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騎士とJK  作者: ヨウ
第四章 絢爛の王都クレイトン
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第171話 エルサ

 次のエルサの試合を観ようと急いで観客席にいるアスカのもとに向かったら、観客達からの注目を一身に浴びた。決闘を終えたばかりという事もあり、観客席のそこかしこから俺の名前が聞こえてくる。


「おっ! アルフレッドだ!」

「凄かったよな。ミラベルの矢を余裕で捌いてたし」

「あいつ、魔術師なんだろ? 剣士じゃねえの?」

「Cランク戦じゃ拳闘士と殴り合ってたぜ」

「もう泥仕合とは呼べねえな。魔法剣士? 脳筋魔法使い?」

「あはははっ! 脳筋! いいね、それ!!」


 二つ名はぜひ魔法剣士でお願いしたい。観客達が好意的になってくれているのは素直に嬉しいんだけど……でも脳筋は無いわ。


「アルー! こっちこっち!」


「ありがとう、アスカ。よう、ボビー」


「おう。準決勝進出、おめでとさん」


 今日も今日とて、アスカとボビーは決闘ベッティングに勤しんでいるようだ。というかボビーは闘技場に入り浸りすぎじゃないか? こんなんで商会の経営は大丈夫なんだろうか。


「完全勝利だったな。ミラベルは手も足も出てなかったじゃないか」


「そうでもないよ。手ごわい相手だった」


 ミラベルの手数と緩急をつけた射撃にはずいぶん翻弄された。一月前ならかなり苦戦してただろうな……。


「そうは見えなかったけどな? あっさり追い詰めてたじゃねえか」


「それは……

「セシリーパパのおかげ、だね」


 俺の言葉を遮ってアスカが言った。ああ、その通りだな。俺は冒険者ギルドの修練所で模擬戦をしていた時の、拳聖ヘンリーの戦い方を真似てみたのだ。


 やった事は実にシンプル。遠距離(自分の間合い)を保とうとするミラベルが逃げる方向に、喧嘩屋のスキル【威圧】を放つだけ。


 威圧は自分よりもレベルの低い相手の身を竦ませるスキルだから、俺よりも遥かにレベルが高いミラベルには何の効果も与えられない。


 しかし、効果は無くともスキルで強化された殺気を向けられると、本能的に威圧の射線から逃れようとはしてしまう。危機感知能力が高い戦士ならなおさらだ。


 闘技場を広く使って円を描くように俺の周りを駆け回ろうとしたミラベルの行く先々に、俺は【威圧】で殺気をばら撒く。ミラベルはどうしても避けようとしてしまう。


 その上で、逃げ道を塞ぐように魔法を放ったり、突撃の挙動を見せたりすれば、逃げ道を失ったミラベルは自然と後方に下がっていく。遂には壁を背負い、接近を許してしまった。


 修練所の壁際に追い詰められて、何度も何度もタコ殴りにされたおかげで、ヘンリーさんの間合いの詰め方を盗めた。ミラベルには悪いが、今日はその実験台になってもらったというわけだ。


「ギルドの修練場でいいように殴られたからな。参考になったよ」


「うんうん。パパはフィールドの使い方うまかったもんねー」


 ヘンリーさんは限られた修練場の広さだからこそ、簡単に俺との距離を詰められたと言っていた。さすがにヘンリーさんと言えども、何倍も広い闘技場の舞台で足の速い俺を捕まえるのは容易ではないだろう。


 逆に、ミラベルの移動速度(AGL)は俺よりも遅い。例え舞台(フィールド)が広くとも、ミラベルの逃げ場を奪うように追い込むのはさほど難しくはなかった。


「修練所の訓練はかなり身になったよ。近づいてさえしまえば弓使いなんてどうとでもなるからな」


 加護の強化と冒険者ギルドでの訓練。俺は王都に来てから、ずいぶんと強くなれたことを実感していた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 闘技場の舞台を舞うエルサ。対戦相手の槍使いは一度として触れる事も出来ず、なすすべもなく崩れ落ちた。予想通り、次の準決勝での対戦相手はエルサに決まりだ。


「次の相手は舞姫エルサか。さすがのアルでも優勝候補(エルサ)相手じゃ苦戦は必至だぞ」


「ん……そうだな」


  【風装】(クイック)AGL(速さ)を底上げし、相手の攻撃を躱しながら詠唱の短い黒魔法を的確に当てていく。それがエルサの戦い方だ。


 元々の身体能力、特にAGLが魔法使い職としてはとても高いのだろう。敵の攻撃を見極める勘も鋭い。


「大丈夫だよー。アルなら楽勝だって!」


「へえ、言うじゃないか……って前もこんな話をしたな。その時は田舎者が大口を叩いてるだけだと思ってたが、今ならそれも大言壮語じゃないと思えるな」


 アスカの言葉にボビーがうんうんと頷く。まあ、俺だって負けるつもりはさらさら無い。王都に着いたばかりの時だって、苦戦はするとしてもなんとか勝てると思っていた相手なんだ。


