70 トゲル その3
この物語はフィクションです。
「大臣、こんな物が届いております!!」
「このクソ忙しい時になんだ?」
2011年3月。防衛大臣に2通の手紙が届いた。処刑フェチな彼は、目がバターになるくらいに忙しい。事と次第に置いてはこの部下を……などと妄想するくらいには苛立ちと焦りが彼を苛んでいた。
前日にあった広範囲における地震災害のせいである。
―予告状―
時が来た。この国の危機に我は再び力を振るう。
しばしの間、難儀を抱える民衆より苦難を盗ませて頂く。
4の月までに体制を整えられたし。
怪盗イヌキ より。
「なんだと!?怪盗イヌキの予告状!?」
「この文面からして我々に助力を申し出ているようですね。」
「散々世間を騒がせておきながら、どんなツンデレだ!」
「大臣からその様なお言葉が出るとは……お好きなのですか?」
「うるさい、次のを見せろ!」
はじめまして、○○○○・○○○です。
かなり苦しい状況とお見受けします。発電所周りは自分が抑えますので、終わった頃に来てくださいね。
「現代の魔王だと?こんなフランクな文章を送るとは、頭の悪さが滲み出ておるでないか!イタズラじゃないのか?」
「いえ、イタズラでしたらこの名前は書けません。」
「信じたくはないが、本物か。こんなに頭の悪い奴に世界は……」
「大臣、それよりも発電所に向かう部隊を一端止めるべきです。」
「うむ、そうだな。魔王の言の真偽はともかく、ヤツが出るなら無理は出来ん。放射能レベルの低いところで待機させろ!」
「ではそのように。」
ただでさえ被害が大きく放射能も観測されている中で、現代の魔王と鉢合わせては捕まえるどころか交戦すら出来ない。
それを危惧しての指示だったが、突如部屋の電話が鳴る。
prrrrrrr prrrrrrr
「私だ、何だ?」
『発電所の応急処置が終わりました。もう部隊を動かして大丈夫ですよ。』
「はぁあ!?」
思わず素っ頓狂な声をあげる防衛大臣。部屋を出ようとした部下が何事かと足を止める。
『驚くのも無理はありませんが事実です。これ以上の汚染は無いので作業を開始して貰って結構です。既に汚染された場所はそちらで対処してくださいね。それでは失礼します。』
言いたいことだけ言って通話が切れる。防衛大臣はすぐに確認作業の指示を出すのであった。
現代の魔王と怪盗イヌキが助っ人に来ている。この情報は機密扱いとなったが現場での目撃情報が相次ぎ、すぐに報道されることとなった。
…………
「なんて光景だよ。これが本当に日本なのか?」
「視界すべてが瓦礫だなんて……」
「こんなのどうしろって言うんだ。」
その日、サイトや特殊部隊が自衛隊と併せて出撃していた。調査と救助、そして陸路の確保が目的である。
街並みは瓦礫と果て地図と照らし合わせても何が何だか分からない。若い救助隊がボヤくのも無理はないが、だからこその救助隊である。
ひゅおおお! シュタ!
行軍する団体の側に、風と共に突如2人の人物が現れた。
「くんくん、この辺りね。」
「うむ。風を通してかすかに人の気配があるな。」
「「「何者!?コスプレイヤー!?」」」
ピンクの魔法少女とタキシードの奇術師風の男が周囲を探る。
「瓦礫に生き埋めか。どかすからイタチ、お願いね。」
「心得た!」
「な、なにを……?」
魔法少女がペタペタと瓦礫に触れると一瞬で瓦礫が消えていく。中からは倒れて気絶している男が現れ、奇術師が風で部隊の方へ運んでいく。
「そこの救助隊!呆けてないでさっさと怪我人を運んで!」
「お前たちは……?」
「私は怪盗イヌキ!防衛省には話を通してあるわ。」
「オレは懐刀イタチだ。以後よろしく。」
「「「!!」」」
思わず構えるサイトや特殊部隊のメンバーだが、それらを無視して瓦礫の除去と救助に励む怪盗達。
救助者をまたたく間に10人ほど部隊の前の地面に横たえる。
「あんた達、ピクニックに来たのなら帰りなさい!そうでないなら税金泥棒してないで国民を助けろ!!」
「くっ!救護班、タンカ急げ!!」
「イタチ、次のポイントへ行くわよ!」
「心得ている。」
「まて、お前が本当にあの怪盗なのか?それにそっちの男は!」
「うん?あんたは……病院を徘徊してた男か。肝試しなら別の場所でやるべきだったわね。」
「あの時の部隊長殿ではないか。婚約おめでとうと言っておこう。」
「な、なんでお前らが救助なんてしてるんだ。」
