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32 オセワ その3

 


「カナさん。お陰様で旦那との時間が一層楽しくなったわ。」


「私こそ、旦那様と奥様のお陰で人生を取り戻せました!」



 8月15日朝、魔王邸リビングで二人の女が握手をしていた。あれから数日、魔王邸の生活は驚くほど安定していた。


 カナの指示により、クマリや3人娘もよく働いてくれている。キリコも早く一人前になろうと様々な料理に挑戦している。


 マスターも何でも屋絡みの仕事を意欲的にこなし、日々の水星屋の営業も精力的に取り組んだ。


 深夜は新たなステージに至った2人が深く愛情を確認する。昼間も前以上にベタベタしている2人だが、とても仲のいい両親の様子を見てセツナも嬉しそうだ。


 すこぶる順調だった。


 今日も平和な朝食をみんなで摂っていた。


 だがふとカナがそれを口にする。


「旦那様~。そういえば会長さん達の件、どうなりましたカナ?」


「問題ない、今思い出したからな。」


「ちょっと、それは冗談きついカナ!?そっちを上手く纏めるのも条件にして移籍したんですよ!?」


「カナも今まで忘れていたじゃないか。」


「それはもう人生やり直せるとは思わなくて、頭がお花畑になってましたし。」


「寂しさを紛らわす方法だったっけ。それだとあなたが直接会わないと駄目よね?」


 しょうもない言い争いからさっさと解決方法への議論に持っていく辺り、妻の○○○はよく出来た女である。


「そうなるよね。とはいえ地球で頻繁に時間を操るとフォローも大変だしなぁ。」


「ならこの家に呼ぶ? ホテルの空き室は腐るほどあるけど。」


「私達は2階しか使ってませんしね。」


 使用人用の高級ホテルは8階建てだが、2階までしか使っていない。


 1階が各種娯楽施設への通路や売店、倉庫や宴会場である。

 2階から7階は客室だが使用人たちは2階のみで事足りている。


 8階は展望大浴場が有るが 宇宙しか見えないため、1階に後付された露天風呂のほうが人気だ。


「でも大丈夫なの? 変な男の人とかきたり?」

「あまり人が多いと難しいかも。」

「ゴハン、とんこつラーメンでいいのかしら?」


「言ってなかったっけ? この敷地内はオレ以外の男は入れないよ。水星屋の厨房と同じで消滅しちゃうんだ。そもそも女性向けだから男なんか来るはずないし。」


「旦那様の近くは、どこに地雷が埋まってるかわかりませんね。」


「とりあえず黒いので情報を整理して決めよう。」


 そう言ってリビングに黒いモヤが発生する。「精神干渉」で全員の意見を収集、整理するのだ。


「紅鮭に転生したら魔王ハーレムの食卓だった件。」


 おかずの紅鮭がなにか言っているがスルーする。


 シオン・キリコ・ユズちゃんがブルっているが、他のメンバーは慣れたものだ。


「つまりだ。対象の女性を呼んでホテルに泊める。オレが接客して満足してもらう。サービスは幾つかのコースを用意して選んでもらう。」


「ウチの主観時間が大変なことになるわね。セツナの成長速度に悪影響がなければいいのだけど。」


「旦那様の精神状態を保つためにも制限が必要ですね。」


「では 1日3人くらいで 同じ人は月に2回までとか。これなら旦那様の制御は私でもなんとか。」


「会員制にして週3くらいの営業でいいんじゃない?」


「テンチョーが本業を放り出さないレベルでお願いします。」


「ゴハンは水星屋のものじゃ俗っぽいかな?」

「むしろマスターの手作りならそっちで良いと思う。」

「私もその方が嬉しいと思うわ。」


「それじゃ決まりだな。オレの回復に関しては○○○とカナ、

足りなければ他の者も頼む。それとセツナの成長速度は調整してるから安心してくれ。」


「「「はーい!」」」


「このあと偉い人呼んで感想を聞こうと思う。君たちも粗相がないように気をつけてくれ。」


「「「はーい!」」」



「まるで女用のフーXクじゃないカナ?」


 カナは思わず呟くがみんなスルーした。

 オーダーからして、どう言い繕ってもそうにしかならないからだ。


 話がまとまり食事を終えると、紅鮭は次の転生ガチャを目指して閻魔様の所へ旅立つのであった。



 …………



「むう、マスター。死ぬなら事前に予定日を言っておけって伝えただろう?おまえの罪、読み上げるだけで半年以上掛かるんだぞ?」


「閻魔様は本日もご機嫌麗しく。本日はこれをお持ちしました。」



 そう言って差し出すは新サービス、トリプルエイチの招待券だ。今日はそれを届けにいつものワープで裁判所まできたのである。


「私はお盆が連勤だったんで疲れてるんだ。賄賂なんて持ってきても……これは!?」


「オレの家の新しいサービス券です。疲れ、寂しい女性向けの癒やしサービスを提供しようかと。モニター参加となりますので、閻魔様には査定もお願い致したく。」


「ふむ。温泉か。ではこの献上品は受け取っておく。」


「よろしくおねがいします。」


「次の者は、紅鮭? 今日は気分がいいからSR以上確定だ。」


(この裁判所ってそんなシステムだったっけ?)


