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騎士とJK  作者: ヨウ
第十章 永久凍土の名も無き村
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第408話 75階層

【人形召喚】(サモン・ゴーレム)! 『金剛人形』(アダマン・ゴーレム)!」

「【口寄せ】! 『古代竜』エイシェント・ドラゴン!」


 アリスが全身金剛(アダマンタイト)製の人形を、ジェシカが最上位の竜を召喚する。前者は55階層の階層主、後者は65階層の階層主だ。


「あはははっ! すごいね! まさに、怪・獣・大・決・戦!!」


 アスカが大笑いしながらアリスとジェシカに魔力回復薬(マジックポーション)を使う。


「たすかるのです!」

「ありがとなの!」

「どいたま!」


 金剛人形と古代竜が二体がかりで抑え込んでいるのは『鬼王(オーガキング)』。大樹のような棍棒を軽々と振り回す、体高3メートルを超す巨躯を誇るオーガの上位種だ。


 強力なSSランクの魔物だが、なんとこいつでさえも階層主ではない。


「【明鏡止水・狂乱の戦士フォース・オブ・オーディン】!」


 強力な自己強化とともに『狂乱』状態に陥る【狂乱の戦士(ベルセルク)】と、状態異常を無効化するスキル【明鏡止水】を『二重詠唱(ダブルキャスト)』したユーゴーが本命の75階層の階層主に突っ込んでいく。


「グゥオォォォッ!!!」


 SSSランク魔物『鬼神(ティターン)』が振り下ろした鉄塊のような大剣を大槍でいなし、流れるような身のこなしで股下を通り抜けて踵の腱を切り裂いた。


 巨躯を支えきれずに膝をつくティターンにユーゴーが追撃を仕掛ける。だがティターンは倒れこみながらも大剣を振るい、大槍を突き込んだユーゴーを吹き飛ばした。


「ユーゴー!? 【解呪(ディスペル)】!」


 戯れに蹴り飛ばされた小石のように跳ね、毒の沼地に落ちたユーゴーの周囲が真っ白な光に包まれる。瞬く間に紫色の毒々しい沼地が清浄な湿地へと変わり、ユーゴーがよろよろと立ち上がる。


「【聖者の祈り(エリア・ヒール)】!」


 ローズが発動した第八位階光魔法の癒しの光が、ユーゴーを中心に半円状に広がっていき、オーガキングを相手どっていたアリスとジェシカをも癒していく。


「いいぞ、ローズ!! お前の相手は俺だ!!【猛毒・魔力撃(ベノム・スラッシュ)】!」


 ユーゴーに切り裂かれた踵の腱をあっという間に自己治癒し、ユーゴーに斬りかかろうとしていたティターンの右腕を、闇魔法【病魔(イリネス)】を纏わせた【魔力撃】で深く切り裂く。


 高い自己治癒力を持つティターンは、これ程の傷であってもあっという間に治してしまうだろう。だが、傷を癒すたびに魔力を消費するし、猛毒は少しずつ体力を削っていく。


「待たせたわね! アル、強化を!!」


「了解!【魔装(マナス)】!」


 惣闇色の魔力光がエルサを包む。アザゼルが多用していたためどうしても印象が悪いが、これは俺が発動した魔力を強化する魔法だ。


「皆、離れて! 【凍ル世界(アイス・エイジ)】!」


 ティターンを中心に十数メートルの巨大な魔法陣が地表に描かれる。次の瞬間、魔法陣から真っ白な冷気が噴き出した。毒の沼地がビキビキと派手な音を立てて凍り付き、空気中の水分が細かい氷の結晶となりキラキラと輝く。


「グ、グギィ……」


 極寒の冷気が体表を凍らせ、身体を引き攣らせたティターンの動きが鈍る。直前に俺が斬り裂いた右腕が凍りつき、パキィッっと崩れ落ちた。


「今っ! 集中砲火(ガンガンいこうぜ)! 出し惜しみは無しだよ!! アース・フィールド!」


 アスカの掛け声とともに、土色の魔力の波動が半円状に広がっていく。


「みんな、支援するのです!【武具解放(アームド)】!」

「【魔弾・連(ルイン)】!!」

「【献魂一擲】!!」

「【土遁の術】!」


 俺が放った魔弾の連射が凍り付いたティターンの左足を砕き、ユーゴーの大槍が左腕を切り飛ばし、ジェシカが放った無数の岩弾が右足を砕く。四肢を破壊されたティターンの巨躯がドズンと凍り付いた大地に崩れ落ちた。


 SSSランクの魔物の恐ろしいところは、ここからでも四肢を生やして再び立ち上がってくるところだ。だが……


「とどめ、行くわよ! アルッ!」


「【魔装】!」


「食らいなさいっ! 【星落とし】(メテオストライク)!!」


 エルサから大量の魔力が空に向かって放出されていく。


 っていうか、凄まじい魔力量だな。残る魔力を全部つぎ込んだな……?



