転送
「もう、この世界から出て行ってください!」
俺が今回の依頼人のところへ行ったらいきなり言われた。
依頼人はというと、とっても怒っていらっしゃる様子が伺える。
だが、金髪碧眼の美女ではあるが、身長が低く、幼く見えるのもあって、からかってみたくもなる。
いくら俺がこの世界で最高の盗賊だからといったって、世界から出て行くすべなんて持ってはいない。ときおり、よく訳のわからない依頼をしてくる奴がいるが、今回のもそのたぐいの話だろう。
それにーー、
「俺の職業は盗賊だ。
だから、盗むこと以外の依頼は受けられない」
きっぱりと断り、俺は次の依頼人の所へ向かうべく歩みを始める。
が、そんな俺が歩みを始めたときに少女から服を引っ張られ、
「それは分かっている。
今回の依頼は捕らえられている少女を盗んで来て欲しいの。
盗んで欲しい少女の絵はこれだから、」
と無理やり一枚の紙を持たされ、
「じゃあね」
と、言われながら手を振られた。
◇◇◇
「これで私の世界はやっと平和になるわ」
と、少女は手を上にして背伸びをしていると、
「おい、依頼人。ここは一体どこなんだ?」
「えっ、なぜあなたがまだここにいるのです……?」
少女は不思議そうに周りを見渡したあと、青ざめ、
「ーーえええええぇぇぇぇぇっっっっっっっ!」
と、悲鳴がこだました。