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66 シカリ

 


「うーむ、ものの見事に綺麗サッパリであるな。」


「本当に屋敷があったのかを疑うレベルですよ。」

「マスター、こっちも痕跡追えません。」

「オレにもサッパリだなぁ。」

「因果が不自然に途切れている?これでは私もお役にたてません。」



 2010年4月5日。小田原城址公園のご近所の空っぽになった敷地で、サイトウ・ヨシオは唸っていた。その後ろには4人の部下が居て彼らもチカラで捜査をしているが結果は芳しくない。


「お前たちもダメか。これは撤収だな。警察の科学的な捜査に任せよう。」


 サイトウはお手上げだとばかりに両手を上げる。

 そもそも警察でもお手上げなのに、影でオカルト扱いされたりする自分達で追跡するのは難しい。


 ナイトの本拠地を見つけられたのだってサイトの悪魔が馬鹿げた優秀さを発揮したからに過ぎないのだ。



「元々オレとフミトは追跡向きじゃねえけどよ。カコまでダメだとはなぁ。」


「普通の相手ならミカの探知か私の因果追跡で引っかかる。だけどそれが出来ないってことは、怪盗なんとかはきっと魔王よ。」


「わからないわよ?魔王並みの人物の可能性だって有るし。」


「あんなのが何人も居てたまるか、ってのが正直な話だけどな。」


「アイツが怪盗などと気取った真似をするとは思えぬ。良くて協力者に迎え入れたとか、そんなところだろう。」


 4人の部下の感想を聞いて考察するサイトウ。この部下達は20代半ば程のチームで、若さの割に優秀な部類に入る。


 まだ10代の頃にケーイチ達伝説チームから手ほどきを受けたり、ナイトとの決戦に参加して生き延びたりと経歴的には申し分ない。


 数年前に記者アケミとキリコの横で機密をベラベラと喋ってしまって以降は、意識も高く持つようになり成長が見られる。


 コウジとフミトは近接系のチカラの為追跡には向かない。

 しかし斥候・サポート役のミカや、過去の因果から現在を追跡できるカコは非常に強力な戦力だった。


 トモミの離脱した今、サイトウがこのチームを連れてくるのは当然の流れだったが成果は何もない事が解っただけだった。


「以前の協力者といい、アヤツは仲間を増やしておるとみていいのかもしれぬ。」


「マスターの言う通りかもなぁ。嫌な予感しかしないぜ。」

「本気で魔王軍を作ってるって事?考えたくはないわね。」

「でもよ、あんな犯罪者に強力するやつなんて居るのかよ?」


「この前のネームサファルだって逃げ出したんでしょう?そういう奴を集めてるのかもね。彼ならそれも簡単でしょ。」


「然り。だが他者との交流の乏しいアヤツが、という疑問もあるがな。」


 カコの考えに一定の理解を示した面々は黙って考え出す。


 結局今回も何も解らなかったが、サイトウは正直それで良いとすら思っていた。トモミの事は気になるが、彼なら無下にはしないだろう。


 ケーイチには新しい女がいる。これ以上の追跡は良くないと知っている。


 だが仕事はこなさねばならない。徒労どころかマイナスになるリスクを負いながらも、上には逆らえないのだ。



 …………



「むむ、曲者!?そこじゃああああ!!」


 ガイン!


「うわ、危なッ!!」



 4月6日。コウコウ神社の社内で”読書”に努めていたキサキは、色が停止し奇妙な気配を感じ取る。その相手に神通力のビームを放つと、曲者は驚きの声を挙げた。


「危ないと言いつつも弾いておろう。そんな奴は1人しかおらんよな?」


「時間停止はともかく、ステルスまで見破るなんてさすがですね。おひさしぶりです。キサキ師匠。」


 キサキの下へ現れたのは1ヶ月だけ修行をつけた弟子であった。黒装束の彼は出会った時とは違いゾンビモードではなく、元気そうな表情が見て取れる。


「何がおひさしぶりですだ!ナイトを倒したのに一度も訪ねて来ないどころか、お前が悪役になってどうする!」


 ごもっともなお叱りの声が停止した社内に響く。


「いやー、耳が痛い話です。ただこちらも色々と立て込んでまして。いやほんと、申し訳ありません。」


 マスターは片手で頭をかきながら、申し訳無さそうにペコリと頭を下げる。彼はキサキとの約束を忘れていたが、先日のイヌキとイタチの訓練で思い出したのであった。動揺から彼らのハンバーグ回数が多くなってしまったが、それは黙っている。彼らが知る必要のないことだ。


