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騎士とJK  作者: ヨウ
第三章 天険カスケード
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第77話 山道

「それで、なんのつもりで我々の後をついて回っていたのですかな?」


「おいおい、物騒な物はしまってくれよダンナ。俺はただ可愛いお姉ちゃん達がいたから声をかけようとしてただけだって?」


 エスタガーダを出発して1週間が経ち、俺たちは無事に3つ目の村に到着した。村に入るとアリンガム商会の馬車を尾行する者がいたため、捕まえて尋問をしているところだ。


「ほほう。村の入り口からずっとついて来ていたようでしたが? 馬車の外から、中にいたお二人の姿が見えたのですかな?」


「こんな田舎に隊商が来るなんて珍しいんだぜ? ついて行きたくもなるってもんだろ?」


「隊商は村の広場に向かいましたよ。隊商と別れた我々の馬車について来ていたのはなぜですかな?」


「いやー、立派な馬車だったからな。どこのお偉いさんが乗ってるのかと思ってついてっただけだって」


「【潜入】系のスキルをつかってまで尾けていたのに、あくまで興味本位ととぼけるつもりですかな?」


「ついスキルを使っちまっただけさ。それともなにかい? 村の中じゃスキルを使っちゃいけねえっていう法でもあんのかい?」


 尾行者はナイフを抜いて詰め寄るジオドリックさんを前にしながら逃げる素振りも見せず、逆に堂々ととぼけて見せる。


 はあ……これで3度目だ。村に着くたびに俺たちを尾けまわすヤツがいるけど、どいつもこいつも同じ言い訳で白を切る。


 今回は俺・アスカ・クレアが囮になり、姿を隠したジオドリックさんが二重尾行して捕まえる……という方法まで取ったのに、今のところ成果は全く無い。


「ジオドリックさん。埒があきません。とりあえず村の責任者のところに連れて行って身元を改めましょう」


「……ふう。致し方ありませんな」


「どうせまた、ただの村人なんでしょうけどね……」


 今まで通り過ぎた二つの村でも同じように尾けまわしていたヤツを捕まえたのだが、その男たちは以前からそれぞれの村に住む村人だったのだ。


 結局、今回の男も村長につきだして身元を確認したが、同じく村の住人とのことだった。税をちょろまかした事も無く、騒ぎを起こしたことも無い真面目な男だという。


 村の責任者にそう言われてしまえば、無理に拘束して問い詰めることも出来ない。例え尾けられていたとしても、実害が出ているわけじゃないからな。


 クレアに貴族としての身分があれば拷問して口を割らせることも出来るのだが、便宜上貴族として扱われるとは言え、あくまでも商人の娘に村人を拘束する権利なんて無い。襲い掛かって来たのであれば正当防衛にかこつけて、ある程度は乱暴に扱うことも出来たのだけど……。


「結局、また無駄骨でしたか……」


「エスタガーダを出てから農村に着くたびに尾けられているのですから、俺たちが狙われているのは間違い無いんですけどね……」


「ええ。それにしても……尾行者はいつも村の住人……ですか」


「俺たちを狙っているのは、何者なんでしょうね……」


「昔から配下の者を村に住まわせていた……という事であれば、村に影響力のある貴族もしくは商会……あたりでしょうな。ウェイクリング伯爵家に近しいアリンガム商会を、疎ましく思っている者は少なくないですので」


「……面倒ですね」


 ジオドリックさんの予想は敵対する貴族か商会か。それぞれの尾行者達に全く関係が無く、言い分の通りに興味本位で尾行していたという可能性も無くはない。


 アスカの話の通りだとすれば、盗賊の手下という可能性が高いとは思うけど……それを説明するわけにもいかないし……。もどかしいな……。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 翌日、朝市の片付けが終わった隊商たちとともに村を出発した。今日からはカスケード山へ至る山道に入っていくことになる。


 これまでは桑畑や果樹園、麦畑などが街道沿いに広がっていたのだが、ここからは山道に入っていく。うっそうと生い茂る森を縫うように山道が続き、だんだんと道幅は狭くなっていった。


 時折、冒険者パーティとすれ違うこともあったが、山を登るにつれてそれも見かけなくなっていく。盗賊も出没する険しい山道というだけはあり、このルートを辿る者はやはり少ないようだ。


「アスカ。盗賊が襲って来るとしたら、どのあたりだと思う?」


「盗賊の根城があるのは山道の中間ぐらいだったから、もうちょっと先かな?」


「なら今夜の野営はまだ安全圏かな? 明日あたりから怪しくなってきそうだ」


「んーでもこの辺りから、山のエリアになるから、魔物が一気に強くなるよ? 盗賊も心配だけど、魔物にも注意しなくちゃ」


「ああ、ちゃんと警戒してるさ。まだ俺の索敵範囲に魔物の気配は……ん?」


「おっとー。フラグ立てちゃったかなー?」


「……そう、みたいだな。」


 少し先の森の中に魔物と思われる気配を感じた。気配は4匹、中型の魔物のようだ。


「……こっちに近寄って来ているみたいだな。」


「ここら辺の魔物はアルよりレベルが高いから、予定通りスキル上げしちゃう?」


「ん……そうだな…。この辺りなら、まだ道幅も比較的広いから戦い易いか。この数なら、支える籠手の連中がいれば問題無く倒せるだろうし……」


「うん。大丈夫だと思うけど、気を付けてね?」


「おう」


 魔物達はどんどん近づいてきているが隊商の連中に気づいている様子が無い。このままだと、急襲されてしまいそうなので、俺の方から仕掛けることにした。


支える籠手(ガントレット)! 左側方に魔物の気配がある!! 気を付けろ!!!」


 俺はそう叫びつつ道の端に駆け出しつつ、森に向かって【挑発】を放つ。狙い通り、四匹の魔物の気配は俺に向かって集まって来た。


「どこだ! 魔物の姿は見えないぞ!?」


「上だ!! 木の上に注意しろ!!」


 俺がそう叫んだ直後、木の上から太い木の枝や石礫が飛んで来た。俺は冷静に火喰いの円盾(フレイムシールド)を掲げ、飛来物を弾き飛ばす。


 森の木の上に現れたのは、俺と同じぐらいの大きさの猿型の魔物。挑発が上手くいき、魔物達のターゲットは俺に集中しているみたいだ


「キラーエイプだ! 俺がひきつける! 援護を頼む!!」


 俺は支える籠手(ガントレット)の連中にそう言い放ち、掲げた盾に魔力を籠めた。





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