11 サクラ その4
「ようこそ、時間の停止した世界へ。」
水星屋のマスターはニヤリと笑った。
全てが停止した世界に驚いたサクラが、マスターの右腕に胸を押し当てたためだ。
サクラが時計塔を見ると針は動いていない。
通行人も不自然に止まっている。
「これが止まった世界? すごく不安になる世界なのに、とても綺麗……これがマスターの見ている世界なのね。」
「時間を止めたのは、これを見られたくなくてね。」
そう言って左手を前に突き出すと 空間に穴が空いて広がっていく。
直径2メートルほどの広さになったら拡張は止まる。穴の向こう側はモヤモヤしててよく見えない。
「この穴は別の場所、オレの家の玄関前に繋がっている。さぁいくよ。」
行くよと言われても、怪しげな穴に飛び込むのは勇気がいる。サクラは動けず、ぎゅっとマスターの腕を掴むのが精一杯だ。
「ん? あぁそういうことか。 今日のサクラは随分甘えん坊だな。」
何かを勘違いしたらしいマスターが念じると、サクラの身体にかかる重力が途切れる。
「きゃっ!」
後ろから白い風が足元を吹き抜け、下半身が前に突き出された。
すぐに重力が戻って来た所に太ももをマスターの左手に支えられる。
お姫様抱っこだった。
「な、なななな なぁああああああ!」
動揺するサクラを気にせず穴に飛び込むマスター。
着地するとそこには豪邸と言って差し支えない家の、玄関の前だった。
地面に開放されて見回すと、家の敷地外は宇宙が広がっていた。もちろん障壁を張ってあるので息が吸えなくなるような環境ではない。
「事実を認識する」チカラを使ってみると、文字化けしたポップアップウインドウが飛び出した。
どうやら自分では理解出来ない場所らしい。
「さあ、ここがオレの家だ。行こう、家族が待ってる。」
大きな玄関の扉を開けると、サクラの部屋より大きな玄関が現れる。
「お帰りなさいませ旦那様。」
玄関では女性が待機しており、上等な生地を使ったメイド服が格好いい。
ふわふわもこもこなウサギさんスリッパに履き替えてリビングへ向かう。
「おかえりなさい、あなた。」
「だー!」
超絶美人のギンパツさんが1歳の赤ちゃんとともにマスターにダイヴしてきた。
…………
1分間イチャイチャを見せつけられた後、紹介が始まる。
「紹介しよう。こちらがオレの妻の○○○だ。この赤ちゃんがセツナ。」
「○○○です。今日はわざわざ遠い所から来てくれてありがとうございます。」
笑顔が眩しい。私より少しだけ若い奥さんは、とても幸せそうだ。
ギンパツは少し癖があるのか、横髪はまとめてる。ストレートにすれば胸くらいまではあるだろう。後スタイルが良い。非常に良い。胸は同じくらいだが曲線美がやばい。 くっ、世の中の理不尽を感じる。などとサクラは葛藤せざるを得なかった。
だがそんなことよりも、
「あの、奥さんのお名前がうまく聞き取れないんですが。」
「そっか、サクラでも無理だったかー。ごめん、肩書で呼んでくれ。オレたち自身はちゃんと認識できてるんだけどねぇ。」
もしや悪魔絡みの土地云々で、名前に関する何かあるのだろうか?その割には娘さんのセツナちゃんは認識できているけれど。
「それで、こっちがサクラだ。」
心の中でブツブツ言ってると今度は自分が紹介される。
「コジマ・サクラです。本日はお招きありがとうございます。マスターさんにはいつもお世話になっております。こちら、よろしければどうぞ。」
持ってきたオカルト雑誌スカースカと、次号の記事の原稿を渡す。
「サクラさん、よろしくね。いつも主人がお世話になってます。主人ったらよく貴女のお話をするのよ。」
「そりゃ、人間社会でうちの店にリピーターがいるって珍しいからね。しかも正体を知って通報するどころか、取材したいと来たもんだ。」
「あはは……あの時はもう、必死でして。それであの、よろしければお子さんを抱いてみてもいいでしょうか?」
「あら、別にいいわよ。じゃあ雑誌を見ている間、お願いしようかしら。」
