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騎士とJK  作者: ヨウ
第一章 山間の町オークヴィル
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第36話 異世界JK日記②&WOT(仮)メモ 

■11日目

 はぁぁ良かったぁー。思った通り製薬道具が手に入った!! ホントはこれチェスターでイベントこなした後じゃないと手に入らない【大事な物】(ユニークアイテム)だから、上手くいくか賭けだったんだよねー。


でも、これではっきりした! この世界はWOT(ワールドオブテラ)のシステムが生きてるけど、WOTそのものじゃない。


 ジョブとかスキルとかのシステムはほとんど同じみたい。スキルの習得の仕方とか、レベルの上げ方とかは同じ。ちょっと違うところもあるけどステータスの補正もだいたい同じ。


 でも、イベントに関しては同じじゃないみたい。そりゃそうだよね。ゲームに出てくるNPCみたいに、フラグが立たなきゃイベントが起こらないとか、セリフが変わらないなんてあるはずないよ。だって、この世界にいる人たちは本物の生身の人間なんだもん。


 この製薬道具だってそう。WOTの通りならチェスターのイベントが終わったあとに、ケガをしたNPCに回復薬を作ってあげるサブイベントが起きて、それでようやくオークヴィルの民家で製薬道具を譲ってもらえるようになる。


 でも、『本物の人間相手』ならフラグを立てなくても、相談してみたら譲ってもらえるかもしれないって思ってオークヴィルに来てみたら……大成功!!


 ホントなら最初の町にすら入ってない、こんな最序盤で下級回復薬(ポーション)なんて手に入れられないはずだもん。序盤の回復は薬草と傷薬で十分だから、そもそも必要ないしね。


 下級回復薬(ポーション)が店売りされるようになるのは、王都クレイトンあたりからだったっけ? 早めに手に入れられたのはラッキーよね。


 これなら、かなり効率よく旅を進められるかもしれない! お金稼ぎだけじゃなくて、スキルの強化もかなり短縮できるかも。


 レベルも1のままだし、始まりの森で特訓しなおすってのもありかもしれないなぁ。スライム特訓(マラソン)やってみようかな。この世界ならではのやり方もありそうだし、いろいろ考えてみよ!!



■20日目

 アルが間に合わなかったらダーシャ達は死んじゃってたかもしれない。やっぱりこの世界はリアルなんだなって……思い知った。


 助けてって頼んだらアルはすごい早さで走って行って、まるで踊るようにレッドウルフを倒していった。その時にはまだ、アルかっこいいなとか、こんなイベントあったっけとか、バカみたいなことを考えてた。


 そこには焼け焦げた肉と脂の匂いが漂ってた。本物の、厳しい現実(リアル)だった。ゲーム(遊び)なんかじゃ、決して無かった。


 エマはひどい火傷を負ってた。1週間前に会ったポーカーフェイスだけどとってもかわいらしい猫耳の女の子が、息も絶え絶えだった。


 ダーシャも火傷して足がえぐれてて、血がたくさん流れてぐったりしてた。デールも剣をついてなんとか立っていられてるってかんじで、身体中に火傷と怪我を負っていた。


 魔物を殺すってことは、当たり前だけど魔物に殺されるかもしれないってことなんだよね。そんな当たり前のことも、あたしはわかってなかった。


 あたしと同じくらいの年の女の子達が、今にも死んじゃうんじゃないかってぐらい傷ついているのに、あたしは何もできなかった。こわくて、こわくて、涙がこぼれそうになって、歯がかたかた震えて、戻しそうになって……。


 アルが下級回復薬(ポーション)で治していくのを、ただ見ていることしかできなかった。アルに頼ってるだけの自分が、おろおろすることしか出来ない自分が、情けなかった。


 それで思ったんだ。アルがダーシャ達を治していくのを見て『これはあたしがやらなきゃいけないことだ』って。


 だってさ、あたしは戦うことが出来ない。守ってもらうばっかりで何の役にも立ててないんだもん。せめて回復薬を使って、みんなを助けることぐらいできるようにならないといけないよね。


 それと、アルの夢を叶えるお手伝いをすることなら、こんなあたしにもできる。あたしの唯一のチートなら、アルがずっとずっとなりたいと思ってた【騎士】(ナイト)にしてあげることだってできるんだから。


 下位職からクラスアップするのはとても大変。たくさん特訓(マラソン)して、たくさん魔物を倒して、たくさんレベルも加護レベルも上げて、大事な物(ユニークアイテム)を手に入れないとクラスアップすることは出来ないけど……それでもアルの夢を叶えてあげることができる。


 だから、戦わなきゃいけない。アルに、苦労させちゃうし、痛い思いもさせちゃうと思う。


 正直言って、すごくこわい。自分もそうだけど、アルが傷ついちゃうかもしれないのもこわい。


 それでも、アルに強くなってもらうために、夢を叶えてもらうために、戦わなきゃいけない。強い敵(火喰い狼)にも挑まなきゃいけない。


 あたしが、あの寂しいけど平和な森からアルを引っ張り出したんだもん。アルを巻きこんだあたしがこわいとか、言ってちゃダメだよね。


 アルは優しいし強いから、あたしのことをぜったい守ってくれる。あたしには戦うことはできないけど、回復薬を作ったり使ったりすることぐらいしかできないけど……


 アルをいつか【騎士】(ナイト)してあげるんだ!




