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騎士とJK  作者: ヨウ
第八章 動乱のジブラルタ
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第336話 歓待

 『山鳥亭』の中二階は大騒ぎだ。


 この町の知り合いがこぞって駆けつけてくれたのだ。まず商人ギルドのセシリーさんとギルド長のエドモンドさん。そして仕立て屋のジェイニーさんとタバサさん、武具屋のヘルマンさん一家、山鳥亭の亭主のニコラスさんと女将キンバリーさん夫妻、代官のレスリーさん。


 なんと隊商マルコのマルコ隊長と傭兵団『支える籠手』のサラディンさん、グレンダさん、ジェフまで来てくれた。本拠地のあるジブラルタ王国での仕入れを済ませ、再び王都クレイトンを目指す旅の途中で、ちょうどオークヴィルに立ち寄ったところだったそうだ。


 久しぶりにセシリーさんと一緒に夕食をとろうぐらいにしか思っていなかったのだが、この町の代表者まで現れての大歓待だ。ちょうど1年前に、この場所で祝勝会をあげたり、送別会を開いてもらったりしたのを思い出すな。


「まさか、こんなに集まってくれるなんてね。デール達にも会いたかったな」


「ちょうど今朝、シエラ樹海に入ったんだよなー。あいつら、一度潜ると1週間は戻ってこないぞ」


 そう教えてくれたのは武具屋のヘルマンさん。なんとデールたちはオークヴィル唯一のBランク冒険者パーティ『火喰い狼』として活躍しているそうだ。俺達と共同で賞金首依頼を受けた時にはDランクだったはずなのに、たった1年で二段階もランクを上げたようだ。それを言ったら俺はGからAまで1年もかからずに上がっているのだけれど。


「パーティ名を『火喰い狼(フレイムウルフ)』にしたのか。あいつららしいな」


「今じゃその狼を上回るBランクの魔物を何体も狩って、どっさり素材を持ってくる。ずいぶん腕を上げたみたいだぞ」


 あいつらには別れの際にスキルを鍛えるためのヒントを伝えていた。たぶん、スキルを修得し、加護レベルを上げることが出来たのだろう。


 とは言っても、ヒントを貰ったからといって、簡単にできることじゃない。スキルレベルを効率的に上げるには、自分よりもレベルが高い相手に挑まなくてはならない。いくつもの加護を持ち、修得済みの加護補正を引き継げる俺とは条件が違うのだ。


 彼らは神龍ルクスから与えられた加護一つしかもっていない。スキルや加護だけに頼るのではなく、敵を知り、高度に連携しなければ、生き残る事すら難しい実戦での修練だ。デールたちはそれを乗り越え、これほどの短期間でBランクにまで上り詰めたのだ。


 本当に悔しかったのだろう。自分たちが拠点を置いている町が、たった一体の変異種によって混乱に陥ったことが。命からがら逃げだしたことが。自分達を壊走させた敵を、新人冒険者に倒されてしまったことが。


 だからこそ『火喰い狼』を名乗っているのだろう。もう逃げ出すことなどない。町を守るのは俺達だ。その屈辱を忘れないために、決意をその名に込めたのだろう。


「おかげで良い防具が手に入ったよ」


「本当はアルフレッドのために作っておいたんだがな」


 ヘルマンさんは俺が使っているワイルドバイソン革のレザーアーマーを作ってくれた【革細工師(レザースミス)】だ。彼は俺のために『地竜の革鎧』を作ってくれていた。セントルイス王国親衛隊隊長エドマンドさんから譲り受けた地竜の皮と、デール達が採集してきたシエラ樹海深層の素材をふんだんに使って煮革鎧を製作してくれたらしい。


 せっかく作ってもらったのだが、俺の鎧は鉱山都市レリダでガリシア氏族の後継者候補イレーネに『地竜の鱗鎧』へと強化してもらったばかりだ。この鎧のおかげで矢と魔法が入り乱れるマナ・シルヴィアの戦火を無傷で潜り抜けられたのだし、破損しているわけでも無い。


 そこで、この鎧はユーゴーに使ってもらう事にした。ユーゴーは未だにカスケード山の盗賊から鹵獲した低品質な革鎧を使い続けていたから、新調しなければならないと考えていたのだ。俺用だったため少し大きめだったが、ユーゴーもわりと長身だったため――胸部はむしろ窮屈なぐらいだった――微調整するだけで装備することが出来た。