朝食の紅鮭の裁きを尻目に、次の場所へ向かうマスターだった。



 …………



「こんにちはー。副社長、これどうぞ。」


「癒やしと健康のサービス、トリプルエイチ?私でいいのか?その、いろいろと。」


 社長の木造住宅に入るとバイト君は副社長に券を渡す。社長が興味深そうにこちらを見てるが非情にもスルーだ。


「もちろん、疲れた女性を癒やすサービスですから。この前の約束もありますし。」


「ちょっとバイト君、 私にはないの?」


「これ、モニター参加なんですよ。社長にそんな事させられませんし。」


社長からの突っ込みに、用意していた言い訳をつらつらと並べる。


「本音は?」


「うざ、ですから社長がやることじゃないです。」


「今うざいって言いかけたよね。」


「だって社長、その巨乳を触らせようとして挑発するくせに、直前で幼女になったりしますからね。暫く妻にからかわれたんですよ?」


 消える魔乳に空振り三振!と大笑いされたのだ。


 社長こと領主様は他人から見ると、幼女から熟女までの範囲で見た目が切り替わるが……これは本人の意志でも出来る。つまりセルフ年齢不詳が可能な女なのだ。


「そ、それも修行の一環だし!」


「ある意味参考にはなりましたけど。」


「「一体何の参考に!?」」


 天才にバカの考えは読めない。何故なら相手も有る種のテンサイなのだから。



 …………



「こんにちはー。当主様これをどうぞ。」


「うむ、頂こう。」


 予知をしていたのかすんなり受け取る当主様。

 ワクワクしていたのが見て取れたので、良い事したなぁというほっこり気分になるマスター。


「ん? マスターよ。我の券にある、健全コース限定というのはどういうことだ?」


 トリプルエイチは主に3つのコースがある。

 健全・ギリギリ・大満足だ。


 そこからそれぞれ細分化していくが、まずはこの3つから選ぶことになる。


「当主様におかれましては、それ以上のコースは妻から絵的に完全にアウトという判定がなされまして。」


「うぬぅ。人間基準ではそうかもしれぬが……」


 かなーり昔に別の世界の悪魔の国から来たお姫様。

 それが当主様であるが、見た目は10歳くらいの女の子である。


「なぁマスター、3Dホロで大人の身体に――」


「駄目だと思いますよ。」


「無念なり……」



 …………



「疲れが癒えるどころか、肌に若さが戻ってきている感覚だ。これはたまらん。」



 8月16日。

 閻魔様が酒飲みながら露天風呂に浸かっている。

 先程まではゲームセンターで大はしゃぎしていた。


 多忙な時期に休み無しで仕事ををこなしたのだ、

 これくらいの癒やしがあってもいいだろう。


「ますたーよぉ、この温泉自宅に引けぬかぁ?たまに入りに来ておるが、自宅にあれば……」


「良いですが、かなりの金額になりますよ?おすすめは売店で売っている入浴剤です。」


「うむぅ。私の給金じゃそこが落としどころかぁ。」


「のぼせる前にお身体を洗いましょう。ささ、こちらへ。」


 洗い場に、戻したワカメになった閻魔様を連れて行く。マスターは洗う準備を整えて、手に泡をたっぷりのせる。


「閻魔様はギリギリコースなのでギリギリラインを……うん、手で失礼しますね。」


「う、うむ。頼むぞ。」


 ちょっとドキドキしながら素直に洗われる閻魔様。先程の温泉効果もあってお肌はツルツルだ。


「そう言えばあの紅鮭どうなりました?なんかガチャがどうとか言ってましたが。」


「あいつは神の使いだから妙なシステムなんだ。次の転生は女を虜にできる蜜を生み出すとかなんとか。」


 何その媚薬製造マシーン。いや惚れ薬か?ということは科学者か魔術師だろうか。マスターの思考は汚れている。もちろん不正解である。


 そのまましゅわしゅわと閻魔様を洗っていくと、マスターがとある事に気がつく。


「あぁ、そうなるとオレは神の使いを食べちゃったのか。

 悪魔的に大丈夫なんですかね?」


「問題なかろう。身はただの紅鮭だ。何かあれば相談にはのr

 ひゃん! あ、くう。おい、そんな所まで洗うのか!?」


「ちゃんと弱酸性の泡ですから、大丈夫ですよー。こう外側に向けて撫でてあげると、綺麗に取れます。」


 ずっと椅子に座って溜まった垢を丁寧に取っていく。


 閻魔様は自分でも疎かにしがちな部分が、男の手で綺麗に

 されていくという未知の感覚に抵抗すら忘れている。


「こ、これはギリギリと言うよりアウトなんじゃないか?」


