5:暗闇の森 下
山の屋敷の庭園では、大鳥の長ファボルが怒りの余りに
庭師の育てた薔薇を手に握り、潰していた。
召使い達は、青ざめながらどうにか怒りを鎮めようと
「我々も精一杯、探しているので…帰ってきたらアスル様を強く叱って下さい。」
「叱るどころじゃない!鳥と一緒に八つ裂きだ!!」
やはり、この前の武芸の練習で強く言い過ぎたか……。
ファボルは、怒りながらも5日もいないアスルが心配であった。
家出はよくある事が、遅くて3日では帰ってくるはずなのだが……
そして、いつもなら家出しても叱るだけで済むが
明日は、ガシャルの国王陛下が直々に来る予定だ。
久しぶりに茶会をしようと言ってきたので、
屋敷の召使い達は、明日の準備の緊張感が走っていた。
(確か、陛下の第三皇子も来ると言ったな…縁談か?……まさかな…)
第三皇子のサンネス皇子は、大人しく美形だと噂だ。
あの、アスルには合わんしなぁ……。
アスルの爺は、まさか今アスルとサンネスが暗闇の森に行っているなんて
一欠片も思わなかった。
ーー暗闇の森ーー
この世界とは異なる世界と言われ、帰って来た人は
二・三人程度しかいないと言われている。
名前の通り、暗闇の森は太陽の光は木で覆い被さり真っ暗だ。
その上光がない為、夏でも寒く冬は立ち入り禁止になるくらいです。
「本当に行くのか……。」
さっきまで、乗り気だったサンは自信なさげに言った。
「ほら見ろ」と言う目でキハルが、サンを見る。
サンは、ムッとした顔になりながら
「アスル、暗闇の森って何かあるのか?」
あまりの寒さに、リュックから花柄のマントを取り出しながら
不意にう〜〜ん……と考え始めた。
「…………………………?」
「なんで俺を見る…」
無意識のうちに、サンとアスルはキハルを見つめていた。
キハルは、ある程度の知識を持っているので村の子供達にもよく
勉強を教えたり、定期的にテストの紙を配っている。
(ハァ〜ッお前達は村のガキかよ……)
「暗闇の森は昔、神鳥の気まぐれで作られた森で、
森の一番東側には岩にお宝が眠ってると言われていいる。」
お〜と言う言葉が二人の顔に書いてあるようにキハルからは見えた。
実際本当の事だ。
「じゃぁ、必要な荷物はOK地図もOK行くよ!」
アスルに続いて、キハルが暗闇の森に足を踏み入れる。
「生きて帰れるよなぁ……?」
まだ、戸惑って顔がやや青白いサンが聞く
「さぁ?でも私は二人で絶対行けるって信じてるよ!」
迷っているうちに、アスルに手を引かれて
戻ることが、出来なくなった。
暗闇の森の入り口には、神殿に使われているような
白い柱に蔦が巻かれていた。
《行ってらっしゃい…主人。魂だけ抜けて帰ってこないでよ…》
入り口の門は、とてもモズが入れる大きさではなかったので、
モズはお留守番。
「一言多いのモズは!!」
《そう言えば、ダムスランは制限時間内に抜け出さないと一生出られな…》
「それを早く言えぇぇぇ〜〜!!!!」
モズが言い終わる前に、三人の子供達は猛ダッシュでゴールに向かった。
《ゴールで待ってますよ主人……。》
モズは、お母さんの様な優しい眼差しで三人を見送った。
暗闇の森に足を踏み入れてからもう、一日中歩いているアスル達。
最初は、お宝の事を呑気に考えていたが今は
(((疲れた〜〜〜〜〜)))
と三人が思うのだった。
「さっきから、時計も全然動いてないし。ずっと暗いから、何時かわかんねぇ!」
キハルが、持って来た時計を見ながら言う。
「それにさっきから、同じ所を歩いてばっかりなような……」
サンの意見にキハルもアスルもコクリと頷く。
一先ず木に登り、そこで寝ることにした。
木にあまり登った事がないサンは、がっしりと木にしがみついている。
「ほら、サンもご飯食べよう!」
持って来た僅かな食料の白パンをサンに渡すが、
手を木から絶対離さないと言い張るわがまま皇子に
キハルは、「食べないなら、食べなきゃいい。アスルほっとけ…」
と、サンのパンを食べようとした。
「じゃぁサン!私の手を片手で握ってそしたらもう一つの手で食べれるでしょ」
恐る恐る、サンは手を木から離しアスルの手を握る。
パシッ
しっかり手を繋いだ姿に、サンは後ろから妙な視線を感じた。
それは痛々しいキハルの視線だった。
「どうしたの?サン顔赤いよぉ〜」
天然なのか、単なる馬鹿なのか、アスルはキョトンとしている。
「じじ、じ、自分で食べる……!!」
サンは、後ろを振り返りながら一気に顔を青ざめながらパンを食べようとした。
皇子にとって、パンとチーズだけの夕食はなんとも興味深い事だったようで
「こんな、ガサガサしたパンは初めて食べたよ!」
とすっかり庶民の夕食を満喫しました。
月が上の空に来た頃、三人は仲良く木の上で寝塗りについた。
勿論、三人とも手を繋いだまま。
朝、目覚めるとそこには大切な人がいる。
無知な自分に何でも教えてくれた。
アスルとキハルは、どうしてこんなに優しいのだろう……。
王宮では、用のない時以外召使いは来てくれないし、
必要以上にはお話をしてはくれなかった。
太陽のように輝き、時々とても静かな月の顔を持つアスル。
あれ?アスルは……
キハルもいない……!?ここはどこだ?