相手の言から本物だと分かってしまったケーイチ。思わず問い正してしまう。社会の敵が救助活動というのが頭が理解できなかったようだ。
「私はいつでも正義の味方よ。あなたはあの時悪人の味方をした。でも取るに足らない存在だったから見逃してあげたのよ。だって、目の前で手を振っても気が付かないんですもの。」
「うぬぬ……。お前はやはりアイツのチカラを!?」
「アイツ?ああ、彼のことね。感謝しなさいよ、発電所は彼が処置してくれたわ。でなければ被害は更に甚大だったでしょうよ。」
「何だって!?」
「そちらも既に大臣に通達済みだ。確認すると良いだろう。我々が気に入らないなら、ピクニックなどしてないで本気で手柄をあげるんだな。オレは今日、350人は救うつもりだぜ。」
350人。バレンタイン事件の死者は324名。それよりも多くの人を助けて正義の味方であろうというアピールであろうか。
「いくら助けてもお前の罪が消えるわけではない!」
「鏡にご挨拶とはケッタイな趣味をお持ちで。貴方も彼を散々な目に合わせてきたのではないか?その都度被害者を出しながら。」
「う……」
「皆勘違いしてるけど、彼も正義の味方よ。貴方達が勝手に悪人呼ばわりして悪人に仕立ててるだけでね。そうでないなら貴方達は私を助けられたはずよね?でも私を助けたのは彼の方だったわ。おっといけない、私達はこの辺で失礼するわ。あなたと話している間に手遅れになる人もいるでしょうしね。」
「…………」
ケーイチは何も言い返せなかった。その間に怪盗達は空気に溶けるかの如く姿を消す。
正義の味方云々はマスター直伝の適当発言であったが、全てが間違いとは言い切れない言葉に黙るしか無かった。
「……怪盗って2人組だったのか。」
誰かが今更どうでも良い納得をしたが、諌める者は居ない。
「怪盗なんぞに負けてられるか!探索能力者は前へ!」
結果的にハッパを掛けられたケーイチは指示を出していく。
この日、ニュースで報道された行方不明者の数は大幅に減少するのであった。
…………
「なんてこった!完全に道が塞がれているぞ!」
「なんて大きい岩だ!くそっココ以外道は無いというのに!」
とある山道が土砂崩れにより完全に埋まっていた。その中央には何処から持ってきたんだよレベルの大岩が鎮座している。
災害発生以降、連絡の取れなくなった村の様子を見に行こうとした役場の職員と付添の警察官が絶望する。
この先の村には老人がほとんどだ。外との交流ができなければ待っているのは三途の船旅と裁判であろう。
「うわ、何処から持ってきたんだこの岩。」
そこへ黒ずくめの衣装を着た男が現れる。格好つけた衣装の割にはモブ顔である。
「な、君は誰だ!何処から来たんだ?」
「ハーン総合業務という何でも屋です。名前はネームサファルなので勘弁して下さい。」
「何でも屋だと?村の関係者から依頼でも受けたのか?」
「似たようなものです。これじゃあ困るでしょう。なんとかしてみますので、巻き込まれない様にもう少し下がっていて下さい。」
「何をする気……だ……?」
「き、君!腕がバグってるぞ!?」
下がるように警告を出し、チカラを込めていくマスター。
両腕が赤と黒の金属の物に変形し、まるでアニメのロボットのような腕になってしまう。
「君、よくわからんがそれをやめるんだ!」
キュィイイイイイイイン! ブワッ!
「うわあああああ!」
驚いた警官はマスターを取り押さえようとするが、甲高い金属音が鳴り響くと同時にチカラによる風が発生して尻餅をついてしまう。
「ふむ、こいつの調子は良さそうだな。2人とも!危ないですからもっと下がって!」
マスターの左腕には高速回転する鉄球が付いていて、そこから暴風が発生していた。正確には鉄球ではなく前後に分かれて逆回転している他、凹凸がついていて当たると痛そうだ。
マスターは肥大した右腕を変形させると、内部の赤い槍が後方に下がりガコン!と装填される。肘の辺りには技の起動用にポッカリと穴が空いている。
右腕の先には3本の白黒の爪が着けられており、大岩を殴ると同時にそれらが食い込む。この爪には細工がされていて、白い部分が物質を固定し、黒い部分が相手の気力を削ぐ役割を果たす。つまり逃げる気が失せるのだが、今回は無機物相手なので関係ない。
『ターゲット、ロックオン!』
心の中にノッてる○○○の声が響く。
『左腕、出力最大!』
サポート室からはキリコの叫びが聞こえてくる。
「D・パニッシャー、シュート!!」
ガッ!バシュン!!