「お客様が抵抗されないかぎりはギリギリセーフです。」


「あう……。誰にでも許すわけではないが、マスターからの頼みだしな。査定してやるから、存分に奉仕活動をするが良い。」


「ありがとうございます。お風呂から出たらマッサージもございますので、楽しみにしていてくださいね。」


 ゴクリ。喉を鳴らす音が妙に響いて聞こえた。



 …………



「お酒をお持ちしました。」


「ああ、ありがとう。」



 少し時間をずらした露天風呂で、副社長がくつろいでいた。そこへ腰タオルだけのマスターが近づいていく。


 副社長は動物の妖怪らしくケモミミや尻尾があるが、そこさえ目を潰れば判別が難しいほど人間らしい肌の部分が多い。そして何の動物か聞いても教えてくれない。オオカミ辺りだろうか。


 そして事前にアナウンスしておいたにもかかわらず、タオルで隠したりはしていない。Fを超えるであろう豊かな双丘が湯に浮かんでいる。


『うわー、うわー。あの大きさで浮かぶのは目に毒ね!あなたも遠慮しないでじっくり見ておきましょう。』


 なぜか妻が喜んでいるがその感想には同意するマスター。お盆に酒と天ぷらと漬物を乗せて浮かべ、酒を注ぎながら声をかける。


「お隣失礼します。タオル、よろしかったのですか?」


「か、構わぬよ。私でいいのならな。ふー、こういう酒もいいものだ。」


 息遣いに呼応するかのようにソレが揺れて波紋が起きる。


『π波紋よ!π波紋! コォォォオオ!』


 ○○○だってDはあるので似たようなことはできる。スケールと迫力に違いはあるけども。


「約束通り、す、好きにしていいぞ。少々トシの身体ではあるが故に、お主ほどの男の慰めになるかわからんが……」


 先日冗談で流した部分も約束に入れられている。だが美人にそう言われて嬉しくない男はあまり居ない。


 本人の言う通り若い身体とは言い難いが、成熟したオトナの雰囲気は持ち合わせている。


 それにしても人間を下に見ているはずの彼女がここまで体を張るという事は、先日の社長の騙し討ちは余程思う所があったらしい。


「充分に、目の毒だと思いますよ。気になるならお手入れしましょうか?いっそ社長よりも綺麗にしてしまいます?」


「ゴクリッ。い、いいのか!? 」


「もちろん、その為の大満足コースです。ちょっと失礼しますよ。」


 後ろにまわって下から包むように触れる。どちらかと言うと包まれ埋もれたのはマスターの手だった。


『この感触! 手が埋まってるわ!』


 妻がだいぶ興奮している。マスターは手からチカラを発しており、中身の状態を調べている。


 一度先端までの構造把握をすると、再度付け根から徐々に移動し先端までの治療を行う。


 経年で伸びたり広がったアレソレを戻して、引き締まったモノに戻していくのだ。


「んん! ちょっ。いや遠慮などはいらぬが、くっ!」


「ご安心ください。これは治療です。ほら、良い形になりましたよ。」


「なっ、なんだと……伸びきっていた物が若い頃のように!それになんだこの色はっ。まるでトシを感じさせぬじゃないか!」


「この調子で全身ケアして社長を驚かせてやりましょう。」


「くっくっく。それも悪くないかもしれぬな。」


 その後はマスターが副社長の身体に治療を施していく。

 途中でその効果を”確かめ”ながら全身の治療が終わった。


 そのとてつもない若返り効果に副社長は大興奮・大満足だった。



 …………



「むぅ、我ももう少し楽しみたいのだが。」


「無茶言わないで下さい。これ以上は捕まります。」


「今更であろう、現代の魔王さま?」


「それは言わないでほしいですねぇ。」



 当主様はその小さい体の全てで魔王邸の娯楽を満喫していた。宇宙遊泳やゲームセンターで大はしゃぎだったのだ。


 しかし健全コースでは混浴はなく、当然ながら先の2人のようなあれやこれやもない。今は露天風呂から上がり、マッサージ台に座ってワクワクしていた。


「このオプションのマッサージなら!触れてもらえるのだろう?」


「そうですけど、際どいのはないですよ。健全コースですので。」


「いや、ここは当主権限できっちりしてもらうぞ!最近手に入れた、凶悪な”てくにっく”で我を満足させるが良い。」


 当主様はもちろん魔王邸のメイド事情を知っている。新人が一気にメイド長まで登り詰めた経緯もだ。


「その権限を使うってことは、自己責任になりますがよろしいのですね?」


「くどいぞ。れでぃを待たせるでない。」


(ちょっとだけチカラ使って、普通のマッサージでお茶濁すか。)