セツナを預かり抱き寄せると、泣き出すわけでもなくじっとこちらを観察してくる。そのうちキャッキャと手を降る姿がとても愛らしい。
「かわいいなぁ。」
思わず声が漏れる。
「ふふ、ありがとう。サクラさんはセツナに気に入られたみたいね。サクラさんはそういうご予定は無いの?」
「いやぁ 私はこれっぽっちも……」
目のハイライトが薄れていく。
過去の人間関係のトラウマが訪ねてきたので居留守を使う。
それにまさかあなたの旦那が気になりますとは言えない。
その時、ウサミミフードのついたパジャマを着たキリコがトテトテと歩いてくる。
「おはよーございまーす。あれ!? もっちゃんが赤ちゃん抱いてる!あれほど肌を晒しちゃいけないって注意しておいたのに!」
この子は暗殺者と言うより爆弾魔なんじゃないかと最近思う。
「キリコ、サクラが困ってるからそういう冗談はやめておけ。」
マスターがうさみみを窘めている横で、
「もっちゃん……可愛いニックネームね!由来はなんなの!?」
私のニックネームを気に入る若奥様。
この独特の空気感、これが家族ってことなのかなぁと思った。私はセツナちゃんの手を優しく握りながら遠い目をしていた。
…………
ネット掲示板で最近盛り上がっているミミック屋台への潜入に成功!
本来は取材や撮影はお断りの店なのだが、特別に許可を頂いてお話を聞くことが出来ました。
このお店は月に最大2回しか営業していない、しかも毎回営業場所が変わるという神出鬼没っぷりが有名だ。
出会えたお客さんは幸運だろう。
かく言う私も上司に追い立てられて逃げた先で遭遇したのだ!
この店の特徴として、料理の安さが挙げられる。社食並のお値段で飲み食いできるとのことで――
店主はマスターを自称し 気前も愛想もよく、様々な料理やお酒をおすすめしてくれる。
仲良くなれば相談事にものってくれて、必ずと言っていいほど良い結果につながる。実は筆者も――
ただし、だからといって調子に乗るのは頂けない。彼は鏡のような性格で、ひとたび間違うと――
ネットではこの店で行方不明者が出るという噂があるが、それは大きな間違いである。
二度と暴力沙汰など起こそうと思わないよう、説得があるだけである。
ミミックという不穏な呼び名では有るが それは不届き者が喰われて真人間になって出てくるという――
以上のことから 私はこの店を ”伝説の屋台 水星屋”と呼び、広めていきたいと思う所存である。
また、別件でとある都市伝説を追っている。
近いうちに料理スライムの尻尾を掴めるよう、努力する。
筆者:さくらもち
…………
「あははは、あなたこれ面白すぎ!!」
大笑いする魔王の奥さん。
特に後半のこじつけがましいが嘘ではない部分が気に入ったようだ。
母が笑顔なのが嬉しいのか、セツナちゃんも笑顔である。
おー、かわいい かわいい。
「あー 笑った。 記者さんって凄いのね。捏造ギリギリで嘘は言ってないのが最高よ!」
「二度と暴力沙汰など起こそうと思わない説得って……だいたい全身複雑骨折で瀕死か全死。」
キリコちゃんは呆れているようだ。死体なら暴力は振るえない。血と肉が悪魔さんのオヤツとして出荷されるだけだ。店からは出ているので嘘ではない。
「金と権力も失うから真人間ってのも間違いじゃないわね。」
「なんだかんだ言って、サクラもこっち側になりつつあるな。」
「うう、私は中立でいいと思ってます。」
「おかげで割と無茶振りだったミミック屋台の名前の変更も、これなら期待できる。ほ~らセツナ、お父さん雑誌に載ったぞー。」
マスターが満足げな笑顔を浮かべながら、セツナちゃんをあやし始める。
その親バカ顔を間近で見ることになった私はもうどうすれば。
「マスター、それ以上その顔で近づいちゃいけない。明日にももっちゃんが産んじゃう。」
その言葉で我に返ったマスターはバツが悪そうにとぼとぼと奥さんの元へ。
「旦那は甘やかすのが好きなのよ。」
奥さんは可笑しそうに笑っている。
