよ。」


 そこには逃げ遅れた男達を生で頂く、コスプレお姉さんがヒシメイていた。みんな口元が赤く、思い思いに肉片をカジっている。


 ソーセージや骨付きチキン・焼き鳥等を食べる様な仕草の彼女達は、とてもオゾマしく見えた。ネオンと街灯に照らされた彼女達の目は緑色に光っているので尚更だ。



「正直連発はキツイが……G・クラッシャー!!」



 ソウイチは作戦を立てるとコスプレお姉さん達の足元を砕いて破片が彼女達に突き刺さる。


「もう一丁!喰らいやがれ!」


 彼女達が怯んだ所へ今度は横の壁にチカラを通して砕いていく。ガラガラと崩れた壁が降り注いで、彼女達は悲しそうな声を発しながら倒れていく。


「トドメだ!重力波っ!!」


 G・クラッシャーによる重力反転と高重力に挟まれた彼女達は、押し潰されて動きを止めた。


「ハァハァ。わ、我ながらおぞましい光景を作ってしまったぜ……」


 赤と緑と壁の色が混ざった路地は通るのに抵抗がある。仕方ないので壁の破片をG・ハンマーの要領で飛び石にして渡るのだった。


 路地の奥で杭を突き刺してチカラを通す。すると再び空気が浄化された感覚を味わい成功を確信する。


「もっと早く来ればあの連中も生きて……そういうのは気にしても仕方がないよな。さっさと次へ行くか。」


 モリトなら確実に思い悩むであろう状況だったが、ソウイチはなるべく気にしないようにしながら先を急いだ。



 …………



「ハァハァ、なんとか勝てたけど……消耗がヤバイな。」



 21時30分。歓楽街の北西で大量のゾンビを相手にしたソウイチは思わず屈み込みそうなほど息を切らせていた。道路には夥しい数のゾンビ達がぐちゃぐちゃになっている。


 まるで体育祭の騎馬戦か玉入れのような勢いで襲ってきた彼女達はソウイチが思わず(あれは騎馬戦、騎馬戦なんだ。)と現実逃避をするくらいには迫力があった。


「キツイがさっさと……うう、まためまいか。クスリの影響か?」


 彼はフラフラになりながらも西側の道路に結界の杭を打ち込んでいく。すると嘘みたいに気分が良くなっていった。


「結界ってのは回復効果もあるのか?やっぱり凄えな神様って。」


 ソウイチはもう1箇所、北の道路に杭を打ち込んで、その後近くのコンビニで500mlの水を2本仕入れていた。


「ありがとうございましたー。」


(この状況で営業しているって最近のコンビニは格好良いな。負けん気が強いのは嫌いじゃないぜ。さて、最後はオレが来た道か。)



 ~~~~♪ブツッ……


「―――――ッ!!」

「―――――ッ!!」


 21時40分過ぎ。グリーンデイズの前を通りがかった時、やかましかった店内BGMが途切れて消えた。直後に言葉にならないような叫び声が聞こえてきた。いや、正確にはBGMで紛れていた悲鳴がより良く聞こえてきた。



「あら?なんだかお店が騒がしいわね。お客さんが暴れたりしてるのかしら。」


「いけない!バニーさん、早く離れて!逃げるんだ!」


 入口前に居たバニーさんが怪訝に思って店内の様子を伺おうとする。ソウイチは慌てて駆け寄ってバニーさんの腕を掴んでいた。


「キャッ!あらお兄さんどうしたの?ナンパなら仕事の後にしてね。この格好じゃお兄さんも困るでしょう?」


 ずずいと胸を強調してソウイチを手玉に取ろうとするバニーさん。


「いやむしろ素敵な……そんな事言ってる場合じゃねえ!逃げるぞ!」


「ヒャアッ!あ痛たたっ。足を捻っちゃったじゃない……もう、お兄さんったら強引なのね。」


 ヒールを履いていたバニーさんが抗議と挑発をしてくるが、それどころではない。


「グバガアアアアアッ!!」


「グレイトブロウ!!」


 ズドォン!と重力を纏った拳が店から飛び出たゾンビに突き刺さる。そのゾンビはバニーさんが立っていた場所で大口を開けており、間一髪での回避となった。


「やっぱりな!そうそう何度もやらせてたまるかッ!」


 バニーさんを助けられたことを喜ぶソウイチだったが、店からは更に追加のゾンビが出てこようとしている。