 当主様はバスタオルを外してすっぽんぽん――ではなく、すってんてんな身体を晒して横になる。


「では上から徐々に参りますね。リラックスしてお受けくださいませ。」


 その数秒後から30分後まで。


 魔王邸に怨霊じみた叫び声が途絶えることはなかった。


 その夜はセツナがオバケが怖いとマスターに泣きつくほっこりエピソードがあったとか。



 …………



「さて、それぞれのコースを堪能してもらいましたが

 ご感想をお聞きしても宜しいですか?」



 魔王邸時間で次の日。3人をロビーに集めて感想を問う。



「有罪だな。だから再度私を招待して接待するが良い。」


「大満足だ。だがこの悦楽は怠惰への第1歩になりかねん。」


「ゲームは良かった。マッサージも凶悪であった。」


「では概ね満足とのことで、ご自宅までお送りしますね。」


 1人ずつお姫様抱っこで送り届けるマスター。

 なぜ抱っこかというと、全員足腰が立たないのだ。



 …………



「はい、閻魔様。ご自宅ですよー。」


「お、おいッ!近所の連中に見られておる!早くステルスとやらを使うのだ!このままではウワサが!!」


 既に近所の奥様方にヒソヒソされているので手遅れだ。


 明日には若いツバメにお姫様抱っこさせた閻魔、という話があの世中に駆け巡ることだろう。


「今更ですね。取り敢えず上がらせてもらいますよ。あ、でもこれだと生活大変ですよね。お友達に声かけましょう。」


 そういって謎携帯で閻魔の知り合いに連絡を取るマスター。


「あやつを呼ぶでない!こんな所を見られたら――」


「お邪魔しまーっす。うわ、閻魔さん本当に男デキたんですね。しかも相手は現代の魔王!? 爛れてるなぁ。」


「ち、違ッ!!お前もなにか言ってやれ!」


「今回はお試しという事でしたが、継続なら契約書と会員証をご用意しますね。」


「半分冗談だったのに、それ以上に爛れてた!! 閻魔様って過酷なお仕事だからなぁ。」


「いやぁぁぁぁあああ!!」



 …………



「社長、お届け物ですー。」


「領主様、只今戻りました。」


 お姫様抱っこのまま社長室に入る2人。机越しに心底驚いた社長が見える。


「あんた達、この数時間でそんな仲に!?ていうか補佐官、滅茶苦茶若返ってるじゃない!」


「人間換算で20歳若くなりました。バイト君のチカラのお陰です。なんかもう、てくにっくが凶悪でして。」


「まさか身ごもったりはしてないでしょうね?」


「その辺は気をつけてるので大丈夫ですよ。ご安心下さい。副社長を部屋に運びますのでちょっと失礼しますね。」


 そのまま社長室を出ていく2人。

 作戦成功!と笑顔を向け合う姿はとても仲がよく見える。


「……おかしいわ。」


 おかしい。補佐官は人間を見下し噛みちぎる会の会長みたいな性格だったはずなのに。いつの間にか雌の顔していやがる。


「あの大妖怪に対して凶悪なテクニック?私の時は普通だったのに一体何があったの!?」


 あの様子では先日のフォローは出来ていると見ていいが、1人で悶々とする社長であった。


 一方バイト君は別の疑問を胸に抱いていた。


(社長の様子だと種族が違っても懐妊できるのだろうか。今まで一応ヒト型の相手をしたけど、オレにはその可能性が?)


 でも”戦意”を保てないようなビックリ種族は嫌だなぁと

 ひっそり思うバイト君であった。



 …………



「ますたーよ。お主は毎晩○○○とあの凶悪なてくにっくを披露し合っているのか?」



 悪魔屋敷の玉座に当主様を添えて、目の前でうやうやしく

 お辞儀をしているマスターに当主様が問いかける。


「秘め事は秘めておくから美しい、ですよ。今日のはただの

 マッサージです。如何わしい事は何もしておりません。」


「つまり、あれは比叡山の一角だと?参考までにどういう仕組みか教えてはくれぬか。」


 何故比叡山?と思うが、きっと○○○あたりの冗談を真に受けているのだろう。気にせずスルーする。


 新ワザについてバラすのは本来は良くない。


 しかし相手は悪魔の契約を交わした当主様であり、将来妻の亡き後の自分を所有する者なのだ。


「はい、精神力を相手の肌に浸透させて、外と中から様々な刺激を作り出してます。」


「なんと、器用なことをするものだ。だがソレだけではあるまい?」


「時間操作による刺激のリピート機能を開発しました。これで上から下まで同時に刺激を与えられます。またチカラの浸透を利用して、本来は触れられない部分も直接刺激することが可能です。」


