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騎士とJK  作者: ヨウ
第三章 天険カスケード
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第91話 魔力撃

 縦横10メートルほどの入り口から洞窟に入る。洞窟の天井にはツララの様に垂れ下がる鍾乳石が幾重にも連なっていた。地面にも無数の石筍が並んでているが、通路は平らに均されている。


 森の中よりも遥かに歩きやすい通路を、音をたてないように細心の注意を払って入っていく。すると正面から酒瓶を抱えた男がカンテラを手にこちらに向かって来るのが見えた。先ほど酒のお替りを取りに行った見張りの男だ。


 俺は岩陰に身を潜めてやり過ごすと、男は俺に全く気付かずに通り過ぎた。男は入り口から出ていき、寝転がる見張り番の横に座り込む。ボソボソと何事かを呟いていたが起こすつもりはないようで、『うたた寝の水薬』(ナップポーション)を仕込んだコップに酒を注いで飲み始め、すぐにうつらうつらと舟をこぎ始めた。


 ……間抜けすぎるなコイツら。まあ、これで森の中に転がしておいた死体を見つけ出されるまでに猶予ができた。どんどん、アジトを進もう。


 洞窟を進んでいくと通路の脇にいくつもの横穴が並んでいた。武器や食糧が保管されている横穴もあれば、人の気配がある横穴もある。たぶん盗賊たちの寝座(ねぐら)なのだろう。


 俺は一番手前の横穴の前で耳をそばだてる。中にいるのは4人。おそらくは4人とも男で、どうやら眠っているようだ。


 俺は静かに横穴に入っていく。横穴の床には板が敷かれていて、男たちは粗末な寝具に身を包んで雑魚寝していた。侵入してきた俺に全く気付く様子は無い。


 ジオドリックさんから受け取った漆黒の短刀を鞘からそっと抜く。【潜入】を再度発動しつつ男の一人に近づくと、短刀に魔力を籠めた。


 ……【魔力撃】(スラッシュ)


 無言でスキルを発動し、男の口を塞ぐと同時に短刀で首筋を掻き切った。


 【魔力撃】(スラッシュ)は手持ちの武器に魔力を巡らせ、その切れ味や剛性を強化するスキルだ。攻撃力(STR)に依存する物理攻撃に、魔力(INT)を乗せて威力を上昇させるスキルと言えばわかりやすいだろう。ここぞという一撃に使用して、攻撃力や打撃力を高めることができる。


 武器の持つ属性効果や追加効果を強化するという効果もあるそうだ。例えば、今はジオドリックさんに預けてある紅の騎士剣(レーヴァテイン)には火の属性効果がついている。そのため【魔力撃】(スラッシュ)を使用すると、切れ味や頑丈さが向上するだけでなく、火の属性効果も強化される。


 紅の騎士剣(レーヴァテイン)は普通に魔力をこめて使用するだけで傷口を焼け爛れさせて火傷を負わせる程の効果があるが、【魔力撃】(スラッシュ)を使えばその効果を発火現象にまで高める事が出来る。魔人族を倒したときみたいに毒薬を塗りつけた場合も、その効果を強化することができるそうだ。


 さらに、刀身を魔力が覆うことで血液や脂の汚れの付着や刃毀れを防ぐ効果もある。今夜は何十人もの盗賊を斬ることになるだろう。ダガーや投げナイフも持ってはいるが、なるべく武器の損耗は抑えたい。


 男の身体が何度かビクリと震えたが、すぐに動かなくなった。


 粗末な寝具で首元を覆い、吹き出た多量の血液が飛び散るのを防いでいる。洞窟の中は灯りもないし、ぱっと見は眠っているようにも見えるだろう。


 誰かがこいつらの死体を見つけた時に俺がアジトに侵入していることがバレてしまうが、しばらくは時間を稼げるだろう。俺は残り3人も同様に【魔力撃】(スラッシュ)を発動して、音もなく殺害していった。


 その後も並んだ横穴に侵入して寝転んでいる盗賊たちの寝込みを襲っていく。横穴は5つほどあり、それぞれに3,4人の男たちが寝転んでいた。たぶん酒盛りした後に寝たのだろう。高いびきをかいてバカ面で寝ている盗賊たちの首筋に、漆黒の短刀を滑り込ませていく。


 【潜入】を常時発動して気配を消しつつ、【索敵】で盗賊の動きを探りながらの作業なので神経はすり減っていくが、やっていること自体は簡単な作業だ。全ての部屋を回り終わったときには合計で20人近くの盗賊を減らすことが出来た。これで盗賊のうち五分の一を減らせたことになる。


 今のところは上手くいっている。盗賊Lv.★(マスター)になるほどスキルを熟練させたのだから簡単に見つかるとは思っていなかったけど……これほど簡単にことが進むとは思っていなかった。


 冒険者に続いて大量殺人を犯したというのに、全く動揺していない自分に驚きつつ、俺は先に進むことにした。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 盗賊のアジトの居住区域を通り抜ける。時おり盗賊どもとすれ違ったが、岩陰や横穴に身を隠して気配を断てば問題なくやり過ごす事が出来た。


 洞窟を進んでいくと水が勢いよく流れる音が聞こえてきた。そのまま進むと洞窟の中に川が流れていて、通路がその川に沿って進んでいるのが見える。


 流れる川はわりと勢いよく流れていて、水量も多く、それなりに深さもありそうだ。所々で水の流れが岩に当たったり、小さな滝のように飛沫を上げて水が落ちているところもあるので、流れる水の音はうるさいぐらいだ。


 これは都合がいい。これなら多少の物音をたてても気づかれないだろう。ここからは、すれ違う盗賊たちはできるだけ始末してしまおう。遺体はこの川に流してしまえばいい。


 俺は、アジトをさらに奥へ奥へと進んでいった。




ご覧いただきありがとうございます。

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