「ッ!G・クラッシャー!」


 ズガガガガガガッ!!


 一瞬躊躇ったが、地面にチカラを通して店の入口に浸透させて反重力で砕く。すると入り口がバラバラと崩れてゾンビ達を生き埋めにし、後続に対するバリケードを作成した。


「すっごーい!お兄さん強いのね!助けてくれてありがとう!」


「礼は後にしてくれ。結界が直りつつあるから神社の方なら安全だ。立てるか?」


 歓声をあげるバニーさんだが、ソウイチは冷静に一時撤退を考えていた。殆ど結界を直してるのにこの店でゾンビ化が進行してる事実に、警戒を解いてはマズイと感じていたのだ。事実、しゃがみこんでバニーさんに手を伸ばしている彼の視界の隅にはゾンビがちらほらと映っている。


「ちょっと無理かも。足を捻っちゃってて……」

「オレが背負っていく!このバッグ持っててくれ。」

「ふわー……大きい背中……」

「し、しっかり掴まっててくれ。」

「はーい!」


 バックパックを預けて彼女を背負うと、呑気な声を出すバニーさん。むにゅむにゅと”クッション”を当ててアピールしておく。



「「「ヴァー……ウェアーー……」」」


(最後の杭を打ち込みたいが、この状況では……)



 柔らかウサギを背負ったソウイチは目の前のゾンビ達相手に迷う。


 今すぐ杭を打ち込まねばゾンビがもっと入り込むだろう。とは言え彼女を庇いながらの進撃はリスクが高い。



 ダララ!ダララララ!


「うらー!くたばれええええ!!」



 突然アサルトライフルが火を噴き、最初に会ったおじさんの怒号が響いた。ゾンビ達はまともに銃弾を受けて少しずつ倒れていく。


「おじさん!」


「よお、兄ちゃん。ちょっと得物を借りてるぜ!!」


「おじさん、危ないから社の方へ!」


「結界が崩れている今、この場でないと銃が使えねぇ!兄ちゃんこそさっさと逃げなッ!」


(彼が何でオレの銃を扱えるのかはともかく、これはチャンスだ!退くか攻めるか……当然オレは攻めるに決まってる!!)


「バニーさん、ちょっと危ないからしかっり掴まってて!」


「は、はい!ぎゅー!」


(柔らけぇ!良い香り!……いかんいかん。)


「おじさん、これから結界を直す!合図したら銃を捨ててくれ!」


「おお!?よく分からんが援護は任せろ!」


 ダララララ!ダララララ!


「G・ハンマー!走るぞ!」


 ヒュンヒュンヒュンッ!


 おじさんが銃弾のシャワーでゾンビを足止めし、ソウイチは鉄球をまるでミサキの人形の様に自身の近くに纏わせて周囲のゾンビを撃退しながら目的地へ走る!


(ひゃーー!まるで映画みたい!ん?って事は私ヒロイン!?)


 背中のバニーさんが心の中でキャーキャーとツリバシ的カンチガイで興奮をしている内に、ソウイチは最後のポイントへ辿り着いた。


「バニーさん、バックパックを!」

「はい、ヒーロー君!」

「え!?いや、おじさん!銃を捨てるんだ!」

「応よ!やってくれ!」


 よく解らない呼ばれ方をされながらバックパックから杭を取り出してチカラを通す。おじさんに合図を送りつつ、1mまで巨大化したそれを気合を込めて突き刺した。



 …………



「やれやれ、これで任務は終わったか。おじさんありがとう。」


「兄ちゃん、良くやったな。やっぱり特殊部隊は優秀なんだな。」


「テレビだと悪く言う人も多いけど、ヒーロー君格好良かったわよ!」


「ありがとう、っとバニーさんは目を閉じてて!」



 21時50分。ソウイチは残ったゾンビの頭を鉄球で砕く作業をしていた。

 最後の杭を打ち込んだソウイチ達は、その効果で心身共にスッキリしていた。しかし結界のスキマから入り込んだ、もしくは水道水から感染した彼らは動きが鈍るものの活動停止には至ってない。



「兄ちゃんには世話になったな。装備を返してあげられないのが心苦しいけどよ。せめて残党狩りは街で受け持つぜ。」


「こちらこそ、おじさんが居なきゃ逃げてましたよ。良く銃が使えましたね?」