「マスター、現代の魔王じゃなくて性技の魔王と名乗った方が良いのではないか?」


 発音だけだとジャスティスな魔王となり、意味がわからなくなる。


「お戯れを、当主様。オレはまだ駆け出しに過ぎません。今後の為に更なるワザを幾つも開発中でございます。」


「……程々にな。なんか疲れたからもう寝るわね。」


 当主様は他人よりも身体の治りが早い。

 もう動けるようになっていたので自分で寝室に向かう。


 身体は治っていたが心が追いつかずに足元は揺れていた。



 …………

 


「門の向こう側が殺気だらけなんだけど。」


「私もそのように感じます。」



 2008年8月23日。再びコンドウ宅を訪問したマスターとカナは、何やら怪しげな雰囲気を感じ取っていた。


 カナは直接読み取ったわけじゃなく、マスターに触れて彼の手に入れたデータを読み取っている。


「会長とかスイカが裏切るとは思えないから、なんか事情でもあるのかな。」


「もしや弟様が戻られているとか。」

「そうなると面倒だな。あの吸血鬼も一緒でしょ。」


「「その通りだ!」」


 門が開かれて黒スーツに銃を持った連中がワラワラ待ち構えている。その後ろから男女が一組近づいてくる。


「姉さん達の様子がおかしいといわれて戻ってみれば、やはりお前か○○○○!」


「お陰で捜し物の途中だったのに、とんぼ返りさせられたわ。」


「シスコンぶりは相変わらずだなぁ。いまだにトウカさんのブラジャー盗ってんの?」


「え!? ハル様ってそんな事を!?」


「シュン!どういうこと!? 私のでいいじゃない!」


 カナとお相手の吸血鬼が驚いて問いただす。

 これはマスター作戦の第一歩だった。


「盗ったことなど一度もない!!お前も適当なこと言ってんじゃない!」


「ここは言っておく所かなと。でもあの遠征の時、ちょっと迷ってたでしょ。知ってるんですよ?」


「何故知って、ハッ!!違うぞヘム、たまたま紛れ込んだだけで……」


 そのまま2人の言い争いが始まる。


 男の方はコンドウ・ハロウ、23歳。春朗と書く。その名を嫌ってハルとかシュンと呼ばせている。NTグループ会長の弟であり、細身の美形男子だ。


 女の方はヘミュケット・トランスフュージョン。美形と言えなくもないがその見た目は不健康だ。


 不自然に肌が白く、その目は赤い。背中まで伸びた赤黒い髪はグラデーションが掛かっている。


 吸血鬼だが完全な純正品ではなく、事故後の治療で輸血時に吸血鬼の血が混ざっていたので同等の存在になった。

 それ以降この名を名乗り、悪質な化け物を増やす輩を成敗している。


 この2人も戦友であり、マスターは戦いたくはない相手だった。なので適当なことを言って、場をぐだぐだにする作戦を実行中である。


「旦那様、わざと煽ってません?」


「煽ってなんかいないよ。ぐだぐだにさせてるだけ。」


「貴様、姉さん達を襲うだけじゃ飽き足らず、カナまで攫うとは性根まで魔王に堕ちたか!」


「絶好調だねぇ。チャック全開でさ。」


「え? うわ、マジだ!何でわさびが挟まってるんだ!?」


 慌ててチャックを戻そうとするハル君。

 何故か社会の窓に本わさびが1本挟まれている。


 もちろん時間を止めた誰かさんに細工されたのだ。


「もう完全に相手にしてませんね。ハル様、どうか気をお鎮めください。私は望んで生贄となったのです!」


「おのれ魔王! カナよ、すぐ助けてやるからな!」


 黒スーツ達から銃撃が始まったが、全てバリアで弾く。

 バリアがなかったらカナまで危ないところであったが、その辺はあまり考えていないようだ。相変わらず認識が甘い。


「カナも言うねえ。ハル君、完全にヒロイック色に染まったよ。」


「あはは。何言っても無駄でしょうし、早く事を進めませんと。」


「くそっ、次元バリアは健在か。ならば我が妖刀にて直接その首を落とすまで!」


「援護するわ!」


 日本刀を構えて突撃するハル君。

 合わせて右腕を突き出したヘミュケットの上半身から蝙蝠の群れがワサワサと現れる。


 そんな蝙蝠スプレーが噴射されたマスターたちは、バリアごと覆われて視界が塞がれてしまう。


 その間にハル君が距離を詰めてバリアを斬りつける!