「まずはこちら、良かったらどうぞ。」


 彼は手土産に持ってきたノートパソコンとDVDディスクを10枚渡す。


「ふん、私が機械なんぞでほだされるとでも思っておるのか?」


「数え切れないほどのエロ画像と動画をこの中にご用意しました。」


「ほ、ほう。少しは話がわかるようになったようだな。」


「トウジさんも太鼓判を押した品々ですので満足頂けるかと。」


「トウジとな!?あやつは死んだはず!」


「死んだ時に迷ったみたいで、よくウチの店で天ぷら食べてますよ。」


「ほう、話を聞こうじゃないか。詳しく話すが良い。」


 手土産をしっかりと自身の後ろへ置いて、てのひらをクルッと返したキサキ。マスターはこれまでの経緯を説明していく。


 世界中の軍隊から逃げた事。異界にて新たな生活をしてる事。魔王事件の経緯等、丁寧に伝えていく。もちろん異界については必要最小限の情報しか出さない。


 キサキは大人しく聞いていたが、驚き・怒り・呆れとコロコロ表情が変わっていく。この歓楽街に籠もっていただけあって、知らない事も多かったようだ。


「ふーむ、サイトの者達の話とは印象がだいぶ違うな。あやつらは我が弟子を何だと思っておるのか!」


 魔王に至った経緯を全て聞いて怒りを露わにするキサキ。


「だがお前もお前だぞ。いくらなんでもやりすぎではないか!」


「御説ごもっとも。おかげで人間辞めるわ世界中から恨まれるわ大惨事の人生アフターファイブです。」


「その割には幸せそうな顔をしておるが……」


「ええ、引き換えに幸せな家庭を築けました。」


「社会に適合出来ぬ故に、道を外して幸せを掴んだということか。」


 キサキは難しい顔をしながらも一応は納得したようだった。気を取り直すと今日の本題とも言える話題にシフトする。


「それはそれとして、チカラの方はどうなった?私が見るに、神パワーすら防ぎおるお主は相当の手練になったはず。」


「未だ師匠の件は解決への道が開けてません。師匠の身体は既にありませんので霊体情報からの再現という形になりそうです。」


「正確には今代のナカジョウの身体に少し入っておるハズだがそれを奪うわけにもいかんからのう……。その再現でどこまで出来るのだ?できれば人間として生きられれば良いのだが。」


「詳しく調べないと解りかねますが、完全再現は難しいでしょう。別件の不老不死の治療が技術的な参考になると良いのですが。あとはタイムトラベルでキサキさんの複製を作って何とか行けたらいいなーくらいの話しかないですね。」


「時間旅行か。危険そうだし、それは最後の手段かのう。ところで、情報が無いならよく調べるしか無いよな?」


「ええ、もちろ……あ、師匠待って!」


「待たぬわー!今までどれだけ待たされたと思っておる!」


 キサキは得意の神通力脱衣で、ツルツルすってんてんを晒す。怪盗ダイブでマスターを襲うが次元バリアに頭から突っ込み、ガイン!と弾かれて床に転がってしまう。


「ぐおおおお、お前ちょっと強くなり過ぎではないか!?師匠を超えるのはもっとこう、熱い夜を過ごした上で――」


「それを言うなら熱い戦いでしょう。ほら師匠、そんな姿で暴れないでおとなしくして下さい。」


 マスターは転がりながら手足をバタつかせる裸の師匠を押さえつける。


「む、そうか。そうよね!こういうのは男からが普通よね?ま、まずは見つめ合って抱きしめて接吻かしら!」


「師匠、口調が乙女に戻ってますよ。勘違いしてないでオレの話を聞いて下さい。」


「失礼ね!私は生まれてから70年間、ずっと乙女よ!」


「その割にはお婆ちゃんみたいな喋り方だったけど。ともかく、師匠は感覚って何処まで有るんです?」


「そ、それは乙女の秘密よ!」


「なら勝手に調べますね?」


 黒モヤを発生させてキサキの身体に這わせていく。

 どうやら実体化している時は、身体を覆っている神パワーで刺激を受けるとそれを変換して感覚を霊体に送っているようだ。


「なるほど、そういう仕組みですか。」


「ななな、実体化解除!」


 素っ裸のキサキを抑えながらも淡々と検証を続けるマスター。ちょっと怖くなってそこから逃れる為に霊体に戻るキサキ。しかしそれは検証を進めるだけだった。


「な、なぜ逃げられない!なんで触れるの!?」


「なるほど?霊体が神様本来のカタチであって、この状態は霊体同士ならキチンと感覚を掴むことが出来ると。ねぇ師匠。身体が完全に上位存在として固定されてるから、わざわざ人間に戻らなくても良いんじゃないかな?」


「私は”大人の女”として、ねっとり姦淫がしたいのよ!」


「わーお、ブレませんねー。」


 マスターが黒モヤをしまって手を離すと、今だとばかりにズザザザと部屋の隅まで逃げるキサキ。

 それ以上はマスターの結界によって逃げられなかった。


「はぁはぁ。せ、責任取りなさいよね!」


 キサキは息を荒げて、着物を引っ張って大事な所を隠しつつ弟子を睨んで要求を突きつける。


「ん?その為の調査だったのでしょう?結婚は出来ませんがご満足頂けるようにするつもりです。で、今の感じだと新しく身体を作って取り憑けば、つまりオレと同じ状態になれば何とかなりそうではありますね。師匠は身体とか作れます?」


