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86 マオウ その5

 


「むぅぅ、罠を張るとしても人手が足りん。如何に炙り出すか……」


「お困りのようね、司令さん。」



 近未来のパラレルワールドの日本の夏。この世界は突如湧き出るカイジンと呼ばれるバケモノ達に手を焼いていた。


 カイジンと戦う特殊部隊「ブラス」の司令ギンジロウは、パソコンを眺めながら悩み事をしていた。今はもうすぐ22時といった所である。


 その最中、目の前に金髪の古風な服を纏った女が現れる。


「む?君は何者だね?外国人にしては和風の出で立ちだな。」


「へー?驚かないのね、貴方。私はハーン総合業務の社長をしている者よ。」


「総合業務、何でも屋ってところか。つまり商談でもしに来たか?」


「話が早いのは素敵なことね。私は貴方の悩みを解決できる。代わりに対価を要求する事になる。」


「音もなく司令室に現れるという事は、その実力はあるのだろう。」


「まぁ、解決するのは私じゃなくて従業員ですけど。貴方は何をお悩みですか?」


「ふむ、この際乗ってみるか。我々はカイジンと呼ばれるバケモノとの戦いに日夜、明け暮れている。」


「うんうん。そのようね。」


「そのカイジンはある方法で霊力を持って攻撃をすると、効率よく退治できる。が、そんな事ができる者は多くはない。それを集めて戦うのが我々ブラスという特殊部隊だ。まぁここに来てる以上、知ってるとは思うが一応な。」


「丁寧な説明、助かるわ。情報の共有は大事よ。」


「特異な部隊が得意になってると、当然だが間者が湧いてくる。それによって足並みが乱れ、苦戦し、一般人の犠牲者が増える。つまり裏切り者を捕まえたいわけだ。出来るか?」


「ええ、その手の依頼は何度もこなしてますわ。達成率99.9%を超える従業員を用意しましょう。」


「ほ、本当か!?それで、報酬はどれほどだ?」


「基本依頼料は1日でこれよ。あとは歩合なり追加依頼なりで加算されるわ。」


「むう、安くはないのだな。」


 億単位の料金リストに冷や汗がでるギンジロウ。


「近い未来に消える命のお値段。これではご不満かしら?」


 その返答にギンジロウはハッとする。ここは死ななくて良い命を守る為の部隊だ。そこに本来値段は付けられない。それを金で解決できるなら良い取引だろう。客観的に見れば怪しい女だが、実力は疑う余地はない。