「今も昔も、色々とな。それよりそろそろ行きな。姉ちゃんを神社に連れて行って手当してやらんとな。」


 おじさんは訳有りのようで話を逸してきた。彼の言う通りソウイチの装備は結界が直ったと同時に何処かへ飛んでいって消えていた。

 残党狩りは自分達でやると言っている以上、もうここに留まる理由も無いだろう。


「はい、報告もあるし行きますね。ありがとうございました。」


「おじさん、じゃーねー!ヒーロー君、お礼はちゃんとするから何が良いか教えてね?」


「ソウイチって呼んでくれ。ヒーローはくすぐったいぜ。」


 柔らかくて良い香りのするバニーさんを背負い直し、頭がピンクになりながらコウコウ神社に向かうソウイチだった。



「この人もダメだったのか……ナンマンダブ、ナンマンダブ。」


「ひぇっ!私は見てない、何も見てない……」


 ソウイチの前にはライバル店について語っていた男が倒れていた。両腕をモガれて首元を両サイドから噛みつかれていた。


 傍らにはソウイチの鉄球にダウンさせられた2人の女性ゾンビが倒れている。通りがかりに倒したものの、男の救助には間に合わなかった。


(まったく、チカラ持ちでも特殊部隊でも出るのは犠牲ばかりだ。結局人間1人じゃこんなもんなんだろうな……)


 ソウイチは男の死に様を見て思う。ライバル店同士の女の子に同時攻撃を受けるというのはどんな気持ちだったのだろうか。


(単純にモテる客だったか、ライバル心を煽って利用したツケか?)


「なにか身近な世界の縮図を見た気がするな。」

「何の話~?」

「いや、なんでもねぇ。ちょっと未来のコトだ。」


「ッ!!ぎゅーー。」


 何かを勘違いしたバニーさんが柔らか攻撃を敢行する。


 ソウイチとユウヤを利用した上司。この後どう転ぶかは不明だが、あの研究者達はロクな末路は用意されてないだろうと心の隅で考えていた。



 …………



「きゃあああ、熱い!気持ち悪いいいッ!」



 22時10分。簡素な鳥居を通り過ぎて神社に近付いた時、併設されている食堂の前で悲鳴をあげた女性が目に入った。


「おうどんが荒ぶってますうううう!」


「なんだ?触手プレイ?もう結界が働いてるはずなのに!?」


「うわー、マニアックね……ってソウイチ君、助けないと!」


 ツユを吸ったせいか極太に膨らんだうどんが女性に絡みついていた。物珍しさに思わずガン見した2人だったが慌てて近寄っていく。


「今助けに……こいつはどうしたら……?」


 香川の女性に完全に絡みついている触手おうどん。下手に攻撃すると女性まで傷つけてしまう。かと言って何もしなければ彼女がうどんで溺れてしまう。下手したら別の意味でも。


(焦るな、こういう時は別の角度からモノを視ろって教官に教わったじゃないか!ええと、ってことは……そうだ!)


「死にたくなければ手を伸ばせ!」


「だ、誰!?その声はさっきの?うぐぐぐ……」


 女性が必死に右手を伸ばすと、その手を掴んだソウイチはなるべくチカラが浸透するように指を絡める。俗に言う恋人繋ぎだ。


「上手く行ってくれよ……重力スーツ!」


 ソウイチからチカラが流れ、香川の女性のお肌にチカラを通して

 重力スーツを発生させる。鉄球や地面にチカラを通せるなら、

 人体相手でも可能じゃないかと考えての行動だった。


 ズババババババ、びちゃっ!!


「今だ!重力波ッ!!」


 ズゥゥゥン……


「やったぜ!なんでもやってみるモンだな!」


 重力スーツの反重力で吹き飛んだ触手を追い打ちで潰して大人しくさせたソウイチ。


「さっすがソウイチ君!でもちょーっとやりすぎなんじゃない?」


「へ?……あ!?」


「ひょえええええええ!!」


 香川女性のお肌から反重力を発生させた為、彼女の服が全て弾け飛んでしまった。健康的な裸体をばっちり見てしまった彼は思わず固まってしまう。女性は胸を隠しつつ後ろを向いてかがみ込むが、勢いが過ぎて前のめりに転んで大事な所が丸見えになる。


 食堂前なので丁度ライトが照らされており、綺麗にソコに光が当てられていた。ある意味仕事をした謎の光である。


