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騎士とJK  作者: ヨウ
Afterwards
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第470話 別れ

ユーゴー視点です

 あれから10日後。アルフレッドは何も告げずに姿を消した。


「ユーゴー、どうだった?」


「セシリー嬢のところにもいなかった」


 アスカと仲が良く、アルフレッドも憎からず思っていた娘だ。或いはいるかと思ったが、残念ながら無駄足だった。


「父様のところにもいなかったです」


「念のためスラムの元締めのところにも行ってみたけれど、見ていないそうよ」


 皆で手分けして王都クレイトンを探してまわったが、見つからない。


「もう、王都にはいないと思うの」


「私もそう思う」


 アルフレッドは間違いなく人族最強の男なのだ。拐かされたなんてことは無いだろう。


 それに、武具と私物が無くなっていた。アルフレッドは自らの足で出て行ったのだ。

 

「早まったことを考えなければいいのだけど……」


「そんな……アルさんは、そんなことしないのです!」


「ここ数日の様子を見ていると……心配にもなるの」


 あの後。いつも穏やかな微笑みを浮かべていたアルフレッドは、表情を無くしてしまった。


 央人の王に報告に行ったときは理路整然と経緯を話していたが、それ以外はほとんど口を開かなかった。そして誰も寄せ付けず、一人で王城の部屋に閉じこもっていた。


「アルフレッドは自ら死を選ぶような愚かなことはしない」


 アスカを守れなかったと嘆き苦しんでいるだろう。自身を責めているだろう。それでも、そんな選択はしない。


「アスカの想いを踏みにじるような真似はしない」


 アスカにもらった命だ。捨てることなど選ぶはずがない。


「……ねえ、ユーゴー。貴方、知っていたの?」


 エルサが私に問いかける。アスカが最期に語ったことについてだろう。


「ああ。アスカが眠りから覚めた後に聞いた」


「なんで! なんで話してくれなかったのです!?」


「アスカが望んだからだ。ニホンに帰ると思ってくれていた方がいい、そう言っていた」


 アスカは真実を告げるつもりなどなかった。残された私達が、アスカを守れなかったと自分を責めることを危惧していたのだ。


「だが、問われれば嘘はつけない、とも言っていた。そうなったときには、私から真相を明かしてほしい、そう頼まれていた」


「そう……。それなら、その真相というのを教えてもらえるかしら」


「ああ」


 私はアスカから聞いていた話を皆に語った。


 アスカはニホンの少女を模して創られた存在だった。偽りの世界(WOT)の知識と偽りの記憶を女神から与えられていた。 

 

 アスカは神授鉱に取り込まれたときに、その真相を知った。自身が女神の分身であることを。龍王ルクスをこの世界から追放するために創られたのだということを。


 そしてアスカは願った。この世界を守りたい。皆に生きていてもらいたいと。




 私が語り終えた時、皆は静かに涙を流していた。


「なんて運命を背負わされていたの……あの子は……」


「アスカぁ……」


 辛かっただろう。苦しかっただろう。痛かっただろう。


 それでもアスカは運命を受け入れた。自ら選んだのだ。愛する男を守るために、自らの身を捧げることを。


「龍脈の腕輪を預けてほしい」


 アスカは腕輪と貴重品を大空洞の底に遺していた。おそらく、ルクスの魔晶石をアイテムボックスに入れる直前に出しておいたのだろう。 


「……アルを探すのね?」


「ああ」


 アルフレッドは転移のスキルを持っている。世界中のどこにだって行ける。探すには龍脈の腕輪が必要だ。


「私は明日にでも旅立つ。皆はどうする?」


 王都クレイトンは未だ混乱の渦中にある。


 竜の群れと戦った冒険者や決闘士の半数は死んだ。だが王と城は残った。避難していなかった王都民の大半も無事だ。これから復興に努めることになるだろう。


 私達は、特にアリスとエルサは、王都クレイトンに残って復興に協力してくれないかと請われていた。大魔導士と錬金術師は大いに復興の助けになるだろう。だが、復興しなければならないのは王都クレイトンだけではないのだ。


「父様とイレーネは近いうちにガリシア自治区に帰るつもりなのです。レリダはもうなくなってしまったけど、土人族の中心都市を再興するつもりなのです。アリスはそのお手伝いをしようと思うのです。リーフハウスの皆も一緒に帰ると言っているのです」


 アリスが自身の決意を確かめるように、そう語った。


「それならジェシカが送ってあげるの。一度サローナに戻って子供たちを迎えにいくの」


「うん。ありがとうなのです。ジェシカ達はどうするのです?」


「どうって……?」


「アリス達と一緒に来ないです? 村ごと歓迎するのです。レリダは無くなってしまったけど、あの寒い土地よりは過ごしやすいと思うのです」


「ガリシア自治区に? ジェシカ達は世界中から忌み嫌われている魔人族なの。そんなこと出来るはずがないの」


「ガリシア族長の父様がいるから、なんとかなると思うのです。真の歴史を他の氏族にも伝えて、住めるようにするのです。ガリシア自治区は広いから、住むところには困らないのです」


「そんなこと……」


「ジェシカ、父様とイレーネに相談するといいのです。アリスも力になるのです」


「…………」


 ジェシカは戸惑いつつも頷いた。


「私は一度エウレカに戻ってみることにする。その後のことは、それから考えるわ。でもアルフレッドのことも気になるし、一月後にガリシアの転移陣で再会することにしない? 転移石は結構な数があったはずよね?」


「ワタシもそうする! アナお姉さまに会いに行ってくるわ!」


 エルサとローズもいったん故郷に戻るようだ。


「わかった。では、龍脈の腕輪を預かる。エース、お前は私とともに来い」


「ブルルゥッ」


 エースは当然だと言わんばかりに嘶いた。


 アルフレッドはどこに行ったのだろうか。 


 始まりの森。魔人族の村。オークヴィル。


 思い当たる場所はいくつかある。まずは森番小屋に行ってみるべきか。


 アルフレッド。私はお前とともに生きると誓った。お前は私の剣を受け入れてくれただろう?


 それにアスカからお前のことを託されたのだ。必ず探し当ててみせる。




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