第442話 レベルアップ
「【盾撃】!」
「キャウンッ!!」
圧し掛かってきた犬に、魔力盾をぶちかます。可愛らしい鳴き声を上げてよろめく犬に、すかさずエルサとジェシカが炎を放つ。
「【爆炎】!」
「【火遁】!」
「キャンッ!!」
躾けられる子犬の様な鳴き声をあげてはいるが、今戦っている相手はそんな可愛げのある魔物じゃない。
爛々と光る紅蓮の瞳と漆黒の短毛に包まれた筋肉質な体躯。竜すらも凌駕する巨体ながらも、獰猛かつ俊敏な動きで俺達を翻弄し、三つの頭から毒やら炎やらのブレスまで吐いて来る。
海底迷宮80階層の階層主、『三つ首の魔犬』。URとかいうランクの化け物だ。
「おおおぉぉっ!!」
だが、そんな相手でも丸二日間にわたって何度も何度も戦えば、いい加減に慣れて来る。ブレスが及ぶ範囲や威力がわかれば無傷で防ぐことも出来るようになるし、動きの癖が掴めてくれば反撃もし易くなる。
「行け! ユーゴー!」
「ブルルゥッ!!」
エースに騎乗して突貫するユーゴーと一つに重なるようなイメージを描き、【接続】を発動する。
「【献魂一擲】!」
炎に包まれる犬の腹にシルヴィアの大槍が突き刺さる。槍の穂先に渦巻く魔素が魔犬の強靭な表皮を抉り、深々と突き刺さった。
「キャィーンッ!」
断末魔? の叫び声を上げ、血反吐を吐いて魔犬が沈んだ。
いや、だからなんでそんな凶悪な見た目で叫び声だけ可愛いんだよ。
「ふあぁぁぁ。つ、疲れたのです」
「これで、終わり……なの?」
アリスは糸が切れたようにその場で座り込み、ジェシカは涙目で空を見上げる。丸二日におよぶレベル上げ強行軍で、さすがの皆も疲労困憊だ。
「こ、これでノ、ノルマ達成よね!?」
エルサは血走った目で鬼監督アスカに訴える。
「んー、思ったより早く仕留められたから、もう半周ぐらいはいけそうだけど」
だが、そんなメンバーを他所に、アスカは首を傾げて頬に手を当てた。
「そっ、そんな、これで最後だって……」
エルサが青ざめた顔で唇を震わせる。エメラルドグリーンの瞳は色と光を失い、まるで打ち捨てられた人形のようだ。他メンバーはもはや反応すらしない。いや考えることを拒否しているのだろう。
「やめてやれ。俺も含めて皆の『らいふ』はもうゼロだ」
最後の大技で魔力を全放出したユーゴーなんて、エースの背の上で気絶してるんだぞ。『魔力回復薬使えば問題ないね』とか返ってきそうだから、敢えて言わないが。
「まいっか。じゃあ、予定通りで。みんな、おつかれさま!」
「やったあぁぁ!」
ジェシカとアリスが抱き合い、エルサがさめざめと涙を流す。俺は疲れ果てた身体に鞭打って、エースの背からずり落ちようとしていたユーゴーを抱きかかえた。そんな俺達を尻目にアスカは特大の魔晶石を回収し、『またレアドロ無しか』とブツブツと呟いていた。
いやほんと、ヘンリーさんと王都で会う予定を立てといて良かった。約束が無かったら、Sランク以上の魔物と戦い続ける苦行を延々と続ける羽目になるところだった。海底迷宮70~80階層マラソンはさすがに堪えた……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ん、やっぱり甘いものは正義なの」
「ほんとだ、これ美味しいわね! ほら、アリスも食べてみて!」
アスカの気が変わらないうちにと王都に転移した俺達は、定宿の『楡の木亭』に部屋を取った。皆疲れ果てていたはずだが、王都に着いたとたんに生気を取り戻し、食堂のテーブルの上にところ狭しと並べた酒と料理を堪能している。
まあ、疲れていたと言ってもそれはあくまで精神的なものであって、魔物と戦う度に回復薬で癒されていたから、肉体的には疲れてもいないし傷一つ負っていなかったのだ。笑えるぐらいレベルも上がったから、むしろ体力は有り余っているぐらいだ。
そう、今回のアスカ式ブートキャンプの目的は身体レベルを上げること。
今まで身体レベルが上がることはあっても、レベルを上げたことはなかった。むしろレベルが上がってしまわないようにと、賞金首や階層主以外の魔物との戦闘は極力避けていた。
だが今回は、積極的に魔物を狩ってレベル上げに勤しんだ。迷宮の転移陣を利用して50,60,70階層主を倒し、70~80階層に出現する全ての魔物と階層主『三つ首の魔犬』を狩る。そしてまた50階層に戻るという苦行を繰り返していたのだ。
ここに来て大きく方針を転換した理由は単純。皆の加護レベルが上限に達したからだ。
加護、というかスキルは自分より身体レベルが低い敵相手だと熟練度を稼ぎにくくなるので、今までは身体レベルが上がりすぎないように注意していた。だが、パーティ全員が全てのスキルを修得したため、心置きなく身体レベルを上げられるようになったというわけだ。
出会う魔物を片っ端から狩り尽くした結果、今やパーティの平均レベルは80を超え、元々レベルが高かったアリスに至っては90を超えた。パーティメンバー全員がもはや人外と言ってもいい程のステータスを誇っている。