「オレのチカラは誰も防げない!!」


 その宣言通りバリアを切り裂き、台風のような風圧を発生させる。もし通行人にスカートの女性が居たら危なかっただろう。その勢いのままマスターとの距離を詰めて斬っていく。



 ザンッ ! という効果音とともに右腕が飛ぶ。


 ザンッ! ザンッ! 今度は左腕と両足だ。


 ズバッ! ドスッ! 首が落とされ胸を刺される。


「ぐふっ、ハル君の「豆腐よ。」も健在でしたか。」


「略すんじゃねぇ、「討伐付与」だ!てかどうやって喋ってるんだよ。」


「…………」


「ふっ 逝ったか。たとえ魔王と言えども我がチカラには敵わないようだな。」


「シュン、凄いよ本当に魔王を倒せたんだ!」


 ぱたぱたとヘミュケットが寄って来て賛辞を送る。急速に2人のイチャイチャ空間が出来上がっていく。



 そんな中、カナは笑顔で佇んでいた。



 そう、こんな簡単に自分の愛する旦那様が死ぬわけがないと解っているのだ。


 それが証拠に自分の魂に埋め込んだ、2つの契約書が消えていないのだ。


「カナ! もう大丈夫だ、オレたちと一緒に帰ろう!」


「ハル様 ヘム様、油田大国って知ってます?」


「「は?」」


 それを言うなら油断大敵だが、相手のスキを作るという点では正解だ。


 その瞬間、バラバラになったマスターの身体が浮き上がって高速でハル達の周囲を囲い、回転する。


 そのまま次々と精神力のビームを射出し2人の関節を撃ち抜いていくと、肉片が集まり元のマスターへ戻る。


「我がチカラには敵わないようだな、キリッ!とか言ってたけど、ねぇ今どんな気持ち?」


「旦那様、煽りますねぇ。」


「何故だ!あそこまで切り刻んだのに何故生きている!」


「「討伐付与」は私でも手こずるのに、一体……」


 苦しそうに地面に跪いている2人が疑問を口にする。


「いやまぁ、死人はそれ以上死なないし。」


 そんな事はないのだが、説明が面倒なので省く。だがソレで充分わかってくれる人もいたようだ。


「つまり貴方も化け物になったの!?」


「お仲間だね、ヘミュケットさん。イェーイ。」


 ハイタッチは当然のごとくスルーされる。



「ならば次は再生できないように細切れにしてくれる!」



 複数の関節をやられながらも、頑張って日本刀を構えて近づいてくるハル君。マスターはのんびり待ってバリアを張ると、今度は日本刀の方がポッキリ折れてしまった。


「何だと!? オレの妖刀キヌモメンが!!」


 どうやら絹木綿というらしい。やはり豆腐か。


「今こそ! 君にこの言葉を贈ろうではないか!セメントに1度見たワザは通用しない!」


 人気コミック、セメントせいやっ! の名言である。マスターは小さい頃から、結構なファンだった。


「セメントに目は無いだろうが!」


「もし見えてたら効かなくなるんじゃない?」


 適当な事を言ってるが、今回もバリアの強化を手動で行っただけである。


「討伐付与」略して「豆腐よ。」は、豆腐のように相手がスパスパ切れるようになる。


 この彼のチカラは「空間破壊」の一種である。


 刀に纏わせた精神力で空間に亀裂を発生、その直後に切り裂く事で大抵のものは斬れてしまう。


 マスターのバリアの基本は、時間を歪ませた”空間”であり相性は良くない。だが一度食らって解析すれば、その反対の効果を付与することで防ぐことが出来る。時間遡行で亀裂発生と同時に亀裂が戻るのだ。