「か、身体か。知識は有っても私では実践は難しいわ。ただでさえ神パワーは年々衰えてきてるし……」


 キサキは幼少より身体の仕組みについて猛勉強してきた。

 なので必要なパーツは解るが、圧倒的な経験不足により1からの制作は難しい。プラモやパソコンを説明書”だけ”を渡して作れと言うようなものである。


「神パワーが衰える……前もチラッと言ってましたね。神なんだからほぼ無限だと思うのですが、原因はわかります?」


「信仰の減少よ。この街の信仰心だけだと維持しか出来ないの。頼りは外部の人間だけど、時代とともに私を知ってる人が減ってるのね。サイトも、外からのお客さんも。」


 何十年も前の人間を崇める人は多くはない。記憶も記録も普通は徐々に消えていくものである。更に外からの歓楽街の客も年々減少している。


 50年代では多く居た仲間たちも大半が死んでしまった今ではナカジョウの子孫とサイトウやミキモト等、1部の人間だけではキサキの存在を支えきれないのだろう。


「なるほど。それではちょっとお待ちを。」


 マスターは一瞬ブレると手に持ったものを渡してくる。

 そこには白い髪の毛の束があった。


「これを使って下さい。一時しのぎではありますが、神パワーの補充は出来ると思いますよ。」


「これは神の毛?かなりのチカラを感じるけど、一体何処からこんな物を?」


「知り合いの神に融通してもらいました。同じ土着神だと思うので多少の差異はあっても使えるはずですよ。」


「ありがたく頂くわ。む、ちょっと椎茸の匂いがするわね。何の神様から頂いてきたの?」


「さぁ。手合わせした時は数多くの動物を使ってて、闇鍋みたいな神様でしたけど。ちなみに見た目は干し椎茸ですね。」


 マスターが融通して貰った相手とは異界の神社の神様であった。どうやら見た目だけでなく髪の香りも干し椎茸らしい。


「そ、そう?とりあえず取り込むわ。」


 白い髪束が光を放ちながら霊体のキサキに吸い込まれていく。


「う、本当に闇鍋みたいなチカラね。でもこれで数年は持つと思うわ。」


「それは良かった。とりあえずこれで凌いでもらって、身体制作の対策は後々考えていきましょう。それにしても、師匠って乙女モードだと結構可愛いんですね。新たな発見です。」


「なっ!!お前というやつは、節操というものを持たぬか!」


 着物の裾で大事な所を隠しながらモジモジしているキサキはうっすら赤くなっている。霊体でも血行とかあるのだろうか。


「そういえばあの時の巫女さんってどうなりました?魔王事件以降、この歓楽街は来てないので判らないんですよね。」


「裸の私が居るのに他の女の話だと!?お前は、お前という奴は!あの巫女ならお前の子を孕んだ後に占い師に転職しおったわ!知り合いはみんな子供を作って居なくなる……なんて羨ましい!」


 裸というがすってんてんでは……などと失礼なことを考えながらマスターは話を聞いていた。


「そうだったんですね。魔王事件の時にあの人はえらく積極的だったので覚えてましたよ。でもなんで占い師?」


「なんでも、街の案内係と心の記録係を担えと天啓を受けたとか。私はそんなモノだしておらんのだがの。」


 この神社のすぐご近所に出来た元巫女の占い屋さん。

 魔王事件ではターゲットにされたが非常に好意的に接していた。


 彼女は巫女時代に、風呂場で神パワーに拘束されたマスターを助けた人物である。その時彼の起立したアレをガン見しながら身体を優しく撫でて拘束を解いた。さらに起立した理由が、自分のうなじを思い出したからと言われて意識したようだ。