マスターが左腕を右腕の穴に差し込むと、赤い槍が飛び出して大岩に突き刺さる。槍は見た目は大した長さではないが、そこから更に精神力の光線を発生させて対象を突き破る。
技を発動し終えた時、大岩は完全に砕け散っていた。
『『「ラーメン屋だって、平和を守れるんだ!」』』
サポート役の2人と同時にビシッとキメ台詞を放った後、ドヤ顔で警官を起こしにかかる。
「何でも屋じゃなかったのか?」
「そっちは副業です。」
「はぁ……」
意味不明で挙動不審な何でも屋を胡散臭そうに見る警官。
それはそうだろう。いきなり腕がロボットになって、大げさにパイルバンカーで大岩を打ち砕いたのだ。
サポート室で見ていたキリコや、心を繋いでいる○○○には大好評だった。が、”普通”の感性の持ち主には意味がわからない。
先程の技は某ロボットアニメの必殺技を参考にしたもので、節々には変更した仕様もあるものの大筋的には再現されていた。
実際マスターはこの技を使わなくても岩の除去はできる。単に新技を試してみたかっただけという、子供っぽい思考が働いただけである。
ズザザザザザザザザ……。
その時不穏な音と共に土砂が流れ込んできた。
大岩は除去されたが、結局その場所には土砂が鎮座している。
「こ、これにて応急処置は一件落着!あとは任せました!」
「あ、こら逃げるな!」
岩は難しいが土砂なら多少の時間をかければ何とかなる。
そう考えたマスターはさっさと姿を消してしまう。
決して気まずくなって逃げたわけではなく、何事もバランスが重要なのだ。それ自体は本当のことだったが、傍目からは逃げたようにしか見えないのが難点だった。
この後2人もマスターと同じ結論に至る。役場に戻り、人手を集めて土砂の除去作業に入るのだった。
だがマスターも何のフォローもしなかったわけではない。彼は”予定通り”魔王邸のメンバーと合流して土砂の先の集落を訪れる。
「未だ地獄を生き延びし老獪どもよ!成仏したくなければ我が盟友NTグループ会長の施しを受けるが良い!!」
「はーい、並んでくださいね。全員分ありますので落ち着いて!」
「テントや毛布はこっちでーす!水と保存食は隣です!」
「NTグループからの支給品です!よく覚えておいて欲しいカナ!」
先程大岩を除去した先の、土砂崩れで陸の孤島となった集落。そこで魔王邸のメンバーが炊き出しと物資の搬入をしていた。
事ある毎にNTグループの名前を伝えてイメージアップを図っている所があざといが、助けられる側は必死なので関係ない。
「水星屋殿、此度は集落を救って頂き誠にありがとうございます。」
「いえいえ。こちらもお仕事ですからお気になさらずに。」
「それでもですじゃ。見ての通り老人だらけで、身動きが取れんで困っておったところでしたわい。」
「本当は避難まで出来れば良いのですが、生憎他の地域にも同じ所が多くて……。一応土砂で塞がれた道は復旧作業に入ろうとしてますので、数日の内には助けが来るでしょう。」
「ええ、それまでは凌いでみせますとも。他所の者達もきっとあなた方の助けを求めております。贅沢は言いませんとも。」
村長らしき老人に感謝を告げられ満更でもないマスター。
本当は全員を麓の町まで連れていくことは可能ではる。
それをするとNTグループからの援助という名目上、後々になって魔王とNTの繋がりを疑われる可能性が出てきてしまう。
なので物資の搬入と炊き出し程度にとどめて、あとは人間同士でなんとかしてもらおうという魂胆だ。
物資の量やそもそも何でここまで来られたのかという疑問は持たせないように黒モヤしている。
あとでヘリコプターがどうとか言い訳してもらうつもりだ。実際にこの場所を見つけたのはヘリでの探索の結果ではあるので。
「はい、村長さんもとんこつラーメンをどうぞ。味は薄めにしてありますのでお気軽にどうぞ。」
「ありがたや、ありがたや。皆の衆!水星屋と、えぬてーの者達への感謝を忘れるでないぞ!」
「あたりめーだ!村長こそボケて忘れるなよ!」
「とんこつってこんなに美味かったんだな。」
「絶対忘れるものか、あんたらはワシラの救世主じゃ!」
さりげなくとんこつラーメンを広めつつ、マスター達は各所で炊き出しを続けるのであった。
…………
「マスター、そろそろ水の処理を始めてください。」
「了解だ。太平洋に送り返しておくよ。」
震災から2日。未だに水の引けてない地域に到着したマスター。トウカと共に空中をステルスで移動して空間の穴をあける場所を定めておいた。彼はトウカの指示により水没した街から海水をゆっくりと太平洋へと移動させる。
2年前から作っていた堤防はそれなりに効果があったのだが一部で手抜き工事が有り、決壊して街が水没してしまったのだ。
それはトウカ会長に反する派閥が担当した箇所であり、既に彼らは海水浴の果てに一途でない川を渡ってしまった。