「アル、見て」


 アスカが小声でつぶやき、メニューウィンドウを浮かべた。俺はボビーに不自然に思われないように覗き込む。




--------------------------------------------


エルサ・アストゥリア


■ステータス

Lv : 28

JOB: 魔道士Lv.1

VIT: 177

STR: 69

INT: 791

DEF: 247

MND: 650

AGL: 260


■スキル

初級細剣術Lv.5・馬術Lv.4

火球・氷礫・風衝・岩弾

風装


火装Lv.1・爆炎Lv.8・火槍Lv.1・火柱Lv.1

水装Lv.1・氷矢Lv.1・氷槍Lv.1・瀑布Lv.1

風刃Lv.5・突風Lv.1・紫電Lv.1

土装Lv.1・岩槌Lv.1・岩槍Lv.1・岩壁Lv.1


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「これはまた……スキルレベルがえらく偏ってるな」


「ね。でもエルサの戦い方にはぴったり」


 言われてみれば確かに。自身のAGLを高めて、つかず離れずの距離から低位の黒魔法を乱発。相手の体力を削り、隙を見て強力な魔法を撃ちこむ。それがエルサの必勝法だ。


 あれだけの高速詠唱をしていたのだから予想はしていたが、レベル1の黒魔法は全て修得に至っている。だがレベル2以降の熟練度はバラツキが激しい。と言うか風装・爆炎・風刃しか使っていないのだろう。


 身体強化は敏捷性を高める【風装】のみ。攻撃魔法は範囲攻撃できる【爆炎】(エクスプロージョン)と発動の速い【風刃】(ウィンドエッジ)。その3種と詠唱の軽いレベル1の魔法に限定して修練を重ねたのだろう。


「自分の強みを徹底的に強化したってわけか」


「すごいよね。他のBランクの人達とレベルはそう変わらないんだよ? エルサは自分の戦い方にマッチした魔法だけを徹底的に鍛えてるから、群を抜いて強いんだね」


「スキルは使えば使うほど強力になるってことは一般的に知られてはいるけど……5つもの魔法が修得に至ってるってのは凄いな。あのヘンリーさんだって修得に至ったスキルは爪撃一つだけだったのに」


 熟練度稼ぎの補正の事は知らないだろうから、俺みたいに簡単にスキルレベルは上げられない。使う魔法を絞って鍛えてるから熟練度は上げやすいだろうけど、それにしたって並大抵の努力じゃこうはいかない。


「かなりピーキーだけどね。装備も動きを邪魔しないような軽いのしか着けてないし、このステータスじゃ同じBランクの人から一撃もらうだけでノックアウトしちゃうよ」


「それでも、ここでの強さ(・・・・・・)を求めたってわけか……」


 エルサの強さは一対一に特化した強さだ。いくら敵の攻撃を避けるのが得意であっても、多対一の乱戦では不意の一撃を食らう事は避けられない。


 普通の魔法使いは自身の低い防御力を補うために【土装】(プロテクト)の修練を欠かさないだろう。だがエルサは防御をかなぐり捨てて、回避のみを鍛え上げている。


 まさに、この闘技場での決闘に特化した強さ。妹さんを救う、それだけのために考え抜いて得た力なのだろう。賢く、努力も出来る天才か……


「それでも、負けるつもりは無いけどね」


「うん。今のアルなら大丈夫」




--------------------------------------------


アルフレッド


■ステータス

Lv : 8

JOB: 暗殺者Lv.2

VIT: 643

STR: 536

INT: 510

DEF: 893

MND: 510

AGL: 765


■ジョブ

騎士(ナイト)喧嘩屋(フーリガン)槍術士(ランサー)癒者(ヒーラー)魔術師(メイジ)暗殺者(アサシン)Lv.2


■スキル

初級短剣術・初級弓術・初級剣術・初級槍術・馬術

夜目・潜入・索敵

瞬身

挑発・盾撃・鉄壁

烈攻・不撓・魔力撃

威圧・気合・爪撃

第三位階黒魔法・第三位階光魔法

牙突・跳躍・看破


投擲Lv.4・初級盾術Lv.6

警戒Lv.6・隠密Lv.3

暗歩Lv.2・影縫Lv.1


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 熟練度稼ぎでズルをしているけれど、俺だって努力は積み重ねて来てるんだ。負けるわけにはいかない。


 俺に足りないのは、実戦での経験。ステータスではそう劣らないはずのヘンリーさんに、いいようにやられてしまうのはそのせいだ。


 速さだって魔法の熟練度だってエルサよりも俺の方が圧倒的に上だ。でも、闘技場での対戦経験はエルサの方がずっと上だ。


 決して油断せず、挑戦者としてエルサに挑もう。




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