気がついた時にはのどかな木の上とはかけ離れた、
どこかも知らない、谷底だと思われる場所だった。
上を見上げると、絶壁の壁が立ち自分の周りを囲っていた。
とても登れる高さではない……
「お〜〜〜いみんなぁ〜〜」
声が響き渡ったが、返事はない。
「まさか……置いてかれた?」
少し考えたが、そんな事をするとは思えなかった。
キハルだって、昨日の夜は嫉妬されたかもしれないが
そんな事をする卑怯者とは思えない。
心のどこかでそんな事がモヤっとなった。
サンは、黙ったまま出口を探した。
「そうだ、剣を使って上まで登ろう!」
魔物が出てきたように、城から持ってきた雷性の剣を
豪快に出して、岩に突き刺す。
その剣と言ったら、世界に5つしかない世界五大剣
で、王家の秘宝でもあった。
後はひたすら登るしかないなぁ
サンは仲間の為にひたすら登り続けた。
ハァハァッハァッハァハァ
「今は何時だ?…外では何時くらいかなぁ…」
サンが岩を登ってもう随分と時間が経っている。
小さな岩幅に来ると小さくなり休み休みで登り、
休憩する。
〔王子だってよ、一族から税を取ってる最低な奴ら…〕
〔あんな奴置いてこうぜ〜アスル〕
「うるさい!!!」
さっきから、登るにつれてそんな事が頭に
浮かぶのがサンは苦痛だった。
遂には、幻覚までもがくっきりと見え始めている。
〔あいつ、完全に俺たちの事信じてるぜぇ〕
〔王子だから、仲良くしてやってるだけなのにねー〕
〔初めから仲良くしてやろうとは思ってなかったし…〕
〔ウザいよねー〕
「うるさぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!!」
あ
俺……死ぬのか?
剣を思わず抜いてしまったサンは空中に浮いたままこんな事を考えた。
底は見えないし上も見えない…
死のう……
サンは完全に暗闇の森の魔法にかかったのである。
「待ったぁ〜〜〜!!!」
(なんだ?幻覚か……へ!)
上からは、幻覚なのかさっきまで悪口を言っていた
アスルがものすごい勢いで落ちてこちらに向かってきた。
おい待った!!
空中で一回転しまるで本当の鳥のように、
アスルは自分に手を伸ばしていた。
(なんで気づかなかったんだろう…俺バカだ!!)
アスルとサンが、自分の事を仲間として見ていたことに
サンは初めて気がついた。
パシッ
ーーしっかりと掴んだ手ーー
安心したサンだったがこのままでは2人で墜落してしまう。
「アア〜〜スル落ちちゃうよ〜〜!!」
急降下しながらもしっかりと掴んだ手を強くした。
アスルは平気な顔をして、
ニコッと笑って見せた。
「大丈夫!!信じて〜〜」
逆さまに落ちている状態で大丈夫と言えるのか…
サンは青ざめながらも、アスルを信じて手を握った。
あれ…………………
眩しい…………………………
〔オキナサイ…ショウネンタチヨ〕
そう言ったのは、暗闇の森の主であるもの。
「あなたは誰?……」
先に気がついたアスルは、光の中で動いている何かに話しかけた。
注意深く見ているアスルに主は優しく、
〔アンシンシテ…ワタシハモウキエルカラヨクキイテ……〕
消えるとはどう言う事なのかと思ったその時もう主は、
少し消えかけていた。
アスルは歩み寄り光の主に話しかけた。
「ねぇどうしたの?大丈夫?」
〔イタクハナイ…モウジカンガナイ〕
〔コレカライウコトハヒミツダヨ……〕
「……………。」
〔コノセカイニハコレカラオオキナ…コ…ト……マホウガ…〕
「ねぇ消えないで!襲った人は?どこに行ったの?」
もうアスルの手に乗るくらいのかけらになった時、
光の主は、最後の力を振り絞ってこうアスルに伝えたい。
〔タビニデロ………コノセカ…ソトヲミロ…〕
光の主は、金となって消えていった。
宝と言うのは、この金のことだったのかと考えた…。
すると!!
そこらにも金はたくさんと埋まっていた。
アスルは、1つ1つ見ていき思わず悲鳴をあげた!
「ひぃぃぃぃ!!!!」
「うわぁぁ〜〜ってあれ?アスルどうした?」
眠りから目覚めたキハルとサンがアスルに近づいた。
アスルは金の1つを手に取った。
「これ人だったんだ……」
その金はよく見ると手形の面影が残っていた。
「……旅に出ろか…………………」




