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騎士とJK  作者: ヨウ
第五章 蒼穹の大地ガリシア
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第248話 ランクアップ

 フリーデの告発から数日が経ち、俺たちはガリシアの館に呼び出されていた。今日は俺とエドマンドさんに加え、アスカも一緒に来ている。ガリシア側は、ジオット族長と参謀のロレンツ、イレーネにアリスの4人だ。


「フリーデ様は修道院入りですか」


「ああ。命を狙われた其方らからすれば納得がいかぬだろうが……」


 貴族や豪族の女性が修道院入りすることは、よくあることだ。


 その目的は様々。神龍の教えを学ぶため。読書算術などの習得。婚姻前の作法修養。そして……世俗権力から追放。


「いえ……私達が口をはさむことではありませんから」


 ガリシア氏族の後継者候補であるアリスの殺害未遂。


 本来なら厳罰だろうが、相手は先代族長の実の姉。王国で言えば王姉に当たる貴人を、死刑や犯罪奴隷刑に処すわけにもいかない。かと言って無罪放免というわけにもいかない。


 幸いにもアリスは無事だったため、氏族からの追放という処分に落ち着いたのだろう。


「アルフレッド様、本当にご迷惑をおかけしました」


 イレーネが深々と頭を下げ、ロレンツがそれに続く。


「迷惑料も貰ったから、俺達のことはいいさ」


 今回の迷惑料として、フリーデが荒野の旅団に支払っていた前金をそのまま受け取ることになった。金額にして300万リヒト、白金貨3枚という大金だ。


 この迷惑料は俺とアスカ、孤児院組で分けることになっている。セントルイス王国の使者としてガリシアに来ているエドマンドさん達には、さらに多額の賠償金が支払われることになるそうだ。


「それで、ゼノは無罪放免ということで宜しいので?」


「フリーデが、アリスは反逆者であると偽って依頼したのだからな……。そのうえで国外への亡命を勧めて、アリスを救おうとしていたということであれば罪には問えまい」


 救おうとしていたってより、俺やアスカ、アリスという手駒を手に入れたかっただけだと思うけど。それにアリスが反逆者じゃないなんて百も承知で依頼を受けたんだろうし……。まあ、いいけど。


「……わかりました。ではゼノを解放して、即刻自治領から立ち去らせます」


「アルフレッド殿、くれぐれもこの件を吹聴しないようにと念押しください」


「了解した。だが、おそらく問題は無いだろう。旅団としても少人数の俺達に良いようにされたなんて、話したくないだろうからな」


 ま、ゼノには大きな貸しを作ったってことにしとくか。俺達は一方的に迷惑をかけられただけだからな。エドマンドさんを救ってくれたことだけは感謝しているが、それだけで負債を返せたと思うなよ?


「それにしても……龍の従者か」


 不意にジオット族長が疲れ果てたような声で呟く。


「ええ。【武具鑑定】のスキルをお持ちの閣下には、アレの銘が見えていらっしゃるのでしょう?」


「ああ。そうだな、見えるとも。聖武具『地龍の戦槌(ラピス・ハンマー)』とな」


 一同が金糸雀色に輝くアリスが持つ戦槌へと目を向ける。


 それは、アリスが地龍ラピス様の祝福を受けた証。そして『地龍の従者』となった証だ。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「そうか、もう発つのか」


「ああ。レリダに来た目的は達したからな」


「明日には出発するつもりだよー」


 冒険者ギルドのレリダ支部のマスタールームで、パウラに旅立ちの報告をする。日干し煉瓦で建てられ、一面の土間床に木箱や樽をテーブルセット代わりに使っていた難民キャンプの冒険者ギルド特設支部ではない。パウラは奪還作戦の功績が認められ、正式にレリダの冒険者ギルド支部のギルドマスターに就任したのだ。


「あんた達には本当に世話になったね。大量の地竜肉の納品に、王都からの支援物資の搬送、奪還作戦での活躍、最後に魔人族の討伐と集団暴走の解決……。アンタ達はまさしくレリダの、いや土人族(ドワーフ)の恩人だよ。本当にありがとう」


「んふふ。どういたしましてー!」


「そう言われてみると、色々やったな……」


 ガリシア自治区に来てざっと2か月。地竜の洞窟でダミー達を鍛えたり、ランメル鉱山でアリスと出会ったり、転移陣で王都に行ったり、エドマンドさん達と共闘することになったり、荒野の旅団に絡まれたり……思い返してみると、面倒ごとにばかり巻き込まれた気がするな。


「それでだ。一連の功績を評価して、アルフレッド、あんたにコレを渡すことにしたよ」


 そう言ってパウラはサイドテーブルから宝石トレイを取り出して、俺達の前に置いた。トレイには白銀(ミスリル)のプレートがのっている。


「これは?」


「手に取って、よく見てみな」


 促されて楕円形のプレートを手に取る。そのプレートの先端に小さな穴が開いていて、数字と文字が刻印されていた。


「これは……俺の名前? 冒険者タグか」


「ああ。Aランク冒険者の証さ」


「Aランク!?」


 おいおい。俺はCランク冒険者だぞ? 評価してくれるにしても、飛び級なんてあるのか?