 そして、譲り受けた『地竜の革鎧』と俺の『地竜の鱗鎧』の両方、さらに皆の防具類をヘルマンさんとアリスに特殊魔物素材で強化してもらう。


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■ログ


「双竜の革鎧」を入手した

「混沌の円盾」を強化した

「双竜の革鎧」を入手した

「双竜のジャケット」を入手した

「双竜のローブ」を入手した

「神鳥竜ガルダの半外套」を入手した



■武具鑑定


『双竜の革鎧』(アルフレッド・ユーゴー)

 ランクB+

 物理耐性・魔法耐性・属性耐性(風・地)


『混沌の円盾』(アルフレッド)

 ランク:A+

 物理耐性・魔法耐性・属性耐性(火・風・地・光・闇)


『双竜の籠手』(ユーゴー)

 ランクB+

 物理耐性・魔法耐性・属性耐性(風・地)


『双竜のジャケット』(アリス)

 ランクB+

 物理耐性・魔法耐性・属性耐性(風・地)

 

『双竜のローブ』(アスカ)

 ランクB

 属性耐性(火・風・地)


『神鳥竜ガルダの半外套』(エルサ)

 ランクA-

 物理耐性・魔法耐性・属性耐性(風・地・光)


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「お揃いだな」


 革鎧を受け取った時、いつも表情の薄いユーゴーが微笑んだ。アスカの表情がピシッと凍り付いたのは言うまでもない。お願いだから余計なこと言わんでくれユーゴー……。



 ええと……そう、武具の強化は自重無しでやった。大量の素材が溶けたけど後悔はしていない。


 レリダで手に入れた地竜、そしてマナ・シルヴィアで手に入れた翡翠竜と風竜の皮・牙・骨・魔石をふんだんに使って全員の装備を超強化だ。地竜素材はこれで使い果たしたが、風竜の素材はマナ・シルヴィアで大量に入手したので、まだまだ大量にある。


 アリスは父親であるジオット・ガリシア族長の直弟子であるヘルマンさんと協働できたことが良い刺激になったようだ。


 アリスは【錬金術師】の加護を得て、スキルを使うことが出来るようにはなった。【鍛造(フォージ)】や【付与】(エンチャント)のスキルで、素材の整形や強化は行える。


 ただ、実際にスキルで武具を拵えるには、膨大な知識や経験、そしてセンスが求められる。それらしく作ることは出来ても、その道専門の職人に比べれば、その強度や見栄えに雲泥の差が出来てしまう。


 ヘルマンさんから見れば、特性付与の精度は高くても、一から武具を拵えた経験がないアリスは、素人同然なのだそうだ。大量の素材を消費して、みっちりメンテナンスの方法や手技をアリスに指導してくれた。アリスは作業場(アトリエ)に立ち入らせてもらえるだけで喜んでいて、ヘルマンさんからの厳しい指導にも終始ニコニコと笑顔を浮かべていた。


 というわけで、防具は強化できた。武器は聖具があるし、アクセサリーは風竜の魔石がたんまりとあるので、これから強化&増産の予定だ。海洋迷宮への挑戦を前に、準備は着々と進んでいる。


「だーかーらー! なんであたしの下着を複製してんのぉーっ!!」


「アスカ様、ジェイニー&タバサでは初心を忘れぬよう全店舗にレプリカを展示するつもりなのです! きっと神の閃きを与えてくれるでしょう!」


「やめてーー!! お願いぃぃー!!」


「一号店はオークヴィルの目抜き通りに移転、三号店を王都クレイトンに開店予定です。二号店はチェスターに本店として開店しました! あのアリンガム商会の隣に出店できたのですよ! 本物のオリジナル・アスキィ&セシリィは本店に展示しております。先日はバイロン・アリンガム卿とクレア嬢にもご覧頂いたのですよ! クレア嬢は満面の笑顔でご覧になっておられました!」


「いやあぁぁぁぁっっ!!?」


 アスカが悲痛な叫び声をあげているが、ジェイニー&タバサの耳には入っていないようだ。


 キラキラとした瞳をアスカに向け、恍惚とした笑みを浮かべている。うん、あれは狂信者の目だ。アスカ下着教の伝道者だ。残念ながらアスカの下着が偶像として独り歩きし、アスカの声は届かないようだ。


 えっと、その、ご愁傷様、アスカ。




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