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騎士とJK  作者: ヨウ
第四章 絢爛の王都クレイトン
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第120話 小金持ち

 大金を受け取った俺たちは、そそくさと冒険者ギルドを出てアリンガム商会の屋敷に戻った。間借りをしている俺の部屋に入ると、俺とアスカはほぼ同時に向き合って目を合わせた。


「すごい! すごい! すごーーい!!」


「おおっ! すげえ大金だな!! アスカ、もっかい見せてくれ!」


「うんうん。ちょっと待ってね。はい!」


 アスカが取り出した革の小袋の中身を四角いテーブルの上に出す。転がり出たのは、7枚もの白金貨に金貨に銀貨。うん、間違いなく本物の金貨だ。当たり前か。


「とんでもない大金だな……」


「そうだね……765万リヒトかぁ。家でも買えちゃうんじゃない?」


「チェスターなら貴族街に屋敷が買えるよ……」


「ふぁー。これだけのお金があれば店売りの装備はだいたい買えちゃうね。盗賊退治って儲かるんだねぇ」


「そうだな……」


 騎士団に突き出した盗賊はだいたい50人。一人当たり15万リヒト、金貨1枚と大銀貨5枚ぐらいの分配金がもらえたということになる。分配金はおおよそ売却金額の半額ほどだと聞くから一人当たり金貨3枚で売られたということか……。


 罪の重さによって終身奴隷になった者もいるだろうし、期限付きの犯罪奴隷になった者もいるだろう。奴隷の金額には詳しくないのでよくわからないが、これだけの大金だし、たぶんほとんどが終身奴隷になったんだろうな。


 期限付きの奴隷の場合は鉱山などの所有者に買われ、過酷な労働を強いられることが多いらしい。それでも最低限の安全や生活は保障されるから、刑期さえ務めあげれば晴れて平民に戻ることもできる。その前に使い潰されてしまうことの方が、多いらしいけど。


 ただ終身奴隷になった場合は危険な紛争地帯で死兵として扱われることが多いという。最前線の歩兵や撤退時の最後尾などの、犠牲の出やすい場所に配置されて死ぬことを前提に戦わされるのだ。


 盗賊たちには過酷な運命が待っているだろう。同情はしないけど。クレアを狙い、アスカを攫ったんだから当然の報いだしな。


 盗賊達にとってはアジトで殺された方がまだ幸せだったかも知れない。でも俺だって殺さずに済むのにわざわざ殺したくはなかったんだ。自分の犯した罪の償いなのだから、諦めて償ってくれ。


「これなら当分はお金稼ぎしなくてもよさそうだね!  回復薬でお金稼ぎとか、ケチっぽくてホントはやりたくなかったんだよねー」


「確かに、路銀としては十分すぎるくらいだな」


 オークヴィルの宿が二人で1泊大銅貨8枚だったから、王都だと銀貨1枚くらいかな? だとしたら20年ぐらいは何もしなくても暮らしていけるほどの大金なのだ。


「あ、じゃあ冒険者ギルドで売却するつもりだった魔物素材はどうする?」


 王都までの旅の間に手に入れた魔石がアスカのアイテムボックスの中にたんまり貯まっている。今日はそれの買取も冒険者ギルドでお願いしようと思っていたのだ。犯罪奴隷売却の分配金があまりにも高額でびっくりしてしまい、慌てて帰ってきてしまったけど。


「あー、とりあえず放置でいっかなー」


「まあ、そうだな。とりあえずお金には困っていないしな」


 ちなみに道中で手に入れた魔物素材は、こんな感じだ。



・魔石(Eクラス) 15個

 キラーエイプ、ソードゴブリン、ゴブリンアーチャー、フォレストウルフといった、言ってしまえば雑魚の魔石だ。直径は3センチくらい。オークヴィルで退治したレッドウルフの魔石もこのぐらいの大きさだったはず。冒険者ギルドでの売却価格は2千リヒト(銀貨2枚)くらいだ。


・魔石(Dクラス) 6個

 ゴブリンナイト、ゴブリンメイジの魔石だ。直径は4センチぐらい。買取価格は5千リヒト(銀貨5枚)ぐらい。


・魔石(Cクラス) 2個

 これはキラーエイプの変異種の金爪猿猴(ゴールドエイプ)とジェネラルゴブリンの魔石だ。二つともあの火喰い狼と同じくらいの大きさで、直径6センチぐらいだ。魔石は直径5センチを超えたあたりから急に価格が跳ね上がる。買取価格は30万リヒト(金貨3枚)は下らないだろう。希少価値が高いうえに、美術品としての価値もあるからじゃないかな。