 その理屈はよく分らないが、元気に生活している様で何よりである。


「それでは知りたいこともわかったし、そろそろ失礼しますね。」


「これだけ辱めておいて結局手は出さんのか!?こら、面倒そうな顔をするでない!お前なら霊体の私に触れるのだろう?こっちへ来て続きをすることを命じる!」


「師匠って結構メンドウな性格なんですね。けどすみません。妻の許可が降りてないのに抱くわけにはいかないんですよ。」


 さらに言えば彼女の年齢的に、絵面が非常にマズイ事になる。


「顔だけでなく直に言いおったな!?……だがそうだよな。妻帯者なら無理強いは良くないのう。うう、お前もなのか。」


「そんなに落ち込まないで下さい。思い出した以上はキチンと約束は守ります。」


 マスターは契約書を取り出しキサキに見せる。

 そこには修行で受けた恩とイザという時の助力の代わりに、キサキを必ず大人の女性として満足させる旨が書かれていた。


「これ、悪魔の契約書なので簡単には破れません。期限は決められないので申し訳ありませんが、ご納得頂けたなら胸に押し付けて下さい。」


「師匠であり神である私に悪魔の契約か。面白い、契約しようぞ!」


 キサキは契約書を胸に置いてマスターに抱きつく。今度はバリアを張らずに受け止めるマスター。契約書がキサキの胸に押し込まれて無事に完了する。


「時間を稼げた以上、私の方も研究をしておく。お前も簡単に人間に負けたりせんようにな。だが犯罪はなるべく控えるのだぞ!」


「可能な限りは。それでは師匠、失礼します。」


 最後に忠告を守る気のない返事と挨拶を残し、立ち去るマスター。彼はどうやら約束を忘れた代償は回避できそうである。



 …………



「以上です。ご納得頂けましたか?」


「うーん、少々苦しいが勉強します。その条件で行きましょう。」


「ありがとうございます。」



 2010年5月1日、大型連休の土曜日の夜。NTグループの会長コンドウ・トウカは北海道の札幌に来ていた。


 目の前の男はこの地で幅を利かせている会社のトップの息子であり、生産者から小売店まで1日中案内をしてもらっていた。


 なぜ大企業グループの会長自らそんな事をしているのか。

 来年に迫った災害への対応、その流通路の確保の為である。


 防波堤や備蓄等の準備は進めているが足りないものは必ず出る。だが本州の陸路の流通は混乱するだろう。そこで北海道側から送ってはどうかと考えたのだ。


 NTグループの企業は北海道にも有るが、道内で完結してる部分も多い。なので予め必要な物資の取引を精力的に増やして、災害後の流通路を確保しておくのだ。


 今はその取引の一部が決まったところである。


「ところでトウカさん、素晴らしい夜景が臨める店を用意しているのですが、よろしければご一緒しませんか?もちろん秘書さんも同行されて構いません。」


「トウカ様、黒です。」


 暗に夜のお誘いをする取引相手を視たスイカがコッソリと色を告げる。今回スイカは、秘書の体で同行していた。


「せっかくのお誘いですが、明日も早いので失礼します。」


「それは残念です。では夜景はまたの機会と致しましょう。」


 素直に引き下がった相手は懸命である。しつこくしてトウカの機嫌を損ねては自社が窮地に立たされるのをよく解っていた。


「それでは、今後ともよしなに。」


「今後も良いパートナーであることを期待してます。良い夜を。」


 お互いにステキな笑顔を浮かべて握手を交わす。もちろん作りものだが毎晩練習したそれはいい絵になった。



「あの者が思いの外わきまえていたので良かったです。」


「スイカが色出ししなくても怪しいのは丸見えでしたけどね。」


 送迎の車も断ったトウカ達は、厚手のコートを着て街を歩いている。こういう移動時間に周囲を観察するのも大事な事だからだ。


 スイカは見ての通りチカラ持ちである。


 彼女のチカラは「色彩」で、発動すると周囲の感情・意思の流れが色付きで判るのだ。先程はトウカを籠絡しようとしていたのが黒い色の流れで見えていた。


 このチカラは元同僚のカナとは違って、相手に触れなくても発揮出来るのが強みである。ただしほぼ読み取り専門となる。


 過去の海外遠征時には彼女の目が敵施設進入時に大いに役立った。当時のマスターのチカラは「時間干渉」だけだったからだ。


 魔王事件ではマスターの出現に驚きつつも悪意の色は見えず、必死に自分を求めてきた色がとても綺麗かつ熱いものだった。


 訳は分からないが、そのまま身を委ねていいとスイカ本人の本能が訴えかけてきて身体を重ねたのだった。



「それでスイカ、この街の流れはどう?」


「変に淀んだりしてなくて、綺麗なものです。これもマスターの件のおかげでしょうか。」


「魔王事件は被害こそ大きいですが、経済効果は抜群でしたからね。」


「ただ少し気になります。少々遠いですが、あちらの方角に呼び込み?挑戦的な流れが見えます。もしや面白いパフォーマンスや商売をしてる可能性もあるのではないでしょうか。」