すぐに頑丈な堤防をコピペしても良かったが、それだとNT側の後の言い訳が苦しくなるので海水の流入が止まってからの作業となった。海水の移動速度も同じ理由で不自然じゃないレベルに抑えている。
「結局彼らは自身の棺桶すらまともに作らなかったわけだ。」
「お似合いの末路だけどフキンシンよね。おかげで巻き添えで亡くなられた方も大勢いますわ。私達の都合で、と思うとやりきれるものではございませんね。」
「災害に対して何もしなければもっと酷いことになっていた。君は胸を張っていい。従わなかった彼らの落ち度だ。」
「ありがとう、マスター。でも責任者は私ですから。」
「ならその責任は少し受け持つよ。」
「それって夜に癒やして頂けるお誘いと見てよろしいですか?」
「え、男の責任的な話だったっけ!?」
ともあれ、復興作業の開始に向けての処置は少しずつ進められた。
…………
「さーて、今日も救助活動に精をだすとしますか!」
「もう時間もかなり経過している。見落としが無いように慎重に進めていこう。」
「そうね、パパ。」
「ま、まだ父親になってないぞ!それにその呼び方をもうちょっとこう、な?頼むよ。」
「ふふーん、お返しだよ!」
被災地に降り立ち瓦礫を前に意気込むイヌキ。今日の注意点を語るイタチは、パパ呼びで動揺してしまった。
イヌキの父はカトウ・ダイチだけである。イタチについては別枠としてパパ呼びすることにしたらしい。
如何わしい響きだとマスターに言われたが、じゃあぴったりね!と肯定的に捉えてしまった。たまらないのはイタチである。
「こほん、それじゃ今日も始めるぞ。」
「はいっ!」
元気良く返事をして「判別」を起動するイヌキ。それをサポートするように周囲から風を集めていくイタチ。
彼が言ったように災害発生から何十時間もたった今、生存者を見つけるのは至難だろう。もし発見したのが終わってしまった者でも弔いが必要だ。初日に比べればペースは遅いが確実に1人、また1人と発見していく怪盗達だった。
「お邪魔します。本日発見した方々をお連れしました。」
「君がうわさの怪盗か?あっちのテントが救護用になっている。無事でもそうでなくてもあちらに連れて行ってくれ。」
その日の救助活動を終えて大きな避難所に報告に訪れる。イタチはステルスで潜伏していて万が一に備えている。
救護テントの中に入ると、職員に断りを入れて今日の救助者を寝かせていくイヌキ。
異次元に貯めておき、今ここに取り出せるということは無事な者達ではない。無事な者はすぐに病院に搬送していたのだ。
「ごめんなさい。間に合わなかった人達だけです。」
「いや、よく連れて帰ってきてくれた。瓦礫や土の中じゃまともに弔いも出来やしないからな。それだと遺族も納得しようが無くてずっと苦しむことになってしまうんだ。」
「……はい。」
「なぁ、あんたが本当にあの怪盗イヌキでいいんだよね?」
「ええ、その節はお騒がせしました。」
「気にするな。オレもあの会社には良い思い出はないからな。あんたがイヌキなら体育館に顔をだしてくれ。あんたが来るって通達が有ってから、会いたがっているやつらがいるんだ。」
「へ?私にですか。」
不思議に思いながらも体育館に向かうと、魔法少女の姿を認めた避難民達がざわめきはじめる。
何人も集まってきて、そのうちの1人の男が代表で声を掛けてくる。
「か、怪盗イヌキさんでしょうか!
「そうだけど、どうしたの?」
「せーの!」
「「「これ、先月のお返しです!」」」
ズババババッと全員が後ろに隠し持っていた箱を差し出してくる。
「えええ!?なになに?」
「先月、我々はヨシダ本社ビルにてチョコを頂きました!そのお返しにこのお菓子を用意させていただきました!」
彼らは怪盗の予告を聞きつけてヤジウマに来た者達だった。だがそれを聞いたイヌキは申し訳無さそうな声色で声をかける。
「あ、あのチョコね?ごめんなさい、美味しくなくて……」
すでにネット上の評判を見聞きしていたイヌキは男達に謝る。しかしその反応は想像と真逆のものであった。
「とんでもない!味は非常に個性的でしたが一生懸命作られたのがひと目ひと口で分かりました。家も街も大変なことになりましたが我々はコレだけは大事に確保しておいたのです。受け取って下さい!」
「あう……そこまで言うなら頂くわ。ありがとう。」
正直もっと大事にすべきことがあるだろうとは思うが、彼ら……幻想生物変身教のソロプレイヤー達にとっては重要なことだったらしい。
「ありがとうございます!やったぞみんな!我々もついにリア充らしいイベントをこなせた!オレたちは成し遂げたのだ!」
「「「うおおおおおおおお!!!」」」
「何なの?これは……」
(モテなさすぎて群れた者達であろう。オレが手を貸したアントの親戚みたいな連中だ。)
「あぁ……でも悪い気はしないわね。」
(ほう、ではマスターから乗り換えるか?)
