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騎士とJK  作者: ヨウ
第六章 驕慢たるアストゥリア
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第286話 混乱

「【治癒(ヒール)】」


【付与】(エンチャント)……はい、これでおしまい! お疲れさま!」


「ふぅ……やっとか」


 またしてもマイヤさんに溜まっていた注文品への魔法付与を手伝わされた。まだ相棒の魔法使いは復帰していないらしい。


 ちなみに、装飾品に【治癒】を付与すると、体力(VIT)を上昇させる効果が得られるそうだ。【土装(プロテクト)】で防御力が、【風装(クイック)】で敏捷性が向上するのは

わかるが、【治癒】で体力ってのはいまいちピンと来ない。そういうものと思うしかないけど。


「エウレカ随一の付与師と呼び声が高い【祈り子(シャーマン)】の私にタダで魔法付与してもらえるんだから、文句を言わない! おかげで伝説級の(レジェンダリー)装身具(アクセサリー)が出来たでしょ?」


「はいはい」


 マイヤ魔道具店には、アリスのスキルを試すためだけに来たわけじゃない。堕天竜から手に入れたAランクの魔石で、新たに装身具を作るためだ。俺やアリスと違って、レベルも上がらないし加護の補正も無いアスカは、装身具でガチガチに固めないと不安だからな。


「これもその子が着けるの? そこらの貴族じゃ手が出せないほどの高級品なのよ?」


「これでも足りないくらいくらいだよ」


「過保護ねぇ」


 マイヤさんは、呆れた顔で苦笑する。


 そうかな? たしかにAランク魔石を使った効果の高い装飾品は、全部アスカに着けさせてるけどさ。アスカの装身具や装備だけじゃなく、俺達の装備品にも魔法付与をしてもらったじゃないか。


 ……装備品の方は魔石を核石として仕込んでいないので、魔法付与しても効果は気休め程度らしいけど。




--------------------------------------------


■ログ


「陽光の首飾り」を入手した



■武具鑑定


『陽光の首飾り』

 ランク:A+

 体力上昇(特大)


--------------------------------------------




 前はマイヤさんに紹介してもらった【彫金師(ゴールドスミス)】に装身具を作ってもらったけど、今回の首飾りはアリスが【鍛造(フォージ)】のスキルで作ってくれた。アリスが創り出した錬金空間の中で白銀(ミスリル)とAランク魔石が整形されていく様はなかなか見応えがあった。


 そういえば、イレーネが俺の鎧を加工してくれたのは見たことがあるけど、【鍛冶師(ブラックスミス)】のスキルで一から物が作られていくところを目にしたのは初めてだったかもしれない。アスカも目をキラキラさせて、その光景を眺めていた。


 出来上がった首飾りは、シンプルながらも一目で高級品とわかる逸品だった。涙滴型に整形された3,4センチ大の魔石はダイヤのように透き通っていて、魔石の縁取りと鎖は白銀で出来ている。


 なお、装飾は全くされていない。アリス曰く、天然石・魔石・金属などの装飾は【石細工師(ストーンワーカー)】や【彫金師】が得意とするところらしく、鍛冶師系統の加護を持つアリスには少々難易度が高いそうだ。経験を積めば上達はするそうだが、スキルの熟練度とはまた別に感性が求められるらしい。


「スキルが使えるようにはなったけど、経験とセンスが足りないのです」


 確かに装飾品としてはマイヤ魔道具店に置いてあるものは、細やかな装飾や彫金がなされていて美しいとは思う。アリスが作った首飾りも、飾り気のない実直さがあって好きだけどな。


 まあ、俺は実用性があればそれで十分と思ってしまうから、参考にはならないだろうけど。身に着けるアスカは『ヒコウセキだ!』とか言って喜んでいるからいいんじゃない? 


 ……ていうかヒコウセキってなに?




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 ギルドで借りている部屋に戻ってからも、アスカは首飾りで遊んでいる。今は付き合いの良いアリスと手をつないで、『滅びの呪文』とやらを唱えたところだ。


「……まだやってんのかよ」


「だからそこは、目が、目がぁって言ってもらわないと」


「めがめがぁ」


「棒読み! 違うって、もっとこう、目が!目がぁ!って感じで」


「何回やらせるんだよ、それ。アリスも、無理に付き合わなくていいんだぞ?」


「あははは……」


「ふふん。古今東西、妹は姉に従うって決まってんのよ!」


 アスカが胸を張って宣言する。違うから。従ってるんじゃなくて、付き合ってくれてるんだって。


「アリスの方が年上なのです……」


 アリスは俺と同い年だからね。17才のアスカは最年少。


 ああ、そう言えばエルサっていくつなのかな。聞いた限りではキャロルも年上っぽかったんだよな。エルサは従姉だからさらに上だろうな。うーん、神人族(エルフ)は見た目じゃ年がわからん。


