第五話
「待っていました。岩城君。」
私は待っていた彼を。
「なんだ檜原、俺に何か用か。」
「まあ、もう予想がついているかもしれませんね。
6年前の真実を私は知りたいのですよ。
手伝っていただけませんか。」
少し不審そうな眼をして彼はこう問いかけてきた。
「真実って檜原の言っている事じゃないのか。」
もちろんこう返されるのは分かっていた。
「ええ、私の話が真実である確証がほしいのですよ。」
そう、それは違うとわかっている。
だけど私にはこう答えるしかできなかった。
証拠がなくていま、私が違うと言ってしまうと
自分が壊れてしまいそうな気がしたから。
「わかった、自分の理論に反対と言ってもらう必要があったし
ましてや、あの現場を見た人間がいるなら
それを確認してもらいながら検証できる。
俺は否定の証拠を探す。
檜原は肯定の証拠を探す。
それがどのようなことになっても俺は保証しない。
それでいいなら俺は別にいい。
けど、もし檜原の立場が不味くなっても俺は知らない。
それによってトラウマが蘇ってきても補償はしない。」
そう、彼は私の心配をしているのだ。
真実が分かった場合
彼は全てを公表する気でいるのだ。
それによって私は苦しむだろう。
私の最悪とも言える過去とたどるのだ
トラウマと衝突するのは必然だろう。
それでも彼は確かめるのかを聞いている。
「もちろんそれは覚悟の上です。」
「分かった。
けど、今日はもう遅い。
調べるのは週末からだ。
お前の父親や母親に一人で
聞こうとするなよ。
絶対に何もしゃべらないからな。
それと、晴也が夕食を一緒に食べない日が分かったら連絡をくれ。
その日に俺も話を聞きたいから。」
「分かったわ。
といってもあの人は基本的に夕食を一緒に食べませんよ。
家にいないか部屋にこもっていますから。」
「それは好都合だ。
できるだけ早い方がいいけどな。」
「そうね、
これが連絡先です。
それでは、また連絡します。」
こうして即席ながらも同盟を結んだ。
真実を知るために・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・
その次の週の土曜日の午後
私は岩城君と事故現場に来ている。
そしてここが事故のあった公園。
私は事故のあった日からこの道を通らなくなった。
あの日の思い出が蘇ってくるから
それが辛いからあえて通らなかった。
今そのトラウマと向き合っている。
「檜原、大丈夫か、さすがに顔色が悪いぞ。」
「いいの、その覚悟があってここに来たの。
いいから始めるのよ。」
そこから私はこの公園の中であの事件で何があったかをすべて話した。
「分かったかしら。
あの事件で何が起きたのか。
今のが真実よ。」
「辛いことをその現場で話してもらって済まない。
けど、これで先に進むことができるし
いろいろ確認することが出てきた。
何か、今話していて違和感はなかったか。」
このセリフを聞いて私は無いとは言い切れなかった。
この公園に訪れてから頭が痛いのだ。
頭を抑えている私をみて岩城君が
「今日はこれ以上確認するのは無理だ。
今日は花だけを置いて帰ろう。」
「すみません。では、事故現場に行きましょう。」
そう言って私は現場を目指した。
そこには真新しい花が添えてあった。
「きっと檜原の小母さんたちだろ。」
と岩城君が言った。
私は釈然としていなかった。
そして私たちが花を添えようとしたとき
後ろからおばあさんに話しかけられた。
「あんたたちもここでだれか失ったのかい。」
「あ、はい
といっても俺じゃなくて彼女ですけど、
俺はただの付き添いです。」
「そうかい。
もしかして6年前のあの事故かい・・・」
「おばあさん、あの事故について何か知っているのですか。」
「ああ知っているとも
私の家の前で起きたからね。」
「おばあさん、その日の話を聞いていいですか。」
「・・・いいよ、
少し長くなるかもしれないから家においで。」
「すみません。
檜原どうするか。
辛いなら帰ってもいいけど。」
「行きます。私も聞きたいから。」
「わかった。おばあさんお願いします。」
「それじゃあ、おいで。」
俺たちまるでレールの上に乗ったように
あまりにも順調すぎて怖いくらいに真実に近づいていく
運命に作られたレールの上を進むように・・・
ついに物語も真相に近づいています。
ついでにもしよろしかれば感想をください。
これからの参考にさせてもらいたいと思いますので。