「そんなわけないでしょ!こういうのから遠ざかってたから、ちょっと嬉しかっただけよ。」
「聞いたか皆の者!イヌキさんがお喜びだ!宴の準備だ!!」
「「「わああああああああ!!!」」」
「あはははは……私はそろそろ次があるから行くわね。」
「「「お気をつけて!!!」」」
悪くはないがフクザツな気持ちになったイヌキであった。
だが不思議とやる気の出た彼女は、期日まで休むことなく正義の味方をやり遂げるのであった。
…………
「マスター、見せたい場所って何処?」
「すぐに分かるさ。さあ、すぐに移動するよ。」
3月31日午後。仕事を終えたマスターと合流して、いつもの空間移動で目的地へワープする。そこは町工場のような規模の小さい工場、カトウ製作所であった。
「ここは、父さんの!?」
「ほう、ここがダイチ殿の作った城か。」
正面入り口から入って行くと、作業員の1人がこちらに気がつく。
「ミドリちゃん?おいみんな!ミドリちゃんが来てくれたぞ!」
「なんだって!?あの男が言ってたことは本当だったのか!」
わらわらと寄ってくる作業員達。彼らは笑顔でイヌキに話しかける。
「ミドリちゃん、ダイチ社長のカタキを取ってくれてありがとう!」
「でっかくなったな。お父さんも天国でさぞ誇らしいだろうさ!」
「おかげでオレたちはまた全員で働けてる。ありがとう。」
「みなさん……こちらこそ色々とご迷惑をおかけしました。」
イヌキ、いや今だけはカトウ・ミドリとして深々と頭を下げる。
カトウ製作所はヨシダグループに取り込まれた後、バラバラになってしまった。しかし去年の夏にこの場所を取り返し、従業員も全員かき集めた。
その後NTグループが買い取る形になったが、NTはカトウ製作所をできるだけ元の形で運用することを約束してくれた。
多少マスターの手が入ることと金回りはNT主導になったが、それ以外はのびのびと仕事に打ち込むことが出来た。
おかげで3ヶ月という早さで改良型のゆたぽんを販売する運びとなり、NTグループの観光部門では重宝される存在となった。
「マスターさん。イタチさんも、ミドリちゃんの事を助けてくれてありがとう。彼女の事、よろしくおねがいします。」
「もちろんそのつもりだ。娘は必ず守ってみせるさ!」
「パパってば気が早いんじゃない?」
「「「パパ!?」」」
「はいはい、それは置いておこう。工場長、何か問題はある?」
「なにもねぇな。マスターのおかげで全部解決したしよ。」
「不具合もなし、ですか。優秀なメンバーなんですね。」
「あったりめーよ。これで飯食ってる人間をなめちゃいけねぇ。」
マスターは”ゆたぽん”の中身の石に、チカラを封入する技術について助力していた。彼も武器防具にはよく同じことをしていたので、応用できないかと考えたのだ。
結果、お互いの封入技術を照らし合わせて改良型が完成した。
元々ゆたぽんの発端は、技術者の1人と作業員の中に居た「増幅」のチカラ持ちが挑戦してみたのがキッカケである。
コレは行けると踏んだダイチ社長は、技術者に生産ラインの構築を命じた。技術者は自分の「封入」のチカラそのものを機械に入れた。あとは「増幅」のチカラを機械に流して石を並べておけば、勝手にゆたぽんの中身が出来上がるという寸法だ。
マスターはそこに手を加えて更に効率よく封入出来るようにしたのと、セキュリティ面の強化を図った。おかげで余程の実力者でない限りは、コピーを防ぐことが出来るようになったのだった。
「何も問題がないならそれでいいです。では話を進めましょう。」
「おうよ。……ミドリちゃん、いや怪盗イヌキ。」
「は、はい!」
改まった工場長の雰囲気に若干緊張するイヌキ。工場長は上等な紙をとりだし読み上げる。
「怪盗イヌキは父であるカトウ・ダイチの無念を晴らし、彼の遺産であるこの場所と彼の魂の尊厳を守った。更には国を脅かす災害に立ち向かい、正義の怪盗として立派に働いた。よって怪盗イヌキは自らの呪縛より開放され、自由を手にする事をここに宣言する。」
「「「卒業、おめでとう!」」」
パチパチパチパチパチ……。
「み、みんな……うう。」
高校は中退したが父と共にあった皆がミドリの自由を認め、卒業証書を手渡してくれた。思わず感情が高ぶっていく。
「聞いての通りだ。君は父や敵や過去の呪縛より卒業した。もうミドリでもイヌキでもない。1人の女として自由になった。」
「マスターぁ。」
「今日までよく頑張った。今後はゆっくり次の生き方を探すと良い。」
「うん、うん!」
マスターに抱きつくミドリ、いやアオバ。
彼女は新しい人生を生きていく。製作所のみんなとはもう会うことはないかもしれない。
でもそれでも良いのだ。皆からは認められて送り出して貰えたのだから。
こうして怪盗の使命を全てやり遂げた彼女は、普通の女に戻るのであった。
…………
「D・パニッシャー、シュート!」
バシュン! パキィィィン!