 こうしてまたマスターのバリアが進歩した。


「くぅ。オレの技がやぶれ、妖刀も折れた……」


「妖刀ならオレが直しましょう。その代わり停戦ってことで。」


「私はまだやれる! 停戦なんて認めるか!」


 そう言って襲い来るヘミュケット。

 既に関節の怪我は治っているようだ。さすが吸血鬼。


 だが彼女が放つ爪の連撃は、悲しいかなその全てがバリアで弾かれている。


「ヘミュケットさん。貴女は別にオレと戦う理由はないはでしょ。」


「かつての仲間とは言え、あんたを野放しにしてると人が死ぬわ!」


「オレを殺すと捜し物が見つからないよ。ハル君との生殖方法でしょう?」


「何故それを!って心が読めるんだっけ。だがそんな甘言に騙されるほど落ちぶれては居ない!」


「もしもし警察ですか? NTグループの会長さんの家で銃声のようなものが――」


「わかった、停戦に応じる。」


 急に通報するマスターに、あっさり落ちるヘミュケット。今警官が来て困るのはコンドウ家の者だ。


 マスターはすぐに逃げられるが、コンドウ家はそうもいかない。ヘミュケットは想い人の実家を潰すわけには行かないのだ。


「話が通じてよかったです。ほら、ハル君も妖刀直すから。」


 妖刀と言ってもちょっと良い刀なだけで、別に怪しいチカラは持っていない。ハル君のチカラを吸ってこそのあの威力なのだ。


 先程の本わさびをすり下ろして塗り、切断面を合わせると、妖刀キヌモメンは元通りになった。


 いや、ちょっとコウタクが緑になったようだ。


「「何故本わさび……」」


「わさび豆腐もまあまあ行けるので。」


「さすが旦那様、意味不明をさせたら世界一です。」



 妖刀キヌモメン・侘ビ寂ビ、ここに生まれる。



 …………



「○○○○、無事で良かったわ。」

「○○○○様、心配しましたわ。」



 ガシッと左右からホールドされ、ソファーに座らされるマスター。その両脇にいるのは当然、トウカとスイカだ。


 先程まで2人は黒スーツの壁に阻まれ、ハル君達を止めることができなかった。


 だからこそ無事にたどり着いたマスターを歓迎しているのだろう。後ろには笑顔でカナが控えている。



「あれから連絡がなくて、てっきり逃げたのかと思いましたわ。」


「遅くなってごめん。」


「音沙汰なしで出産を経験した私達は、このくらいじゃメゲませんの。」


「悪いけど、それについては謝れない。」


 マスターの所業はクズでゲスイが、色々事情があるのである。


「姉さん達、なんか仲いいんだけど。」

「魔王に怒り心頭って感じじゃないわね。」


「あなた達、勝手に戻ってきちゃダメでしょう?今は東北の案件を全力でやるべきなのよ。」


「いや、姉さん達がおかしいって聞いて。」


「命令違反の次は会長を罵倒? いい度胸じゃない。」


「良かった、いつもの姉さんだ!」



「それより、ハル君達は少し外してくれないか。会長さん達への話を先にしたいんだ。」


「オレは残るぜ、姉さんの事で内緒話は許さない。」


「君はトウカとスイカの性生活の全てを、事細やかに知らないとオレを許さないのですか?」


「え!? 性、えええ!?」


「おいシュン、外に出るわよ。これはこいつらの仲直りの話っぽい。私らは邪魔しちゃいけない類の話だわ。」


 いち早く理解したヘミュケットが、ハル君を連れて退出する。



「それで先程の口ぶりだと、関係を続け――いえ、始める事はできるのですか?」


トウカは逸る期待を抑えながら言葉も選んでいる。トウカとスイカは子作りからの関係構築であり、マスターを本気で好きだったのは手を出されなかったカナだけ。だから実質、ここが始まりなのである。