「ところで、この後の予定ってどうなっているのでしょうか。」
奥さんにセツナちゃんを返しながら聞いてみる。
「今は23日の3日目の昼だから、そろそろ準備しましょうか。もっちゃんさんは2泊くらいしていくんでしょう?」
「それくらいなら現実の夕飯時になるか。よし、決まりだな。」
魔王夫妻がなにか決めたらしい。時間の計算がおかしいが、どういうことだろう。
「なにやら時間の計算が分かりづらかったのですが……?」
「もっちゃん、ココだと1日が7日くらいあるんだよ。」
マンガみたいな解説をされる。宇宙の法則が乱れる。
「サクラには言ってなかったか。 オレも忙しくてさ、仕事とやりたいことを全部こなそうとするとそれくらい必要なんだ。ここにいる間は擬似的な不老不死になるから寿命は心配しなくていいからな。」
「着替えもこちらで用意するから、ゆっくりしていってね。最近、温泉の露天風呂が出来たのよ。お肌にとっても良いの。」
「ありがとうございます。 お世話になります。」
温泉って宇宙で湧くんだね。不老長寿は宇宙の神秘だったんだ。
…………
「「「Happy Birthday to you 」」」
飾り付けされた部屋でテーブルを囲み、その上の巨大ケーキにロウソクを1本さして全員で歌い上げる。
セツナもみんなのマネをして歌おうとしているが、発音は1才児である。とてもかわいい。
セツナを抱えてロウソクの前に持っていくと一筋の白い風が火を吹き消す。どうやら将来有望のようだ。
○○○とキリコがケーキを踊るように切り分け、分配する。
メイドはキッチンからチキンやシャンパンを持ってきて配膳している。
「なんかマンガの中のクリスマスみたい。」
目を輝かせながらキリコが豪勢なチキンとケーキを見ている。そこへセツナがハイハイしてキリコを前からよじ登ろうとしている。
「わぁ、セッちゃんどうしたの!?」
「きっとクリスマスっていったのが気に入らなかったんじゃない? 今日の主役はセツナですもの。」
「だぁーー」
「ごめんごめん セッちゃん。おめでとう。」
抱えてあやすと満足した顔でセツナは胸に顔を埋める。
「うーー」
「あらあら、娘が取られちゃったわ。」
一同笑いながら乾杯する。
その後は主にセツナがどれだけ可愛いかを議論をしつつ食事が進んでいった。
…………
「むむー、さすが悪魔城とか魔王邸と言われるだけはある。」
お風呂をいただこうと移動しながらサクラは唸る。
「お褒め頂きありがとうございます。旦那様もそれを聞いたら喜ばれるでしょう。」
サクラを案内しているメイドさんが言葉を返す。
この家は広い。家族用の玄関からは短い廊下のすぐ奥にリビングとキッチン。向かって右側の廊下に出ると仕事用の倉庫や夫婦用の部屋に繋がっている。
夫婦用の部屋と、リビングの奥に行く廊下は個別に脱衣所を設置。その両方が大浴場に繋がっている。
リビングの左側は使用人の寮と客室を兼ねた高級ホテルがある。
それを抜けると巨大なゲームセンターやプールなどの娯楽施設が併設されている。その中には宇宙遊泳を楽しむスペースまで確保されている。
来客用の入り口からは応接間などを挟んで、高級ホテルに行けるようになっている。
これらはマスターが実際の空間をコピーして貼り付けたものである。
電気やガス・水道などのライフラインは地下に設置されていて各部屋に供給している。
そしてそれらは時間を操るチカラにより 壊れること無く稼働し続ける。すべての部屋や設備も同様である。
今はその高級ホテルに新しく併設された露天風呂へ向かっているのだ。
「こちらが当館の露天風呂の脱衣所になります。」
大きい暖簾を超えるとスーパー銭湯のように広い脱衣所が現れる。その一角にはマッサージ台やマッサージチェアなどが置かれていた。冷蔵庫には瓶の牛乳が各種、取り揃えられている。
ほえーーっと謎の感動を覚えながらキョロキョロするサクラに、メイドさんの手が忍び寄る。
「それでは お召し物を失礼させていただきますね。」
(今なんて!?)
