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騎士とJK  作者: ヨウ
第十章 永久凍土の名も無き村
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第406話 転移陣

「アザゼルが転移陣を封じた? どういうことだ?」


「……たった数日の間に世界中の転移陣が使えなくなっているの。誰かが転移陣を封印しているということだと思うの」


「誰かがって、神龍ルクスが壊したのではないの?」


 エルサがジェシカに訝しげな目を向ける。


「普通は転移石で転移陣を起動して、他の転移陣に転移するの。だから転移陣を封じてしまったら、そこから他の転移陣には転移できないの」


「あ、龍脈の腕輪か」


 アスカがはっと目を見開いた。


「そう。何処からでも転移できる龍脈の腕輪があれば、転移陣を壊しながらでも世界中に転移することが出来るの。でも、龍脈の腕輪の作り方はアザゼルとラヴィニアしか知らないから、ジェシカとアスカ以外にはアザゼル達しか持っていないはずなの。だから、アザゼル達が世界中の転移陣を封印したんだと思うの」


「いったい何のために……あ、もしかして」


 エルサの呟きにジェシカがこくりと頷く。


「ルクスに転移陣を使われないようにするためだと思うの」


 そうか。もし龍王ルクスが転移陣を使って世界中を飛び回ったら、あっという間に世界を滅ぼされてしまう。それを少しでも遅らせるために転移陣を壊したってことか?


「ルクセリオの転移陣を封印したのも、龍王ルクスではなくアザゼルってことか」


「ルクスが壊したのだと思っていたけど、たぶんそうだと思うの」


「神龍ルクスは転移陣を使わないと転移は出来ない?」


「わからないの。ルクスは龍脈を通して世界中の人を闇魔法で操ったの。逆に言えば、龍脈を利用できたから操れた。だとしたら、龍脈が繋げる転移網を通さないと転移は出来ない……と考えることも出来ると思うの」


「希望的観測ってヤツね」


 アスカがため息をつく。


 でも筋は通っている。ルクスは転移陣を使わないと転移できない。だからアザゼル達は先回りして転移陣を封印した。ルクスが世界中の都市を滅ぼしてまわるのを少しでも遅らせるために。


「でも、私達も転移陣が使えなくなってしまった。これじゃあ、各国に人族存亡の危機が迫っていることを伝えに行くことも出来ないわ」


 龍脈の腕輪は何処からでも転移できるが、転移先は転移陣に限られる。転移陣が破壊されてしまったら、転移は出来ない。だが……


「なんとかできるかもしれない」


「え?」


 皆の視線が俺に集まる。


「【転移陣の守番】のスキル【転移】。これを育てれば『何処から何処へでも転移できる』スキルに化けるかもしれない」


「ほんとに!?」


 内緒にしてたけど、そうも言ってられない。ジェシカをどこまで信じられるかわからないけど、秘密にしていたら話が進まない。


「たぶん、だけどな。スキルを習得すると、なんとなく効果や使い方が理解できるだろ? この【転移】ってスキルは、そういう使い方が出来るようになるんじゃないかって予感がするんだ」


「すごいわね……だとしたら早急に【転移】スキルのレベルを上げるべきだわ!」


 エルサが期待を膨らませたような顔をする。


「……それが問題なんだよな」


「そうだね……」


 アスカが眉をひそめる。ああ、やっぱりそうか。アスカもわからないのか。


「どうやってスキルレベルを上げる? 熟練度の稼ぎ方がわからないんだ」


 【転移陣の守番】はアスカも知らない加護だ。今までのように効率的なスキルレベルの上げ方がわからないのだ。


「でも……今までの傾向から予想することは出来るんじゃない?」


「そうなのです。スキルは使えば使うほど熟練度が稼げるのです! たくさん使えばスキルレベルは上がるはずなのです!」


「確かにそうなんだけど、それだと非効率すぎるんだよね。熟練度を稼いでいるうちにルクスが世界を滅ぼしてしまう」


「どういうこと?」


「ええと、今の段階だと【転移】のスキルは『何処からでも転移陣に転移できる』効果しかない。ということはだ、発動回数を稼ぐなら転移陣への転移を繰り返さないと熟練度は稼げない」