「社長さんの言うとおりだな。これで手を打とう。裏切り者を捕まえる罠を張る。日程は8月6日から3日間の予定だ。」


「解ったわ。じゃあその時に派遣するわね。」


「待ってくれ、もう1つ依頼をしたい。個人的な事だが……」


「あら?なにかしら。」


 さっさと帰ろうとした社長をギンジロウは呼び止める。


「ちょっと遅いが一緒に晩飯でもどうだ?もっと君を知りたい。」


「まぁ!私を見て驚かないばかりか、私の方が驚かされたわ。」


 目を開き手を口に当てて驚く年齢不詳、名称不詳の不法侵入女。


 客観的に見れば非常に怪しい女だが、彼の主観では非常に興味惹かれる女性であった。


 ギンジロウ35歳。彼の心に春の風が、夏の夜に吹き荒れた。



 …………



「任務については社長から聞いてるとおりだ。君達にはその手伝いとして、メンバーの雑用係を担当してもらう。質問はあるか?」



 20XX年8月6日朝。山の中の演習場、その本部の臨時司令室にてギンジロウは2人の男達に任務と日程の説明をしていた。


 2人というのはケーイチとマスターである。あくまで違う世界なので、別の日から来ている。彼らの地球では2013年7月の初め頃だ。

 彼らはいつもの革コートと黒装束のスタイルで、ケーイチが前に立って応対している。


 部隊の雑用係はあくまで表向き。演習直前に参加することで既存メンバーからの疑いを向けられる役でもある。


 そうすればあらぬスキも生まれるし、本命を炙り出すのにも使えると踏んだ上での采配だ。


「その相手を見つけたとして、どこまでやって良いんだ?」

「多少は構わないが、出来るだけ生かして捕まえたい。」

「了解した。」


 ケーイチが下手人の待遇について質問し、その斜め後ろに控えていたマスターも手を上げて質問の権利を主張する。


「ではオレからも1つ。」

「なんだ?」

「空振りしました?」


「……!?」


「わかりました。答えなくて結構です。」


 ギンジロウは少し考えて露骨に動揺して見せた。肝の座った司令でも心のスキマに手を突っ込まれるのは堪えるらしい。


「では任務につきます。」

「ああ、メンバーに挨拶をしておいてくれ。」

「それでは失礼します。」


 臨時司令室を出ると時間を止めて部隊のメンバー達の下へ向かう。ケーイチは気になる事を相棒に聞いてみた。


「さっきの質問は何だったんだ?」


「特に意味は無いですよ。彼の人となりを見ただけです。決して社長が自慢しててウザかったとかではないですよ?」


「意味が解らねえ……」


「心にスキを作った人は読みやすい。それだけです。それより今日はトキタさん主導の任務です。頑張って下さいね。」


「おうよ、正直研修つっても地味な任務で拍子抜けだぜ。」


 勧誘から1ヶ月、ケーイチは身体を鍛え直した。ついでにマスターのチカラも幾つか封入してある。そして今日、実地研修となったのだ。


「ズルイくらいに楽勝な任務ですよね。」

「お前の時はどうだったんだ?」

「ウプラジュとか言う異世界の戦争を根絶させろ、でした。」

「世界中の?それ、どうやったんだよ。」

「人類を特売90%オフにしたらクリアでした。」

「イカれてやがる。」


「話を聞かない人ばかりでしたので。おかげで社長に魔王路線のシナリオを作られたというわけです。」


「なるほど、それでかよ!はた迷惑な裏事情だな、おい。ていうかウプラジュつったらヨクミ達の故郷じゃないか!?」


「ああ、なんかオレの空間移動に巻き込まれてたみたいですね。それは後にして、ほら着きましたよ。」


 救護班のテントの横に輸送トラックが着けてあり、その側で大勢のブラス隊のメンバーが演習準備の途中で停止している。

 2人は彼女達の側に辿り着くと、時間停止を解除する。


「「「わ、誰です!?」」」


 部隊の制服を着た女性達が驚いて後ずさる。

 中には戦闘態勢を取りながら、敵意をこちらに向ける者も居る。彼女達の年齢は10代後半から20代といった所か。


「驚かしてすまない。オレはトキタ・ケーイチ。君達の手伝いで雇われた者だ。こっちの怪しいのはマスターと呼んでくれ。」


「よろしくおねがいします。」


 真夏に革コートのケーイチが爽やかに挨拶し、真っ黒衣装でモブ顔のマスターが簡潔に挨拶する。


「うーん、私からしたらどちらも怪しいが……。失礼、私はツグミ。この隊のリーダーをしている。よろしく頼みます!」


 気を取り直したツグミはケーイチと握手を交わし、続こうとしたマスターはフイッっと握手を拒まれる。


『どんまい、あなた!』

『まぁ仕方ないさな……』


 ちょっとガッカリしながら出した手をフラフラさせてると、

 1人の女性が近づいてきてその手を掴む。


「よろしく。だが妙な事すんなよ?目ぇ光らせてっからな!」


 銀髪の、やや背の低い巨乳女性がマスターの手をぎゅうぎゅうにシめながら忠告する。


「よろしくお願いします。これで頑張れますよ。」


 力を込める度に揺れる巨乳に、回復効果を感じたマスター。


「……バッ、ただの社交辞令だ。いい気になんなよ!」


 相手の女性は何で平気なんだ?と不思議そうにしていたが、やがて乱暴に手を放す。うっすら手に張っていた次元バリアには気が付かなかったようだ。


『伝説のGカップ?同じ銀髪族なのにこの差はッ。』

『気にするなよ、○○○。君の方が綺麗だよ。』


「コホン、これから実戦形式の演習だ。私達はアップをするから2人は使用する物資の用意しておいてくれ。」


「わかった。」

「わかりました。」


 さっさと大量の荷物を任せて全員少し離れて準備運動に入るツグミ達。それでもチラチラとこちらの様子を窺っている。


「どうやらいい感じに疑念を持たれているようですね。ここで更に疑念を持たれるような事をしておきましょう。」


 そう言うと何度か身体がブレて見えるマスター。

 時間を止めて微妙に位置ズレして戻っているのだ。


「いや、真面目にやろうぜ……ああ、そういう事か。」


 ツッコミ中にマスターから黒モヤで意図を伝えられたケーイチは、風よけの幕を設置してテキパキと目の前の物資を仕分けする。使用する装備や消耗品各種を人員毎に分け、綺麗に並べていった。


 もちろん説明もなしで出来るものではない。彼女達が何をどう求めるのかを理解しての行動である。


『初めての仕事で完璧にこなせば、注目もされるってな。』

『ええ、オレがその為の状況把握をして伝えます。』


 マスターは時間停止して仕事や部隊の情報をかき集めて、さくさくと作業をこなしているのだ。


『この方法なら簡単に裏切り者も見つかるんじゃないか?』

『ええ、もう全員見つけました。黒幕もです。』

『早すぎだろ!オレはまだ顔と名前も一致してないぞ?』


 先程ブレまくってたのはただの怪しいパフォーマンスや仕事のやり方だけでなく、犯人まで探していたようだ。


『それで、誰なんだ?』

『オレが答えたら研修にならないでしょう。』

『そ、それはそうだが……』

『オレの事は保険だと思ってもらえれば。』

『わかったよ。なるべく自分で突き止めるさ。』


 ケーイチは帯や冒頭などにいきなり犯人の名前が書かれていたような、攻めてる推理小説の世界に潜り込んだ気分になった。


 もちろん普段の彼は推理小説なんて全く読まない。だが小説を読むに当たってその順番くらいは分かる。

 マスターとの仕事はその順番が違うので混乱するのだ。



 …………



「あの2人、詳しい話も聞かずに的確な仕事をしている?」


「しかも殆ど会話どころか目も合わせずにセッティングしてるわ。」


「よほど私達に詳しいスパイってことかしら?」


「どうだろう。注意すべきではあるが……ケーイチの方はイイな。」


「やっぱり?威厳というか貫禄が違うわよね。」


「マスターの方は根暗そう。」


「あっちはダメよ。顔から何から痛いヤツね。」


(そうかな。怪しいけどそこまで……まぁ良いけどよ。監視するのは変わらねえし。)


 口々に雑用係の批評をするブラス隊。銀髪女だけは少し違う評価だったが、口には出さずにいた。


「無駄話はそこまでだ!温まったらパート毎に”チュウ”ニング!」


「「「了解!!」」」


 ワイワイ言いながらストレッチ等を行っていたブラスのメンバー。ツグミの号令の下、細かく分けたチームメンバー同士でキスを始める。


 そこらじゅうでちゅっちゅし始めたブラスだが、別に彼女達は百合集団という訳ではない。互いの霊力の波長を調整するのである。もちろん目覚めちゃう女の子も多いが、それは別の話である。


 ちなみに今回はクローズドだが、公開演習の際にはぶっちぎりで人気のあるシーンである。特に他国との合同演習の時にはトキメく視聴者が大勢居るとかなんとか。



「なぁ、あれ……」


 遠目に見ていたケーイチがマスターに意見を求める。


「ジロジロ見ないほうが良いですよ。彼女達にとって大事な儀式みたいな物らしいです。」


 そんな事を言いながらも、遠隔でしっかり録画しているマスター。ケーイチには気付かれていない。サポート室の面々も赤面しながら食い入るように見入っている。


「そうするよ。変な世界に目覚めそうで怖いしな。ところで医療品が無いようだが、これじゃ応急手当も出来んぞ?」


「オレ達の常識外の回復方法があるみたいですよ。すぐ横に。」


 救護班のテントはすぐ隣りにある。もちろんケーイチもその存在は解ってるが、普通は何人か応急治療用の物資を持っておくモノだと考えていた。


「さっきからお前、なんか詳しいな。」


「さっき大方のシステムは把握しましたから。」


 各自濃厚なチュウニングが終わると息を荒くした彼女達が戻ってくる。装備を受け取りに来たのだ。


「雑用係さん、準備はいいかしら。」


「おう、ここに全部用意してあるぜ。」


 ケーイチが手をかざした先には数々の楽器ケースがパート毎に置かれていた。


「まぁ、よく説明なしに仕事ができるわね。」


「いや、まぁ……」

「プロですから、当然ですよ。」


 口ごもるケーイチを遮ってマスターが適当な事を答えておく。


『嘘をつかない範囲で適当なことを言えば良いんですよ。』


 ケーイチの心の中にはマスターの教えが響く。かつて社長に叩き込まれた事である。



「各員!装備したら所定の位置に整列だ!」


「「「了解!!」」」



 彼女達は自分の楽器ケースから管楽器を取り出すと、マウスピースに霊力を込めて息を吹き込む。


 彼女達の身体からマウスピースへ淡い光が集まり、楽器がバラバラになって身体へ吸いついて行く。

 数秒後、光が収まると楽器のパーツが鎧となってメンバーに装着されていた。まるでアニメか特撮の類である。


 楽器毎に形状が違い、主に木管は軽装で棒状の武器を持ち背後にスラスターらしきパーツが見える。


 金管は元のサイズによって重装だったり軽装だったりする。

 ラッパ部分は重装なら肩が多く、軽装なら腕や腹や胸である。

 ピストン部分はグローブとなって楽器毎に右腕や左腕に装着され、トロンボーンのスライドもやや形状は違うが腕に装着されていた。


 共通してるのは口元はチューブの付いたガスマスクのような物を装備しており、内部にはマウスピースが在るくらいか。木管の場合はご丁寧にリード付きである。ただしフルート系は横に伸びててリードも無く、他とはやや違うようだ。


「まるで管コラの世界ですね。」

「なんだそりゃ。」

「女の子と楽器をコラージュして戦うソシャゲです。」

「こんな時にもオタク系の話かよ。」

(ふーむ、重低音の子は大きいのか……?)

