第144話 決闘士武闘会に向けて
それから3週間が経った。俺は相変わらず毎日のようにエルゼム闘技場に通いCランクの決闘士達を相手に決闘を続けた。
おかげで【暗殺者】と【槍術士】以外の加護については修得に至った。あと1週間ほどで決闘士武闘会が始まるので、それまでに【槍術士】を修得することを目指している。
今のステータスはこんな感じだ。
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アルフレッド
■ステータス
Lv : 8
JOB: 槍術士Lv.1
VIT: 643
STR: 536
INT: 510
DEF: 893
MND: 510
AGL: 510
■ジョブ
騎士・喧嘩屋・癒者・魔術師・盗賊
■スキル
初級短剣術・初級弓術・初級剣術・初級槍術・馬術
夜目・潜入・索敵
挑発・盾撃・鉄壁
烈攻・不撓・魔力撃
威圧・気合・爪撃
第三位階黒魔法・第三位階光魔法
投擲Lv.4・初級盾術Lv.5
牙突Lv.1
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まあとにかくスキルが増えた。ほぼ毎日休まずに闘技場に通って罵声を浴び続けただけはあった。
これだけたくさんのスキルを覚えたとなると、戦いの立ち回り方も見つめなおさないといけないな。スキル一つ使うにしても魔力は有限なのだから。
とりあえず普段使いのスキルは、夜目・潜入・索敵の使い慣れた盗賊スキルだろうな。喧嘩屋のスキル威圧は敵を怯えさせて近寄らせないスキルだというから、潜入・索敵を同時に使うよりも魔力の節約になるかと思ったけど、自分よりもレベルが低い相手にしか通用しないらしいからレベルの低い俺が使っても意味はない。残念ながらほぼ死にスキルだな。
近接戦闘で使い勝手がいいのは、鉄壁・シールドバッシュ・魔力撃の3つだろうな。喧嘩屋の爪撃は武器を装備して使えるスキルでは無いので、ほぼ活躍の場は無いだろう。
帯剣をしていない時、例えば王族や大貴族との謁見をしている時とか寝込みを襲われた時なんかには使えるから、とっさに使えるように練習だけはしておこう。槍術士の牙突は剣でも使えるスキルらしいから、これから練習して使い勝手を試したい。
遠距離での戦闘は黒魔法だな。黒魔法とは火・水・風・土の四属性魔法の事だ。ステータス上では第三位階黒魔法とあっさり表記されているが、実際には各属性3種類ずつの計12種類の魔法を修得している。
覚えた魔法はこんな感じ。
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■魔法
火球・火装・爆炎
氷礫・水装・氷矢
風衝・風装・風刃
岩弾・土装・岩槌
治癒・解毒・魔弾
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火の玉を飛ばす火球
力を上げる火装
爆発する魔力球を飛ばす爆炎
氷の礫を飛ばす氷礫
魔法への抵抗値を上げる水装
氷の矢を放つ氷矢
風の塊を飛ばす風衝
敏捷値を上げる風装
風の刃を飛ばす風刃
土の弾を飛ばす岩弾
防御力を高める土装
岩柱を衝突させる岩槌
遠距離で使いやすいのは火球、岩弾、氷矢あたりだ。これは数十メートル離れていてもさほど威力が減衰しないので、狙い撃ちするのにぴったりだ。
中距離では氷礫、風衝、風刃。氷礫や風衝を、目つぶしや相手の体勢を崩すために放って、そこから近接戦闘に持ち込むという使い方がいいだろう。風刃も牽制として使用して、剣での追撃という流れがかなり強力だった。
逆に使いづらいのが爆炎、岩槌だ。発動に時間がかかるうえに、爆発する魔力球や岩柱の飛行速度が遅いため当てにくいのだ。威力は高いのだが、命中させなきゃ意味が無い。
爆炎は直撃できなくても、爆発の炎や衝撃でそこそこのダメージを与えられるからまだいい。岩槌の方は頭上に岩の柱を創り出して敵に向かって落とすのだが、岩柱が出現した時点で敵は回避行動を取るからまず当たらない。近接戦闘職の前衛が敵をくぎ付けにして、その隙に命中させるといのが定石の魔法なのだろう。
パーティでの戦闘の場合、魔法使いは前衛の後ろから攻撃魔法を飛ばす場合が多い。思い出してみれば、今までに出会った魔法使いは、火球・岩弾・氷矢ばかりを使っていた気がする。
中距離まで近づいたら攻撃を食らう可能性が高まるから、氷礫・風衝・風刃あたりも使いづらいのだろう。命中させにくい岩槌や味方を巻き込み易い爆炎は言わずもがなだ。俺の場合は、単独で戦うことになるから爆炎・岩槌あたりはあまり日の目を見ることは無さそうだな。