「屁理屈だけどね。 非公式な商売を始めるから、2人にはその客になってもらう。」


 そう言って癒やしと健康のトリプルエイチの概要を渡す。


「ふむ、貴方の家の娯楽施設で一緒に遊べる。混浴やマッサージ、それ以上もOKと。」


「時間絡みもかなり配慮されていますね。これならお忙しいトウカ様でも気軽に利用することができそうです。」


 魔王邸から帰る時は時間指定できる。

 来店から数秒後の地球に戻ることも可能なのだ。


「制限も多いがほとんどオレが接客するから、仕方ないと思ってくれ。」


 会員制で月に2回までで、完全避妊となっている。


「トリプルエイチとは癒やし、健康そして賢者の叡智!所謂フーXクですからね。多少の我慢も大事です。」


「カナはお黙りになっていて下さい。」


 サービス名の由来はhealing、health、そして○exの俗語だ。


「いろいろコースがあるのですね。」


「どのコースもモニターの方々には好評でしたので、自分の好きなコースを選ぶと良いですよ。」


「つまり実験台が居たのね。信用できるの?」


「モニターは閻魔様と大妖怪と悪魔の姫でした。大抵は3日程、足腰が立たなくなってしまいました。」


「スイカ、聞きました? 彼の人脈は予想以上よ。」


「ええトウカ様。閻魔様が女性なのも驚きですが、人間の我々は耐えられるのでしょうか。」


「新しいワザをカナに教わってね。それを自分なりにアレンジしたら、人外に通用するレベルになれました。」


「お陰様で私はメイド長になれて、身体も治してもらって、家族扱いになったのです!毎日仕事も夜も充実しまくりですよ!?」


「カナ、それバラさないほうが良いと思うよ。」



「「なにそれズルい!!」」



 その時2人の野生の本能が目覚めた。だからどーなるというワケでもないのだが、欲望は毛穴からこぼれ出している。


「次はオレ達の番だな。」


 その後、ハル君達に異種族間での子の成し方を問いただされる。しかし現状では力になれないという結論になった。


 方法はあるのだ。例えば「時間干渉」で吸血鬼化を解除するとか。2人の位相を合わせて、行為後に色々と弄るという手もある。


 だがどちらもマスターがヘミュケットを触ることになるので

 2人には受け入れられなかった。


 特に吸血鬼化解除はチカラを失うため、戦い続けたい彼女の意思にはそぐわないようだった。


 どれも気持はよく分かるが、全てを手にしようとする2人は傲慢に見えた。


 結局は自分で出来る分しか手元には残らない。

 こぼれた物は悲劇の種となり、代償となって自身に帰る。


 ならば最初から、自分で選び受け入れるしかない。


 それを知るには彼らはまだ若かったようだ。



 …………



「テンチョー、仕事中に私をいやらしい目で見てたでしょ。」



 8月30日の水星屋営業終了後。

 2人でラーメンを食べてたらそんな事を言われた。


 豚骨とにんにくの香りに、セクハラ非難のフレーバーが添えられる。


「テンチョーは変態だし見るなとは言わないけど、あそこまで露骨だと今晩安眠できるか不安になるわ。」


「誤解だから! オレは立場を使っての強要なんてしないから!」


「じゃあなんで舐めるように見てたの?視線で犯されるかと思ったわ。」


「先日思う所があって、下着の開発をしたんだよ。」


「流石テンチョー、意味不明をさせたら世界一だわ。」


 先日も同じ事を言われた気がするマスターは、慌ててワケを説明し始める。


「聞けって。先日カナが銃撃に巻き込まれてな。オレと距離が近くなれば当然危険も増える。だからきちんと守れる物が必要だと思ったんだ。」


「何故下着にしたの?」


「未完成のセクシャルガードがあったろ。あれを完成させたら下着になったんだ。」


 公安事件でサクラに使った特殊バリアだ。性欲や敵意に反応してバリアが発動する。相手の”ピー”は死ぬ、かもしれない。


「それでな。妻や使用人達にはもう渡したんだが、キリコはどうしようかと思って。既存のだと応用が効かないし、切り替えてみるか?」


 今までもキリコはマスターのバリアを使っている。だがそれはマスターとの距離制限もあるし、自動発動もしないのでイザという時は不安だ。


 そしてキリコは使用人でも愛人でもない立場なので、渡すのを迷っている内に身体をガン見してしまったのだろう。


「マスターが必要だと言うならそうするわ。」


「そうか、じゃあ戻ったらさっそく試してもらおう。」



 …………



「ひゃっ! これは、んくぅー。」



 魔王邸キリコの自室にて嬌声があがる。ただ下着を着けただけなのだが、驚くほどの爽快感にキリコが悶えている。


「わかるわー、私も皆もそうなったもの。」


「あれは正に、あくまのしたぎ。呪われてるわ。」


 うんうんと監視役の妻○○○とリーアが訳知り顔で頷く。


 着けても外せない訳ではないが、手放したくなくなるという意味では呪われている。少なくとも○○○とリーアは手放せない。



「ますたぁ、これじゃおしごとできない。くぅん!」


「調整するからちょっと待ってな。ここのサイズを合わせて、ここのラインはこうか。」


 下着の空間を弄ってキリコの身体に合わせていく。

 作業が進むにつれてキリコが落ち着きを取り戻していった。


「ら、楽になった。マスターこれ、どうなってるの!?」


「この薄さで、驚きの5層構造になっているんだ。中は快適、外は鉄壁の守りを約束してくれる。」


 内側から1層目は、気温体温にあわせて極薄くマスターのチカラの風のクッションを発生させる。余計な水分や肌から離れた固体は2層目に送られる。


 2層目は増えた水分等を異次元に飛ばして分解する。

 3層目は全ての機能を管理する層。

 4層目がヒモ部分と連動して広範囲にバリアを張る層。

 5層目が下着部分を守るバリアを張る層だ。


 これがセクシャルガード ver1.01cである。


「上も下も蒸れる所がスッキリしていて、ずっと触られているような錯覚を起こすわ。」


「それが病みつきになってしまうのよねぇ。胸の先だけ感覚が違うのはわざとよきっと。」


「湿気が増えても吸い取ってもらえるから快適。でもパンティーを押し込むのは危険。昨日ユズちゃんが盛大に……こほん。いえ、水を飲まないと倒れそうな状態になってた。」


(なるほど、これはあくまのしたぎだ。)


 そう理解し、納得するキリコだった。


「各種ヒモ部分にも細工がしてあって、肩が凝らないのとバリアの補助にもなってる。」


「私たちには肩こり無縁ですけどね。」


 それは電脳体だからか、ぺたん気味だからか。どちらにせよ、人間組にはありがたい。


「女の子って内外問わず色々あるから、少しでも快適に過ごして欲しくてさ。この下着なら幾つかまとめて解決できるかなと思って。でも何か問題あったら言ってね。」


 キリコはとてとてと下着姿のまま近づきマスターを抱きしめる。



「マスター、一生お世話になります!」



「「キリコちゃんがデレた!!」」


「デレてないし! 私は店員として……」


「喜んでくれてよかったよ。これからもよろしくな。」


 そう言って頭を撫でるマスターの腹に、頭をスリスリするキリコだった。


(私は店員だけど、今は時間外だもん!)


 その夢見る店員(時間外)の顔は幸せそうだった。


お読み頂きありがとうございます。

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