「わ、わしの最高傑作があああああ!!」
「「「親方あああああああ!!」」」
2011年4月1日。あの世の鍛冶屋の庭で、親方の嘆きと弟子たちの叫びが響き渡る。親方の足元にはひと目で素晴らしいものと分かる刀の半分が転がっていた。
「ラーメン屋だって平和を守れるんだ!」
排熱の蒸気を肩の後ろから放出しながら、意味不明な決め台詞を放つマスター。金属の腕から射出された赤い槍型のパイルバンカーをしまいながら親方に近寄っていく。
「貴様、よくもワシのカタナを!!」
「そうすればオレに剣を作ってくれる約束でしたので。それでは、治療が終わったら打ち合わせを始めましょう。」
「誰が貴様なんかに槌を振るうものか!顔も見たくない、さっさと出ていけ!!」
「え?ちょっ、約束が違います!オレの剣を作ってくれるんじゃ……」
「「「出ていけー!」」」
弟子たちに引きづられて敷地外につまみ出されたマスター。
頼みに来た手前、手荒なことをするわけにも行かず素直に引き下がる。
「なんだよもう。言われた通りにしただけじゃないか。約束も守れず、なにが最高の職人だ。」
「仕方あるまい、今のはやりすぎだ。外で待っていて正解だったな。というかD・アームシステムのD・パニッシャーだったか?あれがあれば魔王剣なんぞ必要ないではないか。」
左手からの暴風で相手の動きを鈍らせ、右腕の爪で相手を固定し弱点をパイルバンカーで的確にブチ抜く。それは正に必殺技と言って良いだろう。
「目指すところが違うんですよ。オレは別に最強の攻撃を編み出したいわけじゃなくて、代々語り、受け継がれる伝説の武器を――」
「はいはい、お前の御託は長いんだ。いいから帰るぞ。」
ばっさり言葉を切られたマスターは、今度は閻魔様に引きずられて異界に戻るのであった。
後日。別の鍛冶屋に次々と声をかけるも、自信作をポッキリと折り続けてしまいあの世の鍛冶屋連盟からは出入り禁止を申し付けられた。
あの世の職人達からはプライドブレイカーの異名を授かった。以後「麺は剣より強し」「出る杭に折られる」等の格言が生まれ、職人達から恐怖の代名詞として、伝説が語り継がれるのであった。
明後日の方向に目的を遂げたマスターは、フクザツな心境を妻に愚痴る。それを優しい微笑みで慰める○○○だった。
…………
「バイト君、最近オイタが過ぎるわよ。あの世から貴方を何とかしてくれってクレームの嵐よ。」
2011年5月1日。社長の家を訪れたバイト君はお小言を貰っていた。社長はあの世とも交流があるのでそのツテで話が回ってきたのだろう。
「それはすみません。しかし、約束を違えたのは彼らの方です。」
「約束を鵜呑みにしちゃダメってことよ。クレームを入れる元気が残らないくらいには”交渉”を続けなきゃ。」
「なるほど、勉強になります。ではそのようにして参りますね。」
「こら、もうあの世は諦めなさい。どの道あなたが言うように約束を守れないって事は信用出来ないし。」
「それもそうですね。あの世は諦めることにします。」
「で、小耳に挟んだのだけど。あなたが作りたい武器って、殺戮のためじゃないのよね?伝説を残すとかなんとか。」
「ええ。単に相手がビビって手を出してこないような逸話を、後の代の為にも残しておこうかと思いまして。」
「ならいいわ。”後で準備が整ったら”鍛冶師を紹介してあげる。これ以上オイタされて私の信用まで落ちたらコトですしね。」
「あ、ありがとうございます!いやー、社長は今日もお美しい。」
「あからさま過ぎて不快だわ。」
「社長のマネして嘘は言ってないですけどね。そうだ!この件は今まで失敗続きだったし、何か気をつける事とかありますか?」
「おっぱいよ。」
「は!?」
「おっぱいについてとことん勉強なさい。時が来たら紹介するから、それまで研鑽に励みなさい。」
「意味が解りませんが、そういうのは大好きです。」
好き嫌い以前の問題だと思うが、バイト君は俄然やる気に満ち溢れた。
『あなた、協力は惜しまないわ!』
『旦那様、是非私も活用下さい。』
『旦那様。私の出番じゃないカナ!』
『テンチョー、店員の胸のケアを――』
『パパ、お胸が見たいの?』
『――』
『――』
『――』
それを読み取ったのか心の中に女性達の声が続々と届く。
『ああ、頼む。だがセツナは15年早いぞ。そういうのは好きな男の為にとっておくように。』
『私、パパの事大好きだよ!』