 スイカの目には南南東方面の空に、不自然に色が集まり始めているポイントが見えていた。


「面白そうね、行ってみましょう。」


 トウカは見知らぬ街での面白イベント遭遇に期待してその方向へ向かう。あわよくばお得に美味しい食事ができる店があるかもしれない。



 結局タクシーで近場まで行くと、人集りから澄んだ声が響いていた。トウカ達はそちらへ向かうと足を止める。


「この長期療養という次元の狭間に、極寒の地で飢える獣となった荒くれ戦士たちよ!お前たちは何を求める!何が必要だ!?」


「ううう。寒いというか痛いし恥ずかしい……」


 そこにはやや大きめの屋台の前でメイド服を来た小柄な女性が声を張り上げていた。

 横にはバニーガール姿のピンク髪の女性がプラカードを掲げながらガタガタ震えている。カードには店名とメニューが書かれている。


「この地の魚介か!?発酵させた調味料か!?確かにこの地にはそれらで溢れている!しかし、お主らが望む物は違うはずだ!」


「あばばばば。た、体温かな……」


 全身でガタガタ震えているバニーガールはそろそろ限界が近そうだ。


「異性の温もり?違う!こんな凍えた尻兎を抱くなど自殺行為だ!お主たちに必要な物、それは”豚骨”だ!!」


「わわわ私って、お尻が本体扱いなの?あばばば……」


 呼び込み中に仲間のバニーガールがディスられてる。

 屋台を覆う幕を見ると赤色の中に金色の○の中に水と書かれている。


「豚骨!それは美容と健康を兼ね備えた、西部地方から広まりあらゆる民に愛される万能の糧である!」


「も、もうダメ……早く暖をとらないと……」


「今ネットで話題の、伝説のとんこつラーメン店・水星屋!なんと一杯300○、替え玉2玉・ライスも無料での提供です!セットは100円引きの500○!お酒も多数用意してあります!味噌に飽きた方や遠方の味、シュラの味を楽しみたい方はぜひご来店下さい!」


 今まで勇まし気な口調だったメイドが急に営業口調になって

 入店を薦めてくる。そのギャップにやられた男達がフラフラと近寄ってメニューを確認する。


 スイカの目にはその男達に鎖鎌が巻き付いているように見えた。何故かバニーガールにも鎖が見えたがスルーした。


「トウカ様。あの方達はマスターの、ですよね?」


 愛人とは口に出さずに確認するスイカ。

 トウカもそれはすぐに分かった。彼女達がいるなら後ろの店は彼の店なのだろう。一昨年のクリスマスイベントでは打ち上げで利用したこともある。直で飛ばされたので外観は初めて見るが。


 と、その時力尽きそうなバニーガールとトウカの視線が合う。


「ト、トウカさん!?お願いします!ぜひ店に来て下さい!」


 プイっと目をそらしたトウカはスイカに告げる。


「スイカ、行くわよ。」

「よろしいので?」

「この状況で破廉恥な尻兎の仲間だと思われたいの?」

「ではこちらの店に入りましょう。美味しいみたいですよ。」


 スイカにすぐ横の店を薦められる。味噌の香りが素晴らしい。看板には武士のイラストと「石狩食べよう。御意・然り。」とダジャレめいた言葉が書かれていた。”御”の字の下に魚マークが書かれているので完全に狙っているのだろう。


「ああ、待って下さい!姉妹を見捨てないで!」


 解る人には解る、際どい言葉を放つ尻兎。トウカは完全に無視して石狩鍋に思いを馳せるのであった。



 2時間後。



「石狩鍋の後、シメにとんこつラーメンを食べる。贅沢ね。」


「ええ、それにいくら食べてもここでは太りませんしね。」


「結局来るなら、なんでさっき無視したんですかー!」



 同日。水星屋内で尻兎ことサクラが涙目で叫んだ。

 最初こそ呼び込みでお客さんを捕まえたが、今はトウカとスイカしか居ない。


「むしろなんでサクラさんが破廉恥な呼び込みをしていたのか、こちらが聞きたいくらいです。」


「私だってしたくなかったわよ!今日は珍しく営業場所の告知を貰って、付いていく代わりに手伝うことになって!あんな寒くて恥ずかしい思いをするなんて思わなかったもの!」


「もっちゃんはブラ外さなければ良かったのに。」


「バニースーツで下着外さなかったら、出来の悪いコスプレ痴女じゃない!」


 キリコが言うブラとはマスター作のセクシャルガードである。ちょっと前に防寒防暑機能が強化されていた。それを外していたので寒さに耐えられなかったのだ。


「でも公衆の面前で私達が姉妹だなどと叫ぶサクラさんは、充分痴女だと思いましたわ。」


「今や世界中に某姉妹が居ますが、貞淑さは大事だと思います。」


 発音上スラングを隠しきれていないスイカの貞淑さは置いておく。

 ラーメンを優雅にすする彼女達の言い分にがっくりと項垂れるサクラ。


「私はまだ一緒にお風呂止まりなので、貞淑さを持ってると言い張らせてもらうわ!」


 このタイミングではどうでもいい、キリコのカミングアウトが入るが項垂てるサクラはスルーしてブツブツ言っている。


「はうう。お客さん捕まえないと終われないって言われて……そうだマスター!なんで今日に限ってこんな事をさせたのですか!釣った魚を虐待する趣味があるなら関係を見直しますよ!?」