「まーたくだらないことを考えてる顔だな。」


 ブラス隊は準備万端で整列する。すると救護班が自分のテントからドラを引き出していく。


 そう、救護班は治療・回復を打楽器で担当するのだ。その仕様は謎であるが、とりあえず合図用のドラの準備も終わったようだ。



「よし。時間通りだな。これよりブラス部隊の実践演習を行う。人工とはいえカイジン相手だ、油断するなよ!!」



 ギンジロウ司令が整列した部隊のメンバーに対して訓示を行う。



 ゴォォォオオオオオオン!



 彼が下がってドラが鳴ると、演習場の各所に人工カイジンが現れた。



 …………



「あのカイジン?ってやつさ。人工とか言ってたよな。」


「そうですね。どこの世界にもマッドな連中が居るようです。」



 本来敵であるバケモノを自分で作って訓練する。その発想は

自分達の地球の教授を思い出させた。


 カイジン達は人型だったり戦車型だったり悪魔風味だったり。様々な形をしているが、楽器を纏った女性達に駆逐されていく。


 戦法としては低音の楽器から発する霊力の音波で地上スレスレに膜をはって、それを踏み台にした中低音と高音部隊に浮遊効果を付与させて空を駆け接近する。


 音の高さで地上からの高さが決まっており、中低音が敵の布陣をかき乱してスキを作りだす。そこに高音部隊が空から一斉攻撃を行うのがセオリーらしい。


 中低音と高音は役割を入れ替えることもある。その辺は実際の吹奏楽の曲と似たような戦術構成なのだろう。


「カイジンねー。特撮の怪人しか思い浮かばねえが……」


「漢字で書くと音階の階にゴミの塵だそうです。怪人と掛けてるらしいですけどね。表面は硬かったり柔らかかったりするようで、ああやって管を突き刺して直接霊力の音波で内部破壊をするのが効率の良い戦いらしいです。」


「特殊部隊つっても世界が違えば戦い方もだいぶ違うんだな。」


「それはそうですよ。それより周囲を観察しておいてくださいね。裏切り者が怪しい行動をしてるかもしれませんよ?」


「お、おう。」


 呑気に話をしている2人に対して、演習中の彼女達の一部で異変が起きる。突如低音の膜が歪み、一部穴が開いていた。


「テューバ部隊、足場を安定させて!バリサクはカバー!」


 ツグミの指示でバリトンサックスの鎧を着た子が不調の子の代わりに穴を塞ぐ。


「クリス、落ち着きなさい!また罰を受けたいの?」


「深呼吸なさい!貴女もいい加減、足手まといはイヤでしょう!?」


「わかってる!わかってるんだが……霊力が合わない!」


 パートリーダーとバリサクにキツ目に声を掛けられるが、余計に焦って上手く行かないクリス。彼女は例のGカップの銀髪族である。


 テューバの鎧が赤く明滅しており出力が安定しない。クリスのマスクの横から漏れる息にも、赤いモノが混ざっている。


 焦れば焦るほど霊力を通せなくなり、遂には鎧化が解けてしまう。


 霊力がごっそり持っていかれたクリスは座り込んでしまい、その場から動けなくなる。


「ハァハァ。くっ、何で私だけいつも……」


「パートリーダーからツグミへ、クリスの鎧が解けた。離脱させる。」


「また!?いいわ。救護班を向かわせる!バストロ援護して!」


「了解!!」


 すぐさまバス・トロンボーンが近寄って、バリサクの子と交互に穴を埋めていく。そのまま救護班を待とうとした時、黒ずくめの男が現場に現れた。


「運ぶのはオレがやりますよ。みなさんはそのまま続けて下さい。」


「「「雑用係!?」」」


「失礼しますよ。」

「お、おまえッ!?勝手に触って……もうテントに居る!?」

「わわ、もう来た!?」

「搬送完了っと。」


 クリスを抱えあげて時間を止めて救護班のテントへ届ける。救護班もクリスもこれにはビックリである。


「何しやがった?お前はなんなんだよ!」


「何でも屋ですよ。貴女達の雑用を任されただけの、ね。では仕事に戻りますので、お大事に。」


「待て、少し話がある!」


 簡易ベッドに寝かせてさっさと仕事に戻ろうとするマスターだがクリスに呼び止められて彼女に向き直る。


「なんでしょう?早く治療をしたほうが良いと思うけど。」


「ケガはしてない!それよりお前、どういう意図でここに居る?私を処分する為なんじゃないのか!?」


「どうしてそう思ったのか知らないけど、多分別件ですよ。」


「じゃあ、裏切り者でも探しに来たってのか?このタイミングで?」


「一応機密なので何も言えないけど、何が言いたいんです?」


「……私は見ての通り霊力が合わない。足並みを乱すだけだ。メンバーの中でも浮き始めている。お前がスパイ、もしくは司令の指示で私を排除しに来たんじゃないかってことだ!」


 被害妄想かホンモノの陰謀を掴んだのか。とにかくクリスは身の危険を感じているらしい。


「陰謀ですか?会ったのは初めてだけど、少なくとも司令さんはそんな人では無いと思うよ。お困りでしたら相談に乗るけど。」


「あんたを信用しろと?」

「特に無ければ仕事に戻るよ。」


「待て!あんたに頼む。あんたの能力と、自分の直感を信じる!」


 マスターは彼女の意思を受け、時間を止めてクリスの話を聞いた。


 彼女はクリス・フォルティーナ、17歳。責任と立場ある者達の忌み子・隠し子的な、ややこしい血筋と立場の女の子だ。


 名前と容姿の割に日本生まれの日本育ち、扱いも一応は日本人とされている。

 ギンジロウに演奏の才能を買われて、この特殊部隊に在籍する事でややこしい立場の彼女を狙う連中を遠ざけていた。


 最初は部隊仲間とも上手くやっていたのだが、ここ数ヶ月は調子を落としてしまう。自分の霊力が安定せず、楽器鎧の出力も不安定になって先程のような失態が続いているのだ。


 オカルトめいた一種の”感染”を恐れて、同じパートの仲間とのチュウニングも拒否感を出されてフリで誤魔化す事も多い。その所為で更に足並みが揃わないという悪循環も起きている。


「なるほど?その原因の心当たりは無いんですか?」


「有ったらとっくに解決しようとしてるさ!それで、あんたは私をどう見るんだ?」


 クリスは試すようにこちらを伺っている。


「心当たりが無いなら、貴女の無意識に現実との齟齬が生まれて噛み合わなくなってるんだろうね。」


「無意識?齟齬?なんだよそりゃ。」


「霊力。精神力でも魔力でも呼び名は何でも良いですが……本人の気持ちそのものが安定してないんでしょう。となれば貴女が本当にしたい”何か”、”成りたいモノ”。それを見つけて実行する。これが1番良い解決法だと思うよ。」