金爪猿猴(ゴールドエイプ)の毛皮

金爪猿猴(ゴールドエイプ)の爪

 道中で倒した魔物から手に入る素材は魔石だけを貰って、他の素材は全て支える籠手(ガントレット)に譲っていた。そのため毛皮や牙、爪などの素材はこれだけしかない。


 とても美しい毛並みなので、この毛皮でコートでも作れば高位貴族にかなりの価格で売却できると思う。冒険者ギルドに売るよりも衣服を取り扱う商会にでも売却したほうがいいかもしれない。クレアに持ちかけてみようかな。


 爪の方はイマイチ使い勝手がわからない。アスカによると金色の剣とかが作れるという話だったが、特に武器としての性能が優れるわけでもなく、美術品としての価値ぐらいしか無いそうだ。いつか役に立つかも知れないから、とりあえずはアイテムボックスで死蔵かな。



 魔物素材以外には、『隷属の魔道具』なんかがある。『隷属の腕輪』『隷属の指輪』『隷属の首輪』だ。ユーゴーから取り外した腕輪と、奴隷商から奪った首輪と指輪の計3個だ。効果は同じだが指輪の方が小さいから価値が高いらしい。


 盗賊を討伐した際に入手したものは、基本的に討伐した者が所有権を得る。だから『隷属の魔道具』についても所有権は俺にあるということになるのだが……もしかしたらコレ、物が物だけに持っているだけで罪になるかもしれないのだ。本来なら直ぐにでも処分しておきたい代物だが、軽々しく冒険者ギルドに売却ってわけにもいかない。


 でも、奴隷商の尋問の時にはかなり有用だったのも確かなんだよなぁ。いつか使わなければならない時が来るかもしれないから、これもアイテムボックスの肥やしかな。


 奴隷商の身柄を引き渡したエクルストン侯爵には隷属の魔道具を持っている事を伝えたけど、提出しろとは言われなかった。まぁ出せと言われたら、素直に差し出せばいい。侯爵としては俺とクレアとは揉めたくないだろうから、何も言って来ないとは思うけど。


 そう言えば、盗賊のアジトを制圧した際に入手した武器・防具・資材・貴金属なんかについても、ほとんどが俺に所有権があった。大した物はなさそうだったし、持ち運べる量でも無かったから、全て隊商の商人たちにまとめて金貨2枚で引き取ってもらったけど。


 ほんとはアスカのアイテムボックスに収納してしまえば持ち運べたんだけど、そんな事を大っぴらにするわけにもいかないから商人たちの言い値で引き取ってもらった。さすがに命の恩人とまで感謝しておいて、安く買い叩かれてるってこともないだろ。たぶん……。


 脱線してしまったが、魔石を全部売却した場合は単純計算で66万リヒト(金貨6枚と大銀貨6枚)ぐらいになる。


 元々、チェスターを発ったときの所持金は白金貨1枚と小銭を少々といったぐらいだった。それでも100万リヒトもの大金なのだから、冒険者としてはかなり金を持っていたほうだろう。


 その後にアスカのアクセサリーやら、マルベリーのジャム購入やらで、一時は60万リヒト(金貨6枚)ぐらいまで目減りした。だけど盗賊団の討伐報酬やら拾得物の売却やら、アスカの万能薬とかの売却益、エクルストン侯爵からの迷惑料の分け前(なんと白金貨1枚!)、クレアの護衛報酬(少し色を付けてくれて12万リヒト・金貨1枚と大銀貨2枚)などなどのたくさんの収入があって、230万リヒトまで増えていたのだ。


 そこに加えて犯罪奴隷の分配金だ。1000万リヒト(白金貨10枚!)にも迫るぐらいに所持金が膨れ上がった。今さら魔石を売却する必要なんてまるで無い。


 アスカのアイテムボックスがあれば荷物にもならないんだから、もしもの時のために保管しとくほうがいいだろう。チェスターでの魔人族戦で使ったような毒薬の素材にするのもいいかもしれない。回復薬の素材にすれば、魔力を回復させるポーションなんかも作れるってアスカが言ってたし。


「うんうん。闘技場でも稼ぐつもりだしね!」


 ああ、そう言えばそんなことも言ってたな。まあ、お金に余裕があるのはいいことだし。


 じゃあ、明日は闘技場見学かな? それとも大聖堂?




ご覧いただきありがとうございます。

各貨幣価値は1リヒト10円ぐらいでお考え下さい。

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