「当然の評価だろ? 魔石の納品は全くしてくれなかったけど、あんた達のパーティは合計で百体におよぶBランク魔物の地竜肉を納品したんだ。その時点でBランクは確定してる。その上、国家規模の作戦で主力級の活躍をして、さらにガリシア氏族の指名依頼を成し遂げた。Aランク魔物の金竜の討伐実績もある。Aランクに昇格するのも当然だろ?」


「そういうもんなのか? 冒険者ギルドの評価方法が良くわからないから何とも言えないが……」


 冒険者ランクは、そのランクの魔石の納品数で決まるとしか聞いたことが無い。俺達は魔石を全く納品していないから、ランクが上がるのは不自然な気がするんだけどな。


「本来ならBランクの魔石を全く納品していないアルフレッドが昇格することは無いんだけど、難民キャンプでは魔石よりも食料調達を優先してたからね。依頼達成数でBランクへの昇格は確定してたってわけさ」


 なるほどね。そう考えると運が良かったのかもしれない。魔石はアスカの調剤の材料やエースの食糧にもなるから、俺達はギルドに納品することがほとんど無い。ランクを上げるには、賞金首ハントでコツコツ上げていくしか無かったからな。


「Aランクにも魔石を一定数納品すれば上げられるんだが、Aランクの魔物なんてそうそう現れるもんでもないだろ? 高難度の賞金首ハントやお偉方からの指名依頼の達成数なんかで昇格を決めてるのさ。今回は、ガリシア氏族からの高難度指名依頼をいくつも達成しただろ? しかもジオット族長からの直々の推薦もあったからね。Aランク昇格を決定したってわけさ」


 ガリシア氏族の指名依頼? ああ、食料調達にレリダ奪還作戦、集団暴走の原因調査及び排除、魔人族の討伐……。言われてみれば全部ガリシア氏族がらみの依頼だったな。


「そうか。そういうことなら、ありがたく受け取っておくよ」


「やったねー、アル」


 もらってはおくけど、さほど利点は無いんだよな。


 ランクが上がるとギルドの提携店での割引率が高くなるとは言うが、王都で大金を手に入れてから金には困っていないから、さほど利点とも思わない。

 

 あとはランクが上がると、王侯貴族の覚えがめでたくなるってのもあるが、そもそもそんなのは求めてない。権力との繋がりが必要な場合も、『王家の紋章』で十分に事足りるてるしな……。


 まあ、せっかく厚意でランクを上げてくれたのだし、口には出さないけど。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 これは後日談だが、百体以上の地竜肉の納品によってAランクへと昇格した俺の名前は、難民たちを救った冒険者としてだけでなく、別の理由でも広く知られるようになる。


 それは『鉱山都市レリダに空前の妊娠&出産ラッシュをもたらした男』だ。この長すぎる二つ名だけを聞くと、『鉱山都市レリダに種をバラ撒いた男』なんて誤解されてしまいそうだが、もちろん違う。断固否定させてもらう。


 俺達が納品した地竜肉はガリシア氏族と冒険者ギルドによって、難民達に平等に配給された。合計で150トン以上の地竜肉を納品したわけだから、10万人の難民一人当たり1.5キロもの肉が配られたわけだ。


 そして、地竜肉を食べると、まぁ、あれだ、非常に滾ってしまうのだ。10万人の難民達が一斉に滾ってしまったのだ。


 普段ならBランクの魔物である地竜の肉が、大量に出回る事なんて無い。高級食材だから市井の人々の口に入ることも、そうそう無いだろう。そんな食材を食べた難民達が一斉に盛った結果……空前の妊娠&出産ラッシュがレリダに訪れたわけだ。


 その時の子供達は『難民ベビー』とか『竜の子ら』なんて呼ばれているそうだ。念のために言っておくが、『()の子』だからな? 『龍の従者(・・・・)の子』じゃ無いからな?


 それにしても……『処女信仰者』に続いて、『妊娠&出産ラッシュをもたらした男』なんて酷い二つ名を付けられるとは……。神龍ルクス様は俺に恨みでもあるのだろうか……。




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[気になる点] 竜の子ネタはニヤッとしましたけど二か月でわかるものなのかどうかが気になりました シルキィアスキィのときみたいに後日談じゃないかなーと
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