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「ねぇ、あなたって依頼人の盗みは100パーセントの成功率なのよね?」
ふと思い出したかのように言う少女。
「それが? どうってことはないだろう?」
「関係あるわ。さっき、私のことを依頼人と言ったわよね?」
「ああそうだが、」
「じゃあ、私の依頼も受けてくれるのでしょ?」
「内容と報酬による。
そもそも自己紹介をして欲しいのだが。
当然、今までの口ぶりからして俺のことは知っているのだろう?」
「あんたのことを知っているわ当然。
私が統治している領地である世界で何度も私のことを困らせてくれた極悪人。キーエンス=カルノット。
せっかく厄介者のあんたを一番最悪な場所に送り込んだはずだったのに、私まで連れてこられてしまうことになるなんて……。
本当にあんたのことはにくたらしくてしょうがないわ」
「あ〜、わかった、わかった。
俺のことを知っているんだったら、それはそれでいい。
お前のことについて知りたい」
「私に対してお前って言うのはやめなさいよね。
私はこの世界。アゼリータにおいては議決権を持っているたった108人のうちの一等貴族の一人。
あなたがいた世界においては領主。つまり、神という存在なのよ。
だから、私のことを崇め奉りなさい」
「ははぁ〜、ってあがめたてまつるわけないだろう。
俺は依頼人に対して卑屈になることはない。
それは誰に対してもだ。
あがめたてまつれ、というのであれば、ここで話しは終わりだ。
それじゃあ」
と言い、立ち去ろうとするキーエンス。
「ちょっ、ちょっと待って、待ってよぉ〜。
最悪なこの地に私を一人にしないでぇ〜」
と少女の悲鳴がこだました。
キーエンスは、ニヤリとし、少女の元へ戻り、
「今後は俺のことをあがめたてまつれよ」
少女は半泣きの状態で、キーエンスを睨みつけた。