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騎士とJK  作者: ヨウ
Afterwards
494/499

第489話 不滅

アスカ視点です

 ステータスメニューから、修得済み(マスター)スキルと加護がどんどん消えていく。


「あ、あ、あぁ……アルの、アルの加護が、アルのスキルが……」


 アルがあんなにも苦労して、少しずつ少しずつ鍛え上げたスキルが。世界中を旅して手に入れた『大事な物(ユニークアイテム)』で身に着けた加護が……消えていく。



--------------------------------------------


アルフレッド


■ステータス

Lv : 99

JOB: 龍脈の調律者

VIT: 162+550

STR: 162+550

INT: 162+550

DEF: 162+550

MND: 162+550

AGL: 162+550


■ジョブ

転移陣の守番・転移陣の守護者・龍脈の調律者


■スキル

上級剣術・上級盾術・弓術・槍術

馬術・投擲

転移・接続・創生


■装備

龍殺しの剣

火龍の聖剣

千本

滅竜の革鎧

混沌の盾

陽光の首飾り

閃火の指輪

常闇の護符

大地の腕輪

水霊の耳飾り

疾風の足輪



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 『八重励起(レイブ・オクタプル)』なんていう凄い技を使っている時は、軒並み3万越えの見たこともない数字が表示されていたのに。ルクスですら圧倒するぐらいの強さだったのに……。


 ステータス値はついさっきまでの100分の1にも満たない。旅に出た直後、オークヴィルにいたころぐらいの数字になっちゃった……。


 レベル99だけあってレベル1のあたしよりは遥かに強い。森番だったころに比べればずっとマシな数字。


 でも、後衛職のローズやエルサよりも力が弱く、前衛職のユーゴーよりも魔力が低い。ルクスや守護龍達とは比較にもならない。

  

 ああ、どうしよう? どうすればいい? 


 ユーゴー達の強さはそう大きく変わってない。たとえアルの【接続(リンク)】があったとしても、守護龍達と闘うのは厳しいよね……。


 今は……再起を図るためにも逃げるしかない。


 【アイテムボックス】は空になってるから、『大事な物』は次元の彼方に消えてしまったのだと思う。『大事な物』が無くなってしまったから、もう加護を身に着けることは出来ない。


 でも、アルは【ジョブメニュー】も『大事な物』も無いのに最上位加護を手に入れてた。だったら、他にも加護を手に入れる方法もあるかもしれない。


「……終わった、な」


「ああ、もう、終わりだ」


 なんて思っていたら、ユーゴーとアルがそんなことを口にした。


 だめだよ。そんなこと言わないで。フラグが立ったら、イベントが起きちゃうんだよ? 諦めたらそこで試合終了なんだよ。


 せっかく、せっかく、みんながあたしのことを蘇らせてくれたんだ。あたしはもう、ぜったいに諦めない。


「アル、今は逃げよう! 転移はまだ使えるんでしょ!?」


「え……? あ、ああ、転移は使えるけど……この人数は無理かな。魔力がずいぶん少なくなってるみたいだ。一度に飛べるのは2,3人が限度じゃないかな」


 なんだか、場にそぐわない、落ち着いた声でアルがそう答えた。


 え、なに? なんか緊張感が無くない? 今、大ピンチだよね? クライマックスっていうか……クエスト失敗だよねこれ? 


 あれ、なんかみんなも落ち着いてない? 敵にまわった守護龍が6体もいるんだよ? 満身創痍っぽいけどルクスもいるんだよ?


「ちょ、ちょっとなんでそんなボケっとしてんの!? 早く逃げなきゃ!」



 ――逃がさぬ

 ――貴様らはここで死ぬがいい



 ひぅっ……。ヤバい、ルクスがばっちばちに殺意の魔力波動を飛ばしてきてる……。


 どうしよどうしよ……あ、そうだ、龍脈の腕輪! あれをアイテムで使えば、みんなで一気に逃げられる! だれ、だれが持ってる!? あっ、ユーゴーが腕に着けてる!