「そういうことになるわね」


「でだ、世界中の転移陣は封印された。転移できるのはサローナの転移陣とマルフィの転移陣だけだろ?」


「……なら、サローナとマルフィの間を何度も転移すればいいのでは?」


 エルサが小首をかしげる。


「効率のいい熟練度の稼ぎ方にはいくつか条件があるだろ? アリスの言っていたスキル発動を繰り返すこと、魔物が出現する場所で発動すること、そして……」


「自分よりもレベルが高い魔物がいる場所で発動すること」


 アスカがため息をつきつつそう言った。


「アルは今43レベルなの。そのレベルを超える魔物となるとAランク以上になるわけ。Aランクの魔物なんてそうそういないじゃん?」


「魔物のレベルが低いと熟練度稼ぎの効率は極端に落ちる。マルフィの転移陣周辺は強くてもEランク程度の魔物しかいない。サローナにいたっては魔物すらいない」


「あ……」


 Eランクの魔物というとだいたい8~10レベルぐらいだ。俺は43もあるわけだから、その差は35もある。熟練度の効率は何十分の一になってしまうのだ。しかもサローナからマルフィに転移する時は、サローナ側に魔物がいないから熟練度をまったく稼げないかもしれない。


「それでもやらないよりはマシだろうけどな。非効率でも【転移】スキルのレベル上げをした方が、まだ早いだろう」


「そうね……。マルフィで船を調達出来ればと思っていたけれど、この有様じゃ船なんて手に入るはずもないでしょうし。だからといって歩いて移動するのでは、ここから一番近いクレイトンに行くのだって数か月はかかってしまうわ」


 そうこうしている間に、人族は龍王ルクスに滅ぼされてしまうだろう。龍王ルクスがどれだけの早さで移動するかはわからないが、空を飛んでルクセリオとマルフィの間を一日足らずで移動したのだから、少なくとも俺達の何百倍も早い。たぶん10日もあれば世界中をまわりきってしまうのではないだろうか。


「一つ聞きたいことがあるの」


 ジェシカが会話に割り込み、俺を見上げた。


「なんだ?」


「よくわからないのだけど、強い魔物がいて、転移陣があるところに行けばいいの?」


「そうだな。だが、そんなところは……」


「海底迷宮に転移すればいいと思うの」


「海底迷宮に? 王の塔のは沈んでしまったんだぞ? どうやって海底迷宮に入れば……」


 そう言われて【転移】スキルに意識を集中させてみる。


「あ……海底迷宮の転移陣に転移できそうだ……」


「え? 行けるの!?」


 そうか。海底迷宮へは王の塔の地下にあった迷宮転移陣から入ったから、王の塔が沈んだ今となっては行くことは出来ないと思っていた。


「『龍脈の腕輪』でも直接行けるの。ジェシカの腕輪には登録していないから行けないけど、グラセールが渡したアスカの腕輪でも行けるはずなの」


「うっそ……WOTと仕様が違うんですけど……」


 海底迷宮に行けるってことはSランクの多頭龍(ヒュドラ)を相手に熟練度稼ぎが出来るってわけだ。かなり効率的に熟練度が稼げそうだ。


 もしかしたら海底迷宮の40階層と50階層の転移陣を行き来するだけで【転移】の熟練度を稼げるかもしれない。しかも、まだ未修得の【弓術士(アーチャー)】と【闇魔術師(ダークメイジ)】の加護レベル上げも出来る。


「あ、もしかしたら……Sランク以上の魔物とも戦えるかも……」


「Sランク以上……!?」


 多頭竜よりも強い魔物がいるのか? でも、海底迷宮の最奥は50階層だろう? 50階層の階層主よりも強い魔物なんていなかったはずだが……


「ほら、前に言ったじゃん! SSランクの魔物にもチャレンジできるって! 海底迷宮にはクリア後に解放されるエクストラフロアがあるの! あそこ、じつは100層まであるんだよ!」


「100層!!?」


「そうそう! エンドコンテンツだからめっちゃ難易度高いけどね! 60階層がSSランク、70階層がSSSランク、80がUR、90がEX、んで100階層がΩ(オメガ)! オメガは最上位加護をフルコンプしたメンバー100人がかりで戦うナイトメアレイドだけどね!」


 うーん……何を言っているのよくわからなくなってきたけど……とりあえず希望が見えてきたってことでいいのか??




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