(おおふ……これは……へぇ。)


「あ、こら!見てないで隠してあげなさい!」


「お、おう!じゃあこのノボリとかで――」


 バニーさんを降ろして店先の旗を取り外してくるくると巻いていく。香川女性は涙目でフクザツそうにソウイチを睨んでいた。


「あーその、一応助けようとしてだな……」


「わかってます!それはありがとうございます!でも対価が高過ぎじゃないですか!?関東の物価はここまで高いとは聞いてません!」


「すまん、だがとても綺麗に照らされて――」


「うわああああぁぁぁぁぁ……」


「お互いに混乱しているようね。女の子をプレイ以外で剥いちゃうのって犯罪よ?とにかく落ち着いて、社務所辺りで服を借りましょう。」


「お、おう……」


「ううう、はい……ってアレ?その制服、特殊部隊の?」


「ああ、ソウイチだ。」


「はううう、よく見たらテレビで見た人だああああ!」


 憧れ・羞恥・感謝・幻滅・興奮等々。彼女のそれぞれの感情が手を取り合って頭と胸の中で踊り狂う。


(むー、もしかしたらライバル出現って感じ?)


「フォ!?」


 なんとなく彼女のその先を予感したバニーさんは、ソウイチの首筋と耳に吐息を吹き掛けるのであった。



 …………



「うう、ひっく。特殊部隊のヒトに……やっぱりセキニンを……」


「ッ!?」


「ほら、すぐに社務所に着くわよ。せっかく助けて貰ったんだから、泣きながら不穏ワードを吐かないの!ソウイチ君が困ってるわよ。」



「ソウイチさーん!おかえりなさーい!」

「ソウイチ君、待っていたわぁ。」



 22時20分。気まずい雰囲気の中で占い屋へ向かうと、さっき助けた巫女さんと占い屋?のスナックママが手を降って迎えてくれた。事情を話して、占い屋だか案内所だか社務所な建物に入れて貰う。



(なんかカオスな絵面になったなぁ。)



 脱走中の特殊部隊に巫女・バニー・うどん・オネエさんが揃い、彼は目眩を覚え始めた。


 女の子組は着替えと治療の為に奥へと引っ込み、ソウイチはさっき買ったペットボトルの水で一息ついていた。


「でもソウイチ君は凄いワねェ。結界の効力が消えたと思ったらすぐに復活させちゃって。」


「ギリギリアウトなのをゴリ押した感じだったけどな。おじさ……オネエさんはさっきオレの運命がどうとかって言ってたけど?」


 おじさんと言いかけたソウイチは即座に言い直す。”彼女”の目が細く鋭いモノになったからだ。鋭い殺気めいた威圧感がソウイチのボクサーとしての勘を刺激していた。


「神のお告げで、ここに来る避難民やアナタをサポートする予定だったのだけど……こんなにさっさとクリアしちゃうなんてね!」


「へぇ。キサ……コウコウ神サマはそんな事もしてるんだ?」


「いいえ?キサキちゃんは関係ないわ。だってお告げを出したのはアタシですもの。」


「へ?」


 謎な言動の彼女?に思考が追いつかず、混乱するソウイチ。

 頭の整理が付く前に外から紫ローブの女性が入ってきた。


「ただいま戻りました。兄さん、例の予言の人は……もしかしてこちらの方ですか!?」


「お姉ちゃんて呼んでって言ってるでしょう?この子がソウイチ君。もう仕事は終わっちゃったわよ。」


「うわっ、私の方が早く始めたのに先を越されちゃいましたか。ナニもお構いできませんで……せめて今夜のイキ先を占ってあげましょう!」


「は、はぁ……」


 水晶玉を取り出してブツブツ言い出したローブ女に困惑するソウイチ。

 顔は見えないが、30代半ばといった所だろうか。自分より早く始めたという事は、彼女がもう半分のエリアを担当していた元巫女という事なのだろう。


「そこまでよ、貴女は奥の女の子の様子を見てきてあげなさい。」


 今、イキ先占いをされても店は何処も半壊しているので意味はない。オネエさんは妹と思われる彼女を奥へ追いやって話し始めた。



「実はアタシが先代のコウコウ神なのよ。神様を引退して、間違って男の身体に転生しちゃって……ある意味着飾り甲斐はあるのだけど。」



