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騎士とJK  作者: ヨウ
第四章 絢爛の王都クレイトン
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第181話 決勝2

「その力、堅さ、速さ……いったい、いつの間に強化魔法を? 魔道具か?」


 うん……?


 ああ、そうか。俺の事を魔法使いだと思ってるんだったな。いつ間に身体強化魔法の火装(ブレイブ)土装(プロテクト)風装(クイック)で強化したのかってことか。【瞬身】は使ったけど、他は素のステータスなんだけど……。


「冒険者の秘密ってやつだ」


「ま、そりゃそうか」


 ルトガーは口角を僅かに上げ、【烈功】(アグレッサー)をかけなおした。それを見て俺も即座に【不撓】(ディフェンダー)を発動。


 さっきは【瞬身】を発動した上での連撃を見極められてしまったのだ。今度は守りを固めてカウンターを狙う。


「じゃ、こっちも冒険者の秘密ってのを見せてやろうかね」


 そう言ってルトガーが波打つ剣身の重剣(ツヴァイヘンダー)を構える。赤銅色の目がギラっと光ったかと思うと、重剣に魔力が集まっていき、うっすらと光を放つ。


「さって……行くぜ!」


 先ほどと同様、鋭い踏み込みで肉薄するルトガー。やはり回避する暇は与えてもらえない。俺は円盾を掲げ、身を固める。


「ぐっ……!」


 先ほどよりも、さらに剣が重い!


 思わずたたらを踏んだ俺に、二の剣が迫る。俺は咄嗟に【鉄壁】(ウォール)を発動して受け止める。それでも威力に押し込まれ、体勢が崩れる。


 くそっ……! 【不撓】を発動してるってのに!


 ルトガーはまるで木の枝を振り回しているかのように軽々と重剣を振るう。片手剣じゃあ、弾いたり、いなしたり出来る気がしない。俺は【鉄壁】を乱発し、重剣を受け止める。


 さっきの【盾撃】(シールドバッシュ)での反撃を警戒しているのか、ルトガーは重さより速さを、威力よりも手数を増やすことを優先して重剣を振っているように見える。それなのに剣撃の重さは落ちるどころか、むしろ増している。


 とてもじゃないが反撃に転じる隙が無い。それどころか【鉄壁】でも受け止めきれず、重剣を押し込まれた手足が刻まれていく。盾を支える腕も段々と痺れてきた。


「おっらぁぁぁぁ--!!」 


 ルトガーの振るう重剣の輝きがさらに増す。横なぎに振られた重剣をなんとか円盾で受け止め、その勢いを利用して俺は大きく飛び退く。


 ルトガーの方もちょうど【烈功】が切れたのか深追いはして来ない。重剣の魔力光もふっと消えた。


「はあっ、はあっ……なんなんだよその剣……。魔剣か?」


 ただでさえ重いルトガーの剣が、魔力光を纏ってからさらに威力を増した。おそらく俺の騎士剣のように何らかの付加効果のある剣だろう。


「いいや? こいつは騎士スキルの【魔力撃】(スラッシュ)だ」


「……魔力撃?」


 武器に魔力を込めて、威力と鋭さを増した斬撃を振るうスキル。確かに重剣に魔力が集まってはいたが……魔力撃は斬撃に魔力を乗せるスキルで、あんな風に剣身に魔力を留めるスキルじゃないはずだ。


「技を鍛えりゃ、こんなことも出来んのさ。便利だぜ? 魔力を込めた剣は、受ける時には衝撃を和らげ、攻めにまわりゃあ斬撃の威力が増す。魔力を剣に留めりゃいいから燃費もいいしな。発動中は他のスキルが使えなくなっちまうが、俺はどうせこのスキル以外はほとんど使わねえから問題ないしな」


 なるほど……剣に魔力を留めるね……面白い事が聞けたな。どれ……


 【魔力撃】を発動して紅の騎士剣(レーヴァティン)に魔力を注ぐ。斬撃に魔力を乗せるのではなく、剣身に魔力を留めるイメージ……こんな感じか?