「私の、したい事……か。」



 クリスは考える。立場で言うなら彼女は常に誰かの道具にされていた。望まぬ血筋の所為で幼少から大人達に人生をグチャグチャにされた。

 ウチでその才能を使って働けば、組織が君を守れると言われてここで活動するも、このザマだ。


「ゆっくり考えれば良いんじゃない?」


「残念ながら私にはそこまで時間がないんだ。さっき少し言った陰謀。それが私に迫っている。」


「本人が言うならそうなんでしょう。ではオレが手を貸す事も出来ますがどうします?報酬と代償は……考え方次第ですが。」


 彼女を救うためにはチュウニングを始め、いろんな”触れ合い”が必要となる。マスターは黒モヤでそれらを伝えてクリスの判断に委ねる。


「はうっ!お前、私にこんな事をする気か!?いや解ってる!必要なのは解るんだ!でも男となんて初めてだし……いやむしろ正常なのか!?ううう、そうだアレだ!男ならセキニンを取るんだろうな!?」


「妻子持ちだから結婚以外でお願いしたいですね。」


「くっ、家庭持ちなのか。しかし手慣れてると思えば生存率も上がるというものか?」


「割とポジティブだね。ていうかオレで良いのかい?これは治療と割り切って他を選ぶ方が普通は良いだろう。」


「私は!そんなに軽い女じゃないぞ!」


「そ、それは解るよ。」


 重そうな胸を揺らしながら身を乗り出して力説するクリス。存分に理解して納得したマスターは、クリスに近づいていく。


「まずは霊力の補給からだ。ついでに調律しておくよ。」


「わ、わかった。お、おて、お手柔らかにな!?んくっ!!」


 クリスの口を自分の口で塞いで精神力を流し込んでいくマスター。


「んん!んんんんッ!!」

(男とするってこんなにクるものなのか!なんか、すげーぞ!?)


 粘膜的にも精神的にも充分に満たしてあげると次は調律だ。クリスの精神波長を感じ取って……。



『『これは!?』』



 お互いの波長がぴったりと合い、テレパシーによる相互理解が出来てしまう。お互いの余計な見栄や言い訳が取り外されて、ダイレクトに心が通じ合う。


『なんだ?あんたを受け入れるのがとても自然に感じる。』


『なるほど、君が最後の糸の保持者か。いろいろ納得したよ。』


 クリスの魂の中には、クマリが見た6本目の赤い糸が埋め込まれていた。



 …………



「「「うわあああ!!」」」

「「「きゃあああ!!」」」


「くっ、やはり低音が安定しないと高音が散らかる!」


 一方、残されたツグミ達は戦闘がおぼつかない。理由はツグミが言った通り、低音が作る足場の浮遊効果が安定しないと空中制動が上手く効かない謎仕様。

 その辺は普通の吹奏楽の演奏に準拠してるのだろう。


「ふーむ。やはり低音が鍵だな。そしてここまで苦戦してみせたなら。」


 ギンジロウは物見矢倉に登って様子を見ている。フラグ臭漂うセリフを言った瞬間に警報が鳴り響く。



 ビィーー!ビィーー!ビィーー!



「司令!ブラス隊員の周囲に純正のカイジン発生!いや、演習場の周囲全てに発生!包囲されています!」


 レーダーで探知した反応をすぐに伝えてくる部下。頼もしいがボーッとしている暇はない。


「そう来るよな。もう少しコラえるかと思ったが。ケーイチとマスターに出撃命令、彼女達を援護させろ!」


「了解!それで、我々は……」


「裏庭に用意した装甲車で応戦。余った者は銃を持て。白兵戦だ!」


「了解!白兵戦用意!装甲車は歩兵を援護しろ!雑用係はブラスを援護!」



「雑用係ケーイチ、了解した!」


 ケーイチは疲弊したブラス隊に駆け寄っていく。途中襲ってくるカイジン達は精神力で作った分解の剣で切り裂いていく。


「あのケーイチってのが来てるぞ!?」

「なんか、めっちゃ強いんですけど!」

「カイジンがバターみたいに溶けてるわ!?」


「ブラス隊!気を抜かないで敵を倒せ!」


(あいつはどこで道草くってやがる!)


 周囲を華払いで一掃しながら胸中で愚痴るケーイチ。


『トキタさんの研修ですし、オレが手を出しちゃダメでしょ。』


『言ってる場合か!敵だらけなんだぞ!?』


『この程度で音をあげる?仕方ない、援護射撃を送りますよ。』


『クッ……』


 マスターの物言いにちょっぴり悔しげなケーイチ。そんな彼へのプレゼントが送られてくる。



 ヒュゥゥウウンッ!! パッァァァァアアアン!!



 瞬間風切り音が聞こえて、包囲の一角が崩れ落ちる。即座にツグミの通信機に連絡が入り、聞き覚えのある声が聞こえてくる。


「リーダー!今のうちに下がって態勢を!」


「この声、クリス!?みんな集まれ!本部へ下がるぞ!」


 ヒュゥゥウウンッ!!ヒュゥゥウウンッ!!……

 パッァァァァアアアン!!パッァァァァアアアン!!


 ツグミが驚いている間にも風切り音と着弾音が連続して聞こえ、カイジンの群れが目減りしていく。


 クリスは救護テントの屋根から何かを射出しているようだ。


「この威力、この射程!クリスは何をしているの!?」


 ブラス部隊はケーイチの分解とクリスの謎の攻撃の援護を受けながら後退していく。余計な考え事をしている場合ではないのだが、それでも不可解に感じるツグミ。クリスのテューバではこんな攻撃は不可能なはずだった。


「あ、あれは?まさか……まさか!!」


 後退が進みクリスの姿がハッキリ見える位置に来ると、ツグミ達は思わず声を上げてしまった。



「「「げ、弦楽器だってぇぇええ!?」」」



「この性能と安定性……テューバより向いているようだ。」


 そこにはコントラバスを取り込んで大きな横向きの弓から霊力の矢、霊矢を放つクリスが居た。



 …………



「司令、ブラス隊全員戻りました!しかし!」


「うむ。いくら悲鳴を聞けど数が減らん!まるで五線譜を反復しているかのようだ。」



 本部と救護班のテントには大勢のスタッフとブラス隊が陣を張っている。

 しかし彼らは満身創痍に近く、元気なのはカイジンを分解し続けてるケーイチと弦楽器の弓で狙撃を繰り返すクリス。そしてその横で余裕をぶっこいてるマスターくらいなものである。


「なぁマスター、このままじゃマズイだろ。なんとか出来ないのか?」


 管から弦に持ち替えたクリスだが、戦況の不利を悟って問いかける。問いかけながらも援護の狙撃は絶やしたりはしない。


 彼女は弓を使うが横向きで、クロスボウ……というよりバリスタに近い見た目である。理由は簡単で、通常の弓道で使うような弓だと弦が彼女の大きな胸に阻まれてしまうのだ。


「その役目は彼がするハズなんだけど、目の前の戦いに集中しすぎなんだよなぁ。」


 クリスの問いかけを受けながら、やれやれといった感じでケーイチの奮戦を見守るマスター。


「とはいえ、犠牲が出ても嫌だし手助けくらいはしますかね。クリス、この後は君に活躍して貰うつもりだけど霊力は大丈夫そうかい?」


「いくらでも来なってんだ。マスターのおかげで漲ってるよ!」


「解った。一気に仕掛けるから合図するまで現状維持で。」


 クリスは頷いて短く返事をすると苦境にも関わらず、楽しそうに矢を放ち続ける。そしてポンポン蹴散らされるカイジン達。


「ケーイチ君。なにか案は無いかね?」

「何とかしたくはあるんですけどね!!」


(ふむ?あの社長のお気に入りにしては余裕が無いな。)