 ズガンッ!

 ズガン、ガン、ガン、ガガガガガガガンッ!!!


 

 大空から無数の大岩が降り注ぐ。地表に幾つもの半球状の窪みが形成されては、新たに落下した大岩で上書きされていく。


 エルサ渾身の極大魔法。第九位階の地魔法、【星落とし】。ほんと、とんでもない威力だ。


 オーガキングは召喚した金剛人形と古代竜を巻き込み、既に影も形も無い。ティターンも、もはや細切れの肉片と化している。


「た、倒せた?」


 魔力を使い果たしたエルサがペタンと座り込んだ。


「うわっ。エルサ、それ言っちゃダメなヤツ!」


「え?」


「【ジョブ】チェンジ! 【転移陣の守番】!」


「【転移(ジャンプ)】!」


 アスカの意図を察した俺は即座に転移スキルを発動する。


 撤退のためじゃない。ティターンにとどめを刺すために。


「【チャージショット】!」


 土煙漂う無数の大岩の落下地点の上空に、短距離転移(・・・・・)した俺は白銀の剣にスキルを纏わせる。


 【チャージショット】は注いだ魔力の分だけ、そして注いだ時間に応じて威力が増していく【弓術士】のスキルだ。


 狙うは、あれほどの怒涛の魔法攻撃を受けながらも砕けなかった、未だ膨大な魔力を放つ鬼神(・・)の魔晶石。


 神の名を冠する魔物は本当にしつこい。四肢をもがれ、切り刻まれようとも、その魔力が残っているうちは再生を続けるのだ。


 だが、魔物の魔力の根幹、その身に宿る魔石を砕けば話は別だ。


「砕けろォッ!! 【錬・魔力撃】(チャージ・スラッシュ)!」


 【チャージショット】と【魔力撃】を『二重詠唱』した白銀の剣を、うごめく肉片がこびりついた巨大な魔晶石に落下の勢いを乗せて叩きつける。魔晶石はビキリとひび割れ、粉々に砕け散った。


「やったか!?」


 二重詠唱に集中しすぎて着地でバランスを崩し、ゴロゴロと地表を転がった俺は、立ち上がりつつ叫んだ。


 あ、いかん、これ言っちゃダメなヤツだった。『生存ふらぐ』だったっけ?


「いよっしゃぁぁーっ!!! 75階層、クリアー!!」

「やったー!!」

「すごい! すごいのです! 」


 あ、アスカとローズとアリスが大騒ぎしてる。


 ティターンの気配は……無いか。よかった、やってたか。


 周囲に散らばった魔物の肉片が黒い光の粒になって溶けるように消えていく。もはやどれがティターンで、どれがオーガキングかもわからない。召喚した古代竜の肉片とかも交じってそうだな。


 ゴトンッ


 辺りから集まった黒い光の粒が塊になり、巨大な魔晶石へと変化した。ほんと、何度見ても海底迷宮の魔物って不思議だよな……。


 魔晶石を砕いて倒したってのに、魔晶石が落ちるってどういうことだよって思わないでもないが、こんな超希少な魔晶石が入手できるんだからまあいいか。


「SSSランクとSSランクの魔石かぁ。残念! レアドロ無しだね」


「すごい大きさよね、本当に」


 SSSランクの魔晶石の直径は約50センチほどもある。SSランクの約2倍、Sランクの約5倍の大きさだ。こんな大きさの魔石なんて見たことも聞いたことも無い。


 あ、守護龍の魔晶石はもっと大きいか。直径1メートル以上はありそうだもんな。そう考えると、守護龍ってどんだけ強いんだよって話だ。アスカの言ってた基準で言うと、UR(ウルトラレア)とかEX(エクストラ)ランクってところか?


「さて、一息ついたところで、50階層に戻って周回するよ!!」


「………………はぁ?」


 アスカの信じられない発言に、皆の声が重なる。


 いや、今、何て言った? たった今、SSSランクの魔物との激闘を終えたばかりだよね? 魔力も体力も使い果たしてるよね? バカなの?


「アルの【転移】、まだマスターしてないじゃん。エルサの第八位階も、ユーゴーの【不倶戴天】も、ジェシカの【陰陽五行】も、アリスの【錬金】もまだだよね? 疲れた? え、なに眠たいこと言ってんの? 回復薬も魔力回復薬も腐るほどあるじゃん。休憩? レイドバトルはトイレ休憩も取れないんだよ? オムツはいてでもやるんだよ?」


 なんか、すげえ早口なんだけど……。え? さっさと転移しろ? あ、はい。




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