「ぇ、え !?」
スポポポン! っと手際よく衣服を剥ぎ取られていく。
そのまま下着を脱がした時のメイドさんの目がキラリと光るのを見逃”せ”なかった。
「ふふ、お綺麗ですね。」
バスタオルを巻かれながら赤くなるサクラ。
(他人に脱がされる初めてが メイドさんかー……)
遠い目をしながら物思いにふけっているとふと気がつく。脱衣所が別れていない。ってことは――
「あの、ここってもしかして混浴だったり?」
「はい。むしろ男性は旦那様しかおられませんので、実質女子風呂となっております。あら、綺麗な桜色ですね。」
妙な期待が発生して赤くなったのを指摘しただけで、特定の箇所を言ったわけではない。ハズ。
メイドさんはきれいに畳んだ衣服をカゴに入れて再び案内してくれる。
「そしてこちらが露天風呂の入り口になります。温泉となっておりますので足元にご注意下さい。」
2重のガラス戸を超えると 雄大な異次元の宇宙が視界の上半分を占める。
その下には周りを岩で囲まれ、絶妙にライトアップされた緑色の温泉が湯気を発していた。
…………
「な、何このお湯、肌がつるっつるになっていく!」
「フフフ、これでもっちゃんはもう逃れられないぃ。
あの悪魔の手のひらの上で転がされ続けるのだぁ。」
浴槽にたどり着くとすでにキリコが入浴していた。
10代の肢体が眩しい。ハリもツヤもあり、元暗殺業の割に傷がない身体は若さの象徴か?
肉も程よく付いており、サクラよりは控えめだが身長差を考えればバランスの良い身体だ。
以前は栄養不足で細身だったが、今の食生活で改善されたのだろう。そしてそれ以上太らないのだから羨ましい。
しかし今は、かけ湯をした自分の肌が気になって仕方がない。
「このお湯は新潟の山奥のぉ、川沿いにある温泉を持ってきているのだぁ。」
キリコの語尾が伸び気味になるくらいは、気持ちのいい温泉がサクラの肌にまとわり付く。
「この温泉は女にとっては麻薬に近いものがあるかもしれない。」
「これの温泉の素ならここの売店で売ってたよぉ」
その情報に、ほうっと目が細くなる。
(絶対にお土産に買って帰ろう。)
するとガラス戸を開けて奥さんが入ってくるのが見えた。
「あら、お二人共 仲がいいのね。」
奥さんの歩く姿は、とても女を強調していて艶めかしい。
左手でタオルを持ち、前を隠してはいる。が、半分ほどチラチラと自己主張するモノは男なら釘付けになるだろう。
ウエストは程よくくびれている。
お尻回りも歩くたびに質感のある動きを見せる。
ひらひらとタオルが動くたびに銀色の逆三角形が視線を誘導してきている。
かけ湯で前かがみにしゃがみ込むと、白いうなじが緑色のお湯との比較でさらに綺麗に見える。
当然タオルをどかして湯をかけるので、腕によるサイドからの圧迫で押し出された肉感はたまらない。
片膝を下げているので、強力な誘惑がそこには有った。
「どう? 参考になりました?」
浴槽に入ってサクラの隣に来た奥さんに声をかけられる。
どうやらわざとやっていたらしい。
「か、からかわないでくださいよ!」
「だって、あまりに真剣に見つめてくるものだから。」
「もっちゃんは他の人のが気になる年頃ぉ? 私のもじっくり見ていたぁ。」
ゆらりと奥さんとは逆方向のとなりへやってきたキリコが暴露する。
「ごめんなさいい!」
素直に謝ることにするサクラ。
「うふふ、いいのよ。その内、男を誘惑する時の参考にしてね。」
「あれはズルいです。どうやったらあそこまで引き付けられるのか。」
「ポイントは曲線の動きとチラリズムです。」
そう言ってサクラの後ろに回った○○○はサクラを少し上へ浮かせて胸の先がお湯と空気の境界あたりに来るようにする。
お湯の小さな波に揺らめいてチラチラと映る。
「な、なるほど?」
それからサクラの両の手をとり右手で横の髪をかきあげてみる。同時に左手で胸を隠すように覆わせるが先端の輪郭が半分程度しか隠れないようにし、少し持ち上げる形にして歪みを作る。
「お、おぉ? もっちゃんが急に色っぽく見えたぁ。」