「は、はぁ……」


 オネェさんの衝撃カミングアウトで更に混乱するが、とりあえず相槌くらいは打っておく。


「それで妹に神通力が発現してね?今代のコウコウ神に仕えてたの。だけど魔王事件で子供をツクって、恋に目覚めてしまったってワケ。でも相手は魔王でしょ?別の何かに打ち込めるように神託を出したってカンジよ。」


「なるほど?良いおに、オネェさんですね!」


「うふふ、わかるぅ?そんな訳だからぁ、ソウイチ君はキサキちゃんに報告に行ってきて。まだ女の子の着替えは時間がかかりそうだしネ!」


 社務所から追いたてられ、キサキの社へ向かうソウイチは考える。


 今日初めて訪れた神社のウラ話を聞かされても正直困るソウイチだが、少しだけ気になった部分もあった。


(あの事件で、魔王を好きになっちゃう女も居たんだな。)


 本当はその数年前に謎のフラグを立てていたのだが、それは彼の知る所ではない。


(親父は7年前、オレが家に帰ったら殺されていた。魔王事件の被害者って話しになったが今でも殺された理由が判らねえ。その死に顔は安らかだったが……もしかして魔王はただの悪党では無いのか?)


 世間では神出鬼没の極悪非道と謳われているが、その被害者が1部とはいえ好意的に見れる何か。現状答えが出ないその謎に思いを馳せながら社の前に来た。


「ん、そういやコウコウって由来はなんだ?表示は全部カタカナだし漢字なら少しは推測できるんだが……」


「おやソウイチさん、おかえりなさいませ。コウコウ様の由来が気になりますか?」


 そこへ最初に案内してくれた巫女さんが現れた。


「ああ、実際どうなんだ?」


「工程のコウと、口内炎のコウですよ!」


「意外と簡単な字を……ってまさか、それで歓楽街の神様に?」


 エロ神と読めるあんまりな字面に同情心すら湧いてくる。


「元々 オマセさんな女のコだったらしいのですが、経験が無いまま殉職されたのがキッカケと――これは今代が認められた理由ですね。先代のお話は私も存じませんわ。」


「そうか、ありがとう。報告行ってくるわ。」


 なにやらどうでも良くなったソウイチはスタスタとキサキの部屋へ向かう。一応ノックしたのだが返事は無かった。こっそり覗いてみると、読書中のようだった。


「ふむ、時代が変わっても伽の作法は大差無いものよの。しかし画質は上がっておるのは良い。だがココはもっと薄くても……」


(あー。まぁ、ミサキもこの手の話にはビンカンだったしなぁ。)


 何時ぞやの森の中での赤ずきんを始めとしたモロモロを思い出しながら、ソウイチはそっと障子を閉めて声を掛ける。


「おーい、キサキさん!頼まれていた件、終わったぜ!」


「はうあ!ソウイチか?ちょっと待っておれ!……入るが良い!」


 慌ててゴソゴソと何かを片付ける音の後に入室の許可が降りた。失礼しますと断ってから入室すると、ちょっと良い香りがした。きっと芳香剤か、お香でも使ったのだろう。



「この土地の邪気が薄れていくのが解る。無事に結界の張り直しを終えてくれたようじゃな。礼を言うぞ。」



「キサキさんの後輩だからな、これくらいは当然だぜ。でもさ、一晩しか保たないならこの先やっていけないんじゃ?」


「かまわんよ。どの道チカラの薄れた私は引退が見えておるし、この異変は長くは続かぬ。というより続いたら国が滅びるぞ。」


「それはそうかもしれないが、なぜ言い切れるんだ?」


「それを良しとしない者達が既に動いておる。お前さんもそうじゃがチカラの有無や強弱問わず、様々な者がこの厄災に抗っておる。」


「そいつは頼もしいな。」


 ソウイチは無性に嬉しくなった。辛い事が多かったが自分の青春の街のみんなが脅威に立ち向かっている事実に。



「ところでソウイチよ。身体の方は異常無いか?」



「別に……ちょっと視界が緑色だけど、むしろ調子が良いくらいだ。今日は新型のクスリを使ってるからそのおかげ――」


 そこまで言ってソウイチは気がつく。この逃避行での自分の体調とこの事件の原因に。医務室で2種類のクスリを射たれた事に。