 ギンジロウはケーイチを依頼達成率ほぼ100%の人材だと思っていた。見た目も挨拶時もそのように見えた。しかし今はそんな印象は無い。

 犠牲が出てるわけでもないし良くやってはくれてるが、何かが足りないように思える。


『トキタさん。戦ってないでさっさと内側へ移動して下さい。』

『何言ってやがる!ここを抜かれたら――』

『貴方の任務は裏切り者の捜査です。目の前のは任せて下さい。』

『こんな状況でどうする気だ!?』


『今からオレとクリスで”やらかし”ます。トキタさんはそのスキに裏切り者を捕まえて下さい。』


『どうやって!?オレには答えは見えてないんだぞ!』


『少しは頭を使ったらどうです?みんなと違う反応や動きをしている者が当たりですよ。あと司令に一言言って下さいね。』


『うぐっ、わかった。』


「司令、今からウチの怪しいのが反撃に転じる!」

「手が在るのだな!どうするのだ!?」

「ハデに”やらかす”らしい。その間がチャンスだ!」

「む……、わかった!総員、気を引き締めろ!助っ人が反撃する!」


「「「了解!?」」」


 と言いつつも何の事だかよく解らないメンバー達。司令もよく解ってないし、ケーイチも解ってない。それでも司令に話を通すのは大事である。後で勝手に何かされたとゴネられたら面倒だ。



「さーさ。ステージの始まりだ!!A・ディメンション!!」



 マスターが叫んでチカラを開放すると、だだっ広い演習場全てが異次元宇宙に飲み込まれた。飲み込まれたエリアの外周部分はなぜかコンサートホールの風景が映っている。


「「「何だこれは!?」」」



「そして召喚!シーズ、来てくれ!!」


「シオン入場!甘美なヒトトキを届けるわ!」

「貴方のリーア、心を浄化してあげます!」

「ユズちゃん登場!私に釘付けにしてあげる!」


 謎のメイド姿の3人が現れて決めポーズ。司令を始めブラス隊はますます訳がわからなくなっていく。


「イロミシステム起動!みなさん、楽器をお借りします!」


 ブラス隊の楽器を剥がして、シーズの周囲に浮かせて彼女達3人とリンクを張っていく。だんだん本来の使い方とはかけ離れてきたイロミシステム。ただまぁ、その方が平和ではある。


「派手に行くよ!コンサートマーチのメドレーだ!」


「「「ラ、ラララーララーララーラララ――」」」


「「「こわっ!みんなゾンビ顔になってる!」」」



 シーズは1人12トラックも指定されて死んだ目で歌い出す。それに合わせて奪われた楽器達が音をかき鳴らす。


 そのマーチの演奏音がカイジン達に響き渡ってヒビが入っていく。それは唯の音ではなく、マスターの精神力が込められていた。


「今だクリス!これを使ってぶっとばせ!」


「了解だ!」


 クリスの周囲にはマスターが用意した数々の弦楽器が浮かんでおり、それら全てを身体に装着する。全身凶器となった彼女は、上空へ浮き上がって身体中の弦に矢を装填する。


「ぶっ飛べ!全弾発射だ!!」


 全方位に居る、弱ったカイジン達に大量の矢を降り注ぐ。

 これには彼らもひとたまりもなく、次々と倒れ身体が崩れていく。


 矢は勝手に再装填されて次々と射出される。マスターのチカラをその身に受けたからこそ出来る芸当だった。



「こんな事がありえるのか……?」


「嘘、たった数人で私達より激しい戦いをするなんて!」


「くそっ、こんなの聞いてないぞ……」

「ちょっとあんた。お話聞かせてもらおうか。」


 みんなが呆然としている中、何人かが不審な動きをする。

 それらをケーイチが問答無用でひっ捕らえ、気絶させて転がしておく。


「うんうん。なかなかいい調子だね。」


「すげぇぞマスター!あんたのサポートと私の矢があれば無敵じゃないか!」


 クリスは全身から矢を放ちながら興奮している。今までの鬱憤を晴らせて嬉しいのだろう。


「調子に乗って油断しないで下さい。って、もうそろそろ終わりか。メドレーで流すほどでも無かったな。」


 周囲を囲っていた幾百のカイジン達は粉々に打ち砕かれていた。

 指示を出していた者がケーイチに捕まったのか、追加のカイジンも出てきていない。


 ついでに言えば倒すだけならこんな小細工は要らない。しかしここはクリスに華を持たせる場面と判断したのだ。


 こうしてカイジン達の奇襲は失敗したのであった。



 …………



「ケーイチ君、マスター君。君達のおかげで犠牲無く終わることが出来て感謝している。」


「オレは大した事はしてないけどな。」


「無事に済んで良かった。裏切り者も”全員”捕まえられたしね。」



 あれからA・ディメンションでの隔離を解き、今は負傷者達の治療と現場の確認作業をしている。応援の自衛隊も程なくして到着するだろう。


 救護班テントからは打楽器の音が漏れてきており、こちらも音の高低で修復箇所が代わるというよく解らない仕様らしい。


 ケーイチが捕まえた者達は拘束して本部の地下に転がしてある。あの短時間では全員捕まえるなど到底無理な話だったが、マスターがそのズルさを発揮して黒幕までしょっぴいていた。


 黒幕は国のお偉い議員さんの1人で、カイジン達を操る組織と繋がりがあったらしい。


「しかし敵も初日で襲ってくるとはな。どんなに早くても夜だと思っていたが……」


「短期決戦にして事の隠蔽を図る時間が欲しかったのでは?」


「かもしれんな。ともかく助かった。ありがとう!」


(まぁ、真相はオレがせっついただけなんだけども。結局あまり研修らしくならなかったなぁ。)