 トウカ達に言い負かされて矛先をマスターに向ける。

 彼は大人しく動向を見守っていたが面倒くさそうに答える。


「バニーだなんだと言い出したのはキリコなんだけどな。オレも止めなかったけどさ、見たかったし。それにさっきたっぷりと温めてあげただろう?」


「「「ふーん?」」」


「ヒッ!?」


 冷たく鋭く貫通力のある視線が3方から突き刺さるサクラ。


 マスターがこの場所を選んだ理由は大したものではない。

 博多の豚骨ラーメン店がひしめく中で、札幌味噌ラーメンの店が存在した。その逆バージョンを試したくなっただけである。


「だが不幸な行き違いが有ったのは確かだ。すまないと思ってる。サクラはもうあがって好きなものを食べてくれ。」


「はい、お疲れ様です!キリコちゃん、これとこれとこれ!」


「はい、お待ち!」


「わ!マスターの真似だ。似てる!」


((急に元気になったわね。))


「トウカさん達はお仕事?それとも旅行?」


「仕事よ。来年のアレ対策の一環です。」


「私はお付きの秘書という体で、実質旅行です。」


「なるほどね。将来的にもここを狙うのは悪くないと思うよ。んで、準備は間に合いそう?」


「大抵はね。リーク出来ない以上発電所はどうにもならないけど、家族同伴社員旅行かなんかで前日に避難させるわ。」


 トウカは報告をしながらも手応えを感じていた。

 ぽろりとこぼしたマスターの発言で、自分は間違っていないと確信したからだ。


「人命第一、良いと思うよ。例の鍛冶師については?」


「その件については先方との折り合いがつきませんでした。マスター様、申し訳ありません。」


 方々に声を掛けて回ったスイカは残念な結果を報告する。


「まぁそうなるよねぇ。面倒を掛けてすまない。」


 マスターが求める謎な魔王剣については鍛冶師達から一蹴された。傑作を作れと言うならともかく、道楽品を作るのは御免らしい。刃の無い可変式のどうこう、と言われればプライドが傷つくだろう。


「となるとまた異世界にでも行った時に……うん。自力でなんとかするから、あの依頼は忘れてくれ。」


「聞き捨てならない単語が聞こえましたが、私の耳は聞かなかったことにしておくわね。」


「ふふっ。私も色を見なかったことにしますわ。」


 スイカの目には小学生の子供がわくわくしている風にしか見えてなかった。だがそれも可愛いと思わず笑みが溢れる。


 丁度話が切れたのでトウカは別の話題を振ってみることにする。


「最近、怪盗が世間様を騒がせておられるようですね。」

「可愛い女の子と聞いておりますわ。ピンクのフリフリで。」

「なんでも神出鬼没で、気がついたら被害に合うとか。」

「誰か様に特徴が似ておられますね。となるとマスターは女装に興味がお有りで?」


「んなわけあるか!」


「ブフー!マスターのナリでそれは、ゲホッゲホッ!」


「あははは、マスターが女装とか可笑しい!私が可愛くお化粧してあげるわよ?」


 モブ顔マスターのフリフリ魔法少女姿を想像したのだろう。サクラは思い切り噴き出し、キリコは最近カナや○○○から熱心に学んでいるお化粧を薦めてくる。


「言いたい放題言いすぎだろう……。彼女tは割とシリアスな訳有りなんだよ。そっとしておいた方が互いの為だと思う。もちろん、その後の利はNTで持って行っていいからさ。」


「そうね。この前も何故か現場から消えたはずの書類が私の屋敷に届いておりましたし。ありがたく使わせて頂くわ。」


「……ふむ?」


 簡単に答え合わせを済ますがスイカはマスターが一瞬

 言葉を詰まらせたのを”見”逃さなかった。


(彼女達、って言いかけたのかしら。他の協力者も居ると。)