「気がついたか。そのクスリ、薬液は化物化の原因と同じモノ。濃度・成分は多少違えど危険なモノじゃ。」


「オレはッ!いや、オレ達はどうしたら!?」


 ソウイチだけでなく、ミサキ・アイカ・エイカも同じ様にクスリを射たれている。このままではソウイチチームは全滅だ。


「結界の中なら停滞はするが解決はしない。薬液もウイルスも元を辿ればナカジョウの秘薬じゃろう。生憎今は治せぬが、アテが無い訳ではない。事件の解決後ならばあるいは……」


 キサキが言うアテとは本家の実家、ではなく当然マスターの事だ。だが大人の都合的にすぐ紹介するわけには行かないだろう。彼女が躊躇っていると、ソウイチの方が何かを思いついた。


「ナカジョウの秘薬?ミサキに頼めばなんとかなるか!」


「すまぬが、そろそろ身体を保つのも厳しくなってきた……。お前さんの身体については今は対応できない。」


 誤魔化すように会話を終わらせようとするキサキだが、実際に身体が薄くなっていっている。ややテクスチャバグのようにチラついてるのがギリギリ感を醸し出していた。


「わかった!こっちで何とかしてみるさ。情報助かったぜ!」


「達者でな、ソウイチよ。」


「ああ、ゆっくり休んでくれ、キサキ先輩!」


 キサキの身体が消え、ソウイチは社を後にする。最初に案内してくれた巫女さんに挨拶をして社務所へ向かう。



「「「ソウイチさん(君)!」」」



「みんな、もう手当は良いのか?」


 社務所の前に、足首を手当したバニーさんとそれを支える巫女さん。そして巫女姿になったうどんさんが現れた。占い姉妹?は1歩引いてコチラを見守っている。


「ええ、お陰様でね。でもソウイチ君、強引なのはダメよ?女の子は貴方ほど頑丈じゃないんですからね!」


「ああ、悪い。ちょっと力み過ぎた。」


「素直でよろしい!それではお姉さんからプレゼント兼お願い!連絡先、交換してくれないかしら?」


「え?オレとか?」


「うふふ。その目、期待したわね。事件が終わったら足のお見舞いに来て欲しいの。私をキズモノにしたんだからそのセキニンね。」


「その言い方は……いや悪かったよ。時間が出来たらな。」


 観念してスマホを取り出し連絡先を交換する2人。バニーさんは嬉しそうに口元が歪んでいた。


「連絡待ってるね。そしたら素敵な時間をお礼にあ・げ・る♪」


「ッ!!」


 バニーさんは胸を器用に強調してイミシン発言で〆る。息を呑んだソウイチに肩を貸している巫女さんがジト目になる。


「あー、ソウイチさん真っ赤!何を想像してるんですか!?」


「い、いやその!」


「動揺する所が怪しいですねー。それはともかく、ソウイチさんはアブナイ状態にあります。」


「んな!?」


 巫女さんに今一番の悩みのタネを言い当てられて更に動揺する。が、どうやらそういう話ではなかったようで……。


「いいですか?今回、神のチカラに触れたアナタはこの先何があるかわかりません!なので巫女たる私が、助けられた私がセキニンを持って検査せねばなりません!」


「検査?全身チェックしてくれるのか。それはありがたい。」


「だからはい!私とも連絡先の交換をしてください!」


 巫女さんがスマホを提示してソウイチはそれに応じる。先代コウコウ神の妹も神通力が有るから巫女になっていたらしいし、彼女もそうなのかと軽く思っての行動だ。近付いた彼女はちょっぴり青じその香りがした。やっぱりそのドレッシングが好きなのだろうか。



(ぜ、全身チェック……鼻血出そう!)



 当の本人は妄想で頭が一杯で、それどころではなかった。


「これでよしと。その時はよろしくな。」


「えへへへ、それはもうスミズミまで……」


「巫女さん、よだれよだれ!口もも鼻も!それじゃあ私の番ですね。ソウイチさん、さっきは助けてくれてありがとうございました!」


 あんたの番は終わり!とばかりにズズイと前に出て頭を下げる香川のうどんさん。


「ああ、無事に済んでよかったよ。火傷は平気だったか?」