「報酬は後で社長が取りに来るので期日までに用意しておいてくださいね。」


 心の中でぼやきながらも今後の話へシフトさせるマスター。

 雑用係として怪しい動きを見せてた時、敵の命令をすり替えたり焦燥感を煽る工作をしたりと暗躍していたのだった。


「ああ、解ってる。ところでクリスの事なのだが一体――」


「司令、お話中失礼します!これを受け取って下さい!」


「これは……クリス、お前!?」


 突如乱入してきたクリス。司令に差し出された書類は退職届だった。


「やっと自分の居場所を見つけたんだ。今までお世話になりました!」


 クリスは生き生きとした笑顔で宣言し、ギンジロウに頭を下げるのであった。



 …………



「そういう訳でここに住むことになったクリス・フォルティーナだ。」


「何でもするので、どうかよろしくおねがいします!」



 仕事を終えて魔王邸に戻ったマスターと、付いてきたクリス。退職届は当然却下されたのだが、クリスの意思は固かった。


 司令の説得でなんとか臨時隊員として在籍する事にはなったが基本は魔王邸で暮らすので接点はあまり無い。


 彼女としてはあの世界はどこに居ても面倒なだけなので、魔王邸に引っ越す事を強く望んだのだ。



「「「なんて圧倒的な存在感……」」」



 カナを始めとした使用人達はクリスの巨乳に驚異を感じていた。しかし妻の○○○はむしろ歓迎しているようだ。


「はじめましてクリスちゃん。彼の妻の○○○です。さっそくだけど、私のイモウトになる気はないかしら?」


「い、いも!?」


「何を言ってるんだ○○○。いきなり過ぎて困ってるじゃないか。」


「だって、私は孤児みたいなものだったし……お互い銀髪だしちょっと良いかなって。それにその巨乳の研究を思う存分したいんだもの!」


「解った、りました。良いぜ……ですよ。私も親類は変なのしか居なかったから、姉妹には憧れてたりするんだ、です!」


(○○○の発言も充分に変だから、あまり雰囲気に飲まれない方が良いと思うけども。)


 などと考えつつも発言はしないマスター。なぜなら既に○○○が、目を輝かせてクリスの手を取っていたからだ。


「やったー!魔王邸へようこそ、クリスちゃん!」


「「「よろしくね、クリスちゃん!」」」


 あの世界ではヤサグレもあって男みたいな喋り方のクリス。今はちょっとずつ矯正しようとしていた。わたわたする姿はとても可愛らしく、ほかの使用人達も笑顔で歓迎した。


(へへ、マスターの家族と一緒なら絶対楽しくなるな!あれ?でも妹って何をすれば良いんだ?ちょっとずつ覚えて行けば良いか!)



 この日、魔王邸に「妹枠」という謎のポジションが誕生した。



 …………



「マスター。貴方ってヒトに教えるの向いてないんじゃない?」


「面目ないです。どうも甘くなってしまって。」


「残虐なお人好しというのは扱いに困るわね。」



 9月29日。異界の社長宅で駄目出しされるマスター。

 社長のチカラの正体を見破ってからは仕事絡みでもマスターと呼ばれるようになっていた。


 ようやく認められたというか、領主が彼のアレっぷりに根負けしたというか。どちらにせよ良い信頼関係を保っているので問題はない。


 それはともかく何度か研修で異世界の仕事に飛んでみるも、マスターは厳しく指導が出来ずにいた。一応はケーイチの経験になってるので全くの無駄ではないが、社長の求める水準には達していない。


「素朴な疑問なんだが、オレってそんなにダメか?」


「ダメよ。」

「ダメです。」


「具体的には?改善しようにもそれが解らねえと……」


「知識も洞察力も覚悟も行動力も。」


「……それってほぼ全部ダメじゃねえか。」


 ケーイチはがっくりする。何でも屋への勧誘から4ヶ月。

 自分なりに鍛え直したはずだった。サイガを通して神の加護も貰っている。

 だからこそ足りないものだらけと知って凹んでしまう。


「だから研修で鍛えるのだけど、マスターはすぐ助けちゃうから。」


「言い訳できませんね。いっそ本番に投入でもすれば、嫌でも身につくとは思いますけど。」


「じゃあ明後日。日本海の掃除でもしてもらおうかしら。日本の船以外の消滅の仕事よ。」


「そんな物騒な依頼、どこから受けてきたんだ?」


「日本政府からに決まってるでしょう?被害者側なんだし。」


「あの国はどうなってるんだ!?」


 魔王を倒せとワイワイやってる中で魔王側に手助けを要求する。勿論取引先が魔王サイドと知ってのことでは無い。知っていたらそうそうそんな依頼は出さないだろう。今回もまた、社長独特の方法で依頼を取ってきたに過ぎない。


 だが事実を知れば知るほど、頭が混乱してくるケーイチだった。



 …………



「うーわ、何ヵ国きてるんだコレ。日本海が一面怪しい船で覆われてるじゃねえか……」


「準備は良いですか?今回オレは電池と監督役でしかありません。きちっと指示通りに全滅させてくださいね。」



 10月1日。日本海上空900mに漂うケーイチとマスター。

 眼下にはまるでイベント開場前の人集りのような光景が漁船や軍船で作られていた。


「判っている。せいぜいお前や社長に文句言われねえようにするさ。」


「そう願ってます。それでは1分後に任務開始です。」


 ケーイチは眼下を確認しながら精神を集中させる。


 相手を倒すだけなら何も問題はない。分解は以前より強力になった。魔王のチカラを電池式で装備してるので移動や防御も完璧だろう。その扱いもここ数ヶ月で上達している。お膳立ては完璧なのだ。


(余程油断しない限りは失敗は無い。オレ自身の為にも、サイガを初めとした神社の為にも、オレはここで明確に人類に牙をむく!)


「ミッション開始!」


「任せろ、出撃する!!」


 ケーイチは船の群れへ向けて降下を開始した。



「ぅぉぉぉおおおおおおおお!!」



 大型漁船の甲板で日本の船の出方を見ていた男は突如、空から叫び声を聞いて上を見る。真っ青な空から革コートの男が落ちてきた。


「な!?」


 それが遺言となって彼の身体は分解される。ケーイチは着地すると船員達が驚いている間に全員分解し、終わると次の船へ飛び移る。


 その際に空中で元居た船をチカラの弾で打ち抜き、船すらも分解していく。


 対複数敵用に作った技で、挙動としては着弾地点から催涙弾のように分解の霧を撒き散らす。


 ”死夜霧”と名付けられたコレを人が浴びると、血の涙を流しながら身体が溶けるように分解される。それは当然無機物にも有効で、次の船に着地した頃には前の船は殆ど原型を留めていなかった。


「次ッ!はい次ッ!まだまだいくぞッ!」


 ぴょんぴょんと船を渡り継いでは人も船も分解していくケーイチ。相手も異常を察知したのか、軍船や大型漁船から機銃を向けられる。


「ならば上空から!」


 全身から若干のチカラを放ちつつ空を舞うケーイチ。

 そのままでも次元バリアで防げなくはないが、消耗が激しくなる。ならば上空へと逃れ、俯角の取れない位置から攻撃しようと試みる。


「”死夜霧”の連射で逝かせてもらう!!」


 開始前に集めておいた小石に死夜霧を付与して、そのまま落下させる。小石の分、チカラを射出する精神力を節約することで、ある程度の技の連射が可能になる。


 海上では黒紫の弾が着弾した所から同じ色の霧が発生。

 次々と船が消えていく。海面に着弾した物は海水すら分解している。


「なんだか、やべえ気分に目覚めそうな光景だな。」


 自身が起こした大惨事を眺めながらちょっとゾクゾク来たのを自覚するケーイチ。即座にマスターからテレパシーが飛ぶ。


『仕事が出来れば何でも良いけど、なるべく平常心を心がけた方が長く続けられますよ。』


『お、おう。気をつける。一度バッテリーの補給を頼む!』


『了解です。』


 上空のマスターへ近づきながらも下へは死夜霧を落としていく。海面はもう、分解の霧による消滅祭りで大混乱となっていた。



「あの日本が反撃したのか!?それともアメリカか!?」


「いえ、相手はジエータイではありません!生身の人間の様です!」


「そんな馬鹿な!……いや出来るとすればサイトか?魔王か!?」



 各国連合1000隻を超える挑発。その中の一角が崩された事で、各国の指揮官は焦っていた。


 この船団に生身で挑むのはバカとしか言いようがない。だがそれを実現している以上、相当な手練であろう。今も上空へ攻撃を仕掛けて居るが、被害が拡がっている事から効果的とは思えない。