『セツナ、あっちでテレビでもみましょうねー。』
『みゃー!』
どうやらセツナは妻に連行されたようだ。
ようやく自身の思い描いた伝説の武器へ近づけたバイト君。
万全を期すために楽しく予習をこなす日々を送るのであった。
…………
「しばらくぶりじゃな。ここへ参るのも。」
2011年5月4日朝。大型連休中の大安である今日、ミキモト・ソウタはコウコウ神社へと足を運んだ。
連日被災地への出撃を繰り返していた特殊部隊も、疲れを取る為に今は休暇が与えられている。
今頃は旅行先で大いに英気を養っている頃だろう。ケーイチとアケミ、キョウコやイダーも引率という名目で同行している。まるで一般企業の慰安旅行そのものである。
特殊部隊の訓練はそれ自体がミキモト教授の実験でもある。彼らが居ないのなら教授もまた余暇が生まれ、こうして戦友の下へやってきたのだった。
「遅いぞ、ソウタ分隊員。」
「分隊長こそ、歳を食って早起きしすぎたか?」
「こいつめ、憎まれ口だけは変わっとらんな。」
昔懐かしい呼び方で互いを確認すると笑いが漏れる。だがそれはどことなく寂しい笑いであった。
2人は境内を歩き、キサキの住む社へ向かう。
「もう、生きてるのはワシらだけじゃな。」
「うむ。皆、理想を胸に逝ってしまった。」
「あの世では夢が叶っておると良いのじゃが。」
「叶ってるさ。あっちでは時間は関係ない。」
「まるで見てきたかのようじゃな。」
「見て来ただろう、お互い何度もあっち側を。」
「くはは、違いないわい。」
やがて社の前にたどり着き賽銭箱を前にして財布――ではなく、本屋のロゴの入った包み紙を取り出す2人。
「ソウタ分隊員、解っておるではないか。まだボケてはおらんようだな。」
「分隊長こそ、財布を取り出したらどうしてくれようかと思っておったぞ。」
2人はニヤリと笑い、賽銭箱にエロ本を落とし込む。
ガラガラと鈴を鳴らしてニ拝二拍手一拝でお参りをする。
「「ふふ、くふふふ。」」
「あのちんまいキサキ相手に格式張った参拝をしておると思うと、笑いがこみ上げてきていかんな。」
「まったくじゃ。だが良いのか?ワシは見えぬがヨシオは見えるのじゃろう?噛みつかれてもしらんぞ。」
「心配いらん。今は賽銭箱の色本を取り出そうと、やっきになっておる。」
「相変わらずの色狂い、むしろ安心すら覚えるわい。」
2人は移動して飲み物を手にしてベンチに座る。
「ソウタ。随分熱心に拝んでおったが何か心境の変化でも?」
「なに、ただの懺悔じゃよ。」
「お前の気持ちは知ってるし無理もないのは判る。だが根を詰めすぎるなよ。もう若くはないんだ。」
「お互い様じゃ。それに勘違いしておるぞ、キサキの事じゃない。」
「ほう、では何かね?」
「例の理論な、実証の目処は立った。あとは計画通りに進めれば相手がなんだろうと平和を守ることが出来る。」
「何だと?本当か、ソウタ!」
「くふふ、分隊長に嘘の報告はせんよ。じゃがな……ワシの研究は犠牲を強いる。これまでもそうじゃったし、これからもじゃ。」
「ソウタ……。なるほど、その懺悔か。」
「今まではただがむしゃらに研究を続け、あの日の約束を果たそうとしてきた。犠牲に対しても心が動かなくなっていた。じゃが終りが見えた今、無性に懺悔というものをしてみたくなってしまった。もう長くはないのじゃろうか。」
「縁起でも無いことを言うな。」
「ヨシオも知っておるのじゃろう?ワシがしてきたことを。」
「もちろんだ。だが必要な犠牲ではあったと理解している。だから邪魔もしなかったし、邪魔なんてできるわけもない。」
何十年も幾度となく人体実験を繰り返してきたミキモト教授。それは時に非道な物であった。それでも国民が秩序を持って生き残る為に必要なものであるとヨシオも理解していたのだ。
それは過去に自分たちが約束した夢を叶える事にも繋がる。
「ミキモト理論が実証できれば人類は安泰じゃ。だが成果を出せねば、ワシは悪魔の科学者として名を残すじゃろう。」
「ソウタ……」
「ヨシオ、もしワシが止まれなくなった時は頼んでも良いか?」
「ああ、約束する。その時は止めてやる。」
「約束か、それなら安心じゃ。それで、そっちはどうなんじゃ?」
「後継者は居ない。このままオレがくたばればサイトは実質解散になるだろう。他の者では管理は物理的に不可能のはずだ。」
「すまない、”過去”のワシが下手を打ったせいで……」