そう考えると、チェスターで戦った魔人族は相当な腕前だったってことだよな……。火球で俺とギルバードを釘づけにして、隙あらば爆炎を放っていた。魔法の発動速度もとんでも無かったし。今ならいい勝負は出来ると思うけど、あの当時の俺の力で本当によく倒せたもんだよ。
さて、話が逸れてしまったが遠距離から中距離の攻撃は魔法一択だ。初級弓術ってスキルもあるし、いちおうは弓も持っているのだが、いかんせん狩猟用の短弓だから射程距離も魔法ほどじゃ無いし、威力も低い。実戦じゃ使いづらいよな。
オークヴィルで共闘したダーシャみたいに弓使いの加護があれば別だけど、いまのところは【狩人】にはなれないしな。大事な物を手に入れればなる事も出来るのだろうか? 今度アスカに聞いてみよう。
後は……火装・水装・風装・土装などの魔法や烈攻・不撓の様なステータスを底上げすることが出来るスキル。これらは、強敵と戦う時にかなり活躍しそうだ。特に攻撃力を上げる火装と烈攻、防御力を高める土装と不撓などは効果が同じだが、重ね掛けが出来る。体感的には重ね掛けするとステータスを倍になるぐらいの、とんでもない効果があるのだ。
火装と烈攻を重ね掛けして、紅の騎士剣で魔力マシマシの魔力撃……とかどんな威力になるんだろうなぁ。闘技場では相手を殺してしまいそうだから、試せないけど。
これから1週間は、槍術士のスキルレベルを上げつつ、色々な戦術を試してみよう。せっかく決闘士武闘会に出るのだから、出来れば上位を目指したい。もしかしたら魔人族が現れるのかもしれないのだし……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「もぉぉっ!! 飽ーきーたー!!!」
「はいはい。じゃあ、そろそろ止めるか?」
俺とアスカは午前中の決闘を終えて、一角獣を見つけたヘルキュニアの森に来ていた。目的は薬草類や茸類の採集だ。ここ3週間は毎日のようにこの森に足を運んでいる。
最初は回復薬の備蓄のために来たのだが、備蓄の方は数日でいっぱいになり、今は惰性で採集に来ては冒険者ギルドに卸したり、商人ギルドに製薬した回復薬なんかを売ったりしているのだ。
本当なら午後も闘技場で熟練度を稼ぎをしたいところなのだが、午後は一日のメインイベントとしてB級以上の決闘士による決闘か、捕らえてきた魔物と決闘士との闘いが行われている。Cランクの俺が出場することは無いし、魔物との闘いの方には参加できるけど魔素を得てしまうから出ていない。
ある意味で有名な俺が魔物との決闘に出れば盛り上がるだろうということで、闘技場の職員たちに出場を促されたのだが丁重にお断りしている。俺が闘技場に出ているのはあくまで熟練度稼ぎのためだしな。
「うーん。でもやることないしねぇ」
「だったら買い物でも行くか? 王都に着いたらアクセサリーを買うとか言ってなかったか?」
「えっ!? 買っていいの!?」
「いいんじゃないか? アクセサリーの有用性はよくわかったし、金も十分に稼いだだろ?」
俺の決闘では金貨1枚とちょっと稼げた。アスカの賭けの方はほぼ儲け無し。むしろちょっとマイナスだ。
識者の片眼鏡で戦力分析してから賭けているのだが、ステータスの数字だけでは必ずしも当てられるというわけでは無い。それはそうだろう。戦術や相性によってちょっとぐらいの数字の差は簡単にひっくり返るだろうからな。
だけど、ここ3週間の回復薬販売でアスカは金貨5枚ほどを稼ぎだした。さすがにオークヴィルの牧草地やシエラ樹海ほど効率的に薬草類を手に入れられないので、オークヴィルの時ほどは稼げていない。
それでもアスカは俺が約1か月決闘して稼いだ金額の5倍もの大金をさらっと稼いでしまったのだ。金貨5枚はといえば、職人二人分の年収に相当する額だというのに……。どうやっても稼ぎではアスカに敵いそうも無いな……。
「やったー!! じゃあステータス的にはガーネットとアメジストのアクセかな! ほらほら、王都に戻ろう!!」
「おいおい。まずは冒険者ギルドと商人ギルドだぞ? 冒険者ギルドで採集依頼分を納品しないといけないし、商人ギルドに下級回復薬の納品を頼まれてるだろう?」
「わかってるってー! ほら行くよー!」
「はいはい」
ずいぶんはしゃいでるなぁ。そう言えばアスカと旅を始めてから、ゆっくり時間を使って遊んだことってほとんど無かったよな。
午前中の熟練度稼ぎはやるとしても、午後は観光してまわってもいいかもな。大聖堂にも行って無いし、闘技場で一緒に賭けを楽しんだりもしてない。お金にも余裕はあるし、少しぐらいはのんびりするのもいいかもな。