「誰が逃げるものか」


 と思ったら、アルが毅然と宣言した。


 え、かっこい……って、そんな場合じゃないでしょ!


「ルクス、もう終わったんだよ。お前が終わらせてしまったんだ」


 ん……なに? どゆこと?



 ――何を……



「人族の守護。それが女神への誓いだったんだろう?」



 ――それは我が眷族達の誓い

 ――我には……



「ああ。守護龍達の女神への誓いが『人族の守護』だ。それは、呪いとも言える。そう言っていたよな?」


 アルが淡々と語る。その声はとても落ち着いていて……なぜだかとても悲しげだ。


「だから守護龍は誓いを守るために、時に祝福を与え、時に加護を与え人を導いた」



 ――それが何だと……



「その守護龍に、お前が命じたんだ。加護を『奪え』ってな」


 わからない。アルは何が言いたいの?


 何が『終わった』の? 何を『終わらせた』の?


「彼らが与えた加護を回収するだけなら『奪う』ことにはならなかったかもしれない。だが、俺の加護は彼らに与えられたものじゃない。アスカが(・・・・)くれたものなんだ」



 ――ま、まさか……



「そうだよ、ルクス。女神が人に与えた加護を、人族の守護者たる龍に奪わせたんだ。お前の命令で、守護龍は女神への誓いを破ってしまった」


 そう言って、アルは地面に刺していた紅い剣を引き抜いた。


 え、あれ、火龍の聖剣? あれってアザゼルに奪われたんじゃ……


「【転移】」


 ふっ、と剣が消える。


「一思いに、楽にしてやってくれ」


「ああ、わかっている」


 火龍イグニスの背後から不意にギルバードが現れた。その手には、輝く緋色の剣が握られている。


 え、ギルいたの?


「【魔力撃(スラッシュ)】」


 ギルバードが火龍イグニスの首に剣を振り下ろす。何の抵抗も無く剣が通り過ぎ、どさっと音を立ててイグニスの首が転がった。


「【覇撃(ショック)】」

「【影縫】」


 ギルバードを皮切りに、みんなが守護龍達に襲い掛かる。


 ユーゴーが大槍で風龍ヴェントスの首を断ち、ジェシカが放った惣闇色の刃が冥龍ニグラードの胸を穿つ。


「貫け―――地龍の手甲(ラピス・ハンド)

【聖槍】(シャベリン)

【風刃】(ウィンドエッジ)


 アリスの振るった拳が地龍ラピスの腹に大穴を開ける。ローズの放った光の槍が水龍インベルの頭蓋を貫通し、エルサの放った風の刃が天龍サンクタスを両断した。


「な、な……」


 みんな、悲しそうに顔を歪め、瞳を潤ませて武具を振るっていた。守護龍達は抵抗することなく、その攻撃を受け入れていたように見えた。



 ――き、貴様らぁぁっ 



「守護龍達は予想していたよ。傲慢な王は、自分を凌駕する存在を決して認めはしないだろうと。自分達に、与えた加護を奪えと命じるだろうって。でも、万が一、王が屈服し、人と敵対しないことを選んだのなら、また人と龍が共に生きる世界を受け入れて欲しいと望んでいた」


 アルが激昂するルクスを無視して訥々と語る。


「女神は全ての人に一つだけ加護を与える。それは女神の子である龍であっても、触れてはならない神聖なもの。女神が与えた加護を奪うことは、女神への誓いを破ることだ。誓いを破った龍は、女神に与えられた権能を失う。…………守護龍達は『不滅』の権能を失った。もう、蘇ることは出来ない」


 アルはルクスを真っ直ぐに見据えた。


「お前も『龍の守護』の誓いを裏切った。ルクス、お前はもはや『不滅』ではない」



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― 新着の感想 ―
[良い点] 不滅ではない状態に持っていく為に……今まで得たスキルを失う。とても代償は重いですが、だからこそ、現状を打破する一手となる。いやはや、終盤も面白いですな。
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