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騎士とJK  作者: ヨウ
第五章 蒼穹の大地ガリシア
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第224話 作戦会議後

「おい、待て」


 会議が終わってガリシア族のゲルを出たところで、横からロレンツに呼びかけられた。面倒くさかったので無視して通り過ぎようとしたのだが、前に回り込まれてしまう。


「待てと言っているだろう!」


「……はぁ。何か用か?」


 最初に冒険者ギルドで会った第一印象から最悪なんだよなぁ、コイツ。パウラ、メルヒとクラーラ、アリスにイレーネ……と、レリダに来てから出会った土人族(ドワーフ)のほとんどは感じが良かったんだが、コイツだけはなぁ……。


「ふん……用があるのは私ではない」


 そう言うとロレンツは隣に立っていた老人を顎で指す。白髪の年配の土人族……ああ、アリスを冒険者ギルドに連れて行った時に会った人か。確か、アリスに爺やとか呼ばれていたな。


「ア、アルフレッド様! アリス様、アリス様がどこにいらっしゃるかご存知ありませんか!?」


 取り乱した様子で爺やが問いかけて来た。そう言えばアリスは氏族の人達に黙って出て来たんだよな。たぶんこの人はアリスの世話役だったんだろうから、心配もしているのだろう。


「アリス? どこにいるかわからないのか?」


 でも、ごめん。素直に話したらアリスを連れ戻しちゃうだろ? あの子はガリシアのために戦う事を選んだんだ。俺はその意思を尊重したいんだ。


「は、はい……。昨日の朝から行方不明で……ランメル鉱山を当たってみたのですが見つからず、途方に暮れておったのです……」


 逆に聞き返すことで、何も知らないと思ってくれたようだ。


 いつものように、嘘はついてない。真実を話していないだけだ。


 しかし、ロクでもないな、俺も。アスカのスキルや俺の加護を誤魔化すために、息を吐く様に嘘をつくスキルが身についてしまったようだ……。あ、いや、嘘ハツイテ無インダ。


「もし、アリス様を見かけましたらガリシア氏族の者にお知らせください。謝礼は惜しみません!」

 

「え、ええ。わかりました」


 なんか……こう必死だと罪悪感がわいてくるな……。これは何が何でもアリスを五体満足でガリシア氏族に返さないとな。


 アリスは立場が立場だから、万が一のことがあったら大問題になってしまいそうだし。まあ、アリスの力量があれば、心配する必要も無い気がするけど。


「そう言えば、貴様は明日の作戦に参加するのだったな。せいぜい、我ら土人族(ドワーフ)の戦士達の足を引っ張らんようにな」


 ロレンツが小馬鹿にしたような態度で言った。なんでまたコイツはこう挑発的な物言いをするのかね……。

 

「ロレンツ! ガリシアの恩人に対して、なんと失礼な態度を! も、申し訳ございません!」


 爺やが慌てて頭を下げる。


 まあ俺は他国の冒険者としてここにいるわけだから、ガリシアの要人であるロレンツに、こんな態度を取られても仕方が無いのかもしれないけど……。


「ふん……何が恩人だ。依頼した分だけ食糧を仕入れて来ればよかったというのに、セントルイス王家の追加支援を取り付けるという余計な真似をしてくれたのだ。コイツのせいで、体よく恩を押し付けられてしまったではないか」


「ロレンツ!」


 ロレンツの歯に衣着せぬ発言に、爺やが慌てて諫める。

 

 確かに王家はガリシアに貸しを作ったわけだから、気持ちはわからなくも無いが……。実際に食糧が足りていなかったのは事実だし、そもそも、それは政治の話だろう? そんなのは王家に直接言ってくれ。


「……用は済んだか?」


 俺はロレンツを一睨みしてから、そう言い放ち、踵を返した。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「おーい、魔人殺し、ちょっと待ってくれ」