「アリスってさ、妹と雰囲気が似てるんだよね。なんか無性にかまいたくなるっていうか」


「へぇ。アスカ、妹がいたんだ?」


「うん。いつもお姉ちゃんお姉ちゃんって、可愛い子なんだよ」


「確か、姉もいるって言ってたよな?」


「うん、出来るお姉ちゃんでね。エルサみたいに綺麗で大人っぽくて…………って、あれ?」


 不意に言葉を詰まらせたアスカを覗き込むと、顔を強張らせて、唇をわなわなと震わせていた。


「ん?」


「アスカ?」


「…………え、なんで……思い出せ……」


 アスカの顔色がどんどん青褪めていく。両手で頭を抱え、唇の震えは全身に広がっている。 


「おい、どうした?」


 俺は思わずアスカの肩を掴んで、身体を揺らす。目を合わせるも、焦点が合わない。


「えっ……えっと、なんでも……ない。なんでも……ないの……」


「なんでもないはずがないだろ。顔色が真っ青だぞ?」


「アスカ、横になった方がいいのです」


「う、うん……」


 ついさっきまで朗らかに笑っていたのに、いったいどうしたんだ?


 アリスが促すと、アスカは素直に従ってベッドに横になった。アリスはベッドに腰かけ、心配そうにアスカの額や首に手を当て、背中をさする。


「熱、毒も無さそうなのです……。アスカ、どこか痛いところはあります?」


「う、うん。大丈夫。どこも、痛くないよ」


「念のために万能薬を飲んでおくのです。はい、アスカ」


 アリスは万能薬の小瓶を手渡し、甲斐甲斐しくアスカの世話を焼く。俺もとりあえず【治癒】をかけてみたけど、特に様子は変わらない。


「ごめん、アル、アリス。本当に、なんでもないの」


「なんでもなくはないだろ……気持ち悪くないか? 吐き気はないか?」


「うん、平気。ちょっと、混乱してて……先に、横になってるね」


「あ、ああ……」


 アスカはそう言うと、俺とアリスに背を向けて横になった。


「アルさん、アリスが様子を見ておくのです」


 アリスが俺の腕に触れて、微笑む。


「アルさんも、もう寝た方がいいみたいなのです。ひどい顔をしているのです」


 俺は今、アスカの急変に驚き、焦り、戸惑っている。ああ、そうだな。酷い顔をしているかもしれない。


「そうだな。すまないけど、アスカを頼む」


「了解なのです」


 ギルドが貸してくれた部屋は、男女で階が別れている。アリスとアスカは同じ二人部屋だが、俺は階下の二人部屋を一人で使っている。


「何かあったら、呼んでくれ」


 俺は悶々としながらも、そう言い残して部屋を出た。思った通り、その夜はほとんど寝付けなかった。




装備一覧


■アルフレッド


『火龍の聖剣』

 ランク:A

 火属性攻撃・竜種特攻・【炎嵐】(ファイヤーストーム)


『ガリシアの手甲』

 ランク:B

 地属性攻撃


『地竜の鱗鎧』

 ランク:B

 物理耐性・魔法耐性・地属性耐性


『混沌の円盾』

 ランク:B+

 物理耐性・魔法耐性・火属性耐性・光属性耐性・闇属性耐性


『風装の足輪』

 ランク:B

 敏捷性上昇(大)


『土装の腕輪』

 ランク:B

 防御力上昇(大)


『オニキスのペンダント』(アスカのお下がり)

 ランク:F 

 体力上昇(微)



■アスカ


『ジェイニーのローブ+火喰いのライナー』

 ランク:C

 火属性耐性


『ガーネットのブローチ』

 ランク:F

 攻撃力上昇(微)


『アメジストのブレスレット』

 ランク:F

 魔力上昇(微)


『大地の腕輪』

 ランク:A+

 防御力上昇(特大)


『水霊の耳飾り』

 ランク:A

 魔法防御力上昇(特大)


『陽光の首飾り』

 ランク:A+

 体力上昇(特大)



■アリス

『地龍の戦槌』

 ランク:A

 地属性攻撃・竜種特攻・【地震】(アースクエイク)


『竜革のジャケット』

 ランク:B

 物理耐性・魔法耐性・地属性耐性


『火装の腕輪』

 ランク:B

 攻撃力上昇(大)


『土装の首飾り』

 ランク:B

 防御力上昇(大)


『マラカイトのアンクレット』(アスカのお下がり)

 ランク:F

 敏捷性上昇(微)


『ピンクオパールの指輪』(アスカのお下がり)

 ランク:F

 魔法防御力上昇(微)


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