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「おい、悲鳴をやめろっ!」
いきなり大きい声で悲鳴をあげだした少女の口を俺は手でふさぐ。
少女の悲鳴がとてもうるさかったというのもあるが、盗賊の習性として、大きい声を出されるのは不快だった。
少女の悲鳴を抑えたあと、周りを見渡す。
いわゆる森の中。
昆虫や獣の気配を感じるものの、人の気配はない。
ましてや、こちらに視線を向けているものもいなさそうだ。
十分安全な状況だと言っていいだろう。
「大きな声を出すなよ!」
と、俺は少女に話しかけ、少女が頷いたのを確認したあと、ゆっくり少女の口から手を離し、
「この状況を説明してくれっ」
と、依頼人の少女へ言う。
「ーーわからないわ」
「はぁ?」
「わからないの!」
「何が? 今ここにこうしているのは依頼人のせいだろっ?」
「ええ、そうよ。そうだけど。私がここへ送り込んだのは、あなただけ。
私はさっきまでいた世界にいるはずなのに、なぜここにいるのかがわからないの」
怒気を強めながら、俺の胸を叩きながら言う少女。
「ああ、そのことか、」
「『ああ、そのことか、』ってって、あなたは何かこのことを知っているの?」
「知っている」
「何?」
「そうだなぁ……、」
と俺は一呼吸置き、
「教えてやってもいいが、先に俺の質問に答えてくれ、」
「質問って?」
「ここは一体どこなんだ?」