 が、それはここで問い詰める場面ではないと黙っておく。マスターが曖昧な言い方で否定的な言葉を言う時は、ほぼ確実に地雷が仕込まれているとスイカは見立てていた。


 それは正解で今回の件を突き詰めると、政府が抱えているミキモトグループの非合法な研究に辿り着きかねない。


「でもなんで――」

「トウカ様、レッドゾーンです。」

「解った。ありがとうスイカ。」


「相変わらず鋭いね。キリコのカンの精度もこれくらいならな。」


「私のは精度は良いじゃないですか!落とす方向が味方陣営なだけで!」


「それが1番問題なんじゃないか?見てる分には面白いけど。」


「も、もっちゃんの羞恥芸だって結構なものよ?」


 2人は互いにダメージを受けてズーンと肩を落とす。

 それらを無視してトウカは本日の本題を持ち出す。


「それでマスター、私達はここに泊まる予定ですがお時間があれば――」


 ホテルのパンフを取り出して露骨にお誘いを掛けようとする。


 しかし……。


「はい、皆さん動かないで!警察です。近隣から通報を受けて来ました。」


「失礼する!店長は君か?君は営業の許可を取っているのか?」


 その時2人組の警官が現れてマスターに詰め寄る。

 飲食店がひしめく路地で無許可で屋台を出したら、それは通報もされるだろう。むしろ数時間もよく持ったほうだ。


「「「マスター……」」」


 不安そうな女性陣がマスターと警官を交互に見守るが、

 警官はそのまま動かなくなってしまう。時間停止だ。


「どうやら営業はここまでのようだね。トウカ、時間なら今できた所だ。話はそちらでしよう。片付けるから少し待っていてくれ。」


「はい、お待ちしておりますわ。」


「やりましたね、トウカ様!」


「マスター、この2人は外に捨てておきますね!」


「頼む。サクラは”今”ホテルを取っておいた。そちらで泊まると良い。あとで連絡するよ。」


「う、うん。わかったわ。待ってるわね。」


 魔王邸の出入りを禁止され、トリプルエイチの会員証も剥奪されたサクラは会うことと来店しか許可されていない。下手にごねると会う権利すらなくなりそうので大人しく了承する。


 交際契約はしてるし、マスターとは自室で思う存分楽しめるので特に文句は言わないが、こういう時は少々不便でもある。


 よどみなく撤収作業が行われ、警官達が気がついた時には「石狩食べよう。御意・然り」の武士イラストに話しかけていた。



 …………



「最近君の所はいい噂を聞かないが、どういうことかね?」


「業績もだいぶ落ちているようじゃないか。」


「然り。このままでは今のポジションを任せられなくなるな。」



 2010年7月3日。党の幹部会議でヨシダ・ジュンジ議員は槍玉に挙げられていた。実の兄弟が反社会組織のメンバーと同時に逮捕されたのが事の始まりだ。


 観光を始めとして建設や報道など重要な業務で落ち込み始め、悪評を垂れ流されてとてもクリーンな状況とは言い難い。


 元凶と思われる怪盗イヌキなる賊を捕まえることも敵わず、先の見通しは限りなく黒かった。


「確かに今は賊に良いようにされてますが、ただ手を拱いているわけではございません。近い内に必ず!」


「先月もそう言っておったと記憶しているがね。」


 それでもそう言うしか無いジュンジ議員。彼は30代半ばの若さで財務局長を任されるというエリートで、企業グループの長でもある。


 その大半は魔王事件で死んだ父親の譲りものだが、今まではうまくこなしてきた。

 魔王事件で財産をあまり取られなかったのは幸運である。単に息子ならもう少しまともだろうと見逃されていただけだが。


 しかし親と同じような強引な方法で業務をこなす彼は、巡り巡ってツケを払う時が近づいてきていた。かといって認める本人ではない。


(あのバカ兄貴が最悪な捕まり方をしなければ、少しはマシだったものを……おのれえええ!)


 兄のジュンイチは、交番で銃を撃つという言い逃れの出来ない状況で捕まった。非合法の性商売をしていた事もあり、ハイエナのような報道関係者に多くの金を払って火消しをするハメになった。


 その後は実働部隊のアライ組を消され、自社グループの多数の事務所や現場が工作や襲撃に遭った。警察やサイトでも追えず、この3ヶ月で経営は一気に傾いていった。

 今では火消しをする金すら無くなっているのが実情だった。


「君が逮捕される前に、我々は手を打つ必要があると思わないか?」


「然り。君のせいで全員が道連れというのは御免こうむりたいね。」


「なにとぞ、もう暫くの猶予を頂きたいと存じます。」


「猶予か。酒もキャビアも今はまだ手の届く場所にある。だが全てが失われるのは一瞬だ。それをよく考えて行動するんだね。」


 ジュンジ議員は拳を握りしめて屈辱に耐える。周りの老人たちは然り然りと知ったふうな顔で彼を哀れんでいる。


「顔色が悪いぞ?もう帰って休むが良い。何、君はきちんと仕事さえしてくれればそれでいいだけの話だ。」


 ついには会議から追い出されてしまう。今頃彼についての処遇を話し合っている頃だろう。


「おのれ、怪盗め!タヌキだかミヌキだか知らないが、絶対にこのままでは終わらんぞ!!」



 孤立無援のヨシダ・ジュンジ議員。彼の独りよがりな空回りは加速していく。それはNTグループに付け入るスキを与え、いずれは本人の首に縄が届く運命が待っている……かもしれない。