「はい、まだちょっと痛いですけどなんとか。それでですね、私もお礼を考えたんですけど……」


 急に口ごもってボンッと顔を赤くする彼女。ソウイチは思い出して気まずくなってしまう。


「ああえっと、無理にとは言わないから――」


「いえ!ぜひ私もその……一緒にうどん屋を開きませんか!?」


「「「プロポーズ!?」」」


「ちょっとウドンちゃん!抜け駆けはダメ!」

「ちゃんと平等にユーワクするって決めたじゃないですか!」

「口説くなんて初めてで……って誰がウドンですか!!」


 バニーさんと巫女さんがうどんさんにツッコミを入れる。女の子同士でもうどんさんはウドン呼びらしい。


「えええッ!?」


 驚くソウイチだったが女達はそれを一旦横に置いて会議を続ける。


「あぁッ!ミコちゃん何で言っちゃうの!?」

「口が滑って……でもこれなら全員で総突撃を!」

「オトコって強引に迫ると萎えるヒト多いわよ?」


「あー、先を急ぐからそろそろ行くぞ?」


「ほら、逃げちゃうじゃない!だから言ったのにィ!」

「あわわわ、まってー!ソウイチさん、これにはワケが!」

「ちょっと、私だけ連絡先が!大事な所を見られたのに!」


「わ、わかったから大きい声でそんな事言わないでくれ!」



「むむッ!これはラブコメの波動か!?」



 社の中で休息を取っていたキサキは、どこからか電波を受信していた。



 …………



「ソウイチ君、最後にオネエさんからアドバイスよ。この先大変かもしれないけれどぉ、自分の思うままに進みなさい。」


「ソウイチ君、お手伝いありがとう。お節介やいてごめんね?」


「こちらこそありがとうございました。」



 22時50分。先代コウコウ神と元巫女さんに見送られて歓楽街を出立するソウイチ。

 例の3人はここには居ない。怪我人も居るので社務所で休んでいる。結局助けた女性達は3人とも連絡先を交換して、再会の約束を念入りに交わして別れていた。彼女達曰く、”遠慮は要らない”そうだ。


 なんでそうなったかと言うと、元巫女さんの神通力で彼女達のイキ先占いの結果、こうするのが一番良いと出たそうな。


「時間は食っちまったが、ようやく仲間と合流できるな。」


(ミサキに会ったら治療もそうだが、キサキさんの話をしてやろう。きっと驚くぞー。なんたって先祖が神様だもんな。それと事件を解決したら女の子達にも会いに来ないと……夢が膨らむな。)


 妄想をしながら結界の効果範囲を抜けるソウイチだったが、すぐに身体に異変を感じて地面に膝をつく。


「く、うぐぐ……結界を超えたせいか一気にキたな……。なんとか事件解決まで保たせねばっ!」


 目眩と緑色の視界が広がる中、ソウイチは再び立ち上がり歩き出す。


 目的の公園は目と鼻の先まで近付いていた。


お読み頂き、ありがとうございます。

このエピソードで120万文字を突破しました。


これにて本事件の序盤戦が終了です。以下各キャラ軽く纏め。


ユウヤ →北上中、メリーさんと非常識な戦い。

メグミ →北上中、ユウヤとハグレて独りに。

モリト →ヨクミと共に西に迂回しながら北上中。

ソウイチ→歓楽街でキサキの手伝い、公園へ。

ミサキ →高級住宅地で植物の反乱を阻止、公園へ。

アイカ →エイカと共に西の端へ。魔王1と接敵。

フユミ →自らの分身と戦い、魔王2の助力で撃退。省エネ中。

ミキモト→汚染水で街を壊滅させる。情報操作と通信遮断。

シゲル →魔王1の助力で帰還。娘の探索を依頼。

シズク →浄水場で行方不明。

ミキ →街に買い物に出るが、友人がことごとく行方不明に。

キサキ →結界の張り直し。魔王1に期待大。

ショウコ→職場から脱出。帰って寝た。

ゲンゾウ→政府に作戦中止を訴えた。社長に事件の収束を依頼。

魔王1 →依頼を受けて街に結界を張り始めた。(途中)

魔王2 →街中のインフラ破壊・情報収集。知り合いの援護。


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