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アルフレッド
■ステータス
Lv : 81
JOB: 転移陣の守護者
VIT: 4778+550
STR: 4778+550
INT: 4778+550
DEF: 4778+550
MND: 4778+550
AGL: 4778+550
■ジョブ
転移陣の守番・転移陣の守護者
騎士・拳闘士・竜騎士
導師・魔道士・闇魔道士
暗殺者・弓術士
■スキル
剣術・盾術・初級弓術・初級槍術
馬術・投擲
転移・接続
挑発・盾撃・鉄壁・烈攻・不撓・魔力撃
威圧・気合・爪撃・内丹・心眼・剛拳
牙突・跳躍・看破・貫通・鎧通し・伏竜
第六位階黒魔法
第六位階光魔法
第六位階闇魔法
夜目・隠密・警戒・瞬身・暗歩・影縫
魔物寄せ・ピアッシングアロー・エレメントショット
鷹の目・チャージショット・呪怨の矢
弓術Lv.7
■装備
無銘の剣
千本
滅竜の革鎧
混沌の盾
陽光の首飾り
閃火の指輪
常闇の護符
大地の腕輪
水霊の耳飾り
疾風の足輪
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アスカ
■ステータス
Lv : 1
JOB: JK
VIT: 12+550
STR: 9+550
INT: 0+550
DEF: 10+550
MND: 0+550
AGL: 14+550
■スキル
解体・採集・調剤・地図
■装備
滅竜のローブ
陽光の首飾り
閃火の指輪
常闇の護符
大地の腕輪
水霊の耳飾り
疾風の足輪
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アリス・ガリシア
■ステータス
Lv : 93
JOB: 錬金術師Lv.★
VIT: 1085+550
STR: 1308+550
INT: 930+550
DEF: 1221+550
MND: 930+550
AGL: 1008+550
■スキル
戦槌術
採掘・精錬・錬炉
鑑定・鍛造・付与
錬金・人形召喚・神具解放
格闘術Lv.3
■装備
ガリシアの手甲・改
滅竜のジャケット
陽光の首飾り
閃火の指輪
常闇の護符
大地の腕輪
水霊の耳飾り
疾風の足輪
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エルサ・アストゥリア
■ステータス
Lv : 85
JOB: 大魔道士Lv.★
VIT: 1500+550
STR: 580+550
INT: 6698+550
DEF: 2090+550
MND: 5501+550
AGL: 2206+550
■スキル
第九位階黒魔法
細剣術Lv.3・馬術Lv.5
■装備
アストゥリアの短杖・改
白銀の細剣
神竜ガルダの半外套
陽光の首飾り
閃火の指輪
常闇の護符
大地の腕輪
水霊の耳飾り
疾風の足輪
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ユーゴー・マナ・シルヴィア
■ステータス
Lv : 84
JOB: 獣王Lv.★
VIT: 4570+550
STR: 6529+550
INT: 544+550
DEF: 4443+550
MND: 979+550
AGL: 5540+550
■スキル
大剣術
金剛・戦場の咆哮・狂乱の戦士
崩撃・覇撃・漆黒の諸刃
不倶戴天・明鏡止水・献魂一擲
槍術Lv.6
■装備
シルヴィアの大槍・改
滅竜の革鎧
滅竜の籠手
陽光の首飾り
閃火の指輪
常闇の護符
大地の腕輪
水霊の耳飾り
疾風の足輪
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ロゼリア・ジブラルタ
■ステータス
Lv : 81
JOB: 聖者Lv.★
VIT: 1642+550
STR: 556+550
INT: 5267+550
DEF: 1556+550
MND: 6413+550
AGL: 2334+550
■スキル
第九位階光魔法
杖術Lv.3
■装備
ジブラルタの大杖・改
滅竜のローブ
陽光の首飾り
閃火の指輪
常闇の護符
大地の腕輪
水霊の耳飾り
疾風の足輪
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ジェシカ・プライド
■ステータス
Lv : 87
JOB: 忍者Lv.★
VIT: 2490+550
STR: 2554+550
INT: 2809+550
DEF: 1970+550
MND: 2079+550
AGL: 6840+550
■スキル
短剣術・投擲術
夜目・隠遁・退魔
瞬身・暗歩・影縫
呪術・口寄せ・陰陽五行
■装備
白銀の短剣
戦乙女の霊装
陽光の首飾り
閃火の指輪
常闇の護符
大地の腕輪
水霊の耳飾り
疾風の編み上げブーツ