 …………



「おはようございます!アケミさん、すみませんが例のアレを。」


「おはよう、メグミちゃん。メグミちゃんもなの?」


「あら、おはようメグミ。頭脳派にこの頭痛は堪えるわね。」



 7月12日、月曜日の朝。メグミは医務室に顔をだすと、気分の悪そうなアケミとミサキが座っていた。アケミは引き出しからクスリを出してメグミに渡す。


「え?もしかして2人も!?」


「男の人って1度火がつくと止まらないのよね。その時は良くても後でこうなるとちょっとね。」


「むむむむ!」


「昨夜は遅くまで、あの豚の相手をね。おかげでこのザマよ。」


「ぐぬぬぬぬ!」


 メグミは2人の発言から言いようのない怒りを感じていた。


「ごくごく、ぷはー。アケミさん、私もう許せません!ちょっと説教してやりますよ!」


 今朝方までお盛んだったメグミは事後避妊薬を水で飲み干すと、野郎どもを捕まえに走っていった。


「あ……あの子、誤解してないかしら。私はただの寝不足からの風邪なんだけど。」


「ミサキちゃん、さっきの言い方だと誤解されても仕方がないわ。」



 10分後、医務室に連れてこられたユウヤ・ケーイチ・ソウイチ。並んで正座させられていた。そんな3人に対してメグミが怒りの形相で睨んでいる。


「あなた達!自分の彼女を何だと思っているの!?」


「メグミちゃん、私はいいから――」


「ダメです!アケミさんが辛そうにしてるのに知らん顔してる男を許すわけには行きません!!」


 実の所、頻繁にミキモト教授から「はよ結婚せい」という司令書がまわって来るくらいにはアケミは背中を押されている。

 ピルで避妊しているのはケーイチがまだ踏ん切りがついてないからだ。


「おいユウヤ、お前の女だろ。なんとかしろよ。」

「いきなりだったんでオレも何がなんだか。」

「なんでオレまでここに居るんだ?」


「私の話を聞きなさい!!」


 メグミの身体からは赤黒いオーラが湧き出し医務室に充満する。


「「「はいィ!!」」」


「あなた達は中に出したいだけ出すだけで平気な顔をしてるけどね、こっちは避妊薬の副作用で毎回ツライ目に遭ってるのよ!?見てみなさいよ、あなた達の好き勝手の結果がこの顔よ?」


 アケミのなんとも言えない顔を前に持ってくるメグミ。


(ユウヤと教官はともかく、オレは何を見せられてるんだ!?)


 ソウイチには心当たりが全く無く、メグミの勘違いであることは明白だ。しかしあの状態のメグミに逆らうと変な呪いとかを貰いそうなので黙っておく。その辺の対処はミサキで学んでいた。


(ソウイチの考えなら分かるわ。大人しくしてるのは賢明ね。ま、呪いなら既に……。それよりこのチカラ、メグミはナカジョウ家でもないのによく制御出来るわね。)


 ミサキは後ろのベッドに座りながら様子をうかがっている。

 メグミからは際限なくオーラが溢れているが、よく見ると循環させており、医務室の外には漏れ出していない。


「良い!?避妊したくないなら、キチンとセキニンを取ってからにしなさい!それとこれ、ネットでみつけた避妊具。つけ心地やらなにやら違うらしいわ。こうやって我慢できないなら出来ないなりに解決策を探しなさいよ!」


 そう言いながらちょっとお高い避妊具を投げ渡す。

 メグミは詳しく無いので実はアケミが探して買ったものである。たっぷりジェル付きで女性側にもとても優しい代物だ。


「お、おぼれ……」

「お、おい。解ったから黒いのを止めてくれ!」

「がぼがぼがぼがぼ。」


 正座した3人は濃いオーラに纏わりつかれて息も絶え絶えだ。渡された箱を確認するどころか手に取ることすら出来ていない。


「コレに懲りたら相手と将来の事を考えて、よく話し合う事ね。これ以上無責任に吐き出し続けるなら、立つものが失くなると思いなさい!!」


「「「!!」」」


 もはや真っ黒な人影だけの存在となったメグミのお叱りの言葉に、ユウヤとケーイチは恐怖で2ヶ月に渡り不能状態に陥った。


 ソウイチはミサキで慣れていたせいか不能にはならないが、完全なとばっちりである。



 その日の夜。ミサキの部屋に呼ばれたソウイチ。


 座った彼女が太ももをポンポンとジェスチャーで示している。


「お、おい。これは一体何の罠だ!?」


「ほ、ほら。今朝ちょっと迷惑かけたじゃない?細かい事は良いから、こっちに来なさいよ!」


 ミサキはさすがに気まずくなって、膝枕までは許すのであった。

 そのまま耳かきをしてやるとソウイチの震えが徐々に収まり安らかな吐息を太ももに感じ始めるミサキ。


「わー、ミサ姉さんオットナー!!」

「ソウ兄さんも気持ちよさそうだよー!?」


 もちろんアイカとエイカからは部屋中に現れた姉妹と共に祝福と称して囃し立てられた。


お読み頂き、ありがとうございます。

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