「報告!あの黒紫の霧に触れると分解される模様。おそらくは――」


「英雄・ミスターケーイチだと!?彼は行方不明と聞いてたが……いかん、今すぐ撤退だ!狙われた奴らを盾にしてでも逃げ帰れ!!」


 世界に蔓延ったテロ組織ナイトの中枢を破壊した英雄。彼が人間を裏切り、行方不明になって1年超。このパターンは秩序を守る者なら、いや当時を知る者なら誰でも知っていた。


 何時ぞやの国際テロリストの時と同じパターンだからである。


「はっ、全軍撤退!全軍撤退!反転して全速力で撤退です!」


 オペレータもその考えに至り、全力で撤退命令を伝える。


「ちょっとその指示は遅かったな。悪いが逃さねえぞ。」


「「!!」」


 気がついた時には船ごと水葬が完了され、あの世へ向かって旅立っていた。


 補給が完了したケーイチは、今度は各国の指揮系統を奪いに来た。最初はこっそり戦力を削ごうと目立たないようにしていたが、バレたならより効果的な作戦を選ぶべきだと考えていた。


(あとは退路にチカラを放って……これで逃げられんだろう。)


 相手後方の船に死夜霧をぶち込み、分解の煙幕を作って逃げ場を塞ぐ。それを全ての敵陣営に対して行い、前に出るしかなくなる連合船団。


 日本の海上保安庁や自衛隊は、救援要請を送りつつも撮影を続けていた。しかし今からでは応援は到底間に合わないだろう。


「しかし妙だな。これだけやれば戦闘機のひとつくらい、来ても良さそうなものだが……」


『ソッチはオレが頂きました。ロシア製はコレクションにします。』


『お前、そうやって集めてたんだな……』


 ケーイチは教官時代の不可解な事件を思い出す。彼の様なオタクなら本物に惹かれても不思議ではないかと適当に納得する。


『中国製なら譲れますけど。半島製はまだ出撃してませんね。』


『どれも要らねえ。だがまぁ、援護は助かる!』


 ケーイチは日本側へ向かう船団の先頭に追いつくと、慌てる日本の船に到達する前に分解していく。


「どうせ撮ってるんだろう?いい角度で頼むぜ。」


 ケーイチは大量のチカラの弾を生み出して、全ての船を消滅させて回った。




「ぜぇぜぇ、いくら何でも1000隻越えは疲れるぜ……」


「お疲れ様です。と言いたいところですが、まだ途中ですよ。」


 日本海上空でケーイチの背中に手を置き、精神力の補給をするマスター。すっかり仕事が終わって、これからビールな気分だったケーイチに水を差す。


「おいおい、どこを見てるんだよ。もう敵なんて居ないだろう?それとも何か?別の海域に新手が出たとかそういう話か!?」


「いえ、そちらはオレが全て潰してきたので問題ないです。」


「お前今さらっととんでもねぇことを……じゃあなんだよ。」


 実は更に北と南の海域から別の国々の船団が迫っていたのだが、彼らは戦いと呼べるような物は何もなく、この世を去っている。


 ケーイチが一応戦いらしきモノをしているのは、デビュー戦ということもあるし――未熟でもあるからだ。


「港に残りの船、居ますよね?一応日本海に面してる港は襲っておいたほうが良いと思いますよ。再侵攻も遅れるし。」


「お前、鬼だな。」


「悪魔です。ていうか指示通りならそうなります。社長は絶対そう言う所に罠を仕掛けてくるので、よく聞いてよく考えた方が良いですよ。報酬を値切られた変わりに皮肉と嫌味を貰いたくなければね。」


 指示通りにこなすというのも、あの社長相手なら一筋縄では

 いかないのである。だからこそ鍛えられた面もあるのでそれが悪とは一概には言えないが……いや、やっぱり悪女か。


「なるほどな。この際だ、デビューは派手な方が良いだろう!」


「前向きで結構です。補給も終わったので頑張って下さい。」


 この後は漁港軍港、港とつく場所を片っ端から襲って分解していく。昼間から悪夢を見せられた国々は人命と予算をごっそり削られるのであった。



 …………



「ケーイチさん。領主の使いとしてのお勤め、お疲れ様です。」


「ケーイチよ。立派に勤め上げたと領主よりお褒めの言葉を頂いた。大儀であるぞ。」


「それはどーも。今回は得意分野だったからな。次はわからん。」



 異界の神社に戻ったケーイチはサイガと神様に出迎えられ、労いの言葉を頂戴する。神様は年単位で引き籠もっていたが、ケーイチが領主の契約奴隷になる話を聞いて復活した。現金な神様である。


 その為こころなしか、いや露骨にケーイチの対応も素っ気ない。


「謙虚なことじゃな。それは今この神社に必要な事でもある。お主とサイガの仲を認め、本格的に神主見習いとしての修行も――」


「ちょ、ちょっと待って下さい神様!その辺はこの後話しますので!まずは彼を労いましょう。ケーイチさん、夕ご飯出来てますのでこちらへどうぞ!」



「ああ、助かるよ。ただいま、サイガ。」

「はい、おかえりなさい、ケーイチさん!」


「ふむ……ふむ。」


 2人は手を取り合い、居間へ向かう。


 引き籠もってた神様は自身が望まれてないことを悟って部屋へ戻っていく。年齢や考え方からしてどうにも上から目線が目立つ彼女。新たな住人と上手く付き合っていくには、まだ時間がかかりそうだ。



