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騎士とJK  作者: ヨウ
第六章 驕慢たるアストゥリア
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第262話 尋問

「俺達を狙った理由を聞かせてもらおうか?」


 ガリシアの手甲をつけた両拳を胸の前でガンガンと打ち合わせ、イヴァンナに微笑みかける。イヴァンナは、その音にビクッと震えつつも、キッと睨みつけてきた。


「ふ、ふんっ! 私は第三位の爵位を持つ神人族(エルフ)なのよ! こんなことをしてタダで済むと思っているの!?」


「同行を拒否しただけで襲い掛かって来るような輩が何を言ってるんだ? 例え爵位を持っていようが俺達にとっては盗賊と変わりはしない」


「盗賊ですって!? 無礼な……取り消しなさい!」


 第三位の爵位ねぇ。やはり冒険者ギルドエウレカ支部のマスターだけあって、それなりの権力は持っているわけか。


 例え爵位を持っていたとしても、犯罪を犯したわけでも無い俺達を、強制的に拘束する権限なんてあるはずは無いと思うが……。


「はぁ……それで、どうして俺達を襲ったんだ?」


「この縄を解きなさい!」


「質問に答えろ。俺達を襲った理由は、地下墓所(カタコンベ)の存在を知っていたから。そうだな?」


「…………いいから縄を解きなさい!」


 ふむ。答えるつもりは無いか。


 イヴァンナは引き連れて来た冒険者達が全滅し、自分も拘束されているというのに頑なな態度を崩さない。拷問でもしないと答えてくれそうにないな。


「隷属の魔道具……いや、あれはダメか」


 カスケードで捕らえた奴隷商人の様に『隷属の魔道具』を着けることが出来れば、事情を聞き出すこともできるだろう。だがあれは相手を死の間際まで痛めつけるか、心が壊れるぐらいまで絶望させないと、装着することは出来ない。


 奴隷商人の時はサラディンさんの拷問で屈服させ、エースの時は何時間も延々と魔法攻撃と回復を繰り返して絶望させて装着した。あれを爵位を持ちのイヴァンナに? さすがにやり過ぎだ。


 今の俺達の扱いは『出来れば生かして拘束』という程度だと思うが、そこまでやると『生死不問』になってしまいそうだ。エウレカどころかアストゥリア帝国に近づくことすら出来なくなってしまう。


 うーん。だからと言って、このまま解放する? それもなぁ……。

 

 どうしたものかと迷っていると、思わぬところから声がかかった。


「ふっふっふ。尋問ならあたしにまかせてもらいましょうか」


 アスカがイヴァンナの前に立ち、不敵な笑みを浮かべる。


「え? アスカが、尋問を……? いや、イヴァンナに危害を加えるのは……」


「大丈夫! 手は出さないよ。手は、ね」


 アスカはニヤリと笑うと、肩から下げた『王家(ロイヤル)の魔法袋(マジックバッグ)』に手を伸ばした。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「あっつ、あっ、ああああぁぁぁぁんっ!」


「ほらほら、しゃべっちゃいなさーい?」


「いっ、いっいっ、ぁあん!! あぁっ、あぁっ、も、もう、全部っ、言ったってばぁっ、あっ、あんっ、あんっ、あああぁぁぁ!!」 


「うふふ、ここ? ココがいいのぉ?」


「おふぉっ、おふぉふぉぉぉぉぉっっ!!! ぜー、ぜー、はー、だからっ、ち地下墓所は、白天皇城(ホワイトパレス)の地下にっ、いいいぁぁっぁっ!!」


「……絶対、楽しんでるだろ、アスカ」


「生き生きしてるのです……」


 アスカが魔法袋、というかアイテムボックスから取り出したのは、2枚の羽だった。ずいぶん前に賞金首ハントで倒した『蛇鱗の怪鳥(コカトリス)の風切羽』だ。


 アスカはその羽を使ってイヴァンナを執拗にくすぐり続けているのだ。


 上着と靴を脱がされ腋や首、足裏などを攻められるイヴァンナ。神人族らしい整った容姿はもう見る影も無い。絶叫しながら悶え続け、振り乱した髪は鳥の巣のようにぐちゃぐちゃになり、全身から汗を吹きだし、眉目秀麗な顔立ちはヨダレと泥にまみれてしまっている。


「ほら、アル! 続けて!」


「あ、ああ……。【影縫】」


 ビクンっと身体を震わせ、イヴァンナの四肢が硬直する。


 イヴァンナはなんと俺よりもレベルが高かった。そして、彼女は俺達に敵意と殺意を向けた『敵』だ。『識者の片眼鏡』でそれを確認したアスカは、俺の加護を【暗殺者】に変えて【影縫】の熟練度稼ぎを命じた。