「気にしても仕方がない。どの道あやつは余命半年であった。なに、今はその後の事も踏まえて組織の調整をしている。間に合えば第2の警察くらいの地位は残るであろうな。」
ヨシオはサイトの悪魔を後継者に選んでいた。しかし彼は魔王となって世界を脅かしてしまった。原因の1つがソウタが熱くなってしまった事だったが、魔王にならずとも余命は短く結果は変わらない。
「そうなるとお互い簡単にはあちらへ行けぬな。」
「然り。さて、シケた話はやめてそろそろ飯でも食おうではないか。まだあの店は存続しているようだしな。」
2人は立ち上がり神社を後にして車で懐かしのヒノデ食堂に向かう。今は5代目の店長が経営するその食堂で、かつての戦友達に盃を捧げつつ昔懐かしい味を楽しむ2人であった。
「あやつら、帰りおったか。ソウタはともかく、ヨシオの奴まで私が見えなくなっておるとはのう。というか好き勝手言い過ぎじゃ!」
賽銭箱からエロ本を取り出しながらキサキは愚痴る。寂しい気持ちでいっぱいの彼女だったが、エロ本は手放さない。
ヨシオはさもキサキがその場にいるように話をしていたが、
ソウタを凹ませないようにするための方便だった。
だが社内に入らずに去ったことからソウタも薄々気がついてはいた。だからといって指摘するほど野暮じゃない。寂しくなるだけなのだから。
「あやつらが生きている内に再び会うことは叶わぬのか?」
マスターに補給してもらったとは言え、神パワーこと神通力は日々目減りしていっている。
「それにしてもソウタの奴、危うくなっておるのう。ミキモト理論とか言ったか。神パワーとまではいかぬだろうが、人類が持つには手に余るのではないか?」
熱心なお参り中にキサキに流れ込んできた思念を思い出す。
(弟子に連絡して止めてもらうか?しかしヨシオが歯止めを約束しておったしな……)
彼女はうんうん唸りながら考える。
「生きてる人間に死者が介入しすぎるのも良くないか。」
自分も弟子も人間としては終わった身だ。彼らが人生をやり遂げるのを見守る事が1番だとキサキは結論づけ、奉納されたエロ本を抱えて社の中へ戻るのであった。
…………
カチャッ。
「お兄ちゃん、寝てますかー?」
5月10日夜。ミズハ宅のシラツグの部屋へ侵入者が訪問する。声をかけてはいるが超小声で、そもそもノックもしていない。
侵入者はそろりそろりとシラツグの寝ているベッドへ近づいていく。彼はGWが終わると休暇をもらい、実家に帰ってきたのだ。
(気持ちよさそうに寝てますねー。)
寝顔を見下ろす侵入者、シズクは興味深そうに兄を観察する。実は兄が帰ってくる前にゴロゴロしてマーキングしていたベッドで寝ているシラツグを見ると、満足そうに笑顔になる。彼女にはアレな自覚などなく、純粋に兄弟愛だと思っている。
「お兄ちゃん、ちょっとお邪魔しますよー。あ、でも先にお家賃払いますねー。」
超小声で宣言すると、兄の頬に顔を近づける。暗い部屋では判りにくいが、シズクはドキドキして頬を染めている。
chu~~。
優しく撫でるような、舐めるようなキスを頬にすると顔を離したシズクは一人静かに盛り上がる。
(お兄ちゃんの味~~。)
「お家賃払ったから良いよね。お邪魔しまーす。」
もぞもぞゆっくりと兄のベッドに侵入して添い寝を敢行する。
(お兄ちゃん、暖かい。いい匂い……ZZZzzz。)
そのまま眠りについたシズクは幸せそうに寝息を立てる。
(え!?何この状況。シズクが入ってきた……てかキスされた!?)
警備員としての本能が働いたのか、途中から起きていたシラツグ。だが深夜に安らかに眠る妹を叱りつけて追い出すわけにも行かず、そのまま寝ることを選ぶ。
ギュム!
(抱き枕にされてしまった。仕方ない、このまま寝よう。)
そのまま特に何かあるわけでもなく、兄妹は朝までぐっすり眠る。
チュンチュンと小鳥の鳴き声で目覚めたシズクは状況を確認する。
(もう朝か……ってひょわわわわあああああ!)
目が覚めると逆に兄からガッチリホールドされていた為、心の中で叫び声を挙げた。
(もうもう!お兄ちゃんったら!うわー、暖かいなぁ。)
仕方ないなぁと言った感じでそのまま身を委ねておく。
ガッシリした感触を上から下まで味わいながらヒトトキを過ごす。こうしてシズクは大好きなお兄ちゃんと同衾を遂げるのだった。
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