 さっさとアスカのもとに向かおうと歩き出したところで、再び声を掛けられる。今度は、傭兵団『荒野の旅団』(ヴァルド・イェーガー)の団長のゼノだ。


「物騒な二つ名で呼ばないでくれ」


「あん? 二つ名は戦士の勲章だろうが。なあ、魔人殺し(ダークエルフ・キラー)の『龍の従者(サーヴァント)』アルフレッド・ウェイクリング」


「……ずいぶんと、物知りみたいだな」


「そうでも無いさ。お前は有名人だからな。王都クレイトンであれだけ暴れまわったんだ。俺らの界隈じゃ知らないほうが珍しいさ」


 む……言われてみれば、それはそうかも。王都では五英雄とか言われて、名が売れてしまったしな……。


 それにしても、傭兵団の団長か。肩の力が抜けていて、なんだか飄々とした雰囲気の持ち主だ。荒事を生業にするような連中を率いているとは思えない。


「別に好きで暴れたわけじゃ無いしな。面倒ごとはなるべく避けたいから、そんな物騒な二つ名なんて付けて欲しくないんだが……」


 そう言うと、ゼノは呆気にとられたような表情をした後に、玩具をもらった子供の様な笑顔を浮かべた。


「ははっ、諦めろ。お前はどうせ魔人族に付け狙われる運命なんだ。どうせなら勇ましい名があった方が何かと便利だろうが」


 ……魔人族に付け狙われる? なんだよ、その不吉な運命は。


「魔人族を屠った戦士は、必ず魔人族に殺されてるからな。あいつらは蛇みたいにしつこく襲って来る。残念ながら、お前の未来はお先真っ暗だよ」


 ええぇ……。なんだよそれ。必ず、殺されてる? そりゃあ、あいつらの仲間の一人を殺したわけだから、報復されるのも当然だろうけど……。


 ま、まあ、俺の目的はアスカと共に旅をして、魔人族との戦いに勝利することだしな。付け狙われるっていうなら、そ、それも好都合じゃないか。ははっ……。


「おいおい、五英雄なんて呼ばれてるヤツが、びびんなよ」


「びびってねぇよ。それで、なんの用だよ?」


「おお、そうだった。そんなビビリなアルフレッドに提案だ。お前さ、ウチに入らねえか? 幹部待遇で歓迎するぜ」


「荒野の旅団に?」


 なんだ、傭兵団へのスカウトか。エドマンドさんに聞いた話じゃ、荒野の旅団は二大傭兵団に数えられるほどの実力を誇るらしいから、光栄なことなのかもしれないな。でも……


「俺は魔人族に狙われる運命を背負ってるんだろ? そんなヤツを引き入れたら巻き込まれるかもしれないぞ?」


 俺だったらそんなヤツは仲間にしないけどな。爆弾を抱え込むようなものじゃないか。


「次の仕事で、レグラム王国に行くんだけどな。ちょっとばかし、きな臭くてよ。戦力を増やしたいところなんだよ」


「レグラム? ああ、北の小国家群の一つだったか?」


 確かユーゴーの祖国だったよな。次の目的地のマナ・シルヴィアと国境を挟んだ国だったはず。


「ああ。マナ・シルヴィア周辺で一悶着ありそうなんだが……魔人族が関わってるんじゃないかってウワサがあってな。魔人殺しに慣れたヤツをスカウトしておきたくてよ」


「殺し慣れてなんかねえよ」


 しかし……獣人族の里、マナ・シルヴィアに魔人族か……。もうちょっと詳しく聞いておくか。


「それで、魔人族の噂って?」


「これ以上は仲間でも無いヤツにペラペラと話す内容じゃねえなー。ウチに来るってんなら教えてやってもいいが」


「……考えておくよ」


 傭兵団に入って戦争に加わるなんて真っ平御免だが、魔人族に狙われてるってんなら、確かな戦力がある傭兵団とは縁があった方が良いかも知れない……。もしかしたらアスカが何か知ってるかもしれないから、とりあえず回答は先送りだ。


「ふっ……俺達を利用する気満々って面だな。ま、確かにお前の考えてる通り、俺達と一緒にいれば、魔人族から護ってやれるかもしれないぜ?」


 おっと顔に出てたか? 


 アスカとたった二人で旅をしてるわけだしな。安全のためなら、利用できるものは利用しておきたいとろだ。それに利用したいのはお互い様だろ?


「アンタらも俺を利用したいんだろ? 魔人を殺すなら『魔人殺し』にやらせよう。そうすれば、魔人族に狙われるのは、傭兵団ではなく『魔人殺し』になる」


 魔人族に関わると傭兵団が付け狙われるかもしれないから、元から狙われてる俺に魔人を殺させて、魔人族の標的になってもらう。


「要するに、身代わり(スケープゴート)をやらせたいんだろ?」


「ははっ。話が早い奴は嫌いじゃないぜ?」


 そういってゼノはニヤリと笑った。




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