 魔力回復薬を飲みながらスキルを乱発していると、だんだんと硬直の効果時間が長くなり、消費魔力が少なくなってきたのがわかる。こんなことでスキルの熟練度が上がっていいのだろうか……。人に加護を授けて下さったという神龍ルクスに土下座したい気分だ。


「……【影縫】」


 望み通りに縄は解いてやったが、【影縫】で体の自由を奪われたイヴァンナは指先一つ動かせない。アスカは硬直したイヴァンナの腕を持ち上げ、腋に『蛇鱗の怪鳥の風切羽』を這わせる。


「うひっ、ひっ、うひゃひゃひゃひゃぁっ!! や、やめっ、おねがいっ、許してぇっ!」


「うふふふ。エルフの綺麗な顔が快楽に歪む……。これが、オークの気持ちなのね! ほらほらほらぁ、くっ殺せって言ってみなさいよ! ほらほらぁ」


 うん。俺に【影縫】を使わせたのはスキルの習熟のためだけじゃないな。完全に、アスカの趣味だろコレ。


「や、あっ、やめてっ! もうやめてぇっ!! ういひひひひぇぁぁぁっつ!!!」


「……【影縫】」


「うふふっ、喋っちゃいなさいよ。ほらぁ」


「だからっ、もうっ、喋ったえあぁぁぁんっ、あっ、あっ、あへへへへゃはひゃははは!!!」


 イヴァンナは既に陥落している。笑い悶えながら、だいたいのことは喋ってくれた。


 彼女が言うには、地下墓所の存在は一般の神人族にすら秘匿されているそうだ。その存在を知っているのは支配層である神族(ハイエルフ)と一部の爵位持ちの神人族に限られている。


 冒険者ギルド職員もごく一部しか、その存在を知らない。数か月前に神族議会から地下墓所で発生した不死者の討伐依頼があり、俺が地下墓所のことを聞いた受付はその依頼の担当だったらしい。偶然にも俺が話をした受付が、極秘事項を知っていたとは俺もつくづく運が無い。


 その討伐依頼は極少数の高位冒険者達によって片付けられたそうだ。その者達は、多額の報酬を得る代わりに、秘密厳守の誓約を強制されたらしい。


 俺達が狙われた理由は、外部に漏れるはずの無い、地下墓所の存在と不死者の発生を知っていたからだ。ギルドとしては、その情報の出所を探る必要があり、俺達を拘束し尋問したかったそうだ。


 肝心の地下墓所の存在を秘匿している理由についてはイヴァンナは知らないそうだ。『いや、知っているに違いない!』とアスカは執拗にくすぐり続けているが、ここまでされて喋らないのだから本当に知らないと思う。


「あっ、あっ、あああぁぁぁぁぁっっっっ!!」


「うふふふ。澄ました顔して、こんなところが弱いんだぁ?」


「もっ、もっ、もぉやめてえぇぇっ、えひゃひゃひゃひゃははははは!!」


「……【影縫】」


 アスカのくすぐりは続く。おそらくは俺が【影縫】を修得するまで。


 ……すまんな、イヴァンナ。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 ドドドッ、ドドドッ、ドドドッ!!


 唐突に馬の蹄が大地を踏み鳴らす音が、遠くから聞こえて来た。その轟音は街道を逸れて、一直線にここへと向かって来ている。


「アルさんっ! 騎士が近づいてきているのです!!」


「くっ、数が多いっ!」


 しまった、油断し過ぎた! まさかイヴァンナが後詰めを用意していたとは思わなかった。


 しかも今度は、整然と駆ける全身鎧に身を包んだ完全装備の騎士達だ。先ほど相手をした冒険者達とはわけが違う。


 俺達はあっという間に取り囲まれ、馬上槍を向けられた。


「イヴァンナ様っ!? 貴様ら、武器を捨てろっ!!」


 俺達を取り囲む騎士達の円から、二人の騎士が歩み寄って来た。


 俺達の足元には昏倒する神人族のお供二人が転がっている。そして、ようやくアスカのくすぐりから解放され、地に倒れ伏し肩で喘ぐ爵位持ちの神人族イヴァンナも。


 イヴァンナはアスカに上着を脱がされて、コルセットにキュロットパンツだけを身に着け、裸の手足を投げ出している。土埃にまみれ、涎を垂らし……見ように依っては乱暴を働かれたようにも……。


 あぁ……こりゃぁ抗弁のしようが無い。まいったな……。





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