「あくまで1例ですけどね。」
「わ、私には難易度がルナティック……」
「せっかく良いものをお持ちですのに。」
「い、いいものと言えば奥さんの身体だって、とても子供を産んだように見えないのですが。」
露骨に○○○に話をふる。でも気になっていたのは確かだ。妊娠出産した気配を全く感じない。
「あらそう? 旦那が張り切ってケアを手伝ってくれたからかしら。キリちゃんの身体だって傷だらけだったのを治してたし。」
ここでキリコにキラーパス。
キリコは目を丸くして抗議の視線を送る。サクラはきょとんとキリコを見ている。
「わ、我が依代たるこの身に宿る永遠の呪いを浄化せんとすれば、闇の衣を解き放ち光に晒すこともやぶさかでなく……」
「ようは古傷治すために、全部見られちゃったのよね。」
「全ッ!?」
ナニを想像したのか脊髄反射で全身強ばるサクラ。
「もっちゃん、全部っていうのは骨や筋肉、内臓も含めて全部。えっちなところだけじゃないよ!もっちゃんのえっちー!」
深い古傷も有ったため、各種内臓もチェックし治療したのだ。おかげで後遺症も全て消えた。
「正直恥ずかしかったけど、恥ずかしがる程度には人間らしくなれたと思うわ。」
立ち上がってぺたぺたと自分の体を触るキリコ。おそらく傷の有った場所の感触を確かめているのだろう。
色々衝撃を受けて、あうあう呻くだけのサクラ。
「素直で良い子ね~。それで、もうひとりは素直な子かしら?」
「な、なんのことでしょう。」
ススっと顔を近づけて首に手を回し――
「サクラさん。あなた、私の旦那のことどう思ってるの?」
サクラの首筋にヒンヤリとした感触が当たった気がした。
「あばばばばばば――」
…………
「うふふふ、冗談よ。」
ナイフを胸の谷間に収納して笑いかける魔王の奥さん。
実際には谷間に次元の穴を作って倉庫と繋いでた。
演出は大事である。
○○○は人間ではあるが、マスターと同じチカラを使えるようだ。
全く同じチカラというのは無いだろうから、何らかのカラクリでそうしているのだろう。
「旦那から聞かなかった? 仕事の上なら別に構わないわ。貴女がどうしても必要なら、ですけど。」
「寿命が縮むぅ……」
「もっちゃん、それは気の所為よ。ここでは不老不死。」
そういう問題じゃない。精神的な寿命が縮む!
「でも気をつけて下さい? 愛人までならともかく、結婚なんて言い出さないことね。」
○○○が真剣な目で訴える。
「旦那は 私と一緒に居て初めて、貴女が気に入った男になるわ。私達は一緒に互いを成長させてきたのですもの。」
「わわ私はそこまでかん、考えたこともなひです。」
「あらそう? それなら良いけど、一応釘は指しておかないとね。もし結婚を夢見るなら、自分で男見つけてお互い成長した方が絶対幸せになれるわ。人の家庭のオコボレ頂くよりは、ね。」
これは当然の主張である。 ○○○だって嫉妬心がないわけじゃない。ただ旦那に理解を示しているだけなのだ。
「おっしゃるとおり、です。初めて、優しく接してもらって、それで気持ちが止まらなくて……ごめんなさい!」
「素直というか、ウブなお方なんですね~。」
剣呑な雰囲気が消えてにこやかな表情になる○○○。
「ま、まだ何の経験もなく……」
「なら丁度いいかもしれないわね。旦那が今晩、貴女達に話があるそうよ。」
「「!?」」
2人の思考が止まる。パソコンで言うなら青画面級の突発的停止。
「あとで部屋に呼ぶけどーって許可を取りに来たわ。」
「どどどどどどどうすればばばっあばあ。」
「わわ私はて 店員。店員だからそんなの……そんそそそうだ!もっちゃん! ムダ毛! 処理ををををを。」
ざばぁーと浴槽をでると 洗い場に向かう二人。
サクラはともかくキリコもなんだかんだで興味はあったご様子。
「うふふ、かわいい子たちですこと。」
年下どころか年上の女も弄り倒す魔王の嫁○○○。20歳。
いたずらっぽく可愛く笑うと、今日も温泉を念入りに塗り込んでいく。
旦那の為、自分の為に女を磨く○○○であった。
お読み頂きありがとうございます。