■22日目

 火喰い狼(フレイムウルフ)を倒すことができた。でも……ダーシャがお腹を刺されちゃって、アルにいたっては両腕を折られたうえに噛みつかれて酷いケガをしちゃって……。あたしが賞金首(ネームドモンスター)と戦おうって言ったばっかりに、みんなをひどい目に合わせちゃった。あたしはほんとに疫病神だなって、正直ヘコんでた。


 それなのにアルったらさ! セシリーにデレデレしちゃってさ! 楽しそうに二人で料理の話ばっかりしてさ。しかも魔法の練習って言ってたのに、鼻血まで出して興奮しちゃって! ほんっとにバカみたい! あたしには何もしてくれないくせに! 抱きしめてもくれないくせに!!


 なーんて、ずっとプリプリしちゃってたけど、お酒の力って偉大よね。美味しいご飯を食べて、甘くて美味しいお酒を飲んで、みんなで騒いでたら、いつの間にかそんなの(嫉妬なんて)どうでも良くなっちゃった。


 アルが慰めてくれて、髪を撫でてくれて、ぎゅってしてくれて。うじうじした気持ちも、ザワザワした気持ちも、あっという間に消してくれた。すごくすごく幸せだった。


 だから……ゴメンね。まさかこのタイミングで来ちゃうなんてね。あはは。もうすぐだなーとは思ってたけど、その、終わったら……ね?



■24日目

 無事に剣闘士(グラディエーター)のスキルもゲット!! ホーンラビットとのレベル差が少なくなっちゃったからもうちょっと時間がかかると思ってたんだけど、わりと早く習得できて良かった。


 習得自体はレベルの高い魔物がいるオークヴィル周辺でした方が効率よかったけど、竜退治の盾(おなべのふた)じゃアルが大怪我しちゃいそうだもんね。始まりの森の低レベル角兎(ホーンラビット)だったから怪我もしなかったけど、相手がオークヴィルのマッドボアじゃさすがアルももたないだろうしね。


 かと言って丈夫な盾でやったら、今度は魔物の方がもたないもん。いくら武器じゃなくても盗賊Lv.★(マスター)のアルが丈夫な盾で殴ったら、魔物を倒しちゃうかもしれないしね。低レベルで効率よくやろうとしてるのに、うっかりレベルアップなんてしちゃったらもったいないし。


 明日はアスカ式ブートキャンプ!ぬるぬる!スライムマラソン!をアルにやってもらわないといけないんだから! レベル2を維持してもらわないとね! うふふ。楽しみにしててね、アル。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




【WOT(仮)メモ】


■加護

 メニューにはジョブって書かれてる。中途半端だよね。ストーリーでは神龍の加護とか言ってるのに、メニューではジョブってさ。どっちかに合わせればいいのに。この世界じゃ加護って言わないと通じないから加護って言うことにしてる。でも言いやすいからついジョブって言っちゃう。

 加護には下位、中位、上位がある。下位を修得して大事な物(ユニークアイテム)を手に入れれば、中位職になることができる。上位職は……。

 こっちにはWOTに無かった加護もたくさんあるみたい。薬師とか魔物使いとか無かったしね。アルもなれるのかな。


■スキル

 加護をつけて特定のアクションを繰り返すか、レベルを上げれば身につけることができる。魔法もスキルの一種ってあつかい。

 習得の仕方はたぶんWOTと同じ。修得も同じっぽい。WOTに無かった加護になれれば、新しいスキルとかも習得できるのかな。生産系のスキルとかあったらいいな。


■HP

 WOTでは1本のゲージで、視界の隅に表示されてた。敵から攻撃を受けると減って、休憩したりポーションを使ったりすると回復する。VITが上がれば増えて、DEFとMNDが上がればダメージを受けても減りにくくなる。ゼロになったらゲームオーバー。

 この世界には無い(・・・・・・・・)。もしかしたらあるのかも知れないけど表示はされてないし、ステータスにも書いてないからたぶん無い。それはそうだよね。だってこの世界は現実(リアル)だもん。火傷もするし骨も折れる。攻撃されて数字が減るってだけのイージーな世界(VRRPG)じゃない。


■MP

 HPと同じく1本のゲージで表示されてた。魔法やスキルを使うことができるポイント。INTが上がると総量が増えて、スキル熟練度(レベル)が上がると使用量が減る。スキルを使うと減って、休憩したり魔法回復薬(マジックポーション)を使ったりすると回復する。

 これもこの世界には無い。けど表示されて無いだけで、これに近いものはあるっぽい。アルも魔力が尽きそう、とか言ってたしね。


■言語

 神聖ルクス語っていうのがこの世界の言語。たくさんの言語を使ってバラバラだった人たちに、同じ言葉を与えて争いをおさめたって神話があるんだって。アンチ・バベルって感じね。

 ……ていうかこの神聖ルクス語、話してる言葉も書いてある文字も、まんま日本語(・・・)。ひらがな、カタカナ、漢字まであって、完全に日本語。外来語まであるし、まさに日本語。普通は異世界言語修得スキル(おやくそくチート)とかがあるもんじゃないの? 母国語だし、便利だけどね。世界中で日本語が通じるみたいだし。

 びっくりしたのは、生活魔法のスクロール。これぞ魔法陣って感じの何重もの円と六芒星、たくさんの記号なんかで描かれた図形。そこに書き込まれた文字は英語(・・)だった。

 contraception、menstruation、water、sphere、temperatureなどなど。文にはなってなくて、単語が散りばめられてたけど、完全に英語。読んでみたらセシリーがすごく驚いてた。失われた古代エルフ文字だとかなんとか。とりあえず秘密にしておいてってお願いしといた。




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