 紅の騎士剣が、うっすらと紅い光を放つ。留める魔力を少し増やすと、剣身が陽炎の様にゆらめき、紅い魔力光は火焔へと変わっていく。元が俺の魔力だからか、熱さは感じない。


「まっ、魔力撃!? どういうことだ!?」


 ルトガーは魔力撃だけ修得に至っていた。俺も同じく修得している。


 ルトガーに出来て俺が出来ないはずが無い。こんなにあっさり成功するとは思ってなかったけど。


「ああ、これ、聖剣なんだよ」


 俺は、さらっと嘘を付く。


「そっ、そういうことか……そりゃそうだ、魔法使いに魔力撃が使えるはずが……それに苦心を重ねて辿り着いた境地にそんな一瞬でたどり着けるわけ……しかしあんな聖剣が……魔力撃が付与された聖剣……?」


 ルトガーがぶつぶつと呟いた。俺の方は修得にそこまで苦心なんてしてないから、なんだか申し訳ない気分になる。加護の事を話すつもりもないから、何も言わないけど。


「さあ、仕切りなおそうか」


「ふんっ……言うじゃねえか。だが、そうだな。準備運動は終いだ。ここからは、どちらかが負けを認めるか、意識を失くすまで止まらんぞ。覚悟しな」


「ああ」


 再び互いに強化スキルをかけなおす。俺は【不撓】、ルトガーは【烈功】。


「行くぞっ!」


「来いっ!!」


 ルトガーが一瞬で間合いを詰め、うっすらと輝きを放つ重剣を振り下ろす。俺は火食いの円盾をかち上げて、重剣を弾いた。


 跳ね上がった重剣に、ルトガーの目が大きく見開く。その一瞬の隙に、カウンターで突き出した騎士剣が、ルトガーの頬に浅い傷を刻んだ。


「ちっ!」


 ついさっきまでは防戦一方で、受け止めることで精いっぱいだった俺が、急に易々と剣を弾いたのだ。驚くのも無理はない。


 だが、そこは流石のルトガー。一瞬で立て直し、怒涛の連撃を繰り出してきた。


 俺は焦ることなく、うっすらと紅い輝きを放つ円盾で重剣を弾き、いなしていく。そして隙を見つけては、騎士剣を突き出して手傷を負わせていく。


 さっきまでは【鉄壁】でルトガーの重剣を正面から受け止めていた。【鉄壁】は、魔力で盾を作り出すスキル。どっしりと大地を踏みしめて身構え、盾を中心に魔力障壁を展開し、敵の攻撃を受け止める。


 その障壁は魔人族の放つ【爆炎】や、巨体を誇る魔物の突貫すら受け止められるほど堅牢だ。だが地面を踏みしめ、身体を固めて発動するために、動作の俊敏さはどうしても捨てざるを得ない。そのため、上下左右から縦横無尽に襲い掛かるルトガーの連撃についていけず、重剣を押し込まれたのだ。


 だからといって【鉄壁】でもなければルトガーの重剣を捌くことは出来ない。あんな剣撃をまともに受けたら、盾が破壊されるか、盾ごと吹き飛ばされるかのどっちかだ。


 なら、どうすればいいか?


 【鉄壁】を発動しつつ、柔軟に、かつ俊敏に動ければいい。その閃きを与えてくれたのは、さきほどのルトガーの助言(・・)だ。


 【魔力撃】での魔力を剣に留める。そんな発想は俺には無かった。本来は『護り』に特化した騎士の加護を持ちながら、『護り』のスキルを放り投げ、『攻め』のスキルを磨き上げることだけに注力したルトガーだからこそ、その発想が出来たのだろう。


 もしルトガーが『護り』に特化した騎士だったなら?

 『護り』のスキルを磨き上げ修得に至ったとしたら?

 剣ではなく盾で同じ発想に至ったのではないか?


 そう、俺は修得に至った【鉄壁】スキルを発動し、その魔力を火喰いの円盾に留めたのだ。


 魔力を注ぎ込んだ盾は、遥かに強度が増し、衝撃を吸収・反発する効果も向上する。さらに、魔力障壁が展開しない代わりに、使い慣れた盾そのままの機動を実現することが出来る。通常の【鉄壁】と異なり魔力障壁が発生しないから、広範囲に効果を及ぼす魔法や巨体の攻撃、多数の敵からの攻撃などを防ぐことは難しくなるだろう。


 だが、一対一の近接戦闘にはかなり相性がいい。なんたって『堅さ』を維持しながら動き回れるのだから。さらに……


【盾撃】(シールドバッシュ)!)


「ぐっぉっっ!!」


 俺は鉄壁を解除し、直後に盾撃に繋げる。剣士職の定石連携技だ。


 本来なら魔力障壁を発生させる魔力を、火喰いの円盾に一極集中させた【鉄壁】。盾に留めた魔力を、そのまま真っ直ぐに【盾撃】で打ちつける。


 『ズトンッ!』と異様な衝撃音を響かせた盾の一撃は、俺よりも一回り大きいルトガーの体躯を軽々と跳ね飛ばした。

 



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