 居間のテーブルの上には料理が並べてあり、ケーイチは感動してサイガは若干ドヤ顔気味である。


「どれも美味そうだな!って地球のビールもあるじゃないか!」


「はい!今日はビールをご用意しました!お好きな銘柄なんですよね?」


 2人は笑顔で席に着き、瓶ビールを開けて初仕事の成功に乾杯する。


「「カンパーイ!」」


「くうう、やっぱり美味いな!」


「喜んで頂けて嬉しいです!でもそのー、さっきは神様がごめんなさい。私からも話しておきますから。」


「まぁ、仕方ないさ。サイガが悪いわけじゃない。」


「あー、えっと。後で!後で話がありますので!」


「うん?ああ、判った。しかし今日は豪華だな。好物も多い。」


「はい、頑張りました!いっぱい食べてくださいね!」


 祝杯と食事を済ませてほろ酔い気分のケーイチ。

 ご馳走様でしたと感謝を伝えて風呂に向かうとサイガも付いてきた。


「お背中、お流ししますね。」

「ああ……」


 あまりに自然にふるまい混浴するサイガに、ケーイチは期待と動揺を必死に抑えている。


「お仕事の後の男性って素敵ですね。とても格好良いですよ。」

「……ありがとう。」


 背中どころか前も全て、丁寧に洗っていくサイガ。


 彼女とはこの1年ちょっと、いい信頼関係を築いてきた。だが明確に恋人としてではなく、身体を晒し合う仲では無かった。


 それがまるで手慣れた恋人か、それ以上の関係のような状況に大いに混乱しているケーイチ。それでも彼女の行いを無下にするつもりがない自分を自覚してもいた。


「今日はサービスが良いんだな。」

「さすがはケーイチさん。動揺を出さないのは良いですね。」

「身体は正直だけどな。」

「うふふ。それは女としては嬉しいことです。」


 同居している若い女にこんな事をされれば、彼のその1部の反応は当然と言える。


「ケーイチさん、私は貴方と共に生きたいと思ってます。」


「ああ。先に言われたがオレもそう思っている。だが――」


 真剣な表情で見つめて宣言するサイガ。手の方はさり気なく彼を触っており、少しあざとさが伺える。彼女も必死なのだ。

 ケーイチの方も応えようとするが、多少濁した口調で問答を始めようとする。お互いに傷のある人生なのだ。確認は大事である。


「待って下さい。私は見ての通り、ケーイチさんの全てを受け入れるつもりです。ですが、貴方には先に伝えねばならない事があります。」


「ほ、ほう。綺麗だが……うん?はじめて、なのか?」


 サイガは自身の秘部を開いて明かし、彼に確認させる。手慣れた感じからしてそうは思ってなかった彼は、不思議そうに彼女の目を見る。


「今は、です。以前、私は1児の男の子を産んだことがあります。」


「え!?いやしかしこれは……他もそうは見えないぞ!?」


 明らかに出産を経た身体ではないサイガ。何がなんやら解らなくなるが、その事から推測できる事が頭に浮かぶ。


「もしやアイツの仕業か?」


「はい、いえ!完全に自業自得なんですが。あ、違いますよ?産んだのはマスターさんの子ではなく、元いた神主さんのです。」


「余計に分からなくなったな。前にやらかしたと言ってた事か?」


 サイガは過去の過ちをケーイチに話す。

 元神主との情事の始まり、立場的にマズイので誤魔化す為に領主のルールを悪用した事。他の男達を巻き込んでの策略からの、全てを失った経緯まで。


「最初は襲われた側だし特別な気持ちは無かったのです。しかし回数を重ねたり子を授かって本気になり……体面的にもなんとかせねばと小細工を弄して、全て消えてしまいました。マスターさんの話では、魂まで消したそうで、悼むことすら許されませんでした。」


「そう、か。そうだったのか……」


 マスターなら確かにやりかねないだろう、とケーイチは思う。


 マスターは馬鹿が付くほどお人好しではある。しかし一度こうと決めたら全く容赦をしないどころか、滅ぼす事を楽しんでるフシもある。アイツ曰く、「相手がそれを望んだからだ。」らしいが。


「アイツは……サイコパスだからな。だが有る種の鏡でもある。」


 相手の望むモノを映し出し、”結果”まで素早く反映させる。

 その結果どうなろうと、自業自得で済ませてしまう。それは世界のルールに則った行為ではあるのだが、その辺はケーイチは知らない。そこまでは教わっていなかった。


「はい。なので私は……ケーイチさんの目にはどう映るか、良く見て欲しかったのです。」


「それなら答えは決まっている。」


「あ……んんッ。」


 ケーイチはサイガを抱き寄せてたっぷり時間を掛けて、上から下まで口を付けていく。敏感な部分に当たる度に声が漏れ出し真っ赤になっていくサイガ。


 水垢離のせいか白く引き締まった肌。胸はC程だろうか、こちらも引き締まっていてとても心地よい。

 耳や首筋・脇や脇腹、フトモモの内側などなど。横方面が特に弱いようだ。


「な?君は全部魅力的だ。お互い失敗から這い上がる身だ。2人で協力して生きていこうぜ!」


「あの、別に唇だけで良かったのでは……いきなり充実しすぎてちょっと動けなくなっちゃいました。」


「あ、すまん。オレもその、ちょっと理性が……」


「「…………」」


「お、お返事。嬉しいです。」


「そ、そうか。良かった。それで、良いか?」


「言いながら、もう触ってるじゃないですか。」


「サイガだって握ってるじゃないか。」


「ま、まずは温まりましょう!ちゃんとお布団でって事で!」


「わかった。だが少しだけ味見するぞ?」


「ん……はい。」


 唇が重なり合った2人は火が付いてしまう。湯船に複雑な波紋を生じさせながら吐息が響く。


 その響きはちょこっと開いてる入り口の扉から外に漏れていた。



(((うひゃー!メチャクチャ盛り上がってる!)))



 貪るように求め合う2人だったが、バッチリ他の巫女達に覗かれていた。



 …………



「緊急のニュースをお伝えします。10月1日に日本海での合同演習を襲撃した犯人を、政府はトキタ・ケーイチ氏と発表しました。繰り返します、犯人はサイトの英雄であるトキタ・ケーイチ氏です!」



 10月7日。月曜の昼に政府の公式発表がされた。事件からほぼ1週間が経過しており、この時点で世間からは発表が遅い!とテレビ局に苦情が殺到した。別に彼らが発表してる訳では無いので、テレビ局はいい迷惑である。


「ケーイチ容疑者は去年ミキモトグループの研究所を襲い、妻のアケミさんを殺害して以降、行方不明となってました。しかし今回、明確な殺意を持って1000を超える船舶と各国の港を――」


 アナウンサーはこれまでの経緯を改めて説明していく。


「政府はケーイチ容疑者を国際テロリスト・第二の魔王と位置づけ、全ての権利を剥奪すると発表しました。繰り返します。サイトの英雄であるトキタ・ケーイチ容疑者は――」


 時間がかかったのはこれの所為である。


 海上保安庁や海上自衛隊が撮影した動画には、空を飛ぶ2人の人物が映っていた。

 ケーイチと現代の魔王である。あの時、ステルスは敢えて使っていなかったのだ。

 現代の魔王は戦闘行為こそ映ってはいないが、各国の戦闘機と北と南の海域の軍団が消滅した事から関与はほぼ確定とされた。


 この辺りを発表するかどうかで政府内でも議論が白熱していた。出来れば隠したい事実ではあったが、そうも行かない事情があった。


 日本だけが無事だった事から各国から意地の悪い言い掛かりを受け、戦争になりかねない窮地に陥っていた日本政府。

 誰かが怪しさMAXの何でも屋に依頼したのが原因ではあるが、依頼した議員もまさか魔王が出てくるなど思ってもいなかった。


 とにかく都合の悪いことは現代の魔王の所為にすればいい。結局はその法則を使って今回の発表に至ったのだ。



 結果ケーイチは無事に魔王デビューを果たし、人類の敵となった。


お読み頂き、ありがとうございます。

新キャラを○○○の妹分っぽい設定に!とか考えてたら、

絶唱しそうなキャラに……。

次エピソードは21時に上がります。

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